9月21日にオランダでヨーロッパ選手権が開幕した。初日は男女エリートの個人タイムトライアルが行われ、男子はファンアールトを下した19歳のジョシュア・ターリング(イギリス)が優勝。女子はマーレン・ローセル(スイス)が3連覇を達成した。



31分30秒のトップタイムで駆け抜けたジョシュア・ターリング(イギリス) photo:CorVos

2016年にエリートカテゴリーが追加されて以来、レースカレンダーの中でもその地位を確立しているヨーロッパ選手権。白地に3種類の青色ストライプ、そして3つの星が胸元に入った欧州王者ジャージを賭けた熱き戦いが開幕した。

オランダを舞台にした2023年大会は、例年行われる8月にUCI自転車世界選手権大会が開催された影響で9月下旬に移行。特に男子は9月17日(日)に閉幕したブエルタ・ア・エスパーニャの直後であるにもかかわらず、多くのトップ選手たちが集った。

大会初日に行われたのは男女エリートを含む個人タイムトライアル。エメンに設定された平坦路の28.7kmコースに、男子は前年覇者のシュテファン・ビッセガー(スイス)や過去に2連覇を達成したシュテファン・キュング(スイス)、ワウト・ファンアールト(ベルギー)など32名の選手たちが挑んだ。

好タイムを出すも、大会連覇を逃したシュテファン・ビッセガー(スイス) photo:CorVos

終盤に失速して3位に終わったワウト・ファンアールト(ベルギー) photo:CorVos

まず好タイムを出したのは地元オランダのシュールト・バックス(UAEチームエミレーツ)。平均スピードを52km/h台に乗せて32分59秒でフィニッシュする。しかしイヴ・ランパールト(ベルギー)がすぐさま4秒更新し、その後しばらくホットシートに座り続けた。

有力勢が固まる後半組が続々とスタートを切ると、マティア・カッタネオ(イタリア)やダーン・ホーレ(オランダ)がランパールトのタイムを上回る。そして全体の24番目で大会連覇を狙うビッセガーがコースに飛び出し、32分12秒という圧巻のトップタイムを叩き出す。このタイムに後続スタートの選手たちも及ばず、キュングはフェンスに衝突して落車、流血しながらも完走を果たした。

9月10日に閉幕したツアー・オブ・ブリテンで総合優勝を飾ったファンアールトは、序盤からスピードに乗ったものの終盤に失速してビッセガーのタイムに1秒届かない。そして最終出走者としてイギリスのTT王者かつ、TT世界選手権で3位に入ったジョシュア・ターリング(イギリス)がスタート。第1、2中間計測でファンアールトのトップタイムを更新したターリングはフィニッシュに近づくにつれ速度を増し、ビッセガーを42秒上回る31分30秒のトップタイムを叩き出した。

最終出走者で優勝を果たしたジョシュア・ターリング(イギリス) photo:CorVos

ロードヨーロッパ選手権2023 男子エリート個人タイムトライアル表彰台:2位ビッセガー、1位ターリング、3位ファンアールト photo:CorVos

出場選手の中で唯一平均スピードを54km/h台に乗せるという、圧巻の走りでヨーロッパ選手権の王者に輝いたターリング。「向かい風が吹き付ける厳しいコースだった。だから高出力を保とうと意識し、世界選手権よりも厳しいレースとなった。だけど優勝できて最高に嬉しいよ。素晴らしいチームが僕へのプレッシャーを取り除いてくれた。協力してくれた皆に感謝を伝えたい」とターリングは喜ぶ。

2019年のレムコ・エヴェネプール(ベルギー)による最年少優勝(19歳と195日)の更新とはならなかったものの(19歳と217日)、ターリングはイネオス・グレナディアーズでのプロデビュー1年目にしてビッグタイトルを掴み取った。



女子エリートはローセルが3連覇

圧巻の走りで大会3連覇を達成したマーレン・ローセル(スイス) photo:CorVos

女子エリートはTT世界選手権で優勝候補に挙げられながらも途中棄権したマーレン・ローセル(スイス)や、ロード世界選手権を制したロッタ・コペッキー(ベルギー)ら30名が出場した。

クリスティーナ・シュヴァインバーガー(オーストリア)やアンナ・ヘンダーソン(イギリス)らが36分台と高レベルの戦いを見せるなか、唯一35分53秒とトップタイムを叩き出したのはやはりローセルだった。ローセルは第1計測こそシュヴァインバーガーから1秒遅れで通過したものの、後半に入り一気にスピードアップ。最終的に平均スピードが48km/hに迫る好走を見せ、2021年、22年に続く3連覇を達成した。

「自分自身に対してはもちろん、チームやスタッフにとっても良いギフトとなった。タイムトライアルは風があろうがなかろうが関係なく辛いもの。オランダの風にも慣れていたので問題なく、体力の残量を感じて計算しながら走っていた。3連覇は本当に嬉しく、誇りに思う」と、ローセルは笑顔で欧州王者ジャージの保持を喜んだ。

女子エリートのロードレースは9月23日(土)、男子エリートは9月24日(日)に行われる。

ロードヨーロッパ選手権2023 女子エリート個人タイムトライアル表彰台:2位ヘンダーソン、1位ローセル、3位シュヴァインバーガー photo:CorVos

ロードヨーロッパ選手権2023 男子エリート個人タイムトライアル結果
1位 ジョシュア・ターリング(イギリス) 31:30
2位 シュテファン・ビッセガー(スイス) +0:42
3位 ワウト・ファンアールト(ベルギー) +0:43
4位 ミッケル・ビョーグ(デンマーク) +1:09
5位 マティア・カッタネオ(イタリア) +1:13
6位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) +1:15
7位 ダーン・ホーレ(オランダ) +1:22
8位 レミ・カヴァニャ(フランス) +1:25
9位 イヴ・ランパールト(ベルギー)
10位 シュールト・バックス(オランダ) +1:29
ロードヨーロッパ選手権2023 女子エリート個人タイムトライアル結果
1位 マーレン・ローセル(スイス) 35:53
2位 アンナ・ヘンダーソン(イギリス) +0:43
3位 クリスティーナ・シュヴァインバーガー(オーストリア) +0:44
4位 オードリー・コードンラゴ(フランス) +0:48
5位 ロッタ・コペッキー(ベルギー) +0:49
6位 アンナ・キーセンホーファー(オーストリア) +0:56
7位 リーアンヌ・マルクス(オランダ) +1:00
8位 エウジェニア・ブヤーク(スロベニア) +1:09
9位 エリノア・バーカー(イギリス) +1:12
10位 ワレリア・コノネンコ(ウクライナ) +1:22
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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