2023/08/10(木) - 15:22
試験イベントを経て2回めの開催を迎えた木曽おんたけグランフォンド。開田高原と日和田高原をつなぎ、御嶽山と乗鞍岳を眺めながら走る120km/獲得標高2,000mの山岳ライドは涼しさと郷土の魅力にあふれていた。
木曽おんたけグランフォンドの特徴は、距離120kmに獲得標高2,000mが詰め込まれた山岳ライド。走りごたえのある山岳ルートには信号がほとんどなく、ノンストップで走れる。魅力あふれるロケーションが広がる木曽エリアは秘境といってもいい抜群の環境だ。
スタート/フィニッシュ地点になったのはセルフディスカバリーアドベンチャー王滝の会場としてもおなじみの王滝村・松原スポーツ公園。昨年からはより集合しやすい場所へと変更を受けた。
前日受付もあるこの会場、クルマなら高速のインターから一般道で約50kmあるアクセス不便な立地だが、そのおかげで魅力ある土地ながら訪れる人が極端に少ない。それでも王滝村はスポーツ合宿で有名な土地で宿泊施設も多く、かつ近く(コース沿い)には温泉でも有名な木曽福島(福島宿)や開田高原など、宿泊を目的としても魅力的な場所が多いから、参加者の多くは前泊でやってくる。筆者も会場から御岳スキー場へと登った民宿に前泊。標高の高さのおかげでエアコン無しでも涼しい夜を過ごせた。
昨年の第一回は50人弱だった参加者は今年200人を集めた。当日のスタート時間は早朝6:30。下界が猛暑のなか、涼しいうちに距離を稼げるのはいい。御岳湖沿いの湖畔道路はクルマも皆無で、下り基調で走り出せるからお目覚め&ウォームアップにも都合がいい。
「日本で最も美しい村連合」に名を連ねる木曽福島へと下り、風情ある旧中山道の町並みが続くなか、地酒「中乗りさん」で有名な中善酒造の私設エイドに到着。ここでの最初の補給メニューは甘酒(ノンアルコール)。中善酒造の社員の皆さんが振る舞ってくれるのが嬉しい。
福島宿を後にしたら、次のエイドまでは平坦&緩い登り基調。ねぎ味噌おにぎりときゅうりをいただく。ちょうど軽い朝食にもなり、汗をかいた身体に塩気が嬉しい。補給をすませたら地蔵峠への距離8km・獲得標高485mのヒルクライムが始まる。
峠への旧飛騨街道は林道のようなローカル道で、すでに朝の日差しが強くなりかける時間だが、周囲を森に囲まれているため日陰で涼しく走れる。急坂だけど風情のある峠道を上り詰めたら地蔵峠だ。頂上の道路脇には赤い毛糸の帽子を被ったお地蔵さんが佇む。
少し下ったところにある展望台からは御嶽山の見事な山容が眺められた。絶景である。ところで今回は九蔵峠が工事中のため通れず、ルートが直前になって変更になった。九蔵峠は御嶽山の最高の展望フォトスポットであり、ハイライトでもあるので少々残念。しかしちょうど雲が出はじめたため、御嶽山の頂上は拝めなくなってきた。最高のパノラマポイントはまた次回のお楽しみに。
クルマもほとんど通らず、空に向かって開けるような道がなんとも気持ち良い開田高原。彩菜館エイドでは名物の蕎麦とブルーベリーをいただく。小腹を満たしたら向かうは岐阜県高山市との県境にある長峰峠だ。距離約3.5km・標高差170mの緩い勾配をたんたんと登る。
長峰峠を越えた先にはこのイベント唯一の関門がまっている。メカニックサポートブースと給水所、そして水浴びができるバケツの用意が嬉しい。標高はすでに1,500mあるため酷暑というほどではないが、日差しの強さにクールダウンのため頭から水を被り、サイクルジャージも濡らして次なる登りに備えた。スタッフの細かい気配りに感謝。眼の前にはこれから登る御嶽山がそびえ立つ。ここからは木陰の無い広い道の登坂が続く。
関門からは日和田高原から柳蘭峠を経て、標高1793m地点までの標高差500m・距離9kmの上り。往復になるのでこの関門から先に行くには時間の余裕と覚悟が必要だ。
日和田高原を行く道路は周囲を白樺林に囲まれて涼やか。頂上までは勾配は緩めで淡々と登ることができる。標高を上げるにつれてだんだんと空気が薄くなっていくのを感じる。そして気温も下がり、涼しくなるのが嬉しい。
チャオ御岳スキー場前の広場が頂上エイド。つづら折れの先の広場に設置されたテントで休むこともでき、この最高標高地点で一緒に走る仲間の到着を待つ。ここで供されるのは大平(おおびら)と呼ぶ具だくさんの汁と五平餅、糀味噌きゅうりなど、郷土色あふれるおもてなし。
この視界が開けたKOM(山岳)ポイントからは向かいに乗鞍岳が眺められる。そして背後を見上げれば
