2024/07/03(水) - 08:21
標高2,642mの超級山岳ガリビエ峠を駆け上がったツール・ド・フランス第4ステージ。タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が登坂アタックから下りで後続との差を拡げ、通算12勝目と共にマイヨジョーヌ奪還に成功。エヴェネプールに総合で45秒、ヴィンゲゴーに50秒差をつけた。
7月2日(火)第4ステージ
ピネローロ〜ヴァロワール 139.6km(山岳)
前日の激しいスプリントバトルから一転、ツール・ド・フランスの第4ステージに早くも険しい山岳ステージが用意された。イタリアのピネローロを出発した選手たちは西に進路を取り、登坂距離が39.9kmと長い2級山岳を越えてフランスに入国。直後に2つ目の2級山岳をクリアして、標高2,642mの超級山岳ガリビエに臨む。
今回登るガリビエ峠は2022年大会で使用したテレグラフ経由ではなく、平均5.1%と勾配が比較的緩やかな方。しかし登坂距離23kmの道のりは決して易しくなく、総合を争う選手たちはアタックの機会をうかがうよりも”集団から遅れてタイムを失わない”ことが最重要事項となる。139.6kmレースのフィニッシュ地点は頂上から18.9km下った地点だ。
出発地点のピネローロに集った選手たちの先頭には、エリトリアにツール初勝利をもたらしたビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)とエクアドル人初のマイヨジョーヌ着用者となったリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)が並ぶ。現地時間午後1時15分にスタートが切られると、直後から逃げを目指した激しいアタックが勃発。18.9km地点に中間スプリントポイントが設定されたことでマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を狙うマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)なども積極的に抜け出しを図った。
選手が飛び出しては集団が捕まえるという慌ただしい展開のまま進み、中間スプリントではギルマイを退けたピーダスンが先頭通過。やがて17名という大所帯の逃げ集団が形成され、その中には繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)やロード世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)などが入った。
また総合争いから脱落したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)やスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)など強力クライマーも入ったため、メイン集団ではUAEチームエミレーツが積極的な牽引を見せる。登坂距離39.9kmの2級山岳をウィリアムズがトップ通過し、今年のラ・フレーシュ・ワロンヌ優勝者は続く2級山岳も先着。その後も逃げは順調にフィニッシュを目指したものの、プロトンを先導するニルス・ポリッツ(ドイツ、UAEチームエミレーツ)の強力牽引が逃げ切りのチャンスを奪った。
今年ボーラ・ハンスグローエからUAEに加入したポリッツはリーダーチームであるEFの力も借りながら、逃げに対し3分以上のタイム差を許さない。そして2分48秒のリードで超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)に入ると、逃げグループではゴデュの仕掛けからアタックの応酬が始まり、オイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター)が力強い走りで独走に持ち込んだ。
ガリビエ峠の登り口でようやくポリッツが仕事を終え、先頭交代したティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ)が更に一段ペースを上げる。4名に絞られた逃げとの差は1分を割り込み、UAEの高速牽引にサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)やトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、そしてマイヨジョーヌ姿のカラパスまでもが遅れていった。
標高2,642mの頂上まで残り7km、フィニッシュまで26km地点でプロトンは最後まで粘ったラスカノを捉える。UAEはアダム・イェーツ(イギリス)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル)、フアン・アユソ(スペイン)が先頭でローテーションを回す一方で、ヴィスマ・リースアバイクはマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)が遅れたことでヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が単独となってしまう。新型コロナウイルスからの回復が間に合わず、不出場となったセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)不在の影響が、今大会最初の山岳ステージで露呈した。
頂上まで3kmを切った時点で先頭集団は8名。ポガチャルがアユソとアルメイダを残すなかヴィンゲゴーやプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)は単騎となり、唯一レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)だけがミケル・ランダ(スペイン)を残した状態。トップ通過者に「アンリ・デグランジュ賞」とボーナスタイム(8、5、2秒)が付与されるガリビエ峠の頂上手前800m地点で、ポガチャルが仕掛けた。
満を持してアタックしたポガチャルにヴィンゲゴーが追従する一方で、エヴェネプールやログリッチなどは反応できない。更にシッティングのままハイケイデンスでスピードアップしたポガチャルはヴィンゲゴーを引き離し、頂上を通過。フィニッシュまで18.9kmの下りに単独で入った。
ダウンヒルでも飛ばしたポガチャルは、頂上で7秒だったヴィンゲゴーとの差を残り5km地点で30秒まで拡げる。その後ヴィンゲゴーにはログリッチとロドリゲス、アユソが追いつき、遅れてエヴェネプールも合流。先頭を行くポガチャルに抑え役のアユソを除く4名がローテーションを回したものの、ポガチャルとの差を縮めることすらできなかった。
