今年で最後の開催と言われるスーパークロス野辺山。13回目を数える超人気大会は今年も八ヶ岳山麓の滝沢牧場を舞台とした2日間のレース。気温が低く荒天気味の初日、JCXシリーズ第4戦にあたるMEレースは織田聖が全日本チャンプジャージを着て弱虫ペダルスポンサーのレースで勝つという嬉しい勝利を挙げた。一般レースの様子もレポートします。


八ヶ岳に雪が舞う滝沢牧場でのレースだ photo:Makoto AYANO

近年の日本のシクロクロスシーンでは象徴的な人気イベントとなってきた野辺山シクロクロス。昨年からは弱虫ペダルがメインスポンサーに加わったが、逆に第1回大会からメインスポンサーとなってきたrapha(ラファ)がスポンサーを降りたため、今年の大会は「弱虫ペダル Supercross NOBEYAMA」の名で開催されることに。

MJ (Open)の優勝争い。逃げる成田光志(学校法人石川高等学校)に野嵜然新が迫る photo:Makoto AYANO

舞台は八ヶ岳連峰を望む滝沢牧場で、標高は1,375mという高地。国内で唯一、UCI-1認定された履歴がある国内屈指のシクロクロスコースと会場での本格CXレースでありながら、フェスのような雰囲気があり、会場の牧場では牛や馬などの動物もいて、家族で楽しめるアットホームな空間で、ファミリーで楽しめるイベントでもある。

オリジナルの泥タンブラー photo:Makoto AYANO
泥Tが売り切れると、織田聖のハイスピードダートTシャツが販売された(ゲリラ?) photo:Makoto AYANO



表彰のブーケはブロッコリーです photo:Makoto AYANO
レースを走り終わって入賞を彼女と喜ぶ photo:Makoto AYANO



2日間のレースは初日がJCXシリーズ戦であり、2日目がUCI-2カテゴリーのレースとなる。いわば土曜は華のある日曜の前哨戦とも言えるが、土曜もJCXシリーズとして大事な一戦であるため両日ともに盛り上がる。そしてキッズやキンダーガーデンなど子どもや幼稚園児たちでも挑戦できるレースが用意されているのも嬉しいところで、それが2日間の自転車のお祭りともいえる人気をかたち作っている理由だ。

ME4優勝の久保田翔太郎(EMU SPEED CLUB) photo:Makoto AYANO
ME3で優勝した加藤遼 photo:Makoto AYANO



グルメは野辺山クロスの楽しみ。タベルナ・エスキーナは第1回からの皆勤賞だ photo:Makoto AYANO

おかめひょっとこ農場の出張キッチン photo:Makoto AYANO
おかめひょっとこ農場のフランク入りミネストローネは名物だ photo:Makoto AYANO



ラファがスポンサーでなくなってしまったことの顛末はまた記事内で改めて説明するが、この世界観を作り上げてくれたラファに感謝しつつ、変化が大きいであろう今年の野辺山シクロクロス会場に来てみると、そこには前回までと大きく違わない野辺山シクロクロスがあった。

13回目の節目(?)を数えることを記念した今年の大会オリジナルTシャツ「泥T」は13を引っくり返した粋なデザインで、お昼までにあっという間に完売してしまう。

MM40 (Open) 優勝は國分圭二(Mt.HASE321) photo:Makoto AYANO
ME3 (Men)表彰 優勝は加藤遼 photo:Makoto AYANO



確かに会場内の出店ブースは少し減ったものの、そのぶん熱いCXグッズのPRを展開するブースや、グルメイベントとも言える飲食ブースの数々で、レースに出なくとも会場である牧場内を歩き回るだけでも面白い。レース入賞者に送られる花束代わりのブーケにはこの地域特産のブロッコリーが手渡され、賞品は高原野菜だったり。そこは主催が長野県南牧村商工会であることのプライドやおもてなし精神が感じられた。

ME2を制した奥田勇(LEPUS)。翌日はME1に昇格だ photo:Makoto AYANO
WE2+3 (Women) トップの森廣真奈さんはアンバウンドグラベル2023完走者だとか photo:Makoto AYANO



泥区間で渋滞するマスターズクラスの大集団 photo:Makoto AYANO

レースの方は朝から次々と細分化されたカテゴリーレースが開催されていき、テンポよく表彰式も行われていく。シクロクロッサーにとってやはりこの野辺山で勝つのは特別なステイタスがあるもので、とくに賞品の銅製の金のカウベルは誰しもが手に入れたい憧れの記念品だ。

圧倒的な力でMM50+ (Open)に優勝した生田目修(イナーメ信濃山形&大幸ハーネス)が叫ぶ photo:Makoto AYANO
MM60+ (Open) 優勝は増田謙一(SHIDO-WORKS) photo:Makoto AYANO



マスターズレースを走り終えたらお約束の集合記念撮影!みんな仲良しおじさん! photo:Makoto AYANO

■男子エリートは織田聖、女子エリートは渡部春雅が制する

WE1 (Women)のスタート photo:Makoto AYANO

午後からはエリートカテゴリーの男女レースが行われた。画期的なのはUCIでないエリートカテゴリー1でも総額15万円の賞金が準備されること(しかも男女平等金額)。JCXシリーズ戦かつ賞金レースであるため当然ながらハイレベルの戦いになる。

