2023/12/31(日) - 10:19
オランダ開催のUCIワールドカップ第11戦でマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がトラブルで遅れたファンアールトとピドコックを尻目に圧勝。最終周回ではブーイングを浴びせた観客に唾を飛ばし、罰金を課される事件も起こった。
2023年最後のUCIレースはオランダのフルストで開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第11戦。ベルギー国境と接する真っ平らなゼーラント州だが、フルストのコースは河川敷の堤防斜面を使った高低差のあるレイアウト。長く急角度の直登区間やワンミスが命取りになるキャンバーを特徴とし、2026年の世界選手権開催地にも決まったパワーコースだ。
女子エリート:最終局面で急接近 ピーテルスがアルバラードを退ける
実力伯仲のフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)とパック・ピーテルス(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)、そしてこの2人と十分勝負できるレベルにコンディションを上げているセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)。ホリデーシーズンに接近戦を繰り広げる4人がこの日も女子エリートレースでドラマを繰り広げることとなる。
スタートで好ダッシュを決めたピーテルスが猛烈な勢いで1周目からリードを広げ、ファンエンペルとブラントがそれぞれ2番手と3番手で追走する。パワーコースを得意とする2番手グループが順当に追いつくかと思われたものの、「観客の声援が大きくて自分がどれだけリードしてるのかも分からなかった」と言う若いオランダ女王の勢いはこの日、ファンエンペルとブラントを上回った。
やや出遅れていたアルバラードが2番手グループに追いつき三つ巴の展開になったが、2本のラインが交わる激下り区間の出口で、ファンエンペルは前輪をブラントの後輪に弾かれて落車してしまう。「言い訳をしたいわけじゃないけれど、風邪と怪我がまだ治りきっていない。ハイレベルのレースでは100%の状態でないと勝てない」と後に語るファンエンペルはペースを失い、この日は4位で表彰台すら逃す(今季は14戦中12勝、2位1回、4位1回)こととなる。
ピーテルスの勝利は安泰かと思われていたものの、終始追い上げを強いられていたアルバラードがレース終盤に一気にペースアップして急接近。ブラントを切り離し、担ぎ上げ区間で合流したが「突然セイリンが迫っていることに気づいた。急にプレッシャーにさらされたのでスイッチを切り替えるのは簡単じゃなかった」というピーテルスは再加速し、もう一度アルバラードを突き放す。2人はありとあらゆるポイントで追走劇を繰り広げたが、最後まで順番が入れ替わることはなかった。
ピーテルスがW杯2連勝、スーパープレスティージュを含めれば3連勝をマーク。手に汗握る接戦の末、「最後まで戦い抜いた自分を褒めたい」と言うアルバラードが価値ある2位、3位にブラントが入るという幕切れとなった。
男子エリート:遅れたライバルを尻目にファンデルプール独走 観客とのトラブルも
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を含む20カ国99人が参戦した男子エリートの注目は、無敵のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、そしてトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)"ビッグスリー"の再戦だ。連日連戦のファンデルプールと、中一日を空けたほか2人の力関係が注目だったが、この日は思わぬトラブルが直接対決に水を差すことになる。
まずはスタート直後の混戦の中でピドコックが落車してディレイラー破損、さらにスタートでやや出遅れたファンアールトは急いでポジションを上げる最中に落車しチェーン落ちと、相次いでトラブルに見舞われる。このメカトラブルによってピドコックは最後尾から、そしてファンアールトは再乗車後にさらにパンクするという、それぞれ表彰台争い圏外の追走を強いられた。
そんなライバルを尻目に、ファンデルプールはこの日序盤からチャージして独走に持ち込んだ。W杯ランキングリーダーのエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)も、メンバーを揃えるバロワーズ・トレック・ライオンズ勢も最速ラップを刻む世界王者には敵わない。ファンデルプールはリードを積み重ねてから余裕の巡航態勢に切り替えた。
ファンデルプールは次々にレース後方を走る選手たちをラップアウトに追い込み、織田聖も5周目に除外されてしまう(73位)。ホールショットを取りながら精彩を欠いたイゼルビットもリタイア。最後はペースを落とし、ゆっくりと周回をこなしたファンデルプールがフィニッシュラインにやってきた。
今季連勝記録を7に伸ばしたファンデルプールだが、最終周回にはブーイングを浴びせていた観客に唾を吹きかけるという騒動に。「今日はウォームアップ中もブーイングがすごかった。あんな状態なら家にいた方が良かった。もうたくさんだ。彼らがなんと言っていたのかを聞きたいなら彼らに聞いてくれ」とファンデルプール。現地報道のコメンテーターや元プロ選手は擁護するコメントを残しているが、ファンデルプールには250スイスフランの罰金が課されるなど、後味の悪い結末に終わっている。
2023年最後のUCIレースはオランダのフルストで開催されたUCIシクロクロスワールドカップ第11戦。ベルギー国境と接する真っ平らなゼーラント州だが、フルストのコースは河川敷の堤防斜面を使った高低差のあるレイアウト。長く急角度の直登区間やワンミスが命取りになるキャンバーを特徴とし、2026年の世界選手権開催地にも決まったパワーコースだ。
女子エリート:最終局面で急接近 ピーテルスがアルバラードを退ける
実力伯仲のフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)とパック・ピーテルス(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)、そしてこの2人と十分勝負できるレベルにコンディションを上げているセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)。ホリデーシーズンに接近戦を繰り広げる4人がこの日も女子エリートレースでドラマを繰り広げることとなる。
スタートで好ダッシュを決めたピーテルスが猛烈な勢いで1周目からリードを広げ、ファンエンペルとブラントがそれぞれ2番手と3番手で追走する。パワーコースを得意とする2番手グループが順当に追いつくかと思われたものの、「観客の声援が大きくて自分がどれだけリードしてるのかも分からなかった」と言う若いオランダ女王の勢いはこの日、ファンエンペルとブラントを上回った。
