2024/07/12(金) - 08:10
落車やリタイア者が続出したツール・ド・フランス第12ステージは混沌のスプリントで決着。ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)が区間3勝目を挙げ、終盤に落車したログリッチは約2分半を失い総合順位を下げた。
7月11日(木)第12ステージ
オーリヤック〜ヴィルヌーヴ・シュル・ロット 203.6km(平坦)
総合勢にとって激しかった勝負の翌日に、ツール・ド・フランス主催者は休息を与えるような平坦ステージを用意した。フランスチーズの名産地であるカンタルの山から、下るように西のヴィルヌーヴ・シュル・ロットを目指すコースは203.6km。前半は中央山塊の4級山岳2つを含む細かなアップダウンが続くため、前日に続き逃げを狙う選手たちには格好のレイアウトとなった。
しかしコース後半は一転平坦路が続くため、集団スプリントを願うチームたちがハイスピードで追いかけるはず。そして第12ステージは予想通り、レース主催者の想定を上回る速度でレースは展開した。
この日はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)に35勝目をもたらしたリードアウト職人のミケル・モルコフ(デンマーク)が新型コロナウイルス感染のためリタイア。他の選手に感染は見られなかったものの、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)も体調不良のためレース途中で棄権している。
レースは現地時間午後12時50分にスタートし、ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)のアタックにチームメイトのカンタン・パシェ(フランス)やヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)、9日目勝者のアントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)らが合流する。4名の逃げ集団を容認したメイン集団では、約15名の集団落車にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が巻き込まれる。しかし素早いバイク交換でプロトンに戻り、問題なく集団に合流している。
前日の夜に11台のバイクが盗まれ、一部報道では自らのフレームサイズではないバイクで出走したテュルジスを含む逃げ集団は最大3分半のリードを得る。しかしアルペシン・ドゥクーニンクとアンテルマルシェ・ワンティがタイトなペースでコントロールし、そこにモビスターも加わったため残り140km地点からタイム差は2分前後を推移。2つの4級山岳はポガチャルの繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るアブラハムセンが連続トップ通過し、中間スプリント(残り93.6km)は争うことなくテュルジスが先着した。
遅れて中間スプリントにやってきたメイン集団では、アンテルマルシェ・ワンティがフィニッシュスプリントのようなトレインを組み、その最後尾につくヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)をギルマイが退け最大11ポイントを掴む。その後逃げからテュルジスが遅れ、飲み込んだプロトンの後方では前日の落車によって左腕を負傷したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が治療を受ける場面などもあった。
スタートから3時間を平均速度47.083km/hというハイスピードで駆けたプロトンは、残り42km地点で逃げの3名を引き戻す。この頃に気温は34度まで上がり、灼熱のなか選手たちはフィニッシュ地点のヴィルヌーヴ・シュル・ロットを目指した。
ひと塊となった集団は相変わらずアルペシンやモビスターが先導し、残り距離が縮まるのと比例して位置取り争いが激しさを増す。緊張感が高まるなか残り12km地点の直線路でアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザクスタン)が単独で落車。それに急ブレーキをかけた選手たちが連鎖するように落車し、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が身体の右側を打ちつけた。
スプリントに向けてスピードを上げるプロトンは脚を緩めることなく、また総合チームもエースのため必死に集団前方に位置を取る。そのためレッドブルの選手たちは一丸となり集団を追いかけたものの、ログリッチは先頭集団から2分27秒遅れでフィニッシュ。総合順位を4位から6位(4分42秒遅れ)に落とすことになった。
そしてプロトンは道幅が狭く、コーナーの多いテクニカルなヴィルヌーヴ・シュル・ロットの街に突入する。先導する選手が目まぐるしく入れ替わるなか、EFエデュケーション・イージーポストを先頭にフラムルージュ(残り1km地点)を通過。その後牽引はバーレーン・ヴィクトリアスに代わり、最終ストレートでダニエル・マクレー(イギリス、アルケアB&Bホテルズ)がアルノー・デマール(フランス)を引き上げる。
残り200mでスプリントを開始したデマールは右側をフェンスで閉め、挟まれたファンアールトが一度踏み止める。リードアウトが整わなかったヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が猛スピードで番手を上げるなか、ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)が巧みなライン取りでトップスピードに乗る。デマールとその背後から出たファンアールトがハンドルを投げる前方で、ギルマイがフィニッシュラインに飛び込んだ。
マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を纏いステージ3勝目を掴んだギルマイ。「この僕に強さと力を与えてくれた神様に感謝したい。そしてチームメイトやスタッフにも。今日は適切なタイミングで適切な選手の背後につくことができれば勝てると思っていた。今日は調子が良かったので無線で皆に”力を貸してくれ”と頼んだ。またこのマイヨヴェールを着て以降、力がみなぎってくるんだ」と、自信に満ち溢れた表情のギルマイは語った。
2着だったデマールにはファンアールトへの進路妨害(斜行)が認められ集団最後尾への降格処分が下り、またフィニッシュ手前で大きくラインを変えたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)も降格ペナルティが課されている。
また先述したログリッチ以外の総合上位勢はトップと同タイムでフィニッシュ。そのためジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)とカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が、総合順位をそれぞれ一つずつ上げている。
7月11日(木)第12ステージ
オーリヤック〜ヴィルヌーヴ・シュル・ロット 203.6km(平坦)
総合勢にとって激しかった勝負の翌日に、ツール・ド・フランス主催者は休息を与えるような平坦ステージを用意した。フランスチーズの名産地であるカンタルの山から、下るように西のヴィルヌーヴ・シュル・ロットを目指すコースは203.6km。前半は中央山塊の4級山岳2つを含む細かなアップダウンが続くため、前日に続き逃げを狙う選手たちには格好のレイアウトとなった。
しかしコース後半は一転平坦路が続くため、集団スプリントを願うチームたちがハイスピードで追いかけるはず。そして第12ステージは予想通り、レース主催者の想定を上回る速度でレースは展開した。
この日はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)に35勝目をもたらしたリードアウト職人のミケル・モルコフ(デンマーク)が新型コロナウイルス感染のためリタイア。他の選手に感染は見られなかったものの、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)も体調不良のためレース途中で棄権している。
レースは現地時間午後12時50分にスタートし、ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)のアタックにチームメイトのカンタン・パシェ(フランス)やヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)、9日目勝者のアントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)らが合流する。4名の逃げ集団を容認したメイン集団では、約15名の集団落車にタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が巻き込まれる。しかし素早いバイク交換でプロトンに戻り、問題なく集団に合流している。