ダンシングを織り交ぜながら最後まで踏み切ったポガチャルがフィニッシュに到達。直後に両手で作った握りこぶしで胸を2度叩き、ガッツポーズを作りながら勝利の雄叫びを上げた。
今大会一つ目の山岳ステージで仕掛け、勝利と共にマイヨジョーヌを奪還したポガチャル。「マイヨジョーヌを取り戻すことが今日の大きなモチベーションになっていた。その願いが叶えることができてスーパーハッピーだよ。でもまだ4日目だし、今日手に入れた(ヴィンゲゴーに対して)50秒という総合のタイム差を保ったまま第1週目を終えたい」と、ツール通算12勝目を飾ったポガチャルは喜んだ。
追走集団の先頭を獲ったエヴェネプールが区間2位(35秒遅れ)でフィニッシュ。ボーナスタイムを消すため踏み込んだアユソが3位、ログリッチが4位、更にそこから2秒遅れ(トップから37秒遅れ)でヴィンゲゴーが5位で今大会最初の山岳バトルを終えた。
総合ではポガチャルが2位エヴェネプールとの差を45秒まで拡げ、レース後「このステージで2分差以上をつけられると思っていたので、50秒差は良い結果だ」と語ったヴィンゲゴーは総合3位(50秒遅れ)となっている。
7月2日(火)第4ステージ
ピネローロ〜ヴァロワール 139.6km(山岳)
前日の激しいスプリントバトルから一転、ツール・ド・フランスの第4ステージに早くも険しい山岳ステージが用意された。イタリアのピネローロを出発した選手たちは西に進路を取り、登坂距離が39.9kmと長い2級山岳を越えてフランスに入国。直後に2つ目の2級山岳をクリアして、標高2,642mの超級山岳ガリビエに臨む。
今回登るガリビエ峠は2022年大会で使用したテレグラフ経由ではなく、平均5.1%と勾配が比較的緩やかな方。しかし登坂距離23kmの道のりは決して易しくなく、総合を争う選手たちはアタックの機会をうかがうよりも”集団から遅れてタイムを失わない”ことが最重要事項となる。139.6kmレースのフィニッシュ地点は頂上から18.9km下った地点だ。
出発地点のピネローロに集った選手たちの先頭には、エリトリアにツール初勝利をもたらしたビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)とエクアドル人初のマイヨジョーヌ着用者となったリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)が並ぶ。現地時間午後1時15分にスタートが切られると、直後から逃げを目指した激しいアタックが勃発。18.9km地点に中間スプリントポイントが設定されたことでマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を狙うマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)なども積極的に抜け出しを図った。
選手が飛び出しては集団が捕まえるという慌ただしい展開のまま進み、中間スプリントではギルマイを退けたピーダスンが先頭通過。やがて17名という大所帯の逃げ集団が形成され、その中には繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)やロード世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)などが入った。
また総合争いから脱落したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)やスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)など強力クライマーも入ったため、メイン集団ではUAEチームエミレーツが積極的な牽引を見せる。登坂距離39.9kmの2級山岳をウィリアムズがトップ通過し、今年のラ・フレーシュ・ワロンヌ優勝者は続く2級山岳も先着。その後も逃げは順調にフィニッシュを目指したものの、プロトンを先導するニルス・ポリッツ(ドイツ、UAEチームエミレーツ)の強力牽引が逃げ切りのチャンスを奪った。
今年ボーラ・ハンスグローエからUAEに加入したポリッツはリーダーチームであるEFの力も借りながら、逃げに対し3分以上のタイム差を許さない。そして2分48秒のリードで超級山岳ガリビエ峠(距離23km/平均5.1%)に入ると、逃げグループではゴデュの仕掛けからアタックの応酬が始まり、オイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター)が力強い走りで独走に持ち込んだ。
ガリビエ峠の登り口でようやくポリッツが仕事を終え、先頭交代したティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツ)が更に一段ペースを上げる。4名に絞られた逃げとの差は1分を割り込み、UAEの高速牽引にサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)やトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、そしてマイヨジョーヌ姿のカラパスまでもが遅れていった。
標高2,642mの頂上まで残り7km、フィニッシュまで26km地点でプロトンは最後まで粘ったラスカノを捉える。UAEはアダム・イェーツ(イギリス)とジョアン・アルメイダ(ポルトガル)、フアン・アユソ(スペイン)が先頭でローテーションを回す一方で、ヴィスマ・リースアバイクはマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)が遅れたことでヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が単独となってしまう。新型コロナウイルスからの回復が間に合わず、不出場となったセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)不在の影響が、今大会最初の山岳ステージで露呈した。
頂上まで3kmを切った時点で先頭集団は8名。ポガチャルがアユソとアルメイダを残すなかヴィンゲゴーやプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)は単騎となり、唯一レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)だけがミケル・ランダ(スペイン)を残した状態。トップ通過者に「アンリ・デグランジュ賞」とボーナスタイム(8、5、2秒)が付与されるガリビエ峠の頂上手前800m地点で、ポガチャルが仕掛けた。
