2023/09/17(日) - 08:15
ブエルタ第20ステージは10の3級山岳が設定された獲得標高差4,270mの丘陵ステージ。エヴェネプールをスプリントで退けたワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)が逃げ切り勝利を決め、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)が総合優勝に王手をかけた。
9月16日(土)第20ステージ
マンサナレス・エル・レアル〜グアダラマ 207.8km
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャも残すところあと2日。首都マドリーでの最終日を前に、第20ステージは今大会最長距離207.8kmの難関ステージで争われた。これまで越えてきたような急坂はないものの、10個の3級山岳が用意されたため獲得標高差は4,270m。まずは2つの山岳を越え、連続する3つの3級山岳(エスコンディダ、サンタマリア・デラ・アラメダ、ロブレドンド)を含む53.4kmコースを2周。そして最後に2つの3級山岳を越える。
まるで春先のリエージュ~バストーニュ~リエージュのようなステージに臨んだのは、ここまでの厳しい山岳を越えてきた148名の選手たち。気温18度の曇り空のなかスタートが切られると、リドル・トレックから今年6月にバーレーン・ヴィクトリアスへとやってきた22歳のアントニオ・ティベーリ(イタリア)と、同い年のレナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー)が逃げを打った。
また区間4勝目を狙うレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)も逃げを狙い、アタック合戦の末、最終的に31名による大規模な逃げ集団が形成された。
その中にエヴェネプールを擁するスーダル・クイックステップはマティア・カッタネオ(イタリア)ら計4名を送り、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)などが単独で入る。総合で最もタイムが良いエヴェネプールでもトップから27分遅れだったため、メイン集団を牽引するユンボ・ヴィスマはスローペースにスイッチ。そのため逃げとの差が一気に6分まで拡がった。
順調に3級山岳を越えていく逃げ集団では、人数を絞り込むためこの日7つ目の山岳(残り71km)でベン・ツィーホフ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。それに呼応するようにトーマスも加速したが、最大人数を擁するスーダル・クイックステップが引き戻し、逃げ集団は一時沈静化した。
一方、大会8日目からマイヨロホを着て走るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)はプロトンで笑顔を見せながら距離を消化していく。そのため残り30kmを切る頃に逃げグループとの差は10分を超え、スーダル・クイックステップが先頭固定のまま逃げは最終山岳に突入。そして20名まで人数が絞られていた先頭集団による、ステージ優勝を懸けた本格的な戦いが幕開けた。
頂上まで残り2.3km地点(フィニッシュまで14.5km)で先に仕掛けたのはワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)。この加速にエヴェネプールは反応することができず、追従したファンイートヴェルトと遅れて合流したマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が先頭集団を組む。そして一定のペースで徐々に差を詰めるエヴェネプールを確認したプールスは、頂上手前で再び加速した。
山頂をトップ通過したプールスはファンイートヴェルトやソレルと共に下り、時速80km/hを超えるハイスピードでダウンヒルをこなしたエヴェネプールは、23歳のペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)と共に先頭への合流を果たした。
その10分半遅れで今大会最後の山岳に突入したプロトンでは、モビスターの牽引から総合5位のミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が仕掛ける。しかし総合3位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がアタックを封じたため、集団がひと塊のまま山頂を通過した。
登りで遅れたルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)やティベーリが猛スピードで追走するなか、先頭の5名はローテーションを回しながらグアダラマの街に到達する。そして互いに牽制に入り、一度スピードが落ちた残り500m過ぎた地点でプールスが加速。最終コーナーを利用して後続に僅かな差を作ったプールスは、最終ストレートで後ろを2度確認しながらもがき続けた。
虚を突くアーリースプリントに遅れを取ったエヴェネプールが追いかけたものの、なかなかその差は縮まらない。そしてフィニッシュ手前で並んだエヴェネプールとプールスが同時にハンドルを投げ、ガッツポーズなき僅差の戦いをプールスが制した。
今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュで連覇を達成したエヴェネプールを退け、9度目の出場にして自身初の区間優勝を飾ったプールス。「残り350mに最終コーナーが来ることは把握していた。そこを先頭で抜けてスプリントすれば勝てると思った。信じられない勝利だよ」とこれまで長きに渡ってアシストに徹し、今年のツール・ド・フランスでも初勝利を掴んだプールスは喜んだ。
そして10分遅れでフィニッシュ地点にやってきた総合上位陣を含むプロトンでは、マイヨロホを着るクスとログリッチ、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)の3人が横並びでフィニッシュラインに到達。翌日がパレード走行を含む平坦ステージのため、この時点でクスは総合優勝を実質的に決めた。
フィニッシュ後にヴィンゲゴーやログリッチと抱擁し、駆けつけたパートナーや家族、愛犬と喜びを分かち合ったクス。「ホッとしているよ。序盤からチームとしてレースをコントロールし、ロベルト(ヘーシンク)とディラン(ファンバーレ)がステージの90%を牽引した。長く厳しいレースだったので彼らには脱帽だよ。山岳ステージにもかかわらず、強力な2人(ログリッチとヴィンゲゴー)がいてくれたおかげでリラックスして走ることができた。まだ実感は湧いてこないよ」と語った。
スペインの首都マドリードで行われる翌日の大会最終日をクスが無事に走り切ることができれば、ユンボ・ヴィスマは史上初となる「同一チームによる同年グランツールの全制覇」を果たすことになる。
9月16日(土)第20ステージ
マンサナレス・エル・レアル〜グアダラマ 207.8km
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャも残すところあと2日。首都マドリーでの最終日を前に、第20ステージは今大会最長距離207.8kmの難関ステージで争われた。これまで越えてきたような急坂はないものの、10個の3級山岳が用意されたため獲得標高差は4,270m。まずは2つの山岳を越え、連続する3つの3級山岳(エスコンディダ、サンタマリア・デラ・アラメダ、ロブレドンド)を含む53.4kmコースを2周。そして最後に2つの3級山岳を越える。
まるで春先のリエージュ~バストーニュ~リエージュのようなステージに臨んだのは、ここまでの厳しい山岳を越えてきた148名の選手たち。気温18度の曇り空のなかスタートが切られると、リドル・トレックから今年6月にバーレーン・ヴィクトリアスへとやってきた22歳のアントニオ・ティベーリ(イタリア)と、同い年のレナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー)が逃げを打った。
また区間4勝目を狙うレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)も逃げを狙い、アタック合戦の末、最終的に31名による大規模な逃げ集団が形成された。
その中にエヴェネプールを擁するスーダル・クイックステップはマティア・カッタネオ(イタリア)ら計4名を送り、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)などが単独で入る。総合で最もタイムが良いエヴェネプールでもトップから27分遅れだったため、メイン集団を牽引するユンボ・ヴィスマはスローペースにスイッチ。そのため逃げとの差が一気に6分まで拡がった。
