近年稀に見るほど濃厚な第1週目を終えた第110回ツール・ド・フランス。総合2位につけるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が第1休息日に記者会見を開き、「頭を使い、賢い走りをしなければ」と第2週目への展望を語った。



第9ステージのピュイ・ド・ドームでヴィンゲゴーからタイム差を奪ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

前日ステージの最終超級山岳ピュイ・ド・ドームで仕掛け、マイヨジョーヌのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)から8秒差を"奪い返す”ことに成功したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。現在、総合2位(17秒遅れ)のポガチャルは第1週目を振り返った。



―前日のステージを終え、いま自らに勢いを感じているか?

ああ。確かに勢いは感じている。現時点での調子は良く、今日は良い休息日を過ごすことができたので明日からのレースが楽しみだよ。ここまでのツールに満足しているし、コンディションは上向きだ。

―今大会は「スマートに戦う」と語っているが、その考えへの変化はどこからきたのか?

これまで出場した3度目のツールで、それぞれ多くを学ぶことができた。もちろん50km独走など華々しい勝利も最高だが、ツールは3週間の長丁場。その代償は必ずその期間中にやってくることを学んだ。だからこそ頭を使って走らなければならない。

それに今年はマイヨブラン(ヤングライダー賞)の最終年でもある。これまでのようにクレイジーにも思えるアタックはしていられないよ。

山岳アシストとして重要な役割を担うアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

―総合5位(4分39秒遅れ)のアダム・イェーツはどんな存在か?

僕らにとって良いアドバンテージとなっている。彼の調子はとても良く、徐々にコンディションを上げている。来るステージでも良い協力関係を築くことができるだろう。彼が総合上位にいることで、僕も少しリラックスして走ることができる。

―昨日のピュイ・ド・ドームで見せた最後の35分間が、君の過去最速の登坂だったとユンボ・ヴィスマがその分析結果を明らかにした。

そんなこと彼らには分からないだろう。だって彼らは僕のトレーニングを把握していないのだからね。それに僕のレースデータや正確な体重も知らない。もちろん推定はできるだろうが、正確には測れまい。

第1週目を総合2位で終えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

―リハビリ期間によってトレーニングを十分に行うことができなかったと思うが、体力的な面に不安はあるか?

全くない。また第1週目よりも第3週目の方がコンディションは高くなっていくだろう。それに春のクラシックを走っているためツール直前もレースを走っているので、体力にも問題もないはず。

―現在の好調なコンディションに、自分自身驚きはあるか?

ないよ。逆に(第5ステージの)マリーブランクでタイムを失ったことに驚いた。ツールに来る前から自らの好調さは感じていたからね。

―ヴィンゲゴーとのライバル関係をどう感じているか?

とても良い関係性だと思う。昨年のツールでは過去最高の戦いができた。そして今年は既に何度も直接対決が繰り広げられている。お互いが爆弾を落とし合う、良い戦いができているよ。

―ヴィンゲゴーは「アルプスの山岳ならば僕の方が適している」と語っているが、それについてどう思う?

アルプスに突入すれば、その答えは自ずと明らかになる。僕自身もアルプスは好きだし試走や過去にレースも済ましている。それに僕も年々、長い距離の登りや暑さへの適性を高めているからね。

下馬評に反し、積極的な走りを披露したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

―ジロ・デ・イタリア・ドンネ第6ステージで落車し、棄権したパートナーのウルシュカ・ジガート(スロベニア、ジェイコ・アルウラー)は元気か?

彼女のことを心配してくれてありがとう。本調子ではないにせよ、既にトレーニングを再開している。ただ、彼女の落車が自分のダウンヒル時にチラつくことがある。例えば昨日のステージの、最終山岳直前の下りを時速90km/hで下っていた時なんかは「この状況から最悪のことが起こりうる」という考えが過ぎったよ。これが僕らの仕事ではあるものの「本当にこれだけの危険を犯す価値があるのだろうか」と疑問に思うときもある。

―レース中に小便をするタイミングについて教えてくれ。

集団から多くの選手が止まって、その後確実に集団復帰ができるタイミングを狙う。ちなみに僕は1ステージにつき1回、ないしは2回する。そして万が一大きい方をしたくなった場合は…試合終了だ(笑)。脚を使い果たさなければ集団復帰は難しい。

―第2週目の展望を語ってくれ。

再び僕からタイム差を奪うべく、ユンボ・ヴィスマが全てをかけて攻勢に出るステージがあるだろう。一日一日を集中して走り、僕にはその攻撃に備える高いモチベーションがある。彼らが仕掛けてくるであろう戦略に対応すべく、全力を尽くすよ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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