2024/04/23(火) - 08:30
MTBワールドカップ第2戦は劇的な締めくくりに。勝利まで目前に迫っていたヴィクトール・コレツキー(フランス)はチェーン落ちでリードを失い、シモン・アンドレアッセン(デンマーク)がスプリントで勝利。北林力は95位だった。
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新規開催地、アラチャを舞台にしたW杯第2戦 photo:UCI
ブラジル、マイリポランでの開幕戦から1週間。MTBレースの最高峰シリーズ、UCIマウンテンバイクワールドカップ(XCO)が同じブラジルの街アラチャに移動して第2戦を迎えた。
新規開催地アラチャのコース(1周3.5km)は、登りの難易度はもちろんのこと、テクニックに秀でるライダー有利の下り区間が特徴。土曜日のXCC(ショートトラック)、日曜日のXCO(クロスカントリー)ともに好天に恵まれ、赤土煙るドライコンディションで各カテゴリー激しいレースが繰り広げられた。
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XCC男子レースでヴィクトール・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング)が圧勝 photo:UCI 
XCC女子レースを制したヘイリー・バッテン(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) photo:UCI
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テクニカルなダウンヒル区間を特徴とする3.5kmコース photo:UCI
パワー勝負のXCCを制したのは男女ともにスペシャライズドファクトリーレーシングだった。女子レースはヘイリー・バッテン(アメリカ)が制し、男子レースでは最終周回の登坂で開幕戦XCOワンツーを決めたクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)とヴィクトール・コレツキー(フランス)が抜け出し、そのままコレツキーを勝たせるという圧倒的チームプレーを決めている。
女子エリート:最終周回を逃げ切りバッテン勝利 XCCとダブル優勝
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レース序盤をリードしたアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) photo:UCI
女子エリートレースで序盤リード奪ったのはアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)だった。ここにXCC勝者バッテンと開幕戦勝者のジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、チーム31アイビスコンチネンタル)、全米女王サヴィリア・ブランク(デカトロン・フォードレーシングチーム)が加わって先頭グループを形成する。リスヴェッズが途中抜け出す場面もあったものの、登坂区間のミスでリードを帳消しにしてしまう。
ひりつく心理戦の中でも4人の間に差は生まれず、最終周回に入ったその瞬間、バッテンが最後尾から速度差をつけてアタックした。唯一食い下がったリスヴェッズも長い登坂区間で引き離され、独走に持ち込んだバッテンがそのままフィニッシュラインへと到達。17秒リードでリスヴェッズの登坂アタックに敗れた先週の借りを返している。
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最終周回、リスヴェッズとの一騎打ちを展開するヘイリー・バッテン(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) photo:UCI
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XCC・XCO連続勝利を挙げたヘイリー・バッテン(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) photo:UCI
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UCI MTBワールドカップ2024 第2戦 XCO女子エリート表彰台 photo:UCI
「オフシーズンに厳しいトレーニングを重ねてきたけれど、こんなにも戦術的なレースでうまくまとめきれるかどうか不安だった。五輪を目指す私と(同じアメリカの)サヴィリアにとっては重要な年だから、良い日になった。ラスト2周目はレースを読むのが難しくて、リードしている時に"このままじゃ先週と同じようにやられる!"と思い、少し落ち着いて様子を見ることにした。彼女の強力なアタックに何とか耐えきったのでチャンスが回ってきた」とレース直後のインタビューに応えている。
男子エリート:アンドレアッセンが復活勝利 コレツキーはチェーン落ちに泣く
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男子エリートレースがスタート。ルカ・シュワルツバウアー(ドイツ、キャニオン・コレクティブ)がダッシュを決める photo:UCI
北林力(SUNN Factory Racing)も参戦した男子エリートレースは、スタートダッシュの最中にランキング首位のブレヴィンスが転倒する波乱の幕開けに。ハンドルが曲がり、復帰に手間取ったブレヴィンスは103番手から追い上げを試みたものの、この日は最終的に22位でレースを終えることとなった。
