2024/04/22(月) - 08:30
3年連続「コート・ド・ラ・ルドゥット」で勝負が決まった第110回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。34.4kmの独走によってタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が2021年以来2度目の優勝を果たし、来るジロ・デ・イタリアに向けて弾みをつけた。
4月21日(日)、ベルギー・ワロン地域最大の都市リエージュの気温は4度。分厚い雲から時折雨が落ちる曇り空のなか、「モニュメント(5大クラシック)」の一つに数えられ、春のクラシックシーズンを締めくくるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(UCIワールドツアー)が行われた。
昨年から大きなコースの変更はなく、254.5kmの距離に11箇所の丘が設定。獲得標高差4,200mを超える第110回大会には2連覇中のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)は怪我で不在だったものの、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が揃い踏み。そして2年連続の出場となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らが175名が、現地時間午前10時15分にスタートを切った。
レースは序盤からリリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ)たち4名が飛び出し、そこにクリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)らが合流。結果的に9名となった逃げグループは最大4分半のタイム差を得ると、一時的な雨から晴れ間に変わる天候の中、順調にその距離を進めていった。
チーム3連覇を狙うスーダル・クイックステップが若手のヒル・ヘルダース(ベルギー)を逃げに送ったため、メイン集団はUAEチームエミレーツが牽引する。最初の2時間を平均41km/hで進む選手たちはバストーニュで折り返し、北東からの向かい風を受けながら再びリエージュに向かう丘陵地帯に突入。そして残り距離が100kmを切り、この日3つ目の丘であるコート・ド・ワンヌ(距離3.6km/平均5.1%)に向けて緊張感が高まるプロトンで落車が連続して発生した。
まずはクリス・ハミルトン(オーストラリア、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)ら3名が地面に倒れ、数km進んだ後に今度はヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)ら7名を巻き込む落車が起きる。それによりメイン集団の後方にいたファンデルプールは足止めを食らい、免れたポガチャルを含む30名ほどの前方集団ではイスラエル・プレミアテックが一気にペースを上げた。
ポガチャル・グループは後続とのタイム差を拡げながら残り88km地点で逃げを吸収する。そしてエディ・メルクスの記念碑が建てられた名物坂「コート・ド・ストック(距離1km/平均12.5%)」に入るとUAEチームエミレーツも先頭でペースを作り、約1分半のリードを許した第2集団(ファンデルプール・グループ)からは優勝候補の一角であるトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。その動きに唯一反応したマウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ)と共に、2名で先頭集団を目指した。
ピドコックとファンセヴェナントの追走は実り、残り70km地点で先頭集団に合流を果たす。しかし直後にファンデルプールたちも追いつき、ピドコックたちと対照的に世界王者は力を使わず危機を逃れた形となった。
有力勢が再び一つに集結したプロトンは、ドメン・ノヴァク(スロベニア、UAEチームエミレーツ)によるハイペース牽引がアタックを抑制する。それどころかライバルたちのアシストの人数を減らしながら、エヴェネプールが2年連続で独走を決めた丘、残り34kmのコート・ド・ラ・ルドゥット(距離1.6km/平均9.4%)に突入した。
この日9つ目かつ最大勾配15%の丘ではハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト)がベン・ヒーリー(アイルランド)のため集団先頭でペースを作る。しかしここでもノヴァクが先頭を牽き、そのペースにラ・フレーシュ・ワロンヌの覇者であるスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)が遅れていく。そしてファンデルプールが12番手辺りでハイペースな登坂に耐えるなか、頂上まで900m、フィニッシュまで残り34.8km地点でポガチャルが仕掛けた。
ダンシングで勢いよく加速したポガチャルにヒーリーやマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)は反応できず、唯一リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が食らいつく。しかしシッティングに切り替え、ハイケイデンスで脚を回すポガチャルはカラパスを引き離し、単独でコート・ド・ラ・ルドゥットの頂上を通過。そして下りで後続と15秒、平坦区間に入り一気に20秒までその差を拡げた。
