2023/08/26(土) - 18:39
今年最後のグランツールであるブエルタ・ア・エスパーニャが、本日カタルーニャ州バルセロナで開幕する。初日のチームタイムトライアルで始まる大会は3日目に早くも山岳フィニッシュが登場。第1週目から総合争いが勃発するであろう第9ステージまでのコースを紹介します。
ツール・ド・フランスの直後にUCI自転車世界選手権大会が開催されたため、例年より1週間遅く開幕する第78回ブエルタ・ア・エスパーニャ。その開幕地は史上2度目となるカタルーニャ州バルセロナで、そこから21ステージ/総距離3153.8kmの戦いがスタートする。
総合首位の証であるマイヨロホを巡る争いは、初日のチームタイムトライアルや第10ステージの個人タイムトライアルで繰り広げられる。そして超級山岳トゥールマレー(距離18.9km/平均7.4%)を駆け上がる第13ステージと、”魔の山”アングリル(距離12.4km/平均9.8%)の待つ第17ステージが見所となる。
平坦:4
山頂フィニッシュを含む平坦:2
丘陵:6(山頂フィニッシュ1)
山岳:7(山頂フィニッシュ6)
チームタイムトライアル:1
個人タイムトライアル:1
休息日:2
8月26日(土)第1ステージ
バルセロナ〜バルセロナ 14.8km(チームTT)
オランダのユトレヒトで開幕した2022年に続き、今年も大会初日はチームタイムトライアルでスタートする。地中海に面したビーチを出発し、バルセロナの中心街を巡りながらムンジュイック公園のマジカ噴水の前でフィニッシュする14.8kmのショートコース(昨年は23.3km)。レース主催者が「大きな差は生まれないだろう」と予想する通り、直線距離が短く直角コーナーの多いテクニカルなコースとなっている。
タイム16分前後の勝負と予想されるTTで注目されるのは、昨年のチームTTを制したユンボ・ヴィスマ。今年は東京五輪のTT金メダリストのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)はもちろん、世界トップクラスのTT力を誇るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が揃って出場。その他にも元国内TT王者であるディラン・ファンバーレ(オランダ)やヤン・トラトニク(スロベニア)と、強力なメンバーを揃えるユンボのタイムが期待される。
8月27日(日)第2ステージ
マタロ〜バルセロナ 181.8km(丘陵)
フィニッシュ手前に、展開予測を困難にする急坂が設定された大会2日目。前日のフィニッシュ地点であるムンジュイック公園のスタート後は3級山岳を越え、緩やかに高度を上げながら2級山岳エステナレス(距離12.1km/平均3.9%)を登坂。下り基調でカテゴリーのつかない2つの丘をクリアし、バルセロナ市街地に引かれたフィニッシュへと戻っていく。
勝負所となるのは残り4.7kmから始まる3級山岳ムンジュイック城(距離0.9km/平均9.4%)。集団が一定のペースで登るのであれば集団スプリントとなるが、ログリッチなど爆発力を有する選手のアタックも考えられる。逃げ切りの可能性も含め、展開予測が難しいレースが繰り広げられるだろう。
8月28日(月)第3ステージ
スリア〜アリンサル(アンドラ) 158.5km(山岳/山頂フィニッシュ)
ブエルタは3日目にして早くも山岳フィニッシュで総合勢が争う。その舞台となるのはスペインとフランスの間に挟まれたアンドラ公国で、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)をはじめ多くの選手たちが居を構える場所だ。
選手たちは3日連続でカタルーニャ州をスタートし、一路ピレネー山脈を目指し北上。107.1km地点からアンドラに入国し、中間スプリントの通過直後からこの日1つ目の1級山岳オルディノ(距離17.3km/平均7.7%)に臨む。その後、約12kmの急勾配ダウンヒルを経て、いよいよフィニッシュの待つ1級山岳アリンサル(距離8.3km/平均7.7%)を駆け上がる。
勾配4.9%と緩やかに始まるこの登りは、徐々に勾配を上げて残り3km地点から勾配が13%まで跳ね上がる。今大会9つある山頂フィニッシュの1つ目で、早くも総合勢の調子が明らかとなる。
8月29日(火)第4ステージ
アンドラ・ラ・ベリャ〜タラゴナ 184.6km(丘陵)
大会4日目にしてようやくスプリンターに出番が回ってきた。首都アンドラ・ラ・ベリャを出発した選手たちはすぐさまスペインに入り、再び地中海に面した港町タラゴナを目指し南下する。184.6kmコースの後半には2つの3級山岳が登場するものの、アルト・デ・ベルタル(距離9.3km/平均3.7%)とコル・デ・リッラ(距離5.2km/平均4.9%)と難易度は低い。
