2023/08/12(土) - 08:15
前ロード世界王者がタイムトライアルを制覇。フィリッポ・ガンナ(イタリア)に12秒差をつける驚異的な走りで、レムコ・エヴェネプールがベルギー史上初となるTT世界選手権男子エリートの栄冠を掴んだ。
激闘をマチュー・ファンデルプール(オランダ)が制したロードレースから5日後、男子エリート種目を締めくくる個人タイムトライアルが行われた。世界最速の称号を懸けた舞台は、グラスゴーから北東にあるスターリング。47.8kmコースの大部分はフラットだが、4つの丘を越え、フィニッシュ手前750mからは平均勾配6%の石畳を駆け上がる。
UCIワールドサイクリングセンターが支援する難民チームのアフマド・バドレディン(シリア)から順にスタートし、1分20秒間隔で続々と出走する選手の中で、10番目のライアン・マレン(アイルランド)が3つある中間計測のトップタイムを次々と更新する。そしてマレンの58分21秒(平均スピード49.152km/h)というタイムが前半スタート組の基準となった。
アイルランドTT王者に6度輝くマレンのタイムを更新する選手はしばらく現れず、46番目にスタートしたデレク・ジー(カナダ)がようやく4秒上回る。しかしすぐさまネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)が57分11秒の暫定トップタイムを出し、平均スピードを50km/hの大台に乗せる。そして今年限りで引退するローハン・デニス(オーストラリア)が58番目で最後の世界選手権をスタートした。
デニスは第1中間計測(12.6km)を暫定2位、第2中間計測(34.7km)をトップで通過する好走を披露。最後の登りの手前でメカトラによりバイク交換を強いられたものの、オリヴェイラから1秒遅れの57分12秒でフィニッシュし、2018〜19年と連覇を達成した元TT世界王者が7位で世界選手権に別れを告げた。
出場した78名の選手の中でも驚きを与えたのは若きイギリスTT王者のジョシュア・ターリングだった。昨年の世界選手権男子ジュニア個人TTを制し、U23カテゴリーを飛ばして男子エリートに出場した19歳のターリングは中間計測で次々とトップタイムを更新。そしてラストの石畳坂も軽々とクリアし、平均スピード51.101km/hという驚異的な速度で暫定トップとなる56分7秒を叩き出した。
ターリングの直後に出走したワウト・ファンアールト(ベルギー)は、優勝候補の筆頭に挙げられながらもターリングから49秒遅れでフィニッシュ。5日前のロードの疲れがあったためか、本人も「(ロードを走った)日曜のような脚がなかった。フィニッシュタイムを聞きショックを受けた」と悔しさを語り、最終的に5位となった。
好走したアメリカTT王者のブランドン・マクナルティ(アメリカ)はターリングには及ばず、注目されたタデイ・ポガチャル(スロベニア)も最終的に21位と振るわない。そして全体の74番目にフィリッポ・ガンナ(イタリア)がスタートを切ると、第1計測で6秒、第2計測で23秒とターリングがマークしたトップタイムを次々と更新していく。
6日前のトラック競技個人パシュートで金メダルを獲得したガンナは、前半部分の追い風や最後の登りも力で押し切り、暫定トップとなる55分31秒でフィニッシュ。しかし過去に2連覇を果たしているガンナのタイムを、最後から3番目スタートのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が12秒上回った。
ロードレースでは25位と連覇を逃したエヴェネプールは、第1計測こそガンナから6秒遅れで通過したものの、第2計測では12秒逆転することに成功。第3計測(43.5km)でその差は10秒と縮まったものの、ラストに待ち受ける得意の登りを駆け上がり55分19秒のトップタイムを叩き出した。
直後にスタートを切ったシュテファン・キュング(スイス)とトビアス・フォス(ノルウェー)もトップタイムには遠く及ばなかったため、前ロードレース世界王者のエヴェネプールが自身初となるタイムトライアルのタイトルを、史上最年少となる23歳で手に入れた。
弱冠19歳にして出場した2019年では2位に入り、2021年、22年は3位とあと少しのところで優勝を逃していたエヴェネプール。「世界選手権のタイムトライアルは今シーズン最大とも言っていい目標だった。長年このタイトルを追い求め、何度も表彰台には上がっていたがアルカンシエルを逃し続けていた。とても距離が長い上に大部分が平坦路のため体重の軽い僕には適したコースではなく、風も強いタフなコースだった。しかし調子はとても良く、優勝することができて本当に嬉しいよ」とエヴェネプールは、昨年のロードに続き男子エリートでは2枚目となるアルカンシエルを喜んだ。
また1994年に開始した世界選手権のタイムトライアルでは、これが意外にもベルギー勢による初優勝となった。
「過去最高の走りができたが、レムコには及ばなかった」と悔しがるガンナが2位、3位には19歳のターリングが入り、共にイネオス・グレナディアーズに所属する2人が表彰台に上がっている。
選手のコメントは別記事にてお伝えします。
激闘をマチュー・ファンデルプール(オランダ)が制したロードレースから5日後、男子エリート種目を締めくくる個人タイムトライアルが行われた。世界最速の称号を懸けた舞台は、グラスゴーから北東にあるスターリング。47.8kmコースの大部分はフラットだが、4つの丘を越え、フィニッシュ手前750mからは平均勾配6%の石畳を駆け上がる。
UCIワールドサイクリングセンターが支援する難民チームのアフマド・バドレディン(シリア)から順にスタートし、1分20秒間隔で続々と出走する選手の中で、10番目のライアン・マレン(アイルランド)が3つある中間計測のトップタイムを次々と更新する。そしてマレンの58分21秒(平均スピード49.152km/h)というタイムが前半スタート組の基準となった。
