2023/07/13(木) - 08:15
早くも第2週目最後の平坦ステージとなったツール第11ステージは、厳しい中央山塊を乗り切ったスプリンターによる争い。ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が圧倒的なスプリントでステージ4勝目をマークし、マイヨヴェールのリードを更に拡大した。
中央山塊を耐えたスプリンターたちにとって5日ぶりの出番がやってきた。そしてここを逃せば第18ステージまで平坦ステージはないため、スプリンターは是が非でも獲っておきたい勝利となる。
この日のスタート地点は7月23日(日)より行われるツール・ド・フランス・ファムの開幕地クレルモン・フェラン。レミ・カヴァニャ(スーダル・クイックステップ)の故郷でもあるフランス最古の街を出発した一向は、その後S字を下からなぞるように北上する。コース途中で3つの低難度のカテゴリー山岳を越え、2019年パリ〜ニースに登場したムーラン(その時はサム・ベネットが勝利)でフィナーレを迎える。
気温40度を超える大会最高気温を記録した前日から一転、23度の曇り空のなかスタートが切られる。直後にアンドレイ・アマドール(コスタリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)が飛び出し、ここに同じ36歳のダニエル・オス(イタリア、トタルエネルジー)と23歳の若手マティス・ルーヴェル(フランス、アルケア・サムシック)がジョイン。そして3名となった逃げグループは20km地点で最大3分30秒のアドバンテージを築いた。
メイン集団はここまでのスプリントステージで3勝をマークしているアルペシン・ドゥクーニンクがコントロールを担い、ここにスーダル・クイックステップやロット・デスティニーも牽引に選手を送る。序盤2つの4級山岳を越え、その後の細かいアップダウンを先頭3名は43km/h前後の順調なペースで刻んだものの、スプリンターチームは容赦なく2分差以内に抑え込んだ。
70.5km地点に設定された中間スプリントはルーヴェルが先頭で通過する。その1分23秒遅れでやってきたプロトンではマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)がランキング2位のブライアン・コカール(フランス、コフィディス)を退け、13点を加算している。
獲得標高差3,100mオーバーかつハイペースで進んだ前日の疲れを癒やすようなスローペースにはならず、レース後半から降り出した雨と風によってプロトンの緊張感はますます高まっていく。スプリンターチームに加えリーダーチームのユンボ・ヴィスマやUAEチームエミレーツが集団前方に位置を争ったため、先頭3名とのタイム差は見る見る縮小。残り58km地点で早くも30秒差を切った。
縮まるタイム差にルーヴェルが逃げ集団を離脱し、続いてアマドールもプロトンに戻っていく。そして「時に困難な集団内で走るよりも、1人で走る方が気持ちがいい」と振り返るオスが、自身11度目となるツールで単独先頭に立つ。その後小雨が雨脚を強めたためタイム差は一時拡大したものの、再び横風に警戒したプロトンがスピードアップ。その結果、この日の敢闘賞に輝いたオスによる長い逃げは残り13km地点で終りを告げた。
集団は総合首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)のリスク回避とワウト・ファンアールト(ベルギー)で勝負したいユンボ・ヴィスマを先頭にムーランの街へと突入する。ラウンドアバウトでDSM・フィルメニッヒのトレインが遠回りの左側を選び後方へと沈むなか、ここまでのスプリントステージで圧巻のリードアウトを披露したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が脚を緩め、集団から遅れていった。
残り2km手前の橋を渡り、直角コーナーを抜けたところでスーダル・クイックステップからアルペシン・ドゥクーニンクへと先頭が代わる。そしてクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)の背後についたファンアールトが4番手という絶好の位置でフラムルージュ(残り1km)を通過。ヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)がリードアウトを終え、左側からリドル・トレック、右側からジェイコ・アルウラーが一気に先頭に躍り出た。
その両者に挟まれるようにファンアールトが集団に埋もれていく一方、ウノエックス・プロサイクリングチームがアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)を引き上げ先頭へ。真っ先にスプリントを開始したクリストフのスピードが伸び悩むなか、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)が踏み込みトップスピードに乗る。しかしその背後から横に並び、フィニッシュ直前で引き離したフィリプセンが今大会4つ目の勝利を手に入れた。
ファンデルプールのリードアウトを受けたこれまでとは違い、自ら位置を取り、そして圧倒的なスピードを見せつけたフィリプセン。「ここまでのツールはあまりにも素晴らしすぎて実感がない。これでファンデルプールがいなくても勝利できることを証明した。もちろん彼の助けがあればスプリントはより簡単だが、今日は自分で位置取りをし、フルーネウェーヘンの背後につくことができた」とレースを振り返る。またフィリプセンは来る山岳ステージに向けて「パリに向けてこのジャージ(マイヨヴェール)のリードも拡大することができ、余裕を持ってアルプスでステージに臨むことができる」とコメントした。
一方で絶好のリードアウトから勝利に迫ったフルーネウェーヘンは「今日は僕たちの日になると思ったが、そうではなかったみたい」と悔しがり、前々日の休息日に今季限りでのチーム退団を明らかにしたファビオ・ヤコブセン(オランダ、スーダル・クイックステップ)は16位と勝負に絡むことはできなかった。
マイヨジョーヌのヴィンゲゴーや総合2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)など総合上位陣は何事もなくフィニッシュしたため、順位に変動はなかった。
中央山塊を耐えたスプリンターたちにとって5日ぶりの出番がやってきた。そしてここを逃せば第18ステージまで平坦ステージはないため、スプリンターは是が非でも獲っておきたい勝利となる。
この日のスタート地点は7月23日(日)より行われるツール・ド・フランス・ファムの開幕地クレルモン・フェラン。レミ・カヴァニャ(スーダル・クイックステップ)の故郷でもあるフランス最古の街を出発した一向は、その後S字を下からなぞるように北上する。コース途中で3つの低難度のカテゴリー山岳を越え、2019年パリ〜ニースに登場したムーラン(その時はサム・ベネットが勝利)でフィナーレを迎える。
気温40度を超える大会最高気温を記録した前日から一転、23度の曇り空のなかスタートが切られる。直後にアンドレイ・アマドール(コスタリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)が飛び出し、ここに同じ36歳のダニエル・オス(イタリア、トタルエネルジー)と23歳の若手マティス・ルーヴェル(フランス、アルケア・サムシック)がジョイン。そして3名となった逃げグループは20km地点で最大3分30秒のアドバンテージを築いた。
メイン集団はここまでのスプリントステージで3勝をマークしているアルペシン・ドゥクーニンクがコントロールを担い、ここにスーダル・クイックステップやロット・デスティニーも牽引に選手を送る。序盤2つの4級山岳を越え、その後の細かいアップダウンを先頭3名は43km/h前後の順調なペースで刻んだものの、スプリンターチームは容赦なく2分差以内に抑え込んだ。
70.5km地点に設定された中間スプリントはルーヴェルが先頭で通過する。その1分23秒遅れでやってきたプロトンではマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)がランキング2位のブライアン・コカール(フランス、コフィディス)を退け、13点を加算している。
獲得標高差3,100mオーバーかつハイペースで進んだ前日の疲れを癒やすようなスローペースにはならず、レース後半から降り出した雨と風によってプロトンの緊張感はますます高まっていく。スプリンターチームに加えリーダーチームのユンボ・ヴィスマやUAEチームエミレーツが集団前方に位置を争ったため、先頭3名とのタイム差は見る見る縮小。残り58km地点で早くも30秒差を切った。
