2024/05/05(日) - 09:15
5月4日(土)、今年最初のグランツールであるジロ・デ・イタリアが開幕した。丘陵ステージで争われた初日はフィニッシュ手前の丘でタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がアタック。しかしジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が食らいつき、スプリントを制した。
第107回ジロ・デ・イタリアは、近年では珍しい2級山岳を含む丘陵ステージで幕を開ける。コースはイタリア北西部ピエモンテ州、トリノ郊外にあるヴェナリア・レアーレの宮殿をスタートする140kmで、時計回りに丘陵地帯を巡りながらトリノにフィニッシュする。
その途中には4級、3級、2級と3つのカテゴリー山岳が設定され、特に最後の2級コッレ・マッダレーナは登坂距離6.1km/平均勾配7.4%とスプリンターを退ける。そしてこのステージの勝負所と予想されたのは、2022年大会でサイモン・イェーツ(イギリス:本大会不出場)が仕掛けた残り4.3km地点から始まる最大勾配16%の丘(距離1.4km/平均9.8%)。そしてその先のフィニッシュ地点を先頭で駆け抜けた者に、初日の勝利とマリアローザが与えられる。
気温19度の晴天に恵まれたこの日、初出場のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や地元イタリアのロード王者シモーネ・ヴェラスコ(アスタナ・カザクスタン)を先頭に176名がスタート。レース主催者が旗を振った直後からアタックが勃発し、僅か10kmでリリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ)を含む6名の逃げ集団が形成された。
それを追うメイン集団はポガチャルでマリアローザを狙うUAEチームエミレーツがペースを作る。ジロ初日としては29年振りの登場となったカテゴリー山岳(4級)はフィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が先頭通過。そして昨年大会の最終ステージで区間3位に入ったフィオレッリは直後の中間スプリントもトップで通過し、プロトンは引き続き35歳のベテランであるヴェガールスターケ・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が牽引した。
続いて選手たちが足を踏み入れたのは75年前の1949年に、サッカークラブ「ACトリノ」の選手たちを乗せた航空機が墜落した「スペルガの悲劇」で知られるスペルガ。そして後続に2分15秒のリードでこの3級山岳を登る逃げから、カルメジャーヌとアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、リドル・トレック)が抜け出した。
ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続き、ジロでの区間優勝を狙うカルメジャーヌとゲブレイグザビエルは、プロトンとの差を2分半まで拡げる。そして残り35.3km地点に設定されたインテルジロをカルメジャーヌが通過。ちなみにインテルジロとは先頭3名までボーナスタイム(最大-3秒)とポイントが付与されるいわば中間スプリントで、ジャージはないものの敢闘賞や大逃げ賞と同じく表彰の対象となる。
インテルジロでは先頭を追う逃げの2名が3位、4位通過し、プロトンでは5位を争うスプリントが勃発する。ここではカーデン・グローブス(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)とダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)を退け、昨年のマリアチクラミーノ(ポイント賞)であるジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が4ポイントをゲット。そしてプロトンが2級山岳の手前の丘に入ると、UAEの高速牽引にヨーロッパ王者のクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)などスプリンターたちが遅れていった。
一度フィニッシュ地点を通過し、逃げの2名は2級コッレ・マッダレーナ(距離6.1km/平均7.4%)に突入する。それを1分20秒差で追うプロトンはUAEが高速牽引をスタート。先頭はミッケル・ビョーグ(デンマーク)からフェリックス・グロスシャートナー(オーストリア)、ラファウ・マイカ(ポーランド)と引き継がれ、このスピードに昨年大会で総合6位のテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)が遅れた。
またロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)やマリアビアンカ(ヤングライダー賞)候補の筆頭であるルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)も集団から遅れ、初日から有力勢が総合タイムを失うことに。それを尻目に先頭ではカルメジャーヌが2級山岳を先頭通過し、マリアアッズーラ(山岳賞)着用の権利を得た。
2級山岳を越え、40名程度に絞られたプロトンからは残り16km地点でマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の飛び出す。追従したミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らと共に7名の追走集団が形成し、残り10km地点でカルメジャーヌをキャッチ。そしてボーナスタイム付きの中間スプリントではカルーゾがトップ通過して-3秒を得た。
残り4.3km地点から始まる平均9.8%(最大16%)の登りに先頭で入ったのは、その手前で飛び出したニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)。そしてコンチから50秒、カルーゾ・グループから20秒遅れで登りに入ったプロトンで、ついにポガチャルが動いた。
矢のようなスピードで登るポガチャルにライバルたちが引き離され、唯一ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が食らいつく。ポガチャルはカルーゾたちをパスするとコンチを捕らえ、ハイスピードを保ったまま先頭で頂上を通過。しかし登りでナルバエスを千切ることができず、また下りでマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の合流を許した。