前日の夜に11台のバイクが盗まれ、一部報道では自らのフレームサイズではないバイクで出走したテュルジスを含む逃げ集団は最大3分半のリードを得る。しかしアルペシン・ドゥクーニンクとアンテルマルシェ・ワンティがタイトなペースでコントロールし、そこにモビスターも加わったため残り140km地点からタイム差は2分前後を推移。2つの4級山岳はポガチャルの繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るアブラハムセンが連続トップ通過し、中間スプリント(残り93.6km)は争うことなくテュルジスが先着した。
遅れて中間スプリントにやってきたメイン集団では、アンテルマルシェ・ワンティがフィニッシュスプリントのようなトレインを組み、その最後尾につくヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)をギルマイが退け最大11ポイントを掴む。その後逃げからテュルジスが遅れ、飲み込んだプロトンの後方では前日の落車によって左腕を負傷したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が治療を受ける場面などもあった。
スタートから3時間を平均速度47.083km/hというハイスピードで駆けたプロトンは、残り42km地点で逃げの3名を引き戻す。この頃に気温は34度まで上がり、灼熱のなか選手たちはフィニッシュ地点のヴィルヌーヴ・シュル・ロットを目指した。
ひと塊となった集団は相変わらずアルペシンやモビスターが先導し、残り距離が縮まるのと比例して位置取り争いが激しさを増す。緊張感が高まるなか残り12km地点の直線路でアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザクスタン)が単独で落車。それに急ブレーキをかけた選手たちが連鎖するように落車し、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が身体の右側を打ちつけた。
スプリントに向けてスピードを上げるプロトンは脚を緩めることなく、また総合チームもエースのため必死に集団前方に位置を取る。そのためレッドブルの選手たちは一丸となり集団を追いかけたものの、ログリッチは先頭集団から2分27秒遅れでフィニッシュ。総合順位を4位から6位(4分42秒遅れ)に落とすことになった。
そしてプロトンは道幅が狭く、コーナーの多いテクニカルなヴィルヌーヴ・シュル・ロットの街に突入する。先導する選手が目まぐるしく入れ替わるなか、EFエデュケーション・イージーポストを先頭にフラムルージュ(残り1km地点)を通過。その後牽引はバーレーン・ヴィクトリアスに代わり、最終ストレートでダニエル・マクレー(イギリス、アルケアB&Bホテルズ)がアルノー・デマール(フランス)を引き上げる。
残り200mでスプリントを開始したデマールは右側をフェンスで閉め、挟まれたファンアールトが一度踏み止める。リードアウトが整わなかったヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が猛スピードで番手を上げるなか、ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)が巧みなライン取りでトップスピードに乗る。デマールとその背後から出たファンアールトがハンドルを投げる前方で、ギルマイがフィニッシュラインに飛び込んだ。
マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を纏いステージ3勝目を掴んだギルマイ。「この僕に強さと力を与えてくれた神様に感謝したい。そしてチームメイトやスタッフにも。今日は適切なタイミングで適切な選手の背後につくことができれば勝てると思っていた。今日は調子が良かったので無線で皆に”力を貸してくれ”と頼んだ。またこのマイヨヴェールを着て以降、力がみなぎってくるんだ」と、自信に満ち溢れた表情のギルマイは語った。
2着だったデマールにはファンアールトへの進路妨害(斜行)が認められ集団最後尾への降格処分が下り、またフィニッシュ手前で大きくラインを変えたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)も降格ペナルティが課されている。
また先述したログリッチ以外の総合上位勢はトップと同タイムでフィニッシュ。そのためジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)とカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)が、総合順位をそれぞれ一つずつ上げている。
ツール・ド・フランス2024第12ステージ
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 4:17:15 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | |
3位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック) | |
4位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
5位 | アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
6位 | アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
7位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | |
9位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー) | |
10位 | ライアン・ギボンズ(南アフリカ、リドル・トレック) | |
120位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +2:27 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 49:17:49 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +1:06 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:14 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +4:20 |
5位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +4:40 |
6位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +4:42 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +5:38 |
8位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +6:59 |
9位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +7:09 |
10位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +7:36 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 328pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 221pts |
3位 | アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー) | 141pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 36pts |
2位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 36pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 28pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 49:18:55 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +3:34 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +6:03 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 148:02:42 |
2位 | スーダル・クイックステップ | +21:03 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | +22:22 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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