東京都内で6月27日、MTBでパリオリンピック出場を決めた川口うららの記者会見が行われた。東京は補欠、3年後のパリで五輪初出場を射止めた川口が、これまで、そしてパリでの目標を口にした。



パリオリンピック出場を掴んだ川口うらら(TEAM TATSUNO) photo:So Isobe

JCF(日本自転車競技連盟)が川口うららのパリオリンピック代表入りを発表したのは6月13日。JCFのハイパフォーマンスディレクターを務める三瓶将廣氏によれば、国枠を取れない日本チームは昨年10月のアジア選手権で大陸枠獲得を狙ったものの中国勢に惨敗。しかし同年8月にスコットランド・グラスゴーで開催された世界選手権において、日本は女子U23カテゴリーランキング2位に入ったことで結果的に出場枠1を獲得。5月28日付のUCIランキングで国内最上位だった川口が代表候補に決定したという。

「出場が決まって、信じられない気持ちと嬉しさ、そしてオリンピックまで時間が無い焦りと不安。色々な感情が湧き出てきました」と言う川口。「高校2年生の時に初めて世界選手権に出て『世界で活躍したい、オリンピックに出たい』という思いが湧きました。そこから7年の間、あまり進まないことも、休養したこともありました。それでも最初の思いを諦めずに続けてきて、大舞台への切符を獲得することができました。時間は掛かったけれど、支え続けてくれた家族や応援してくれた方々にやっと恩返しができて、とても嬉しいです」。

「家族や応援してくれる人のサポートがあったから、辛い時期を乗り越えることができた」 photo:So Isobe

川口は2000年12月5日生まれ。小学校時代に友人に誘われたことでMTBに乗り始め、自宅近くの菖蒲谷森林公園コースで乗り込むようになった。中学から高校まではバスケットボールに取り組んでいたが、高校時代に自転車競技にも出場したところ才能を開花させ、そのまま世界選手権までステップアップした。しかしこの時、上り調子に結果を出したことで「強くなること」に囚われ、立て続けの海外遠征で無理が祟り、結果的に慢性的な睡眠障害に苦しめられたという。

「睡眠障害と言っても寝れないものではなくて、ずっと眠い。周囲の理解が得られにくい症状だったので辛かったですね。でも家族のサポートもあり、2022年の9月頃から半年ほど休養を取りました。そこで楽しく走ることを思い出すことができました」と川口は言う。

三瓶将廣氏(JCFハイパフォーマンスディレクター)と、小笠原崇裕氏(JCFマウンテンバイクコーチ)と共に photo:So Isobe

2024年のアジア選手権では5位 photo:Hisanori Ueda
都内で開催された記者会見。多くのメディアが詰めかけた photo:So Isobe



アジア選手権で大陸枠を逃したこともあり、2028年ロサンゼルスオリンピックに向けて気持ちを切り替える中、本人にとっては唐突とも言える状態でパリ行きが決まった。「ロスを目指す上で、今年は経験値を上げることに集中しようと思っていたんです。タイやベトナム、オランダ、スペインと遠征して、経験と体力レベルを徐々に上げていく中での決定でしたし、正直に言うと、今はコンディションが上がりきっている状態ではありません。でも、私は集中してパフォーマンスを上げるのが得意。去年のアジア選手権も同じでしたし、強い気持ちで取り組めば完走は不可能じゃないと思います」。

川口は先週末に世界選手権出場(完走が条件)とオリンピックの予行演習も兼ねてスイスでのMTBワールドカップ第5戦に出場。試走時から刻一刻と目まぐるしく変わるコンディションに手を焼き、完走ならず57位。川口は記者会見中、何度も世界と日本の間にある選手レベル、そしてコース設定の差を強調した。

「突然決めた久々のW杯でした。本来であれば試走を繰り返しながらリズムを掴みますが、今回は走れば走るほどラインも変わるし、悩んでしまって自分の技量を出し切ることができませんでした。日本のレースでは全く感じない難しさや雰囲気を改めて感じました。向こうのトップ選手は信じられないくらい強いし、世界と日本の差はあまりにも大きい。向こうのレースは本当に厳しい」。

「一つでも上の順位を狙って力を出し切りたい」 photo:So Isobe

川口が見据えるのは「一つでも上の順位を狙って力を出し切り、ロスオリンピックに繋げる」こと。そのために残された1ヶ月を集中してこなし、現地入りしてからも入念に試走を行い、全ての経験を自信に繋げてスタートに立つ。

「不安な状態でスタートに立たないこと。万全な状態にまで準備すれば、例えどんな結果だったとしても納得してロスに繋げられると思います。パリのオリンピックコースはW杯ほど難しく無いようですし、W杯を経験したからこそ堂々と立ち振る舞えるはず。日本人でもハイレベルな海外のコースをを思いっきり走れるということを見せたいと思います」。

text&photo:So Isobe

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