そして2024年ジロの初日は、3名のスプリント勝負に持ち込まれる。ポガチャルを先頭に最終ストレートに突入し、最後尾のシャフマンが先んじてスプリントを開始。それを確認したポガチャルも腰を上げたものの、シッティングのままタイミングを見計らい、一番最後にスプリントを開始したナルバエスが勝利した。
ポガチャルのアタックに追従し、三つ巴の戦いを制したエクアドル王者のナルバエス。「素晴らしい気持ちだよ。このステージが僕に適していることは1ヶ月前からわかっていた。だからこの日のために準備を進め、登りで世界最高の選手(ポガチャル)に食らいつくことができた。とても辛かったが、そのおかげで特別な勝利を手に入れることができた」と語ったナルバエス。表彰式で自身初となるマリアローザに袖を通し、笑顔でスプマンテを振りまいた。
区間2位には最後まで踏み続けたシャフマンが入り、「登りでナルバエスを振り切れなかった時点で、スプリント勝利は難しいことは分かっていた。彼は僕よりもスプリントが強いからね」とレース後に語ったポガチャルは3位だった。
単独追走したアレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)は6秒遅れ、またプロトンは10秒遅れでフィニッシュしている。
第107回ジロ・デ・イタリアは、近年では珍しい2級山岳を含む丘陵ステージで幕を開ける。コースはイタリア北西部ピエモンテ州、トリノ郊外にあるヴェナリア・レアーレの宮殿をスタートする140kmで、時計回りに丘陵地帯を巡りながらトリノにフィニッシュする。
その途中には4級、3級、2級と3つのカテゴリー山岳が設定され、特に最後の2級コッレ・マッダレーナは登坂距離6.1km/平均勾配7.4%とスプリンターを退ける。そしてこのステージの勝負所と予想されたのは、2022年大会でサイモン・イェーツ(イギリス:本大会不出場)が仕掛けた残り4.3km地点から始まる最大勾配16%の丘(距離1.4km/平均9.8%)。そしてその先のフィニッシュ地点を先頭で駆け抜けた者に、初日の勝利とマリアローザが与えられる。
気温19度の晴天に恵まれたこの日、初出場のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や地元イタリアのロード王者シモーネ・ヴェラスコ(アスタナ・カザクスタン)を先頭に176名がスタート。レース主催者が旗を振った直後からアタックが勃発し、僅か10kmでリリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ)を含む6名の逃げ集団が形成された。
それを追うメイン集団はポガチャルでマリアローザを狙うUAEチームエミレーツがペースを作る。ジロ初日としては29年振りの登場となったカテゴリー山岳(4級)はフィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)が先頭通過。そして昨年大会の最終ステージで区間3位に入ったフィオレッリは直後の中間スプリントもトップで通過し、プロトンは引き続き35歳のベテランであるヴェガールスターケ・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が牽引した。
続いて選手たちが足を踏み入れたのは75年前の1949年に、サッカークラブ「ACトリノ」の選手たちを乗せた航空機が墜落した「スペルガの悲劇」で知られるスペルガ。そして後続に2分15秒のリードでこの3級山岳を登る逃げから、カルメジャーヌとアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア、リドル・トレック)が抜け出した。
ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続き、ジロでの区間優勝を狙うカルメジャーヌとゲブレイグザビエルは、プロトンとの差を2分半まで拡げる。そして残り35.3km地点に設定されたインテルジロをカルメジャーヌが通過。ちなみにインテルジロとは先頭3名までボーナスタイム(最大-3秒)とポイントが付与されるいわば中間スプリントで、ジャージはないものの敢闘賞や大逃げ賞と同じく表彰の対象となる。
インテルジロでは先頭を追う逃げの2名が3位、4位通過し、プロトンでは5位を争うスプリントが勃発する。ここではカーデン・グローブス(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)とダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)を退け、昨年のマリアチクラミーノ(ポイント賞)であるジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が4ポイントをゲット。そしてプロトンが2級山岳の手前の丘に入ると、UAEの高速牽引にヨーロッパ王者のクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)などスプリンターたちが遅れていった。
一度フィニッシュ地点を通過し、逃げの2名は2級コッレ・マッダレーナ(距離6.1km/平均7.4%)に突入する。それを1分20秒差で追うプロトンはUAEが高速牽引をスタート。先頭はミッケル・ビョーグ(デンマーク)からフェリックス・グロスシャートナー(オーストリア)、ラファウ・マイカ(ポーランド)と引き継がれ、このスピードに昨年大会で総合6位のテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)が遅れた。
またロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)やマリアビアンカ(ヤングライダー賞)候補の筆頭であるルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)も集団から遅れ、初日から有力勢が総合タイムを失うことに。それを尻目に先頭ではカルメジャーヌが2級山岳を先頭通過し、マリアアッズーラ(山岳賞)着用の権利を得た。
2級山岳を越え、40名程度に絞られたプロトンからは残り16km地点でマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の飛び出す。追従したミッケルフレーリク・ホノレ(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らと共に7名の追走集団が形成し、残り10km地点でカルメジャーヌをキャッチ。そしてボーナスタイム付きの中間スプリントではカルーゾがトップ通過して-3秒を得た。