アイルランドTT王者に6度輝くマレンのタイムを更新する選手はしばらく現れず、46番目にスタートしたデレク・ジー(カナダ)がようやく4秒上回る。しかしすぐさまネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)が57分11秒の暫定トップタイムを出し、平均スピードを50km/hの大台に乗せる。そして今年限りで引退するローハン・デニス(オーストラリア)が58番目で最後の世界選手権をスタートした。
デニスは第1中間計測(12.6km)を暫定2位、第2中間計測(34.7km)をトップで通過する好走を披露。最後の登りの手前でメカトラによりバイク交換を強いられたものの、オリヴェイラから1秒遅れの57分12秒でフィニッシュし、2018〜19年と連覇を達成した元TT世界王者が7位で世界選手権に別れを告げた。
出場した78名の選手の中でも驚きを与えたのは若きイギリスTT王者のジョシュア・ターリングだった。昨年の世界選手権男子ジュニア個人TTを制し、U23カテゴリーを飛ばして男子エリートに出場した19歳のターリングは中間計測で次々とトップタイムを更新。そしてラストの石畳坂も軽々とクリアし、平均スピード51.101km/hという驚異的な速度で暫定トップとなる56分7秒を叩き出した。
ターリングの直後に出走したワウト・ファンアールト(ベルギー)は、優勝候補の筆頭に挙げられながらもターリングから49秒遅れでフィニッシュ。5日前のロードの疲れがあったためか、本人も「(ロードを走った)日曜のような脚がなかった。フィニッシュタイムを聞きショックを受けた」と悔しさを語り、最終的に5位となった。
好走したアメリカTT王者のブランドン・マクナルティ(アメリカ)はターリングには及ばず、注目されたタデイ・ポガチャル(スロベニア)も最終的に21位と振るわない。そして全体の74番目にフィリッポ・ガンナ(イタリア)がスタートを切ると、第1計測で6秒、第2計測で23秒とターリングがマークしたトップタイムを次々と更新していく。
6日前のトラック競技個人パシュートで金メダルを獲得したガンナは、前半部分の追い風や最後の登りも力で押し切り、暫定トップとなる55分31秒でフィニッシュ。しかし過去に2連覇を果たしているガンナのタイムを、最後から3番目スタートのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が12秒上回った。
ロードレースでは25位と連覇を逃したエヴェネプールは、第1計測こそガンナから6秒遅れで通過したものの、第2計測では12秒逆転することに成功。第3計測(43.5km)でその差は10秒と縮まったものの、ラストに待ち受ける得意の登りを駆け上がり55分19秒のトップタイムを叩き出した。
直後にスタートを切ったシュテファン・キュング(スイス)とトビアス・フォス(ノルウェー)もトップタイムには遠く及ばなかったため、前ロードレース世界王者のエヴェネプールが自身初となるタイムトライアルのタイトルを、史上最年少となる23歳で手に入れた。
弱冠19歳にして出場した2019年では2位に入り、2021年、22年は3位とあと少しのところで優勝を逃していたエヴェネプール。「世界選手権のタイムトライアルは今シーズン最大とも言っていい目標だった。長年このタイトルを追い求め、何度も表彰台には上がっていたがアルカンシエルを逃し続けていた。とても距離が長い上に大部分が平坦路のため体重の軽い僕には適したコースではなく、風も強いタフなコースだった。しかし調子はとても良く、優勝することができて本当に嬉しいよ」とエヴェネプールは、昨年のロードに続き男子エリートでは2枚目となるアルカンシエルを喜んだ。
また1994年に開始した世界選手権のタイムトライアルでは、これが意外にもベルギー勢による初優勝となった。
「過去最高の走りができたが、レムコには及ばなかった」と悔しがるガンナが2位、3位には19歳のターリングが入り、共にイネオス・グレナディアーズに所属する2人が表彰台に上がっている。
選手のコメントは別記事にてお伝えします。
ロード世界選手権2023男子エリートタイムトライアル結果
順位 | 選手名 | タイム | 平均時速 |
---|---|---|---|
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー) | 55:19 | 51.847km/h |
2位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア) | +0:12 | 51.66km/h |
3位 | ジョシュア・ターリング(イギリス) | +0:48 | 51.108km/h |
4位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ) | +1:27 | 50.523km/h |
5位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー) | +1:37 | 50.375km/h |
6位 | ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) | +1:52 | 50.154km/h |
7位 | ローハン・デニス(オーストラリア) | +1:53 | 50.14km/h |
8位 | マティア・カッタネオ(イタリア) | +1:57 | 50.081km/h |
9位 | ミッケル・ビョーグ(デンマーク) | +1:59 | 50.052km/h |
10位 | ゲラント・トーマス(イギリス) | +2:04 | 49.98km/h |
11位 | トビアス・フォス(ノルウェー) | ||
12位 | シュテファン・キュング(スイス) | +2:17 | 49.792km/h |
21位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) | +3:06 | 49.096km/h |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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