優勝候補の一角が消えた先頭グループに加わったのは、コレツキーや、南米の期待を背負う若手マルティン・ビダウレ(チリ、スペシャライズドファクトリーレーシング)、キャノンデールファクトリーレーシングのシモン・アンドレアッセン(デンマーク)とアラン・ハースリー(南アフリカ)といった面々。不遇の開幕戦を過ごしたニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)も集団内で存在を光らせた。
レース時間が1時間に達そうかというタイミングで抜け出したのは「とても調子が良かったのでアタックしてみた」と振り返るコレツキーだった。逃げ切り勝利を匂わせる大きなリードを築いて最終周回に入ったものの、必死に追走する2番手グループとの距離がじわりと縮まり、さらに上り区間でチェーン落ちに見舞われる。このアクシデントによって積み上げていたリードは遂にゼロになり、レースは一気に沸き立った。
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最終周回にコレツキーを捉えたシモン・アンドレアッセン(デンマーク、キャノンデールファクトリーレーシング) photo:UCI
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コレツキーを下したシモン・アンドレアッセン(デンマーク、キャノンデールファクトリーレーシング) photo:UCI
優勝へのチャンスを掴んだのはフィリッポ・コロンボ(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)、アンドレアッセン、ハースリー、ジョーダン・サルー(フランス、チームBMC)、そしてチェーン落ちから復帰し、猛然とチャージしたコレツキー。ジャンプを多用する下り区間で先頭を奪ったアンドレアッセンにコレツキーが並びかけたものの「メカトラから追いつくので精いっぱいだった」と、最終スプリントまでもつれ込むには至らない。激しいドラマの末、先頭でもがき抜いたアンドレアッセンが自身2度目のW杯優勝を掴み取った。
「正直言うと、まだ全く現実のものだと認識してないよ。前に勝ってから長い時間が過ぎた中での勝利だ。時間をかけて喜びを噛み締めたいと思う」と言うアンドレアッセン。2位はトラブルに泣いたコレツキー、3位はハースリー。「まだ完調とは言えないけれど良い兆し」と振り返るシューターは6位と先週から大きく順位を上げている。
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UCI MTBワールドカップ2024 第2戦 XCO男子エリート表彰台 photo:UCI
優勝したアンドレアッセンはジュニア時代にはMTB世界選手権を2連覇&シクロクロス世界王者に輝き、2016年のリオ五輪では最年少五輪デビューするなど、かつて類い稀なテクニックで頭角を現した26歳。エリート昇格後の2020年にはW杯初勝利を挙げたものの、その後は健康上の理由で低迷。2022年には母国開催のマラソン世界選手権で銅メダルを獲るなど、復調の兆しを見せていた中での嬉しい復活勝利となった。
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ブラジル、マイリポランでの開幕戦から1週間。MTBレースの最高峰シリーズ、UCIマウンテンバイクワールドカップ(XCO)が同じブラジルの街アラチャに移動して第2戦を迎えた。
新規開催地アラチャのコース(1周3.5km)は、登りの難易度はもちろんのこと、テクニックに秀でるライダー有利の下り区間が特徴。土曜日のXCC(ショートトラック)、日曜日のXCO(クロスカントリー)ともに好天に恵まれ、赤土煙るドライコンディションで各カテゴリー激しいレースが繰り広げられた。
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パワー勝負のXCCを制したのは男女ともにスペシャライズドファクトリーレーシングだった。女子レースはヘイリー・バッテン(アメリカ)が制し、男子レースでは最終周回の登坂で開幕戦XCOワンツーを決めたクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)とヴィクトール・コレツキー(フランス)が抜け出し、そのままコレツキーを勝たせるという圧倒的チームプレーを決めている。
女子エリート:最終周回を逃げ切りバッテン勝利 XCCとダブル優勝
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女子エリートレースで序盤リード奪ったのはアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)だった。ここにXCC勝者バッテンと開幕戦勝者のジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、チーム31アイビスコンチネンタル)、全米女王サヴィリア・ブランク(デカトロン・フォードレーシングチーム)が加わって先頭グループを形成する。リスヴェッズが途中抜け出す場面もあったものの、登坂区間のミスでリードを帳消しにしてしまう。
ひりつく心理戦の中でも4人の間に差は生まれず、最終周回に入ったその瞬間、バッテンが最後尾から速度差をつけてアタックした。唯一食い下がったリスヴェッズも長い登坂区間で引き離され、独走に持ち込んだバッテンがそのままフィニッシュラインへと到達。17秒リードでリスヴェッズの登坂アタックに敗れた先週の借りを返している。
