国内レースプレイバック後編は、真夏のインターハイ&インカレ、Jプロツアー後半戦、九州でのUCIレース、ジャパンカップ、ツール・ド・おきなわなどを振り返る。

プレイバック前編はこちらから。



7月-8月 国内レース前半戦の締めくくりとインターハイ&インカレ

瀬戸内海に浮かぶ佐木島(さぎしま)で初開催のロードレース photo:Satoru Kato

4名でのスプリント勝負をレオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)が制した photo:Satoru Kato

7月8日、ジャパンサイクルリーグ広島大会の「佐木島ロードレース」が初開催された。広島県の三原市沖にある佐木島の外周を1周する10.5kmのコースを使用して行われたレースは4名がハンドルを投げ合うスプリント勝負となり、レオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島)が優勝。地元チームが嬉しい勝利を挙げた。翌日は広島市でのクリテリウムが予定されていたが、雨によるコース冠水のため中止された。

コース沿いには多くの紫陽花が咲く photo:Satoru Kato

石川クリテリウム 岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)が今季2勝目 photo:Satoru Kato
石川ロードは津田悠義を先頭にキナンレーシングチーム3名が揃ってフィニッシュ photo:Satoru Kato


7月半ば、福島県石川町でJプロツアー2連戦が行われた。第10戦「石川クリテリウム」は、序盤からチームブリヂストンサイクリングがレースを主導。最後は岡本勝哉が優勝し、今季2勝目を挙げた。翌日の第11戦「石川ロードレース」は、終盤に数的優位な状況を作り上げたキナンレーシングチームが1位から3位までを独占。津田悠義がJプロツアー初優勝を挙げた。

インターハイロード男子 島崎将男(帯広南商業)が優勝 photo:Satoru Kato
インターハイロード女子 水谷彩奈(松山学院)が単独先行で最終周回へ photo:Satoru Kato


総合優勝の松山学院 photo:Satoru Kato

8月上旬、インターハイは北海道の函館市で開催された。初日に行われたロードレースでは、男子は地元北海道の島崎将男(帯広南商業)が優勝。女子は水谷彩奈(松山学院)が優勝した。翌日からは函館競輪場でトラック競技が行われ、男子チームスプリントで松山学院がジュニアの日本記録を更新。学校対抗の総合成績でも松山学院がトップとなり、6度目の総合優勝を果たした。

男子オムニアム・スクラッチ スタート photo:Satoru Kato

男子4kmチームパーシュート 4分4秒673の学連新記録で優勝した日本大学 photo:Satoru Kato

8月下旬、インカレのトラック競技は千葉市の千葉JPFドームで初めて開催された。屋内250m板張りバンクという好条件もあって大会記録や学連新記録が多数誕生。特に日本大学はチームスプリントとチームパーシュートで学連記録を更新して見せ、トラック競技での総合首位となった。

インカレロード男子 阿部源を先頭に日本大学が1-2フィニッシュ photo:Satoru Kato
インカレロード女子 小林あか里(信州大学)が最初で最後のインカレ優勝 photo:Satoru Kato


トラック競技の1週間後、長野県大町市で行われたロードレースでも日本大学は主導権を握り、阿部源が優勝し、総合優勝を決めた。女子は2年ぶりに鹿屋体育大学が優勝した。



9月 事故でキャンセルのツール・ド・北海道 Jプロツアーは後半戦佳境へ

青天の下スタートしたツール・ド・北海道だったが photo:Satoru Kato
9月8日、ツール・ド・北海道の第1ステージで起きてはならない事故が起きてしまった。この事故は日本での公道レース開催の難しさを浮き彫りにし、以降の国内レース開催に少なからず影響を与えることになった。

南魚沼クリテリウム 石原悠希(シマノレーシング)が優勝 photo:Satoru Kato
南魚沼3勝目を挙げたフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato


団体戦 表彰式 photo:Satoru Kato

9月半ば、新潟県南魚沼市で2カ月ぶりにJプロツアーが再開した。「南魚沼クリテリウム」は、序盤に形成された4名の集団が逃げ切り、シマノレーシングの石原悠希が3年ぶりのJプロツアー勝利を挙げた。

翌日はJプロツアーで最高位グレードとなる「経済産業大臣旗ロードレース」として開催された南魚沼ロードレース。今シーズンここまで勝利のなかったマトリックスパワータグが、フランシスコ・マンセボとホセ・ビセンテ・トリビオによる1-2フィニッシュで3年ぶりの経済産業大臣旗、通称「輪翔旗」を獲得した。

初日は3名でのスプリント、2日目は終盤独走で2連勝した中井唯晶(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

9月末、Jプロツアー第14戦・15戦は「群馬CSCロードレース9月大会」。7月の石川ロードで総合首位に立ったシマノレーシングの中井唯晶が2連勝し、総合優勝に王手をかけた。



10月 ツール・ド・九州初開催 冷雨のジャパンカップ

おおいた いこいの道クリテリウムは岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が優勝 photo:Satoru Kato
おおいたアーバンクラシックはライアン・カバナ(キナンレーシングチーム)が優勝 photo:Satoru Kato


9月と10月に跨いで開催された「OITAサイクルフェス2023」9月30日に行われた「おおいた いこいの道クリテリウム」は、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が優勝。翌日の10月1日は、UCI1.2クラスのレース「おおいたアーバンクラシック」が開催され、キナンレーシングチームのライアン・カバナが優勝した。

