2023/08/07(月) - 09:20
4名の精鋭集団によるサバイバレースを制したのは、残り22km地点から飛び出し、独走に持ち込んだマチュー・ファンデルプール(オランダ)だった。祖父と父があと一歩届かなかった世界選手権男子エリートロードレースのタイトルを、ファンデルプールがついに手に入れた。
UCI自転車世界選手権大会の注目種目の1つ、男子エリートロードレースが8月6日(日)に開催された。スコットランドの首都エディンバラをスタートし、フィニッシュの待つ港湾都市グラスゴーに向けて西に進路を取る。その途中にこの日最長の登りであるクロウ・ロード(距離5.9km/平均4.8%/最大9.7%)を越え、グラスゴーの市街地に設定された14.3kmのコースを10周する。レース時間が実に6時間を超えた271.1kmコースで、世界王者を争う熱戦が繰り広げられた。
スタート地点には男子U23ロードの前世界王者であるエフゲニー・フェドロフ(カザフスタン)や、入国ビザが発行されず出場できなかったエリトリア代表の3名などを除く193名が集結。その中には大会連覇を目論むレムコ・エヴェネプール(ベルギー)はもちろん、出場選手の中で最多となる15回目の世界選手権に挑む新城幸也などの姿も。そして現地時間の午前9時40分に、曇り空のエディンバラでスタートが切られた。
アンギラやバチカンなど小国出身の選手たちがアタックする中、スタート後20kmでクリスツ・ニーランズ(ラトビア)やオウェイン・ドゥール(イギリス)など実力確かな9名が逃げを打つ。それを追うメイン集団はエヴェネプールやワウト・ファンアールトなど強力なメンバーを揃えるベルギーやイギリスなどがコントロール。しかし残り192km地点で抗議デモがコースを塞ぎ、約50分間に渡りレースが中断された。
そして6分半という中断直前と同じタイム差でレースが再開。逃げ集団が順調にクロウ・ロード(距離5.9km/平均4.8%)を越えた一方で、ベルギーのペースアップに新城が遅れるシーンも。その後新城はメイン集団に復帰したものの、160km地点で無念のリタイアとなった。
そして選手たちは熱狂に包まれるグラスゴー市街地に設定されたコースへと入っていく。1回目のフィニッシュラインを通過した時点(残り143km)で9カ国9名による逃げグループと、マッズ・ピーダスンを擁するデンマークが仕事を担うプロトンの差は3分44秒。徐々に縮まっていくタイム差に元世界王者のジュリアン・アラフィリップ(フランス)がセーアン・クラーウアナスン(デンマーク)と共にアタック。しかしこれは不発に終わり、入れ替わるように飛び出したマティアス・スケルモース(デンマーク)ら3名も、ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)の高速牽引によって吸収された。
ハイペースを刻むベルギーがレース展開を厳しくし、プロトンの人数を絞っていく。それにアラフィリップやスプリンターのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)などが遅れ、30名程度となったプロトンからエヴェネプールが仕掛ける。しかしこれはライバルの様子を窺っただけで、続けてマッテオ・トレンティン(イタリア)とマチュー・ファンデルプール(オランダ)の加速により更にプロトンは縮小していった。
好調に脚を回していたトレンティンが落車しリタイアする一方で、逃げ集団は崩壊してケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ)が単独先頭となる。36秒差まで迫ったプロトンでは残り74kmでピーダスンが加速し、そのカウンターでファンデルプールが仕掛ける。その動きにはファンアールトやタデイ・ポガチャル(スロベニア)、アルベルト・ベッティオル(イタリア)、逃げから遅れたマチュー・ディナム(オーストラリア)が追従した。
ファンデルプールらが残り72kmで逃げていたヴェルマークを捉えたものの、7名となった先頭集団のペースは上がらず、大会連覇を目論むエヴェネプールを含む追走集団が合流。再びひと塊となった集団が周回を重ねるなか、エヴェネプールが繰り返すアタックは決まらず、ファンアールトによるシッティングの加速もファンデルプールが許さない。
そして残り55km地点の補給ゾーンでベッティオルによる飛び出しが決まる。2019年のロンド・ファン・フラーンデレンを制したベッティオルは、雨の降り出したコースで一気に後続から30秒を奪取。それを追う集団ではジョナタン・ナルバエス(エクアドル)の落車とティシュ・ベノート (ベルギー)の高速牽引より、ファンアールトとピーダスン、ファンデルプール、ポガチャルというビッグネームによる4名の追走集団が形成された。
雨と晴れ間が目まぐるしく変わり、路面もドライとウェットが入り乱れるグラスゴー市街地の周回コース。残り22km地点の登りで追走集団がベッティオルの姿を捉えると、ファンデルプールが加速して後続を引き離す。「誰かがついてくると思っていたので差ができて驚いた」と言うファンデルプールは「後ろに誰もいない事実が僕に翼をくれた」と振り返る通り出力を上げ、リードを拡げていく。
