リオ五輪やパリ〜ルーベなど数々のビッグタイトルを獲得したグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)の引退レースとなったパリ〜トゥール。5名によるスプリントを研修生のライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)が制した。



記念品を受け取るガロパン photo:CorVos
引退レースを迎えたファンエムデン photo:CorVos


娘と共にチームプレゼンテーションに臨んだグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン) photo:CorVos

今年のヨーロッパにおけるワールドツアー最終レース「イル・ロンバルディア」の翌日、フランス中部シャルトルでパリ〜トゥール(UCI.Pro)が開催された。第116回目を迎えた伝統のあるレースは、イル・ロンバルディアがクライマーやパンチャー向きならば、こちらはクラシックレーサーやスプリンターにとっての最終目標となる。

213.9kmのコースはほぼ平坦路。しかし合計10箇所、総距離約10kmに及ぶ未舗装区間と、後半に詰め込まれた8箇所の短い丘がレースの難易度を上げる。そのためシーズン最後の勝利を狙うべく、大会3連覇を狙うアルノー・デマール(フランス、アルケア・サムシック)をはじめ、クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)やアルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー)などトップ選手たちが揃った。

また前五輪王者のグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)やトニー・ガロパン(フランス、リドル・トレック)、ヨス・ファンエムデン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がそれぞれ現役最後のレースとして出場した。

序盤からルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)ら5名が逃げ集団を形成した photo:CorVos

逃げを追いかけるプロトン photo:CorVos

レース序盤に逃げグループを形成したのはルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)を含む5名。それをユンボ・ヴィスマやリドル・トレックがメイン集団でタイトにコントロールしたため、平均スピードが47km/hに達するハイスピードで進行した。

フィニッシュまで残り40km地点を過ぎ、逃げとのタイム差が2分を下回ったプロトンではアタックが繰り返される。今年もジャパンカップに参戦するエドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)の飛び出しは引き戻され、単独先頭となったアスキーを目指してオリヴィエ・ルガック(フランス、グルパマFDJ)やライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)の4名がアタック。残り10km地点の手前でアスキーに追いつき、先頭はグルパマFDJの2名を含む5名となった。

パンクに見舞われ、勝負から脱落したアルノー・デリー(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos
未舗装路区間を駆けるプロトン photo:CorVos


逃げから単独先頭に立ったルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ) photo:CorVos

その一方で、集団スプリントに持ち込みたいコフィディスやアルケア・サムシック、ユンボ・ヴィスマがプロトンを牽引。しかし先頭との差はなかなか縮まらず、約10秒差で先頭集団はフラムルージュ(残り1km地点)を通過。勝負は5名によるスプリントに持ち込まれた。

ルガックを先頭に最終ストレートに突入し、チームメイトのアスキーは最後尾でスプリントのタイミングを窺う。先にフランスのコンチネンタルチームであるサンミッシェル・オーベル93のジョリス・デルボーヴ(フランス)がスプリントを開始し、それにシーハンが反応。そして先頭に立ち、アスキーを抑え込んだシーハンが勝利した。

5名によるスプリントを制したライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos

パリ〜トゥール2023表彰台:2位アスキー、1位シーハン、3位ヨハンネセン photo:CorVos

「これ以上の喜びはない。これは僕にとって大きな一歩となる結果。これほど大きなレースで勝利を挙げることができたなんて信じられない。残り2km地点からスプリントになることは分かっており、完璧な位置から仕掛けることができた」とシーハンは喜んだ。

イスラエル・プレミアテックのU23チームから、今年8月にトレーニー(研修生)としてトップチームで走るシーハンは23歳。来年はアメリカのナショナル・サイクリングリーグに参戦するべくデンバー・ディスラプターへの移籍が決まっているものの、この活躍によってイスラエルへの正式加入の可能性が高まった。またシーハンは、クリストファー・フルーム(イギリス)と共に今週のジャパンカップに出場予定だ。

そして先頭から2分46秒遅れ(58位)でファンアーヴェルマートがフィニッシュ。17年に及ぶ現役生活に別れを告げ、またフィニッシュライン手前でアイウェアを観客に投げ込んだガロパンも、3分2秒遅れ(64位)で現役ラストレースを終えた。

引退レースを終えたグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン) photo:CorVos
フィニッシュ地点で祝福を受けるトニー・ガロパン(フランス、リドル・トレック) photo:Lidl - Trek


パリ〜トゥール2023結果
1位 ライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) 4:39:05
2位 ルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)
3位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)
4位 ジョリス・デルボーヴ(フランス、 サンミッシェル・オーベル93)
5位 オリヴィエ・ルガック(フランス、グルパマFDJ) +0:07
6位 クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) +0:09
7位 トム・ファンアスブルック(ベルギー、イスラエル・プレミアテック)
8位 アルノー・デマール(フランス、アルケア・サムシック)
9位 エドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)
10位 ポール・ペンウェット(フランス、グルパマFDJ)
58位 グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン) +2:46
64位 トニー・ガロパン(フランス、リドル・トレック) +3:02
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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