御嶽山の頂上が眼前に迫る。この2つが同時に眺められるのがこのライドのハイライトだ。
続々と登ってくる仲間たちに声援を送りながら、灼熱の外界からは10℃以上は低いであろう涼しさを楽しむ。到着時間に差はあれど、もっとも暑くなるお昼時にこの涼しい最高標高地点に登るよう計算されたルートプログラムに感心しきりだ。
頂上付近には「飛騨御嶽尚子ボルダーロード」の石碑がある。岐阜県出身の金メダリスト、高橋尚子さんにちなんで名付けられたこの地は高地トレーニングのメッカとして整備されており、東京五輪前には新城幸也や増田成幸など日本代表選手たちもこの地でトレーニングしたという。
涼しくて気持ちのいい休憩を終えたら、下りメインの終盤へ。すべて下りとは言わないが、約40kmのほとんどがダウンヒルの帰路で、長峰峠への少しの登り返しを除けば登りはもう待っていない。
帰路も視界が広くて気持ち良い高原ルートが続く。グランピング施設もある木曽温泉黄金の湯に設置されたエイドで休憩。ここでは目覚ましのソフトドリンクとスウィーツが供された。標高が下がって再び気温が上がってくるタイミングで、ちょうど欲しくなるものが用意されていることに感心。ルート上にコンビニや商店は無いので、こうした補給食のチョイスとペース配分の絶妙さがありがたい。
そして下り切る前にぜひ立ち寄りたい名所スポット「天然炭酸水」が登場。スピードを出して下っている途中の反対車線沿いの民家の前にある小さな湧き水なので見逃す確率は極めて高いが、そこはこの土地を知り尽くした鈴木雷太プロデューサーと一緒に走っていたおかげで見過ごさなかった。
この世にも珍しい炭酸泉は軽く発泡した天然の湧き水で、冷たくて爽やかな味。ボトルにも汲んで帰路に飲むのを楽しむことに。次回参加する人は、予め場所をマークして素通りしてしまわないようにしよう!(フィニッシュまで残り16km地点)。ただし民家なのでマナーは正しく。
標高が下がり、外界に降りると真夏の気温になった。木曽福島からはなだらかな登りでフィニッシュ地点の王滝村へ。湖畔を走るラスト10kmは暑さを感じたが、フィニッシュまで一日を通して涼しく過ごせたのが良かった。もっとも速い人で昼過ぎの到着だったが、15時までにはほとんどの人が走り終える。
九蔵峠の通行止めによるルート変更により実測走行データで116km・獲得標高1,950mだった(本来は2,300m)。十分すぎる走りごたえだが、クルマもほとんど通らない道でのライドはストレスが無く、関東から来た身にとっては連日の猛暑を逃れることができた避暑ライドだった。実際、最近は屋外でライドできる日が無かったほどなのでライド不足を解消することができた。長野県松本市からの参加者でさえ、木曽の涼しさとライド環境の素晴らしさに感激していた人がいたのが印象的だ。
10月開催から7月末開催も良い変更だと思った(標高が高いため10月は天候により過酷になることも)。また200人という少人数規模の大会は参加者の皆さんの顔が見えて、アットホームな雰囲気がとても良かった。秘境と言っても良い土地で、イベントとしてサポート付きで走れるのは心強いものだ。
「木曽の清涼感と山岳美、サイクリストに愛されてきた峠を味わってほしい」
大会プロデューサー鈴木雷太さん
木曽は僕が東京五輪MTBの代表監督を務めた際に、事前合宿をこのエリアで行った際に土地の魅力に惚れ込んだことが開催のきっかけです。信号がなく景色が良いことに驚いて、いつか木曽でグランフォンドを開催したいと思ったんです。
木曽の良さは清涼感にあります。夏の涼しさを味わってほしいとの思いで今回は7月末開催にしました。残雪のある5月もいいんですが、AACR(アルプスあずみのセンチュリーライド)もあるので。
早朝スタートで標高を上げていき、ちょうど暑い時間帯を涼しい高原で過ごせるようにスケジュールを組んでみましたが、狙い通り涼しく走れました。第1回から20km距離は伸びましたが難易度は変わりません。
標高差はあるけど前半に登ってしまえば後半は楽になること、坂は勾配が厳しすぎる箇所がなく、なだらかであることなど、走りやすいルートにして気持ちよくフィニッシュに帰ってこれるようにしています。クルマが少なく横道からの進入もないので安全に走れます。
コースに登場する峠は昔からサイクリストに愛されてきた渋い峠です。今回は御嶽に雲がかかってしまったので、それだけは残念ですね。今回は参加者が200人。参加者の声を聞いてみると皆が大満足してくれているので、この先1,000人ぐらいのイベントになるといいなと思っています。
