3連続山頂フィニッシュの初日となったクリテリウム・デュ・ドーフィネ第6ステージ。ウラソフの高速牽引を受けたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ)が超級山岳を制し、遅れたエヴェネプールからマイヨジョーヌを奪った。



マイヨジョーヌ姿で現れたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2024第6ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
レース終盤の下りで発生した集団落車の影響で中止となったクリテリウム・デュ・ドーフィネ第5ステージ。それから一夜明けた6月7日(金)、大会6日目がオートゥリーヴからル・コレ・ダルヴァールに向かう174.1kmコースで行われた。

ここから3日連続で登場する山頂フィニッシュの初日は、序盤に4級を越えて以降は平坦路。後半に足慣らし的な2級山岳(距離8.9km/平均5.4%)をクリアし、最後に過酷な超級山岳ル・コレ・ダルヴァール(距離11.2km/平均8.1%)が待ち受ける。

前日に棄権した6名に加え、この日は総合8位につけていたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)など8名が未出走を選んだ。特にバーレーン・ヴィクトリアスは3名、EFエデュケーション・イージーポストは2名がリタイアし、残った132名がマイヨジョーヌを着用するレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を先頭にスタートを切った。

ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)ら6名による逃げ集団 photo:A.S.O.

チームメイトに守られながらフィニッシュを目指すレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

この日の逃げグループはすぐに形成され、第2ステージを制したマグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ)を含む人数は6名。その中で最も総合タイムの良いロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJ)が2分23秒遅れだったものの、メイン集団を先導するスーダル・クイックステップは5分前後のリードを許す。そして残り68.8km地点の中間スプリントをコルトがトップ通過しながら距離を消化していった。

プロトンではスーダルの他にジュリオ・チッコーネ(イタリア)とテイオ・ゲイガンハート(イギリス)で勝負したいリドル・トレックも集団の牽引に参加する。そのためタイム差は徐々に縮まり、山岳決戦の開幕を告げるような2級山岳(距離8.9km/平均5.4%)はグレゴワールがトップ通過。しかしその下りでグレゴワールがメイソン・ホリーマン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)と共に落車した。

下りの右コーナーを曲がり切ることができず、コース脇の草むらに投げ出されたホリーマンはレース復帰に時間を要した一方で、グレゴワールは素早く先頭集団に復帰する。残り20km地点で逃げとプロトンとのタイム差は2分45秒。この日序盤から集団先頭でペースを作ったリドルのマッズ・ピーダスン(デンマーク)とライアン・ギボンズ(南アフリカ)が役割を終えると、最終山岳の手前でイネオス・グレナディアーズが前に出た。

リーダーチームであるスーダル・クイックステップが中心に逃げとのタイム差をコントロールした photo:A.S.O.

最終山岳で早々と遅れたテイオ・ゲイガンハート(イギリス、リドル・トレック) photo:A.S.O.

そしてル・コレ・ダルヴァール(距離11.2km/平均8.1%)という過酷な超級山岳に1分52秒遅れで入ったプロトンからは、総合9位のゲイガンハートが早々と遅れる。リドルはレース後「第5ステージでの落車の影響があった」と発表し、ゲイガンハートはフィニッシュしたものの翌日の不出場が明らかとなった。そのためアユソに加えまた一人総合の有力選手が去った集団は、徐々に逃げとの差を縮めていった。

最終山岳に入り、イネオス・グレナディアーズがプロトン先頭で高速牽引を開始する photo:A.S.O.

頂上まで5kmを切った地点でプロトンからはローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)がスルスルと抜け出す。その動きにはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ)のためにアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)が追い、イネオスに代わりミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)がペースを作るメイン集団からジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)がライバルの様子を伺うようにアタック。それにログリッチが反応する一方で、マイヨジョーヌを着るエヴェネプールは遅れをとった。

第4ステージの個人タイムトライアルを制しながらも「総合優勝を目指せる状態かどうかは分からない」と話していたエヴェネプール。逃げ集団を捉えてレース先頭に立ったデプルスとウラソフに、残り1.7km地点でログリッチとチッコーネが合流。そこにデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)とマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)らもジョインし、それをきっかけにデプルスのマークに徹していたウラソフがログリッチのためにペースを上げた。

アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)の高速牽引がログリッチとチッコーネ以外を振り落とす photo:CorVos

苦悶の表情を浮かべながらも強烈なペースを刻むウラソフは、ログリッチとチッコーネ以外を振り落とすことに成功。そしてフィニッシュ手前300mでウラソフは仕事を終え、先頭に出たログリッチがスプリントを開始する。それにチッコーネはついていくことができず、後ろを確認する余裕を見せたログリッチが勝利した。

超級山岳を制したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

42秒遅れでフィニッシュし、総合2位に後退した レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

「大会初日からチームとしてハードな走りができている。2日目は力を尽くしながらも勝てなかったので、今日の勝利がとても嬉しい。だが今日は山岳3連戦の初日でしかない。この勝利によって明日以降はボーナスみたいなものだよ」と、ボーラに移籍後2勝目を飾ったログリッチは喜んだ。

2位には3秒遅れでチッコーネが入り、エヴェネプールは42秒遅れでフィニッシュしたため首位陥落。そのためログリッチがマイヨジョーヌに袖を通した。

翌日も超級山岳サモエンヌ1600(距離10km/平均9.3%)を駆け上がる山岳ステージ。ログリッチとチッコーネの戦いや、エヴェネプールの巻き返しに注目が集まる。

マイヨジョーヌに袖を通したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2024第6ステージ結果
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ) 4:19:59
2位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +0:03
3位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:11
4位 デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +0:13
5位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:17
6位 ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ) +0:22
7位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
8位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:42
9位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:50
10位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:53
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ) 16:47:44
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:19
3位 マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:58
4位 デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +1:01
5位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +1:32
6位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +1:40
7位 ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ) +1:53
8位 オイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター) +2:08
9位 カラム・スコットソン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +2:15
10位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +2:31
その他の特別賞
ポイント賞 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ボーラ・ハンスグローエ)
山岳賞 マティス・ルベール(フランス、アルケアB&Bホテルズ)
ヤングライダー賞 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 ボーラ・ハンスグローエ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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