縮まるタイム差にルーヴェルが逃げ集団を離脱し、続いてアマドールもプロトンに戻っていく。そして「時に困難な集団内で走るよりも、1人で走る方が気持ちがいい」と振り返るオスが、自身11度目となるツールで単独先頭に立つ。その後小雨が雨脚を強めたためタイム差は一時拡大したものの、再び横風に警戒したプロトンがスピードアップ。その結果、この日の敢闘賞に輝いたオスによる長い逃げは残り13km地点で終りを告げた。
集団は総合首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)のリスク回避とワウト・ファンアールト(ベルギー)で勝負したいユンボ・ヴィスマを先頭にムーランの街へと突入する。ラウンドアバウトでDSM・フィルメニッヒのトレインが遠回りの左側を選び後方へと沈むなか、ここまでのスプリントステージで圧巻のリードアウトを披露したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が脚を緩め、集団から遅れていった。
残り2km手前の橋を渡り、直角コーナーを抜けたところでスーダル・クイックステップからアルペシン・ドゥクーニンクへと先頭が代わる。そしてクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)の背後についたファンアールトが4番手という絶好の位置でフラムルージュ(残り1km)を通過。ヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)がリードアウトを終え、左側からリドル・トレック、右側からジェイコ・アルウラーが一気に先頭に躍り出た。
その両者に挟まれるようにファンアールトが集団に埋もれていく一方、ウノエックス・プロサイクリングチームがアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)を引き上げ先頭へ。真っ先にスプリントを開始したクリストフのスピードが伸び悩むなか、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)が踏み込みトップスピードに乗る。しかしその背後から横に並び、フィニッシュ直前で引き離したフィリプセンが今大会4つ目の勝利を手に入れた。
ファンデルプールのリードアウトを受けたこれまでとは違い、自ら位置を取り、そして圧倒的なスピードを見せつけたフィリプセン。「ここまでのツールはあまりにも素晴らしすぎて実感がない。これでファンデルプールがいなくても勝利できることを証明した。もちろん彼の助けがあればスプリントはより簡単だが、今日は自分で位置取りをし、フルーネウェーヘンの背後につくことができた」とレースを振り返る。またフィリプセンは来る山岳ステージに向けて「パリに向けてこのジャージ(マイヨヴェール)のリードも拡大することができ、余裕を持ってアルプスでステージに臨むことができる」とコメントした。
一方で絶好のリードアウトから勝利に迫ったフルーネウェーヘンは「今日は僕たちの日になると思ったが、そうではなかったみたい」と悔しがり、前々日の休息日に今季限りでのチーム退団を明らかにしたファビオ・ヤコブセン(オランダ、スーダル・クイックステップ)は16位と勝負に絡むことはできなかった。
マイヨジョーヌのヴィンゲゴーや総合2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)など総合上位陣は何事もなくフィニッシュしたため、順位に変動はなかった。
ツール・ド・フランス2023第11ステージ結果
1位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 4:01:07 |
2位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー) | |
3位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
4位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | |
5位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
6位 | アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) | |
7位 | ルーカ・モッツァート(イタリア、アルケア・サムシック) | |
8位 | ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー) | |
9位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
10位 | サム・ウェルスフォード(オーストラリア、DSM・フィルメニッヒ) | |
11位 | ヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | |
12位 | ケース・ボル(オランダ、アスタナ・カザフスタン) | |
13位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | |
15位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・デスティニー) | |
16位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、スーダル・クイックステップ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 46:34:27 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +0:17 |
3位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +2:40 |
4位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +4:22 |
5位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:34 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +4:39 |
7位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | +4:44 |
8位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +5:26 |
9位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +6:01 |
10位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +6:45 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 323pts |
2位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 178pts |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 159pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | 46pts |
2位 | フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) | 28pts |
3位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) | 26pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 46:34:44 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +4:05 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +5:09 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 139:58:20 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +1:18 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | +5:00 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:So Isobe, CorVos
photo:So Isobe, CorVos
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