木曽おんたけグランフォンドの特徴は、距離120kmに獲得標高2,000mが詰め込まれた山岳ライド。走りごたえのある山岳ルートには信号がほとんどなく、ノンストップで走れる。魅力あふれるロケーションが広がる木曽エリアは秘境といってもいい抜群の環境だ。
スタート/フィニッシュ地点になったのはセルフディスカバリーアドベンチャー王滝の会場としてもおなじみの王滝村・松原スポーツ公園。昨年からはより集合しやすい場所へと変更を受けた。
前日受付もあるこの会場、クルマなら高速のインターから一般道で約50kmあるアクセス不便な立地だが、そのおかげで魅力ある土地ながら訪れる人が極端に少ない。それでも王滝村はスポーツ合宿で有名な土地で宿泊施設も多く、かつ近く(コース沿い)には温泉でも有名な木曽福島(福島宿)や開田高原など、宿泊を目的としても魅力的な場所が多いから、参加者の多くは前泊でやってくる。筆者も会場から御岳スキー場へと登った民宿に前泊。標高の高さのおかげでエアコン無しでも涼しい夜を過ごせた。
昨年の第一回は50人弱だった参加者は今年200人を集めた。当日のスタート時間は早朝6:30。下界が猛暑のなか、涼しいうちに距離を稼げるのはいい。御岳湖沿いの湖畔道路はクルマも皆無で、下り基調で走り出せるからお目覚め&ウォームアップにも都合がいい。
「日本で最も美しい村連合」に名を連ねる木曽福島へと下り、風情ある旧中山道の町並みが続くなか、地酒「中乗りさん」で有名な中善酒造の私設エイドに到着。ここでの最初の補給メニューは甘酒(ノンアルコール)。中善酒造の社員の皆さんが振る舞ってくれるのが嬉しい。
福島宿を後にしたら、次のエイドまでは平坦&緩い登り基調。ねぎ味噌おにぎりときゅうりをいただく。ちょうど軽い朝食にもなり、汗をかいた身体に塩気が嬉しい。補給をすませたら地蔵峠への距離8km・獲得標高485mのヒルクライムが始まる。
峠への旧飛騨街道は林道のようなローカル道で、すでに朝の日差しが強くなりかける時間だが、周囲を森に囲まれているため日陰で涼しく走れる。急坂だけど風情のある峠道を上り詰めたら地蔵峠だ。頂上の道路脇には赤い毛糸の帽子を被ったお地蔵さんが佇む。
少し下ったところにある展望台からは御嶽山の見事な山容が眺められた。絶景である。ところで今回は九蔵峠が工事中のため通れず、ルートが直前になって変更になった。九蔵峠は御嶽山の最高の展望フォトスポットであり、ハイライトでもあるので少々残念。しかしちょうど雲が出はじめたため、御嶽山の頂上は拝めなくなってきた。最高のパノラマポイントはまた次回のお楽しみに。
クルマもほとんど通らず、空に向かって開けるような道がなんとも気持ち良い開田高原。彩菜館エイドでは名物の蕎麦とブルーベリーをいただく。小腹を満たしたら向かうは岐阜県高山市との県境にある長峰峠だ。距離約3.5km・標高差170mの緩い勾配をたんたんと登る。
長峰峠を越えた先にはこのイベント唯一の関門がまっている。メカニックサポートブースと給水所、そして水浴びができるバケツの用意が嬉しい。標高はすでに1,500mあるため酷暑というほどではないが、日差しの強さにクールダウンのため頭から水を被り、サイクルジャージも濡らして次なる登りに備えた。スタッフの細かい気配りに感謝。眼の前にはこれから登る御嶽山がそびえ立つ。ここからは木陰の無い広い道の登坂が続く。
関門からは日和田高原から柳蘭峠を経て、標高1793m地点までの標高差500m・距離9kmの上り。往復になるのでこの関門から先に行くには時間の余裕と覚悟が必要だ。
日和田高原を行く道路は周囲を白樺林に囲まれて涼やか。頂上までは勾配は緩めで淡々と登ることができる。標高を上げるにつれてだんだんと空気が薄くなっていくのを感じる。そして気温も下がり、涼しくなるのが嬉しい。
チャオ御岳スキー場前の広場が頂上エイド。つづら折れの先の広場に設置されたテントで休むこともでき、この最高標高地点で一緒に走る仲間の到着を待つ。ここで供されるのは大平(おおびら)と呼ぶ具だくさんの汁と五平餅、糀味噌きゅうりなど、郷土色あふれるおもてなし。
この視界が開けたKOM(山岳)ポイントからは向かいに乗鞍岳が眺められる。そして背後を見上げれば
御嶽山の頂上が眼前に迫る。この2つが同時に眺められるのがこのライドのハイライトだ。
