「作戦ではなく本能に従っただけ」と勝利したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は、アタックした理由を明かした。「明日の方が僕向きだ」と言うヴィンゲゴーや勝利を演出したアダム・イェーツなど、ツール13日目を選手のコメントで振り返ります。



ステージ優勝&マイヨジョーヌ&マイヨアポワ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

アダム・イェーツの牽引を受け、残り4kmで先頭に立ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

レース直後インタビュー

アタックしたのは作戦ではなく本能に従っただけ。スプリントでのステージ勝利を狙っていたのだが(膠着状態だったので)アダム(イェーツ)がアタックし、ヴィスマが追わなければならない状況を作り出した。もし僕が他の選手たちを引き離し、アダムに追いつくことがでれば少し前を牽いてもらって完璧な展開になると思ったんだ。それが上手くいき、チーム全員に感謝したい。

子どもの頃、ツールで勝利を重ねるマーク・カヴェンディッシュを見て「彼は違う星から来た選手だ。だからこんな選手にはなれやしない」と思っていた。だが、夢は追い続ければこうやって叶うんだ。

―ということはカヴェンディッシュの最多区間優勝記録の更新を狙っているのか?

いいや、ただの例えに過ぎない。子どもの頃、それを観ていた僕がいかに心踊らせていたかと言いたいだけだ。

残り4.6km地点でアタックしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

表彰式後インタビュー

ジョアン(アルメイダ)がハイペースで牽引していたものの、僕らにはフアン(アユソ)がいなかった。だからアダムと話し、ステージ優勝を狙うよう伝えた。それで彼の総合順位が上がれば良いと思ったからね。アダムがアタックしてからは誰も動かなかった。だから好機と思い本能に従い僕も仕掛けたんだ。彼に追いついた僕は息を整え、単独に持ち込んだ。本当にチームメイト、特にアダムには感謝したい。

僕にインタビューをする君たちは皆「アタックにより余計な力を使っている」と指摘するが、このスタイルはずっと変わらないだろう。攻める余地があると思えば仕掛ける。それが今日は上手くいき、時には成功しないこともある。それが人生だしレースの醍醐味でもある。

圧巻の登坂スピードで区間2勝目を手に入れたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

―最終山岳で観客から何か投げつけられたことに気づいたか。

おそらくポテトチップスじゃないかな。突然のことだったので一瞬パニックに陥ったが、バスク人やスペイン人など大勢が詰めかけるクレイジーな雰囲気だった。それに今日は週末で、ピレネーの美しい景色も楽しめるからね。だから明日もすごいことになるだろう。

ステージ2位&総合2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

39秒遅れの区間2位でフィニッシュしたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

喜びと悲しみの両面が…いや、悲しみはないかな。なぜなら良い走りができたからだ。でも40秒を失ったことには落ち込んでいるよ。それに明日のステージの方が僕には適していると思っている。今日のラスト3kmは平坦や下り区間もあったので、彼の方が向いていると思ってた。彼のアタックと走りは見事だったよ。

―明日のどこがより自分に適しているのか。

明日のステージの方が山岳が長く、勾配も厳しい。そうなれば僕がより有利になる。

―観客に向けてメッセージはあるか。

今日はブーイングと共に観客からチップスが投げつけられた。タデイ(ポガチャル)に対しても投げられたと聞いたが、奇妙な行為だ。沿道に立って罵声ではなく声援を送ってほしい。

ステージ3位&総合3位&マイヨブラン レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

1分10秒遅れでフィニッシュしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

今日は自分ができる限りの走りをした。タデイはそれを遥かに上回る走りをしたまで。それにヨナス(ヴィンゲゴー)にそれほど離されずフィニッシュできた。だから任務は完了だ。

今日は逃げ成立までハイスピードで進み、トゥールマレーでも早いリズムが刻まれた。それ以降は登りの度にスピードは増し、タデイがステージ優勝にふさわしい強さを見せた。脚の疲労は溜まり、ヨナスに食らいついたのだが下り区間の前で引き離されたしまった。最後は総合3位を守るために必死に踏み込んだよ。

終盤にアタックし、ポガチャルの勝利に貢献したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)

残り7km地点でプロトンを飛び出したアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

作戦よりも即興の動きだった。いつものように集団先頭を牽引しようと思ったらタデイが「アタックしてくれ」と言ってきたので、「何っ?!」と思わず聞き返してしまったよ(笑)。前に出て後ろを振り返ったら彼が追いついてきて、脚を使っていたのであまり牽引はできなかったが勝利と総合タイムを稼ぐことができた。

―ポガチャルを牽引する(前で待つ)ためか、あるいはライバルたちに追わせる狙いだったのか?

タデイに聞いてくれ。僕は何も分からないよ(笑)。今朝彼に「全力で踏めばステージ優勝できるよ」と言われた。なにはともあれチーム一丸となって良い走りができたし、力を見せつけることができたから良かったよ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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