順調に3級山岳を越えていく逃げ集団では、人数を絞り込むためこの日7つ目の山岳(残り71km)でベン・ツィーホフ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。それに呼応するようにトーマスも加速したが、最大人数を擁するスーダル・クイックステップが引き戻し、逃げ集団は一時沈静化した。
一方、大会8日目からマイヨロホを着て走るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)はプロトンで笑顔を見せながら距離を消化していく。そのため残り30kmを切る頃に逃げグループとの差は10分を超え、スーダル・クイックステップが先頭固定のまま逃げは最終山岳に突入。そして20名まで人数が絞られていた先頭集団による、ステージ優勝を懸けた本格的な戦いが幕開けた。
頂上まで残り2.3km地点(フィニッシュまで14.5km)で先に仕掛けたのはワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)。この加速にエヴェネプールは反応することができず、追従したファンイートヴェルトと遅れて合流したマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が先頭集団を組む。そして一定のペースで徐々に差を詰めるエヴェネプールを確認したプールスは、頂上手前で再び加速した。
山頂をトップ通過したプールスはファンイートヴェルトやソレルと共に下り、時速80km/hを超えるハイスピードでダウンヒルをこなしたエヴェネプールは、23歳のペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)と共に先頭への合流を果たした。
その10分半遅れで今大会最後の山岳に突入したプロトンでは、モビスターの牽引から総合5位のミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が仕掛ける。しかし総合3位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がアタックを封じたため、集団がひと塊のまま山頂を通過した。
登りで遅れたルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)やティベーリが猛スピードで追走するなか、先頭の5名はローテーションを回しながらグアダラマの街に到達する。そして互いに牽制に入り、一度スピードが落ちた残り500m過ぎた地点でプールスが加速。最終コーナーを利用して後続に僅かな差を作ったプールスは、最終ストレートで後ろを2度確認しながらもがき続けた。
虚を突くアーリースプリントに遅れを取ったエヴェネプールが追いかけたものの、なかなかその差は縮まらない。そしてフィニッシュ手前で並んだエヴェネプールとプールスが同時にハンドルを投げ、ガッツポーズなき僅差の戦いをプールスが制した。
今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュで連覇を達成したエヴェネプールを退け、9度目の出場にして自身初の区間優勝を飾ったプールス。「残り350mに最終コーナーが来ることは把握していた。そこを先頭で抜けてスプリントすれば勝てると思った。信じられない勝利だよ」とこれまで長きに渡ってアシストに徹し、今年のツール・ド・フランスでも初勝利を掴んだプールスは喜んだ。
そして10分遅れでフィニッシュ地点にやってきた総合上位陣を含むプロトンでは、マイヨロホを着るクスとログリッチ、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)の3人が横並びでフィニッシュラインに到達。翌日がパレード走行を含む平坦ステージのため、この時点でクスは総合優勝を実質的に決めた。
フィニッシュ後にヴィンゲゴーやログリッチと抱擁し、駆けつけたパートナーや家族、愛犬と喜びを分かち合ったクス。「ホッとしているよ。序盤からチームとしてレースをコントロールし、ロベルト(ヘーシンク)とディラン(ファンバーレ)がステージの90%を牽引した。長く厳しいレースだったので彼らには脱帽だよ。山岳ステージにもかかわらず、強力な2人(ログリッチとヴィンゲゴー)がいてくれたおかげでリラックスして走ることができた。まだ実感は湧いてこないよ」と語った。
スペインの首都マドリードで行われる翌日の大会最終日をクスが無事に走り切ることができれば、ユンボ・ヴィスマは史上初となる「同一チームによる同年グランツールの全制覇」を果たすことになる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第20ステージ
1位 | ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス) | 4:59:29 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
3位 | ペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH) | |
4位 | レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
5位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +0:04 |
6位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | +0:26 |
7位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ) | |
10位 | エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) | |
36位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +10:37 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 74:23:42 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:17 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:08 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +3:44 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:03 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +4:14 |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +8:19 |
8位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +8:26 |
9位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +10:08 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +12:04 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 245pts |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 226pts |
3位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 152pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 135pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 51pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | 39pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 74:27:26 |
2位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +4:42 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +6:24 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 222:28:29 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +22:07 |
3位 | UAEチームエミレーツ | +34:12 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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