2024/05/14(火) - 12:33
国内レースの最高峰に位置付けられるJプロツアーの東日本と西日本ロードクラシックに集った各チームのバイクを連載形式で紹介していく。第2弾はキナンレーシングチーム、群馬グリフィン、愛三工業レーシングチーム、そしてレバンテフジ静岡の4チームを紹介します。
キナンレーシングチーム/コルナゴ V4Rs
ツアー・オブ・ターキーに出場するなど、シーズン序盤からの積極的な海外遠征でレベルアップを目論むキナンレーシングチーム。写真のゼッケン12は元全日本王者である畑中勇介のコルナゴV4Rsだ。
「かなりレース用に特化したバイクです。何をしても硬くて速い」と本人が言うV4Rsには、シマノのDURA-ACEにフルクラムのSpeed 42ホイール、IRCのタイヤ、デダのVINCIステムとSUPERZERO RSハンドル、フィジークのARIONEと、各チームサプライヤーのパーツをアッセンブル。畑中本人も「遠征が多いからこそ、実績のあるパーツで組むのが一番ですね」と言う。
「最新バイクですが、昔から慣れ親しんだセッティングを少しずつ現代版にアップデートしたバイク」と言う、最たる部分はハンドル周りだろう。まっすぐセットしたSTIレバーに、プロトンのトレンドである芯-芯380mm(フルクラムの外-外表記では400mm)のハンドル。「今年はブラケットの角度規制が始まりましたよね。僕は古い人間だし(笑)、レバーを内側に倒したときの肩の入り込みが好きではありませんでしたが、それでもやっぱり走れば速いので悩んでいたんです。でも規制のおかげでレバーを真っ直ぐに戻すふんぎりがついて、その代わりにハンドル幅を1サイズ狭めました」とのこと。
チームに対してフルクラムのホイールはSPEED 42とSPEED 57の2種類が供給されているが、低いリムハイトを好む畑中は基本的に42mm一択だと言う。
「全日本選手権を獲ったときもシマノのC24でしたし、"そろそろカーボンホイールを使ってくれませんか"とシマノの方に言われたくらいです(笑)。新型のフルクラムは登って軽いし、かなり横風に強いんです。モデルチェンジしてからは"今日は風が強いから42にしよう"と議論することもほぼ無くなりましたね」と評価する。タイヤは撮影時こそチューブレスのFORMULA PROだったが、好みでよく選ぶのはクリンチャーのASPITE PRO。空気圧は5.2〜5.5で、後輪をやや高圧にしているという。
群馬グリフィンレーシングチーム/ウィアウィス WAWS-PRO XP Disc
ヒルクライム出身の理論派スピードマン。2023年の全日本タイムトライアルチャンピオンであり、社会人レーサーであり、持ち前のスピードを武器に東日本ロードクラシックDAY1で独走勝利した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)のバイクを紹介する。ポジションはもちろんのこと、細かなパーツ選び、セッティングに至るまでエアロに人並みならぬ情熱を燃やす金子のこだわりが注がれた注目の一台だ。
駆るのはサイクルショップタキザワが輸入代理店を務める韓国ブランド、ウィアウィスのエアロモデルであるWAWS-PRO XP Disc。「空力も良いですし、振動吸収性能が良いので荒れた下りでもスピードが伸びるんですよね。そろそろ新型が出るとのことで乗り換えるつもりなんです。楽しみですね」と言う。上体を伏せて走れるように、サドルハイトはヒルクライムに使うバイクより1.5cmも低く設定しているそうだ。
クランクは軽さ優先で中国ブランドELILEE(165mm)を使い、パワーメーターはXCADAYとアシオマのダブル体制(常用はアシオマだそう)。ローターの楕円チェーンリング、QRINGS(54/39T)を使う理由は「インターバルを繰り返すほど有利になるから」。ライトバイシクルのAR465Discリムを使った手組みホイールは「奇人のビルダー」に組んでもらったもので、柔らかいフレームに組み合わせるため、スポーク結線などを行なって硬い乗り味に仕上げているという。
今年から導入した新機構は、ハンドルドロップに仕込んだDI2のシフティングスイッチ(スプリンタースイッチ)。レース中に下ハンドルを握ることが多いためシフト操作が楽になったとのこと。
金子が狙うのは、昨年落車とメカトラブルで連覇を逃した個人タイムトライアルの全日本チャンピオン。頭脳派社会人レーサーのタイトル奪還なるかに注目したい。
愛三工業レーシングチーム/ディアー MA
先日開催されたツール・ド・熊野の最終ステージでスプリント勝利を挙げるなど、国内屈指のスプリンターとして名を馳せる岡本隼(愛三工業レーシングチーム)のバイクを紹介する。バイクサプライヤーは昨年から引き続き「DARE(ディアー)」で、モデルは軽量オールラウンダーの「MA」。多くのチームメンバーはコーポレートカラーに塗られた特別エディションに乗るが、岡本はブラックカラーを使用中だ。