最後から2番目の丘「コート・ド・フォルジュ(距離1.3km/平均7.8%)」を前にリードを1分まで拡げたポガチャルに対し、単独追走するヒーリーにロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が追いつく。そこにブノワ・コスヌフロワ(デカトロンAG2Rラモンディアル)とロマン・グレゴワール(グルパマFDJ)のフランス人2名も加わったものの、得意の独走に持ち込んだポガチャルとのタイム差は縮まるどころが拡大していった。
ポガチャルは最後の丘である残り13.3kmの「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(1.3km地点/平均11%)」を越えてもヒーリーたちに1分20秒、プロトンに1分36秒のリードをキープ。その後方ではバルデが登りで4名集団を抜け出し、プロトンではエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が大怪我からの復活をアピールするアタックを見せた。
そして34.4kmの一人旅を遂行したポガチャルが、大観衆の声援に応えながら最終ストレートに到達。両手で天を指さしながらフィニッシュラインを通過し、2021年以来となる2度目の優勝、そして6度目のモニュメント制覇を成し遂げた。
「悪天候のなか身体を温めるためにもチームとしてハイペースに持ち込んだ。今日は(パートナーである)ウルシュカ(ジガート)の母親が2年前に亡くなった日。また昨年は手首を骨折し、2年連続で難しいレースとなった。だから今日はウルシュカの母親のために走り、再びこの美しいレースで勝つことができた。僕のために尽力してくれたチームメイトに感謝したい」と、25歳にしてプロ通算70勝目を掴んだポガチャルは喜んだ。
優勝を飾った3月のストラーデビアンケから今季10レースに出場し、そのうち7勝という驚異的な勝率を残すポガチャル。総合優勝を目指すジロ・デ・イタリア(5月4日開幕)に向け、この上ない結果を得た。
フィニッシュ手前で笑顔を作り、表彰台を喜んだバルデが1分39秒遅れの2位でフィニッシュ。そして25名のスプリントに持ち込まれた3位争いは、アルカンシエルを着るファンデルプールが先着した。
選手たちのコメントは別記事にてお伝えします。
4月21日(日)、ベルギー・ワロン地域最大の都市リエージュの気温は4度。分厚い雲から時折雨が落ちる曇り空のなか、「モニュメント(5大クラシック)」の一つに数えられ、春のクラシックシーズンを締めくくるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(UCIワールドツアー)が行われた。
昨年から大きなコースの変更はなく、254.5kmの距離に11箇所の丘が設定。獲得標高差4,200mを超える第110回大会には2連覇中のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)は怪我で不在だったものの、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が揃い踏み。そして2年連続の出場となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らが175名が、現地時間午前10時15分にスタートを切った。
レースは序盤からリリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ)たち4名が飛び出し、そこにクリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)らが合流。結果的に9名となった逃げグループは最大4分半のタイム差を得ると、一時的な雨から晴れ間に変わる天候の中、順調にその距離を進めていった。
チーム3連覇を狙うスーダル・クイックステップが若手のヒル・ヘルダース(ベルギー)を逃げに送ったため、メイン集団はUAEチームエミレーツが牽引する。最初の2時間を平均41km/hで進む選手たちはバストーニュで折り返し、北東からの向かい風を受けながら再びリエージュに向かう丘陵地帯に突入。そして残り距離が100kmを切り、この日3つ目の丘であるコート・ド・ワンヌ(距離3.6km/平均5.1%)に向けて緊張感が高まるプロトンで落車が連続して発生した。
まずはクリス・ハミルトン(オーストラリア、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)ら3名が地面に倒れ、数km進んだ後に今度はヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)ら7名を巻き込む落車が起きる。それによりメイン集団の後方にいたファンデルプールは足止めを食らい、免れたポガチャルを含む30名ほどの前方集団ではイスラエル・プレミアテックが一気にペースを上げた。
ポガチャル・グループは後続とのタイム差を拡げながら残り88km地点で逃げを吸収する。そしてエディ・メルクスの記念碑が建てられた名物坂「コート・ド・ストック(距離1km/平均12.5%)」に入るとUAEチームエミレーツも先頭でペースを作り、約1分半のリードを許した第2集団(ファンデルプール・グループ)からは優勝候補の一角であるトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。その動きに唯一反応したマウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ)と共に、2名で先頭集団を目指した。
ピドコックとファンセヴェナントの追走は実り、残り70km地点で先頭集団に合流を果たす。しかし直後にファンデルプールたちも追いつき、ピドコックたちと対照的に世界王者は力を使わず危機を逃れた形となった。