WE1 (Women)のトップを行く渡部春雅(明治大学) photo:Makoto AYANO

WE1 (Women)のホールショットは大蔵こころ(早稲田大学)。しかし1周目を終えてトップ立ったのは渡部春雅(明治大学)で、後続を20秒以上離し、早くも独走体制に。2周めには石田唯が2番手に上がり、レースは6周回で行われることが決定。残り2周で小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)が石田に追いつき、ランデブーに入る。

渡部を追走する小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
一時は2位につけた石田唯 photo:Makoto AYANO



競り合いながらペースがあがる2人だったがランが得意な渡部はシケインやジャンプセクションも安定した走りで差を詰められることがなかった。結局大差をもって最後まで逃げ切った渡部がJCXシリーズ3勝目となる勝利を挙げた。

WE1 (Women)表彰。優勝は渡部春雅(明治大学) photo:Makoto AYANO

2位に小林。3位に石田、4位に大蔵の「早稲田コンビ(ただし石田はCXレースは無所属)」。5位にCXではニューフェイスの西原夕華(北桑田高校)が入った。

100人以上によるME1のスタート photo:Makoto AYANO

男子エリートME1 は100名を超えるエントリーがあり、なんと招集が終わりきらないうちにスタートが切られるというハプニングが発生。激しいスピードレースから抜け出したのは織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)と沢田時(宇都宮ブリッツェン)の2人。お互いマークし合う優勝候補2人が舗装路でも協調したためスピードが乗り、2人と後続の差はジリジリと開いた。

トップを行く織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、追う沢田時(宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO

レースは9周で行われることが決定した頃、急に崩れだした天候。2周めには吹雪となり、強い風も吹くように。織田とランデブーしていた沢田が下りコーナーの段差にホイールをとられ、落車。織田も足止めされるがすぐに復帰、一方で沢田はチェーン修復に手間取り、地面に打ちつけた身体が痛むのかジリジリ遅れだす。

落車した沢田時(宇都宮ブリッツェン)に織田聖(弱虫ペダルサイクリングチームが絡む photo:Makoto AYANO

沢田は柚木伸元(日本大学)と副島達海(大阪産業大学)に捉えられ、竹之内悠(slash Cinelli - Vision)との4人のパックに吸収される。シケインを華麗なバニホでクリアする柚木がリードしつつ、しかし沢田も時が経つにつれ回復を見せ再びリードを奪い返しに行く。

織田聖を追う4人の追走グループ photo:Makoto AYANO

沢田のハイペースは柚木のミスを誘い、差がついた。レースは残り3周で約半数の40人になるサバイバルな状況に。

吹雪のなかトップを走る織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO

残り2周、コース上には30人が残っていたが、80%ルールにより次々と降ろされていく。強まる吹雪のなか、独走の織田を止める選手は現れず、圧倒的な差で優勝をモノにした。織田にとってJCX#2わたり、#3幕張に次ぐ今季JCX3勝目。弱虫ペダルがスポンサードする大会で、全日本チャンピオンジャージを着て優勝するという最高の勝利をものにした。完走者はわずか14人。

沢田時(宇都宮ブリッツェン)が徐々に巻き返す photo:Makoto AYANO

吹雪の中優勝を遂げた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO

雨上がりの曇り空で始まった一日だが、昼前に晴れ間が見え八ヶ岳も姿を表す好天になったと思ったら、強風が吹き、吹雪になるという目まぐるしく天候の変わる一日だった。翌日曜は晴天の予報で、気温も過ごしやすいものとなりそうだ。華のあるUCIレースで勝つのは一体誰だろうか。

11位完走を遂げたMTBアジア大陸チャンピオンの高橋翔(TeensMAP) photo:Makoto AYANO
ME1表彰 優勝は織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO




弱虫ペダル Supercross NOBEYAMA2023 day1リザルト 優勝者&上位のみ

ME4
久保田翔太郎(EMU SPEED CLUB)
MU15 (Open)
伊藤隆聖(Sonic-Racing)
ME3 (Men)
加藤遼
MU17 (Open)
松村拓弥(群馬グリフィンエリート)

MM35+ (Open)
松尾遊(Champion System Japan Test Team)
MM40 (Open)
國分圭二(Mt.HASE321)
MM50+ (Open)
生田目修(イナーメ信濃山形&大幸ハーネス)
MM60+ (Open)
増田謙一(SHIDO-WORKS)

WE2+3 (Women)
森廣真奈
WM (Open)
森知多(SNEL)
WU17 (Open)
石川七海(SBC DIRT UNION)
WU15 (Open)
皆木海音(AVENTURA VICTORIA RACING)

ME2 (Men)
1位 奥田勇(LEPUS)
2位 小佐野匠(QQQ9)
3位 吉田泰大( SHIDO-WORKS)

MJ (Open)
野嵜然新(弱虫ペダルサイクリングチーム)

WE1 (Women)
1位 渡部春雅(明治大学)
2位 小林あか里 (弱虫ペダルサイクリングチーム)
3位 石田唯
4位 大蔵こころ(早稲田大学)
5位 西原夕華(北桑田高校)
6位 阿部花梨(インドカレーサーラ)

ME1 (Men)
1位 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
2位 沢田時(宇都宮ブリッツェン)
3位 柚木伸元(日本大学)
4位 竹之内悠(slash Cinelli - Vision)
5位 小坂光(宇都宮ブリッツェン)
6位 副島達海(大阪産業大学)


text&photo:Makoto AYANO

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