阿蘇山のカルデラの中を集団が行く ©️ツール・ド・九州2023実行委員会

小倉城クリテリウムと第1ステージで優勝した兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato
留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)は総合上位も狙えたが最終ステージでリタイア photo:Satoru Kato


個人総合優勝のトロフィーを受け取るアンドレイ・ゼイツ(アスタナ・カザクスタンチーム) photo:Satoru Kato

10月6日から9日の4日間に渡り、九州北部を舞台に初開催のUCIステージレース「ツール・ド・九州」が開催された。小倉城下でのクリテリウムに始まり、福岡、熊本、大分と3ステージのラインレースが行われ、唯一のプロチームとして参加したアスタナ・カザクスタンチームのアンドレイ・ゼイツが初代チャンピオンとなった。

30回目の特別ペイントが施された古賀志林道KOM地点 photo:Kei Tsuji

ジャパンカップクリテリウム3連覇を遂げたエドワード・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック) photo:Yuichiro Hosoda

抜群のスプリント力で勝利したルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) photo:Makoto AYANO

10月半ば、30回目のジャパンカップは、数年ぶりに冷雨の中でのレースとなってしまった。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が序盤から単独先行という予想外の展開となったが終盤に捕まり、最後は3名でのスプリントを制した元世界チャンピオンのルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が優勝した。

かすみがうらTT連覇達成の金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) photo:Satoru Kato
山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)が優勝 photo:Satoru Kato


Jプロツアー2023 チーム総合優勝 シマノレーシング photo:Satoru Kato

10月末、Jプロツアーは最終戦を迎えた。第16戦「かすみがうらタイムトライアル」は、金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が今シーズン2勝目を挙げ、昨年に続き大会連覇を達成した。翌日の第17戦「かすみがうらロードレース」は、チームブリヂストンサイクリングの山本哲央が2年ぶりの勝利を挙げた。

年間総合優勝は中井唯晶、チーム総合優勝とあわせ、シマノレーシングが2011年以来12年ぶりのダブルタイトルを獲得した。



11月-12月 寒い沖縄でのツール・ド・おきなわ 東京でラインレース初開催

セップ・クスを下し優勝したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がツール・ド・フランスさいたまクリテリウム初優勝 photo:Makoto AYANO

11月5日、9回目の開催となった「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」は、今年もツール・ド・フランス本戦で活躍した選手が集まった。レースはセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)をタディ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がスプリントで下して初優勝した。

青空の下、カルストロードを集団が駆け抜ける photo:Satoru Kato

バス・ファン・ベル(オランダ、WPGA)が優勝 photo:Satoru Kato
ベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)が秋吉台2連覇 photo:Satoru Kato


ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムと同日、日本海に面した山口県長門市では、「山口ながとクリテリウム」が開催された。2022年までJCLのレースとして開催されてきたレースは、今年UCIクリテリウムとなって海外チームも出場。集団スプリントを制したパス・ファンベル(オランダ、WPGA)が優勝した。

翌日は山口県美祢市のカルストロードで「美祢秋吉台カルストロ国際ロードレース」が開催された。山口ながとクリテリウム同様に、今年からUCI1.2クラスのワンデーレースとしての開催。127.6kmのレースは終盤に残った3名での勝負をベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)が制し、昨年に続き2連覇を達成した。

市民200kmレースの220人によるスタート前の一斉発声「チバリヨー!」 photo:Makoto AYANO

男子チャンピオンロードレース優勝 山本大喜(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato
女子 4名でのスプリント勝負をナ・アルム(High Ambition 2022 jp)が制した photo:Satoru Kato


11月半ば、「ツール・ド・おきなわ」は、沖縄らしくない冷え込みの中でのレースとなった。

UCI1.2クラスのレースとなる男子チャンピオンレースは、日本チャンピオンジャージを着る山本大喜(JCLチーム右京)が優勝。女子国際レースはナ・アルム(High Ambition 2022 jp.)が制した。

市民レース200km優勝 井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Satoru Kato

注目の市民210kmは、井上亮(Magellan Systems Japan)が悲願の初勝利。高岡亮寛(Roppongi Express)の「2度目の3連覇」は叶わなかった。

八王子市街を見下ろす丘陵地を登る集団 photo:Satoru Kato

兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が逃げ切り勝ち photo:Satoru Kato
先頭でフィニッシュラインを切る渡部春雅(明治大学) photo:Kei Tsuji


12月、2020東京五輪ロードレースで使用されたコースの一部を使用し、東京都内で初のラインレース「THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023」が行われた。八王子市をスタートし、多摩市、稲城市、府中市を経て調布市の味の素スタジアムにフィニッシュする72.6kmのレースは、残り10kmを前に単独先行した兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)が逃げ切って優勝。今シーズン最終戦で3勝目を挙げた。女子は渡部春雅(明治大学)が優勝した。



2024年、JCLに参戦していたチームがJプロツアーに戻ることが決まり、ふたつに分かれていた国内ロードレースのトップリーグは4年ぶりにひとつにまとまることが決まった。まずはこの決定を歓迎したい。一方で、この件についてJCLからは何の発表も無いまま。早急に説明責任を果たされることを願う。


text:Satoru Kato
Amazon.co.jp