満を持してアタックしたポガチャルにヴィンゲゴーが追従する一方で、エヴェネプールやログリッチなどは反応できない。更にシッティングのままハイケイデンスでスピードアップしたポガチャルはヴィンゲゴーを引き離し、頂上を通過。フィニッシュまで18.9kmの下りに単独で入った。
ダウンヒルでも飛ばしたポガチャルは、頂上で7秒だったヴィンゲゴーとの差を残り5km地点で30秒まで拡げる。その後ヴィンゲゴーにはログリッチとロドリゲス、アユソが追いつき、遅れてエヴェネプールも合流。先頭を行くポガチャルに抑え役のアユソを除く4名がローテーションを回したものの、ポガチャルとの差を縮めることすらできなかった。
ダンシングを織り交ぜながら最後まで踏み切ったポガチャルがフィニッシュに到達。直後に両手で作った握りこぶしで胸を2度叩き、ガッツポーズを作りながら勝利の雄叫びを上げた。
今大会一つ目の山岳ステージで仕掛け、勝利と共にマイヨジョーヌを奪還したポガチャル。「マイヨジョーヌを取り戻すことが今日の大きなモチベーションになっていた。その願いが叶えることができてスーパーハッピーだよ。でもまだ4日目だし、今日手に入れた(ヴィンゲゴーに対して)50秒という総合のタイム差を保ったまま第1週目を終えたい」と、ツール通算12勝目を飾ったポガチャルは喜んだ。
追走集団の先頭を獲ったエヴェネプールが区間2位(35秒遅れ)でフィニッシュ。ボーナスタイムを消すため踏み込んだアユソが3位、ログリッチが4位、更にそこから2秒遅れ(トップから37秒遅れ)でヴィンゲゴーが5位で今大会最初の山岳バトルを終えた。
総合ではポガチャルが2位エヴェネプールとの差を45秒まで拡げ、レース後「このステージで2分差以上をつけられると思っていたので、50秒差は良い結果だ」と語ったヴィンゲゴーは総合3位(50秒遅れ)となっている。
ツール・ド・フランス2024第4ステージ
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 3:46:38 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:35 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:37 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +0:53 |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +2:41 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
11位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +2:42 |
12位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
13位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
14位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | |
15位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 19:06:38 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:45 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:50 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:10 |
5位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:14 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +1:16 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +1:32 |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +3:20 |
10位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +3:21 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 87pts |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 83pts |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 79pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 24pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 20pts |
3位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) | 16pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 19:07:23 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +0:25 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +0:31 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 57:22:58 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +4:54 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +5:02 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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