それに反応できず、追走を強いられたファンアールトらが牽制に入るなか、雨で濡れた路面のコーナーでファンデルプールが落車する。すぐにバイクに飛び乗ったファンデルプールは再スタートを切り、右足のシューズが壊れながらも力強いペダリングを続行する。また無線の使用が禁じられ、ファンデルプールの落車の報がすぐにファンアールトたちには入らなかったこともあり、追走のペースは一向に上がらなかった。
そのため2位争いに照準を切り替えた追走を置き去りにして、ファンデルプールが大歓声の最終ストレートに到達。雨が上がり、太陽が差し込むフィニッシュラインを、信じられないと頭を振って頭を抱え両手で天を指さしたファンデルプールが通過した。
シクロクロスでは幾度となく世界王者に輝き、2013年には男子ジュニアのロード世界選手権を制しているファンデルプール。祖父のレイモン・プリドールと父アドリがいずれも2位と掴むことができなかったタイトルを、ようやく手に入れたファンデルプールは「これが僕に残された最大の目標だった。それを今日達成することができ、信じられない気持ちだ。ロードではこれがキャリア最大の勝利だろう。他の選手たちが限界を迎えていると思って仕掛けた。単独となって見舞われた落車は、リスクを全く冒していなかったのにもかかわらず起こったこと。最後のストレートでは昨年のリベンジのような気持ちで走っていた。本当に素晴らしい瞬間だったよ」と喜んだ。
表彰台を争う後続ではファンアールトが飛び出し、2度目となる2位を獲得。また3位争いはピーダスンとのスプリントをポガチャルが制し、自身初の表彰台に上がっている。
なお、ファンデルプールは8月12日(土)のマウンテンバイク・クロスカントリーに出場予定で、史上初となる3種目でのアルカンシエル獲得を目指す。
UCI自転車世界選手権大会の注目種目の1つ、男子エリートロードレースが8月6日(日)に開催された。スコットランドの首都エディンバラをスタートし、フィニッシュの待つ港湾都市グラスゴーに向けて西に進路を取る。その途中にこの日最長の登りであるクロウ・ロード(距離5.9km/平均4.8%/最大9.7%)を越え、グラスゴーの市街地に設定された14.3kmのコースを10周する。レース時間が実に6時間を超えた271.1kmコースで、世界王者を争う熱戦が繰り広げられた。
スタート地点には男子U23ロードの前世界王者であるエフゲニー・フェドロフ(カザフスタン)や、入国ビザが発行されず出場できなかったエリトリア代表の3名などを除く193名が集結。その中には大会連覇を目論むレムコ・エヴェネプール(ベルギー)はもちろん、出場選手の中で最多となる15回目の世界選手権に挑む新城幸也などの姿も。そして現地時間の午前9時40分に、曇り空のエディンバラでスタートが切られた。
アンギラやバチカンなど小国出身の選手たちがアタックする中、スタート後20kmでクリスツ・ニーランズ(ラトビア)やオウェイン・ドゥール(イギリス)など実力確かな9名が逃げを打つ。それを追うメイン集団はエヴェネプールやワウト・ファンアールトなど強力なメンバーを揃えるベルギーやイギリスなどがコントロール。しかし残り192km地点で抗議デモがコースを塞ぎ、約50分間に渡りレースが中断された。
そして6分半という中断直前と同じタイム差でレースが再開。逃げ集団が順調にクロウ・ロード(距離5.9km/平均4.8%)を越えた一方で、ベルギーのペースアップに新城が遅れるシーンも。その後新城はメイン集団に復帰したものの、160km地点で無念のリタイアとなった。
そして選手たちは熱狂に包まれるグラスゴー市街地に設定されたコースへと入っていく。1回目のフィニッシュラインを通過した時点(残り143km)で9カ国9名による逃げグループと、マッズ・ピーダスンを擁するデンマークが仕事を担うプロトンの差は3分44秒。徐々に縮まっていくタイム差に元世界王者のジュリアン・アラフィリップ(フランス)がセーアン・クラーウアナスン(デンマーク)と共にアタック。しかしこれは不発に終わり、入れ替わるように飛び出したマティアス・スケルモース(デンマーク)ら3名も、ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)の高速牽引によって吸収された。
ハイペースを刻むベルギーがレース展開を厳しくし、プロトンの人数を絞っていく。それにアラフィリップやスプリンターのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)などが遅れ、30名程度となったプロトンからエヴェネプールが仕掛ける。しかしこれはライバルの様子を窺っただけで、続けてマッテオ・トレンティン(イタリア)とマチュー・ファンデルプール(オランダ)の加速により更にプロトンは縮小していった。