続々と登ってくる仲間たちに声援を送りながら、灼熱の外界からは10℃以上は低いであろう涼しさを楽しむ。到着時間に差はあれど、もっとも暑くなるお昼時にこの涼しい最高標高地点に登るよう計算されたルートプログラムに感心しきりだ。
頂上付近には「飛騨御嶽尚子ボルダーロード」の石碑がある。岐阜県出身の金メダリスト、高橋尚子さんにちなんで名付けられたこの地は高地トレーニングのメッカとして整備されており、東京五輪前には新城幸也や増田成幸など日本代表選手たちもこの地でトレーニングしたという。
涼しくて気持ちのいい休憩を終えたら、下りメインの終盤へ。すべて下りとは言わないが、約40kmのほとんどがダウンヒルの帰路で、長峰峠への少しの登り返しを除けば登りはもう待っていない。
帰路も視界が広くて気持ち良い高原ルートが続く。グランピング施設もある木曽温泉黄金の湯に設置されたエイドで休憩。ここでは目覚ましのソフトドリンクとスウィーツが供された。標高が下がって再び気温が上がってくるタイミングで、ちょうど欲しくなるものが用意されていることに感心。ルート上にコンビニや商店は無いので、こうした補給食のチョイスとペース配分の絶妙さがありがたい。
そして下り切る前にぜひ立ち寄りたい名所スポット「天然炭酸水」が登場。スピードを出して下っている途中の反対車線沿いの民家の前にある小さな湧き水なので見逃す確率は極めて高いが、そこはこの土地を知り尽くした鈴木雷太プロデューサーと一緒に走っていたおかげで見過ごさなかった。
この世にも珍しい炭酸泉は軽く発泡した天然の湧き水で、冷たくて爽やかな味。ボトルにも汲んで帰路に飲むのを楽しむことに。次回参加する人は、予め場所をマークして素通りしてしまわないようにしよう!(フィニッシュまで残り16km地点)。ただし民家なのでマナーは正しく。
標高が下がり、外界に降りると真夏の気温になった。木曽福島からはなだらかな登りでフィニッシュ地点の王滝村へ。湖畔を走るラスト10kmは暑さを感じたが、フィニッシュまで一日を通して涼しく過ごせたのが良かった。もっとも速い人で昼過ぎの到着だったが、15時までにはほとんどの人が走り終える。
九蔵峠の通行止めによるルート変更により実測走行データで116km・獲得標高1,950mだった(本来は2,300m)。十分すぎる走りごたえだが、クルマもほとんど通らない道でのライドはストレスが無く、関東から来た身にとっては連日の猛暑を逃れることができた避暑ライドだった。実際、最近は屋外でライドできる日が無かったほどなのでライド不足を解消することができた。長野県松本市からの参加者でさえ、木曽の涼しさとライド環境の素晴らしさに感激していた人がいたのが印象的だ。
10月開催から7月末開催も良い変更だと思った(標高が高いため10月は天候により過酷になることも)。また200人という少人数規模の大会は参加者の皆さんの顔が見えて、アットホームな雰囲気がとても良かった。秘境と言っても良い土地で、イベントとしてサポート付きで走れるのは心強いものだ。
「木曽の清涼感と山岳美、サイクリストに愛されてきた峠を味わってほしい」
大会プロデューサー鈴木雷太さん
木曽は僕が東京五輪MTBの代表監督を務めた際に、事前合宿をこのエリアで行った際に土地の魅力に惚れ込んだことが開催のきっかけです。信号がなく景色が良いことに驚いて、いつか木曽でグランフォンドを開催したいと思ったんです。
木曽の良さは清涼感にあります。夏の涼しさを味わってほしいとの思いで今回は7月末開催にしました。残雪のある5月もいいんですが、AACR(アルプスあずみのセンチュリーライド)もあるので。
早朝スタートで標高を上げていき、ちょうど暑い時間帯を涼しい高原で過ごせるようにスケジュールを組んでみましたが、狙い通り涼しく走れました。第1回から20km距離は伸びましたが難易度は変わりません。
標高差はあるけど前半に登ってしまえば後半は楽になること、坂は勾配が厳しすぎる箇所がなく、なだらかであることなど、走りやすいルートにして気持ちよくフィニッシュに帰ってこれるようにしています。クルマが少なく横道からの進入もないので安全に走れます。
コースに登場する峠は昔からサイクリストに愛されてきた渋い峠です。今回は御嶽に雲がかかってしまったので、それだけは残念ですね。今回は参加者が200人。参加者の声を聞いてみると皆が大満足してくれているので、この先1,000人ぐらいのイベントになるといいなと思っています。
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