残り4.3km地点から始まる平均9.8%(最大16%)の登りに先頭で入ったのは、その手前で飛び出したニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)。そしてコンチから50秒、カルーゾ・グループから20秒遅れで登りに入ったプロトンで、ついにポガチャルが動いた。
矢のようなスピードで登るポガチャルにライバルたちが引き離され、唯一ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が食らいつく。ポガチャルはカルーゾたちをパスするとコンチを捕らえ、ハイスピードを保ったまま先頭で頂上を通過。しかし登りでナルバエスを千切ることができず、また下りでマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)の合流を許した。
そして2024年ジロの初日は、3名のスプリント勝負に持ち込まれる。ポガチャルを先頭に最終ストレートに突入し、最後尾のシャフマンが先んじてスプリントを開始。それを確認したポガチャルも腰を上げたものの、シッティングのままタイミングを見計らい、一番最後にスプリントを開始したナルバエスが勝利した。
ポガチャルのアタックに追従し、三つ巴の戦いを制したエクアドル王者のナルバエス。「素晴らしい気持ちだよ。このステージが僕に適していることは1ヶ月前からわかっていた。だからこの日のために準備を進め、登りで世界最高の選手(ポガチャル)に食らいつくことができた。とても辛かったが、そのおかげで特別な勝利を手に入れることができた」と語ったナルバエス。表彰式で自身初となるマリアローザに袖を通し、笑顔でスプマンテを振りまいた。
区間2位には最後まで踏み続けたシャフマンが入り、「登りでナルバエスを振り切れなかった時点で、スプリント勝利は難しいことは分かっていた。彼は僕よりもスプリントが強いからね」とレース後に語ったポガチャルは3位だった。
単独追走したアレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)は6秒遅れ、またプロトンは10秒遅れでフィニッシュしている。
ジロ・デ・イタリア2024第1ステージ結果
1位 | ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 3:14:23 |
2位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | アレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +0:06 |
5位 | ニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:10 |
6位 | クインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
7位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
8位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ヴィスマ・リースアバイク) | |
10位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 3:14:13 |
2位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:03 |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +0:06 |
4位 | アレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +0:16 |
5位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:17 |
6位 | ニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:18 |
7位 | クインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:20 |
8位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
9位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
10位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ヴィスマ・リースアバイク) |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 25pts |
2位 | リリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ) | 20pts |
3位 | フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) | 18pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | リリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ) | 20pts |
2位 | アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、リドル・トレック) | 10pts |
3位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) | 8pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | 3:14:29 |
2位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:29 |
3位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:48 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 9:43:29 |
2位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | +0:16 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +0:20 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
Amazon.co.jp