シマノのDI2コンポーネントにファストフォワードのRYOTホイール(取材時はオールラウンドなRYOT 44が多数)、コンチネンタルのGRANDPRIX 5000S TRタイヤ、セマのボトムブラケットベアリングなど主要パーツブランドは昨年同様だが、新しく使用率急上昇中のトライピークがチームサプライヤーに名を連ね、多くのチームメンバーがリアディレイラーにビッグプーリーをセットしていた(岡本はノーマルプーリー)。
プロトン随一の低いポジションでスプリントする岡本だけに、ハンドル周りも-17°のPRO VIBEステムとほぼ見かけなくなったシャローハンドル(デダ ZERO100 SHALLOW)を組み合わせた遠く低いセッティングだ。左右のブレーキレバーの上側にはチューブを切ったものが巻かれていたが、本人曰く指と接触して痛みが出ないよう工夫したという。
また、ブレーキローターは波型形状が目立つガルファーで、コンピューターはIGPSPORTS。バーテープはエクストラム。ボトルケージはトピーク。
レバンテフジ静岡/メリダ SCULTURA・REACTO
日本人選手に加え、モンゴルやカナダ、デンマーク、エストニアと国際色豊かな布陣で2024シーズンを戦うのがレバンテフジ静岡。チームバイクは継続してメリダで、軽量モデルのSCULTURAとエアロモデルのREACTOを選手の好みによって乗り分けている。
写真のバイクは、モビスターのバーチャルサイクリングチームに所属していた経験を持つダニエル君こと(そのままである!)ダニエル・グルド(デンマーク)のSCULTURA。昨年は小さなフレームに150mmステムを組み合わせていたが、今年はMサイズのフレームを得て少しステム長も落ち着いた模様。
シマノのDI2コンポーネント(ULTEGRAをベースにフロントディレイラーは105)を使い、リムブレーキ用のSTIレバーでグロータックのEQUAL機械式ディスクブレーキキャリパーを動かす。マージーンのスパイダー型パワーメーターと同チェーンリングを使うなど駆動系は賑やかな組み合わせだ。足回りはYOELEO(ヨーレオ)ホイールとパナレーサーのAGILESTタイヤ。チューブラータイヤを装着したバイクも確認できた。
ハンドル周りなどには興津螺旋のチタンボルトを投入しており、サドルはセラSMP。ボトルケージはアランデルのMANDIBLEだが、前チームである東京ヴェントスの立ち上げ初年度からトラブルなしで使い続けているものだという。
text:So Isobe
キナンレーシングチーム/コルナゴ V4Rs
ツアー・オブ・ターキーに出場するなど、シーズン序盤からの積極的な海外遠征でレベルアップを目論むキナンレーシングチーム。写真のゼッケン12は元全日本王者である畑中勇介のコルナゴV4Rsだ。
「かなりレース用に特化したバイクです。何をしても硬くて速い」と本人が言うV4Rsには、シマノのDURA-ACEにフルクラムのSpeed 42ホイール、IRCのタイヤ、デダのVINCIステムとSUPERZERO RSハンドル、フィジークのARIONEと、各チームサプライヤーのパーツをアッセンブル。畑中本人も「遠征が多いからこそ、実績のあるパーツで組むのが一番ですね」と言う。
「最新バイクですが、昔から慣れ親しんだセッティングを少しずつ現代版にアップデートしたバイク」と言う、最たる部分はハンドル周りだろう。まっすぐセットしたSTIレバーに、プロトンのトレンドである芯-芯380mm(フルクラムの外-外表記では400mm)のハンドル。「今年はブラケットの角度規制が始まりましたよね。僕は古い人間だし(笑)、レバーを内側に倒したときの肩の入り込みが好きではありませんでしたが、それでもやっぱり走れば速いので悩んでいたんです。でも規制のおかげでレバーを真っ直ぐに戻すふんぎりがついて、その代わりにハンドル幅を1サイズ狭めました」とのこと。
チームに対してフルクラムのホイールはSPEED 42とSPEED 57の2種類が供給されているが、低いリムハイトを好む畑中は基本的に42mm一択だと言う。
「全日本選手権を獲ったときもシマノのC24でしたし、"そろそろカーボンホイールを使ってくれませんか"とシマノの方に言われたくらいです(笑)。新型のフルクラムは登って軽いし、かなり横風に強いんです。モデルチェンジしてからは"今日は風が強いから42にしよう"と議論することもほぼ無くなりましたね」と評価する。タイヤは撮影時こそチューブレスのFORMULA PROだったが、好みでよく選ぶのはクリンチャーのASPITE PRO。空気圧は5.2〜5.5で、後輪をやや高圧にしているという。
群馬グリフィンレーシングチーム/ウィアウィス WAWS-PRO XP Disc
