ドイツ最古のワンデーレース「エシュボルン・フランクフルト」が今年も5月1日に開催。昨年から難易度の上がったレースはパンチャーによるスプリントに持ち込まれ、ロット・デスティニーの若きエースであるマキシム・ファンヒルス(ベルギー)が勝利した。



新城幸也が3年連続メンバーに選ばれたバーレーン・ヴィクトリアス photo:CorVos

ジロ・デ・イタリアの開幕を3日後に控えた5月1日(水)、ドイツ最古のワンデーレースであるエシュボルン・フランクフルト(UCIワールドツアー)が開催された。1962年に初開催され、今年で61回目を迎えた大会はこれまで「スプリンターの祭典」として知られてきた。しかし昨年よりコース中盤の登りが増えたため、今年もパンチャーによるスプリントバトルが予想された。

コースは2021年に引退したトニー・マルティンの故郷エシュボルンからフランクフルトを目指す201.5km。設定された登りは昨年と同じくフェルトベルクを2度(登るルートはそれぞれ異なる)、そしてマンモルスハイン(距離2.3km/平均勾配8.3%)を3度登坂するレイアウト。そして最後のマンモルスハイン頂上から約37kmは、下りと平坦路がフィニッシュまで続いていく。

14のワールドチームが出場した本大会には、昨年覇者のセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク)やジロ前の調整としてカレブ・ユアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が出場。日本勢では怪我からの回復途上にある留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)は出場できなかったものの、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が3年連続で出走した。

2011年覇者ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が乗った逃げは3名 photo:CorVos

プロトンはロット・デスティニーやUAE、またQ36.5プロサイクリングも牽引に手を貸した photo:CorVos

序盤から逃げを打ったのは2011年に優勝経験のあるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)ら3名。それを追うメイン集団はパンチャー系の選手を揃えるUAEチームエミレーツやロット・デスティニーが中心に牽引する。そして登りでハイペースに持ち込んだため、思惑通りユアンやアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)、サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル)などスプリンターが遅れていった。

逃げの3名は残り90kmでプロトンに捕まり、ひと塊となったプロトンからベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)やエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)らがアタックする。それらは決め手に欠いたものの、そのスピードアップにより約35名まで絞られた集団がマンモルスハイン(距離2.3km/平均勾配8.3%)に突入。すると頂上手前でヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツ)が飛び出し、先頭に立った。

最終山岳で単独先頭に立ったヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツ) photo:UAE Team Emirates

ハーゲンスバーマン・アクセオンからトレーニー(研修生)として2023年にUAEへ加入し、今年プロ1年目を迎えたクリステン。今年3月のミラノ〜トリノで2位に入り、4月にプロ初勝利を飾った19歳は15秒差前後で逃げ続ける。しかしフランクフルトの市街地に入った残り2.3kmで吸収され、勝負は2年連続で集団スプリントに持ち込まれた。

最終ストレートに先頭で入ったのは、ネオプロ(プロ1年目)の20歳ルーカス・ネルーカー(イギリス)で勝負したいEFエデュケーション・イージーポスト。最終リードアウトを務めたニールソン・パウレス(アメリカ)が役割を終え、ネルーカーがライバルたちより一足早くスプリントを開始する。

スプリントからワールドツアー初勝利を飾ったマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos

しかしその右側からアレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)、左からマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)がネルーカーを追い抜き、更に後方からライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)も迫る。そして白熱のスプリントバトルは、トップスピードで上回るファンヒルスに軍配が上がった。

エシュボルン・フランクフルト2024表彰台:2位アランブル、1位ファンヒルス、3位シーアン photo:CorVos

「今日は素晴らしい結果だった春(のクラシック)の最終戦。それをワールドツアーでの勝利という結果で締めくくることができ、まるで夢のようだよ。絶好調というわけではなかったが、チームメイトが登りでスプリンターを振り落としてくれた。そのおかげで自信が生まれ、スプリントで勝つことができた」と、ワールドツアー初勝利を飾ったファンヒルスは喜ぶ。

「今シーズンはここまで完璧とも言える成績を残せている。とても高いレベルでのレースを楽しんでいるよ」と語った24歳のファンヒルスは今後、ツール・ド・スイスから2年連続となるツール・ド・フランスに出場予定だ。

2位はアランブル、3位には昨年ファンヒルスと共にジャパンカップに出場したシーアンが入っている。

エシュボルン・フランクフルト2024結果
1位 マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) 4:46:48
2位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター)
3位 ライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)
4位 ルーカス・ネルーカー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)
5位 ロジャー・アドリア(スペイン、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 コーベ・ホーセンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
7位 ケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
8位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク)
9位 マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)
10位 マルクス・フールゴー(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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