やや出遅れていたアルバラードが2番手グループに追いつき三つ巴の展開になったが、2本のラインが交わる激下り区間の出口で、ファンエンペルは前輪をブラントの後輪に弾かれて落車してしまう。「言い訳をしたいわけじゃないけれど、風邪と怪我がまだ治りきっていない。ハイレベルのレースでは100%の状態でないと勝てない」と後に語るファンエンペルはペースを失い、この日は4位で表彰台すら逃す(今季は14戦中12勝、2位1回、4位1回)こととなる。
ピーテルスの勝利は安泰かと思われていたものの、終始追い上げを強いられていたアルバラードがレース終盤に一気にペースアップして急接近。ブラントを切り離し、担ぎ上げ区間で合流したが「突然セイリンが迫っていることに気づいた。急にプレッシャーにさらされたのでスイッチを切り替えるのは簡単じゃなかった」というピーテルスは再加速し、もう一度アルバラードを突き放す。2人はありとあらゆるポイントで追走劇を繰り広げたが、最後まで順番が入れ替わることはなかった。
ピーテルスがW杯2連勝、スーパープレスティージュを含めれば3連勝をマーク。手に汗握る接戦の末、「最後まで戦い抜いた自分を褒めたい」と言うアルバラードが価値ある2位、3位にブラントが入るという幕切れとなった。
男子エリート:遅れたライバルを尻目にファンデルプール独走 観客とのトラブルも
織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)を含む20カ国99人が参戦した男子エリートの注目は、無敵のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、そしてトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)"ビッグスリー"の再戦だ。連日連戦のファンデルプールと、中一日を空けたほか2人の力関係が注目だったが、この日は思わぬトラブルが直接対決に水を差すことになる。
まずはスタート直後の混戦の中でピドコックが落車してディレイラー破損、さらにスタートでやや出遅れたファンアールトは急いでポジションを上げる最中に落車しチェーン落ちと、相次いでトラブルに見舞われる。このメカトラブルによってピドコックは最後尾から、そしてファンアールトは再乗車後にさらにパンクするという、それぞれ表彰台争い圏外の追走を強いられた。
そんなライバルを尻目に、ファンデルプールはこの日序盤からチャージして独走に持ち込んだ。W杯ランキングリーダーのエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)も、メンバーを揃えるバロワーズ・トレック・ライオンズ勢も最速ラップを刻む世界王者には敵わない。ファンデルプールはリードを積み重ねてから余裕の巡航態勢に切り替えた。
ファンデルプールは次々にレース後方を走る選手たちをラップアウトに追い込み、織田聖も5周目に除外されてしまう(73位)。ホールショットを取りながら精彩を欠いたイゼルビットもリタイア。最後はペースを落とし、ゆっくりと周回をこなしたファンデルプールがフィニッシュラインにやってきた。
今季連勝記録を7に伸ばしたファンデルプールだが、最終周回にはブーイングを浴びせていた観客に唾を吹きかけるという騒動に。「今日はウォームアップ中もブーイングがすごかった。あんな状態なら家にいた方が良かった。もうたくさんだ。彼らがなんと言っていたのかを聞きたいなら彼らに聞いてくれ」とファンデルプール。現地報道のコメンテーターや元プロ選手は擁護するコメントを残しているが、ファンデルプールには250スイスフランの罰金が課されるなど、後味の悪い結末に終わっている。
UCIシクロクロスワールドカップ2023-2024 第11戦 女子エリート結果
1位 | パック・ピーテルス(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) | 51:05 |
2位 | セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:06 |
3位 | ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:12 |
4位 | フェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | +0:16 |
5位 | サラ・カサソラ(イタリア、FASエアポートサービス・グエルチョッティ) | +1:58 |
6位 | レオニー・ベントフェルド(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | |
7位 | カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス) | +2:09 |
8位 | マリー・シュライバー(ルクセンブルク、SDワークス) | +2:23 |
9位 | アンマリー・ワースト(オランダ、シクロクロスレッズ) | +2:26 |
10位 | クリスティナ・ゼマノヴァ(チェコ、ブライオンレーシングチームMB) | +2:35 |
UCIシクロクロスワールドカップ2023-2024 第11戦 男子エリート結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 59:02 |
2位 | ヨリス・ニューウェンハイス(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:12 |
3位 | ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:20 |
4位 | ピム・ロンハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) | +0:30 |
5位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | +0:43 |
6位 | ローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・コレンドン) | +0:53 |
7位 | ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:58 |
8位 | ライアン・カンプ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +1:04 |
9位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) | +1:15 |
10位 | ティボー・デルグロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +1:25 |
73位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) |
text:So.Isobe
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