好調に脚を回していたトレンティンが落車しリタイアする一方で、逃げ集団は崩壊してケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ)が単独先頭となる。36秒差まで迫ったプロトンでは残り74kmでピーダスンが加速し、そのカウンターでファンデルプールが仕掛ける。その動きにはファンアールトやタデイ・ポガチャル(スロベニア)、アルベルト・ベッティオル(イタリア)、逃げから遅れたマチュー・ディナム(オーストラリア)が追従した。
ファンデルプールらが残り72kmで逃げていたヴェルマークを捉えたものの、7名となった先頭集団のペースは上がらず、大会連覇を目論むエヴェネプールを含む追走集団が合流。再びひと塊となった集団が周回を重ねるなか、エヴェネプールが繰り返すアタックは決まらず、ファンアールトによるシッティングの加速もファンデルプールが許さない。
そして残り55km地点の補給ゾーンでベッティオルによる飛び出しが決まる。2019年のロンド・ファン・フラーンデレンを制したベッティオルは、雨の降り出したコースで一気に後続から30秒を奪取。それを追う集団ではジョナタン・ナルバエス(エクアドル)の落車とティシュ・ベノート (ベルギー)の高速牽引より、ファンアールトとピーダスン、ファンデルプール、ポガチャルというビッグネームによる4名の追走集団が形成された。
雨と晴れ間が目まぐるしく変わり、路面もドライとウェットが入り乱れるグラスゴー市街地の周回コース。残り22km地点の登りで追走集団がベッティオルの姿を捉えると、ファンデルプールが加速して後続を引き離す。「誰かがついてくると思っていたので差ができて驚いた」と言うファンデルプールは「後ろに誰もいない事実が僕に翼をくれた」と振り返る通り出力を上げ、リードを拡げていく。
それに反応できず、追走を強いられたファンアールトらが牽制に入るなか、雨で濡れた路面のコーナーでファンデルプールが落車する。すぐにバイクに飛び乗ったファンデルプールは再スタートを切り、右足のシューズが壊れながらも力強いペダリングを続行する。また無線の使用が禁じられ、ファンデルプールの落車の報がすぐにファンアールトたちには入らなかったこともあり、追走のペースは一向に上がらなかった。
そのため2位争いに照準を切り替えた追走を置き去りにして、ファンデルプールが大歓声の最終ストレートに到達。雨が上がり、太陽が差し込むフィニッシュラインを、信じられないと頭を振って頭を抱え両手で天を指さしたファンデルプールが通過した。
シクロクロスでは幾度となく世界王者に輝き、2013年には男子ジュニアのロード世界選手権を制しているファンデルプール。祖父のレイモン・プリドールと父アドリがいずれも2位と掴むことができなかったタイトルを、ようやく手に入れたファンデルプールは「これが僕に残された最大の目標だった。それを今日達成することができ、信じられない気持ちだ。ロードではこれがキャリア最大の勝利だろう。他の選手たちが限界を迎えていると思って仕掛けた。単独となって見舞われた落車は、リスクを全く冒していなかったのにもかかわらず起こったこと。最後のストレートでは昨年のリベンジのような気持ちで走っていた。本当に素晴らしい瞬間だったよ」と喜んだ。
表彰台を争う後続ではファンアールトが飛び出し、2度目となる2位を獲得。また3位争いはピーダスンとのスプリントをポガチャルが制し、自身初の表彰台に上がっている。
なお、ファンデルプールは8月12日(土)のマウンテンバイク・クロスカントリーに出場予定で、史上初となる3種目でのアルカンシエル獲得を目指す。
ロード世界選手権2023男子エリートロードレース結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ) | 6:07:27 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー) | +1:37 |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) | +1:45 |
4位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク) | |
5位 | シュテファン・キュング(スイス) | +3:48 |
6位 | ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー) | |
7位 | マチュー・ディナム(オーストラリア) | |
8位 | トムス・スクインシュ(ラトビア) | |
9位 | ティシュ・ベノート (ベルギー) | |
10位 | アルベルト・ベッティオル(イタリア) | +4:03 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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