ヒルクライム出身の理論派スピードマン。2023年の全日本タイムトライアルチャンピオンであり、社会人レーサーであり、持ち前のスピードを武器に東日本ロードクラシックDAY1で独走勝利した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)のバイクを紹介する。ポジションはもちろんのこと、細かなパーツ選び、セッティングに至るまでエアロに人並みならぬ情熱を燃やす金子のこだわりが注がれた注目の一台だ。
駆るのはサイクルショップタキザワが輸入代理店を務める韓国ブランド、ウィアウィスのエアロモデルであるWAWS-PRO XP Disc。「空力も良いですし、振動吸収性能が良いので荒れた下りでもスピードが伸びるんですよね。そろそろ新型が出るとのことで乗り換えるつもりなんです。楽しみですね」と言う。上体を伏せて走れるように、サドルハイトはヒルクライムに使うバイクより1.5cmも低く設定しているそうだ。
クランクは軽さ優先で中国ブランドELILEE(165mm)を使い、パワーメーターはXCADAYとアシオマのダブル体制(常用はアシオマだそう)。ローターの楕円チェーンリング、QRINGS(54/39T)を使う理由は「インターバルを繰り返すほど有利になるから」。ライトバイシクルのAR465Discリムを使った手組みホイールは「奇人のビルダー」に組んでもらったもので、柔らかいフレームに組み合わせるため、スポーク結線などを行なって硬い乗り味に仕上げているという。
今年から導入した新機構は、ハンドルドロップに仕込んだDI2のシフティングスイッチ(スプリンタースイッチ)。レース中に下ハンドルを握ることが多いためシフト操作が楽になったとのこと。
金子が狙うのは、昨年落車とメカトラブルで連覇を逃した個人タイムトライアルの全日本チャンピオン。頭脳派社会人レーサーのタイトル奪還なるかに注目したい。
愛三工業レーシングチーム/ディアー MA
先日開催されたツール・ド・熊野の最終ステージでスプリント勝利を挙げるなど、国内屈指のスプリンターとして名を馳せる岡本隼(愛三工業レーシングチーム)のバイクを紹介する。バイクサプライヤーは昨年から引き続き「DARE(ディアー)」で、モデルは軽量オールラウンダーの「MA」。多くのチームメンバーはコーポレートカラーに塗られた特別エディションに乗るが、岡本はブラックカラーを使用中だ。
シマノのDI2コンポーネントにファストフォワードのRYOTホイール(取材時はオールラウンドなRYOT 44が多数)、コンチネンタルのGRANDPRIX 5000S TRタイヤ、セマのボトムブラケットベアリングなど主要パーツブランドは昨年同様だが、新しく使用率急上昇中のトライピークがチームサプライヤーに名を連ね、多くのチームメンバーがリアディレイラーにビッグプーリーをセットしていた(岡本はノーマルプーリー)。
プロトン随一の低いポジションでスプリントする岡本だけに、ハンドル周りも-17°のPRO VIBEステムとほぼ見かけなくなったシャローハンドル(デダ ZERO100 SHALLOW)を組み合わせた遠く低いセッティングだ。左右のブレーキレバーの上側にはチューブを切ったものが巻かれていたが、本人曰く指と接触して痛みが出ないよう工夫したという。
また、ブレーキローターは波型形状が目立つガルファーで、コンピューターはIGPSPORTS。バーテープはエクストラム。ボトルケージはトピーク。
レバンテフジ静岡/メリダ SCULTURA・REACTO
日本人選手に加え、モンゴルやカナダ、デンマーク、エストニアと国際色豊かな布陣で2024シーズンを戦うのがレバンテフジ静岡。チームバイクは継続してメリダで、軽量モデルのSCULTURAとエアロモデルのREACTOを選手の好みによって乗り分けている。
写真のバイクは、モビスターのバーチャルサイクリングチームに所属していた経験を持つダニエル君こと(そのままである!)ダニエル・グルド(デンマーク)のSCULTURA。昨年は小さなフレームに150mmステムを組み合わせていたが、今年はMサイズのフレームを得て少しステム長も落ち着いた模様。
シマノのDI2コンポーネント(ULTEGRAをベースにフロントディレイラーは105)を使い、リムブレーキ用のSTIレバーでグロータックのEQUAL機械式ディスクブレーキキャリパーを動かす。マージーンのスパイダー型パワーメーターと同チェーンリングを使うなど駆動系は賑やかな組み合わせだ。足回りはYOELEO(ヨーレオ)ホイールとパナレーサーのAGILESTタイヤ。チューブラータイヤを装着したバイクも確認できた。
ハンドル周りなどには興津螺旋のチタンボルトを投入しており、サドルはセラSMP。ボトルケージはアランデルのMANDIBLEだが、前チームである東京ヴェントスの立ち上げ初年度からトラブルなしで使い続けているものだという。
text:So Isobe
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