そのためスプリンターたちが集団内で越えることができれば、大会最初の集団スプリントが濃厚となる。体力を残す各チームのアシスト陣がいるため、逃げ切りの可能性も低いと言わざるを得ない。
8月30日(水)第5ステージ
モレージャ〜ブリアナ 186.2km(丘陵)
ブエルタ第5ステージは2日連続の集団スプリントが濃厚なレイアウト。内陸にあるモレージャをスタートし、南にある地中海に面したブリアナを目指す前日と似通ったコースマップとなっている。コース中央に2級山岳が待ち受けるものの、平均勾配3.9%(距離11.4%)と恐れるに足らない。
そして残り11.4km地点の中間スプリントで前哨戦を終えたスプリンターたちは、観光地としても知られるブリアナのフィニッシュ地点になだれ込む。厳しい山岳が多いため強豪スプリンターが不出場となった今大会だが、その分若手やこれまで日の目を見なかったサブエースの選手たちがグランツールでの勝利を目指してしのぎを削る。
8月31日(木)第6ステージ
ラ・ヴァイ・ドゥイショー〜ハバランブレ天文台 183.1km(山岳/山頂フィニッシュ)
今大会設定された合計9つの山頂フィニッシュのうち、2つ目が第6ステージに登場。その舞台となるは標高1,956mの頂きに向かう最大勾配16%の1級山岳オブゼルバトリオ・アストロフィジコ・デ・ハバランブレ(ハバランブレ天文台)だ。
地中海も近い標高202mのラ・ヴァイ・ドゥイショーを出発した選手たちは、序盤に脚慣らしとなる3うの3級山岳をクリア。その後も細かいアップダウンをこなしながら徐々に標高を上げ、残り11km地点から2019年大会にも登場した1級山岳ハバランブレ天文台(距離10.9km/平均8%)の登坂に入る。
頂上の天体観測所(2013年完成)を目指す登りの最大勾配16%は麓から3km地点に登場。その後は1度平坦区間を挟み、9〜11%の勾配が淡々と続いていく。急勾配に対応する登坂力はもちろん、森林限界を越えた空気の薄さ(高地)への順応も重要な要素。ここでブエルタ総合優勝を決めることはできないが、総合争いを諦めざるを得ない選手が出てくるだろう。
9月1日(金)第7ステージ
ウティエル〜オリヴァ 200.8km(平坦)
マイヨロホの最終的な行方が垣間見えた翌日は、今大会で2番目に長い200.8kmの長距離コース。そして7日目にしてようやく今大会初めての平坦ステージがやってくる。内陸のウティエルから東へ進み、72km地点でたどり着く地中海から沿岸を走って南のオリヴァを目指す。
カテゴリー山岳が登場しないため当然集団スプリントが濃厚だが、同じく逃げ屋にとっても狙い目となる。中間スプリントは残り34km地点に設定され、ラストは平坦かつ概ね直線路。残り350mに訪れる直角左コーナーが各チームの明暗を分ける鍵となる。
9月2日(土)第8ステージ
デニア〜ショレト・デ・カティ 165km(山岳)
今大会3つ目の山岳ステージは、5つのカテゴリー山岳をこなすタフなレイアウトとなった。コースは地中海に面したデニアから西のショレト・デ・カティを目指す165km。2級、3級、2級、2級山岳を越え、ラストは最大勾配22%の激坂「1級山岳キソレ・デ・カティ(距離3.9km/平均11.4%)」を登坂。フィニッシュ地点はそこから下った先にある。
獲得標高差3,614mのレースではタイムを失った総合系の選手がステージ優勝に目標を切り替え、強力な逃げグループを形成することも考えられる。そのためマイヨロホを保持するチームのペーシングがレース展開を左右するだろう。
9月3日(日)第9ステージ
カルタヘナ〜カラバカ・デ・ラ・クルス 184.5km(丘陵/山頂フィニッシュ)
第1週目の最後を飾るのは184.5kmの丘陵ステージ。登場するカテゴリー山岳は1級と2級山岳の2つだけで、獲得標高差も2,836mと前日よりも800mほど少ない。しかしラストに待ち受ける2級山岳カラバカ・デ・ラ・クルスは厳しい登りだ。
距離8km/平均5.6%と数字上のインパクトはないものの、フィニッシュ手前2km地点に20%の勾配が登場。また直後に短い平坦と下り区間があり、再び16%の勾配が訪れるためアタックのタイミングが重要となる。最終山岳の麓までならばスプリンターでも集団に残ることができる難易度のため、一気に上がるペースが見所のレースとなりそうだ。
9月4日(月)休息日
text:Sotaro.Arakawa
image:A.S.O.