有力勢が再び一つに集結したプロトンは、ドメン・ノヴァク(スロベニア、UAEチームエミレーツ)によるハイペース牽引がアタックを抑制する。それどころかライバルたちのアシストの人数を減らしながら、エヴェネプールが2年連続で独走を決めた丘、残り34kmのコート・ド・ラ・ルドゥット(距離1.6km/平均9.4%)に突入した。
この日9つ目かつ最大勾配15%の丘ではハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト)がベン・ヒーリー(アイルランド)のため集団先頭でペースを作る。しかしここでもノヴァクが先頭を牽き、そのペースにラ・フレーシュ・ワロンヌの覇者であるスティーブン・ウィリアムズ(イギリス、イスラエル・プレミアテック)が遅れていく。そしてファンデルプールが12番手辺りでハイペースな登坂に耐えるなか、頂上まで900m、フィニッシュまで残り34.8km地点でポガチャルが仕掛けた。
ダンシングで勢いよく加速したポガチャルにヒーリーやマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)は反応できず、唯一リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が食らいつく。しかしシッティングに切り替え、ハイケイデンスで脚を回すポガチャルはカラパスを引き離し、単独でコート・ド・ラ・ルドゥットの頂上を通過。そして下りで後続と15秒、平坦区間に入り一気に20秒までその差を拡げた。
最後から2番目の丘「コート・ド・フォルジュ(距離1.3km/平均7.8%)」を前にリードを1分まで拡げたポガチャルに対し、単独追走するヒーリーにロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が追いつく。そこにブノワ・コスヌフロワ(デカトロンAG2Rラモンディアル)とロマン・グレゴワール(グルパマFDJ)のフランス人2名も加わったものの、得意の独走に持ち込んだポガチャルとのタイム差は縮まるどころが拡大していった。
ポガチャルは最後の丘である残り13.3kmの「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(1.3km地点/平均11%)」を越えてもヒーリーたちに1分20秒、プロトンに1分36秒のリードをキープ。その後方ではバルデが登りで4名集団を抜け出し、プロトンではエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が大怪我からの復活をアピールするアタックを見せた。
そして34.4kmの一人旅を遂行したポガチャルが、大観衆の声援に応えながら最終ストレートに到達。両手で天を指さしながらフィニッシュラインを通過し、2021年以来となる2度目の優勝、そして6度目のモニュメント制覇を成し遂げた。
「悪天候のなか身体を温めるためにもチームとしてハイペースに持ち込んだ。今日は(パートナーである)ウルシュカ(ジガート)の母親が2年前に亡くなった日。また昨年は手首を骨折し、2年連続で難しいレースとなった。だから今日はウルシュカの母親のために走り、再びこの美しいレースで勝つことができた。僕のために尽力してくれたチームメイトに感謝したい」と、25歳にしてプロ通算70勝目を掴んだポガチャルは喜んだ。
優勝を飾った3月のストラーデビアンケから今季10レースに出場し、そのうち7勝という驚異的な勝率を残すポガチャル。総合優勝を目指すジロ・デ・イタリア(5月4日開幕)に向け、この上ない結果を得た。
フィニッシュ手前で笑顔を作り、表彰台を喜んだバルデが1分39秒遅れの2位でフィニッシュ。そして25名のスプリントに持ち込まれた3位争いは、アルカンシエルを着るファンデルプールが先着した。
選手たちのコメントは別記事にてお伝えします。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2024結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 6:13:48 |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | +1:39 |
3位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +2:02 |
4位 | マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
5位 | オレリアン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | |
6位 | マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
7位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) | |
8位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザクスタン、アスタナ・カザクスタン) | |
9位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
10位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
DNF | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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