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「オフシーズンに厳しいトレーニングを重ねてきたけれど、こんなにも戦術的なレースでうまくまとめきれるかどうか不安だった。五輪を目指す私と(同じアメリカの)サヴィリアにとっては重要な年だから、良い日になった。ラスト2周目はレースを読むのが難しくて、リードしている時に"このままじゃ先週と同じようにやられる!"と思い、少し落ち着いて様子を見ることにした。彼女の強力なアタックに何とか耐えきったのでチャンスが回ってきた」とレース直後のインタビューに応えている。
男子エリート:アンドレアッセンが復活勝利 コレツキーはチェーン落ちに泣く
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北林力(SUNN Factory Racing)も参戦した男子エリートレースは、スタートダッシュの最中にランキング首位のブレヴィンスが転倒する波乱の幕開けに。ハンドルが曲がり、復帰に手間取ったブレヴィンスは103番手から追い上げを試みたものの、この日は最終的に22位でレースを終えることとなった。
優勝候補の一角が消えた先頭グループに加わったのは、コレツキーや、南米の期待を背負う若手マルティン・ビダウレ(チリ、スペシャライズドファクトリーレーシング)、キャノンデールファクトリーレーシングのシモン・アンドレアッセン(デンマーク)とアラン・ハースリー(南アフリカ)といった面々。不遇の開幕戦を過ごしたニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)も集団内で存在を光らせた。
レース時間が1時間に達そうかというタイミングで抜け出したのは「とても調子が良かったのでアタックしてみた」と振り返るコレツキーだった。逃げ切り勝利を匂わせる大きなリードを築いて最終周回に入ったものの、必死に追走する2番手グループとの距離がじわりと縮まり、さらに上り区間でチェーン落ちに見舞われる。このアクシデントによって積み上げていたリードは遂にゼロになり、レースは一気に沸き立った。
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優勝へのチャンスを掴んだのはフィリッポ・コロンボ(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)、アンドレアッセン、ハースリー、ジョーダン・サルー(フランス、チームBMC)、そしてチェーン落ちから復帰し、猛然とチャージしたコレツキー。ジャンプを多用する下り区間で先頭を奪ったアンドレアッセンにコレツキーが並びかけたものの「メカトラから追いつくので精いっぱいだった」と、最終スプリントまでもつれ込むには至らない。激しいドラマの末、先頭でもがき抜いたアンドレアッセンが自身2度目のW杯優勝を掴み取った。
「正直言うと、まだ全く現実のものだと認識してないよ。前に勝ってから長い時間が過ぎた中での勝利だ。時間をかけて喜びを噛み締めたいと思う」と言うアンドレアッセン。2位はトラブルに泣いたコレツキー、3位はハースリー。「まだ完調とは言えないけれど良い兆し」と振り返るシューターは6位と先週から大きく順位を上げている。
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優勝したアンドレアッセンはジュニア時代にはMTB世界選手権を2連覇&シクロクロス世界王者に輝き、2016年のリオ五輪では最年少五輪デビューするなど、かつて類い稀なテクニックで頭角を現した26歳。エリート昇格後の2020年にはW杯初勝利を挙げたものの、その後は健康上の理由で低迷。2022年には母国開催のマラソン世界選手権で銅メダルを獲るなど、復調の兆しを見せていた中での嬉しい復活勝利となった。
UCI MTBワールドカップ2024 第2戦 XCO女子エリート結果
1位 | ヘイリー・バッテン(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) | 1:23:04 |
2位 | ジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、チーム31アイビスコンチネンタル) | +0:17 |
3位 | サヴィリア・ブランク(アメリカ、デカトロン・フォードレーシングチーム) | +0:40 |
4位 | アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) | +1:05 |
5位 | アン・テルプストラ(オランダ、ゴーストファクトリーレーシング) | +1:46 |
UCI MTBワールドカップ2024 第2戦 XCO男子エリート結果
1位 | シモン・アンドレアッセン(デンマーク、キャノンデールファクトリーレーシング) | 1:20:00 |
2位 | ヴィクトール・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング) | +0:01 |
3位 | アラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング) | |
4位 | フィリッポ・コロンボ(イタリア、スコット・スラムMTBレーシングチーム) | |
5位 | ジョーダン・サルー(フランス、チームBMC) | +0:10 |
95位 | 北林力(SUNN Factory Racing) | LAP |
text:So Isobe
photo:UCI
photo:UCI
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