ツール・ド・フランスの直後にUCI自転車世界選手権大会が開催されたため、例年より1週間遅く開幕する第78回ブエルタ・ア・エスパーニャ。その開幕地は史上2度目となるカタルーニャ州バルセロナで、そこから21ステージ/総距離3153.8kmの戦いがスタートする。
総合首位の証であるマイヨロホを巡る争いは、初日のチームタイムトライアルや第10ステージの個人タイムトライアルで繰り広げられる。そして超級山岳トゥールマレー(距離18.9km/平均7.4%)を駆け上がる第13ステージと、”魔の山”アングリル(距離12.4km/平均9.8%)の待つ第17ステージが見所となる。
平坦:4
山頂フィニッシュを含む平坦:2
丘陵:6(山頂フィニッシュ1)
山岳:7(山頂フィニッシュ6)
チームタイムトライアル:1
個人タイムトライアル:1
休息日:2
8月26日(土)第1ステージ
バルセロナ〜バルセロナ 14.8km(チームTT)
オランダのユトレヒトで開幕した2022年に続き、今年も大会初日はチームタイムトライアルでスタートする。地中海に面したビーチを出発し、バルセロナの中心街を巡りながらムンジュイック公園のマジカ噴水の前でフィニッシュする14.8kmのショートコース(昨年は23.3km)。レース主催者が「大きな差は生まれないだろう」と予想する通り、直線距離が短く直角コーナーの多いテクニカルなコースとなっている。
タイム16分前後の勝負と予想されるTTで注目されるのは、昨年のチームTTを制したユンボ・ヴィスマ。今年は東京五輪のTT金メダリストのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)はもちろん、世界トップクラスのTT力を誇るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が揃って出場。その他にも元国内TT王者であるディラン・ファンバーレ(オランダ)やヤン・トラトニク(スロベニア)と、強力なメンバーを揃えるユンボのタイムが期待される。
8月27日(日)第2ステージ
マタロ〜バルセロナ 181.8km(丘陵)
フィニッシュ手前に、展開予測を困難にする急坂が設定された大会2日目。前日のフィニッシュ地点であるムンジュイック公園のスタート後は3級山岳を越え、緩やかに高度を上げながら2級山岳エステナレス(距離12.1km/平均3.9%)を登坂。下り基調でカテゴリーのつかない2つの丘をクリアし、バルセロナ市街地に引かれたフィニッシュへと戻っていく。
勝負所となるのは残り4.7kmから始まる3級山岳ムンジュイック城(距離0.9km/平均9.4%)。集団が一定のペースで登るのであれば集団スプリントとなるが、ログリッチなど爆発力を有する選手のアタックも考えられる。逃げ切りの可能性も含め、展開予測が難しいレースが繰り広げられるだろう。
8月28日(月)第3ステージ
スリア〜アリンサル(アンドラ) 158.5km(山岳/山頂フィニッシュ)
ブエルタは3日目にして早くも山岳フィニッシュで総合勢が争う。その舞台となるのはスペインとフランスの間に挟まれたアンドラ公国で、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)をはじめ多くの選手たちが居を構える場所だ。
選手たちは3日連続でカタルーニャ州をスタートし、一路ピレネー山脈を目指し北上。107.1km地点からアンドラに入国し、中間スプリントの通過直後からこの日1つ目の1級山岳オルディノ(距離17.3km/平均7.7%)に臨む。その後、約12kmの急勾配ダウンヒルを経て、いよいよフィニッシュの待つ1級山岳アリンサル(距離8.3km/平均7.7%)を駆け上がる。
勾配4.9%と緩やかに始まるこの登りは、徐々に勾配を上げて残り3km地点から勾配が13%まで跳ね上がる。今大会9つある山頂フィニッシュの1つ目で、早くも総合勢の調子が明らかとなる。
8月29日(火)第4ステージ
アンドラ・ラ・ベリャ〜タラゴナ 184.6km(丘陵)
大会4日目にしてようやくスプリンターに出番が回ってきた。首都アンドラ・ラ・ベリャを出発した選手たちはすぐさまスペインに入り、再び地中海に面した港町タラゴナを目指し南下する。184.6kmコースの後半には2つの3級山岳が登場するものの、アルト・デ・ベルタル(距離9.3km/平均3.7%)とコル・デ・リッラ(距離5.2km/平均4.9%)と難易度は低い。
そのためスプリンターたちが集団内で越えることができれば、大会最初の集団スプリントが濃厚となる。体力を残す各チームのアシスト陣がいるため、逃げ切りの可能性も低いと言わざるを得ない。
8月30日(水)第5ステージ
モレージャ〜ブリアナ 186.2km(丘陵)
ブエルタ第5ステージは2日連続の集団スプリントが濃厚なレイアウト。内陸にあるモレージャをスタートし、南にある地中海に面したブリアナを目指す前日と似通ったコースマップとなっている。コース中央に2級山岳が待ち受けるものの、平均勾配3.9%(距離11.4%)と恐れるに足らない。
そして残り11.4km地点の中間スプリントで前哨戦を終えたスプリンターたちは、観光地としても知られるブリアナのフィニッシュ地点になだれ込む。厳しい山岳が多いため強豪スプリンターが不出場となった今大会だが、その分若手やこれまで日の目を見なかったサブエースの選手たちがグランツールでの勝利を目指してしのぎを削る。
8月31日(木)第6ステージ
ラ・ヴァイ・ドゥイショー〜ハバランブレ天文台 183.1km(山岳/山頂フィニッシュ)
今大会設定された合計9つの山頂フィニッシュのうち、2つ目が第6ステージに登場。その舞台となるは標高1,956mの頂きに向かう最大勾配16%の1級山岳オブゼルバトリオ・アストロフィジコ・デ・ハバランブレ(ハバランブレ天文台)だ。
地中海も近い標高202mのラ・ヴァイ・ドゥイショーを出発した選手たちは、序盤に脚慣らしとなる3うの3級山岳をクリア。その後も細かいアップダウンをこなしながら徐々に標高を上げ、残り11km地点から2019年大会にも登場した1級山岳ハバランブレ天文台(距離10.9km/平均8%)の登坂に入る。
頂上の天体観測所(2013年完成)を目指す登りの最大勾配16%は麓から3km地点に登場。その後は1度平坦区間を挟み、9〜11%の勾配が淡々と続いていく。急勾配に対応する登坂力はもちろん、森林限界を越えた空気の薄さ(高地)への順応も重要な要素。ここでブエルタ総合優勝を決めることはできないが、総合争いを諦めざるを得ない選手が出てくるだろう。
9月1日(金)第7ステージ
ウティエル〜オリヴァ 200.8km(平坦)
マイヨロホの最終的な行方が垣間見えた翌日は、今大会で2番目に長い200.8kmの長距離コース。そして7日目にしてようやく今大会初めての平坦ステージがやってくる。内陸のウティエルから東へ進み、72km地点でたどり着く地中海から沿岸を走って南のオリヴァを目指す。
カテゴリー山岳が登場しないため当然集団スプリントが濃厚だが、同じく逃げ屋にとっても狙い目となる。中間スプリントは残り34km地点に設定され、ラストは平坦かつ概ね直線路。残り350mに訪れる直角左コーナーが各チームの明暗を分ける鍵となる。
9月2日(土)第8ステージ
デニア〜ショレト・デ・カティ 165km(山岳)
今大会3つ目の山岳ステージは、5つのカテゴリー山岳をこなすタフなレイアウトとなった。コースは地中海に面したデニアから西のショレト・デ・カティを目指す165km。2級、3級、2級、2級山岳を越え、ラストは最大勾配22%の激坂「1級山岳キソレ・デ・カティ(距離3.9km/平均11.4%)」を登坂。フィニッシュ地点はそこから下った先にある。
獲得標高差3,614mのレースではタイムを失った総合系の選手がステージ優勝に目標を切り替え、強力な逃げグループを形成することも考えられる。そのためマイヨロホを保持するチームのペーシングがレース展開を左右するだろう。
9月3日(日)第9ステージ
カルタヘナ〜カラバカ・デ・ラ・クルス 184.5km(丘陵/山頂フィニッシュ)
第1週目の最後を飾るのは184.5kmの丘陵ステージ。登場するカテゴリー山岳は1級と2級山岳の2つだけで、獲得標高差も2,836mと前日よりも800mほど少ない。しかしラストに待ち受ける2級山岳カラバカ・デ・ラ・クルスは厳しい登りだ。
距離8km/平均5.6%と数字上のインパクトはないものの、フィニッシュ手前2km地点に20%の勾配が登場。また直後に短い平坦と下り区間があり、再び16%の勾配が訪れるためアタックのタイミングが重要となる。最終山岳の麓までならばスプリンターでも集団に残ることができる難易度のため、一気に上がるペースが見所のレースとなりそうだ。
9月4日(月)休息日
text:Sotaro.Arakawa
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