2023/07/07(金) - 08:45
ユンボ・ヴィスマの高速牽引に耐えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が最終山岳でアタック。自身10度目のステージ優勝と共に、マイヨジョーヌを得たヴィンゲゴーから総合タイムを取り戻した。
ピレネー2日目にして今大会最初の山頂フィニッシュがやってきた。第110回ツール・ド・フランスの6日目は、144.9kmという比較的短い距離に獲得標高差3,800mオーバーの山岳が詰め込まれた山岳ステージ。序盤のほぼ平坦な55kmで身体を温めた選手たちはまず1級アスパン(距離12km/平均6.5%)を登り、ダウンヒルを挟んでトップ通過者に「ジャック・ゴデ記念賞」が与えられる超級山岳トゥールマレー(距離17.1km/平均7.3%)を駆け上がる。
そして31kmに及ぶ下りを経て、最終山岳である1級コトレ・カンバスクに臨む。16kmの登坂距離に平均勾配5.4%と控えめな数字だが、勝負所となる残り5km地点から勾配は4%から9%にまで跳ね上がる。更にその1km先からは10%以上の勾配が続くため、ステージ優勝を狙う選手たちのアタックを誘発する。
この日は前日勝者でツール史上8人目となるオーストラリア人マイヨジョーヌ着用者、ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)が集団先頭に並んだ。そしてパレード走行から0km地点を過ぎてアクチュアルスタートが切られると、直後にワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が飛び出す。そこにジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が反応し、ライバルチームのUAEチームエミレーツはマッテオ・トレンティン(イタリア)を送った。
最終的に先頭で20名の大きな逃げグループが出来上がり、この日最初の3級山岳はマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)の奪還を目指すニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がトップで通過する。続く中間スプリントではブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が最大20ポイントを加算し、それ以降ほとんどの集団牽引をファンアールトが担当。そして1級山岳アスパンの麓(残り88.8km地点)に達する頃に、メイン集団との差は3分26秒まで拡がっていた。
強力なエスケープを容認したメイン集団はリーダーチームであるボーラ・ハンスグローエがコントロールする。しかしアスパンの頂上が近づくにつれユンボ・ヴィスマがプロトン先頭に人数を集め、UAEのアシスト陣を苦しめるべく早くもハイスピードな牽引を開始。それにマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)らスプリンターたちが脱落していった。
1級山岳アスパンを先頭通過したパウレスは一日にしてマイヨアポワ奪還に成功する。そして12kmの下りを経ていよいよ超級山岳トゥールマレー(距離17.1km/平均7.3%)に入ると、アラフィリップとジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック。しかし登坂でも継続してハイペースで先導するファンアールトが引き戻し、逃げグループは7名まで絞られた。
一方のプロトンでは、トゥールマレーでもユンボ・ヴィスマが集団のペースを上げていく。その牽引はオランダ王者ディラン・ファンバーレからウィルコ・ケルデルマン(オランダ)に引き継がれ、セップ・クス(アメリカ)がペースを作り始めた頃に、その背後につけたのはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)とタデイ・ポガチャル(スロベニア)の2人だけ。頂上まで残り4km、フィニッシュまで51kmもの距離を残した地点で、総合上位陣はもちろんマイヨジョーヌのヒンドレーも遅れを喫した。
クスが頂上手前2.5kmで牽引を終えると同時にヴィンゲゴーがアタックするも、前日は早々と遅れていったポガチャルは表情を変えずに追従する。その頃には先頭との差は50秒を切っており、ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、モビスター)の幅寄せを避けたトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)が先頭でトゥールマレーを通過。下りの途中で待ち受けていたファンアールトにヴィンゲゴーが合流すると、再び先頭に立ったファンアールトは最終山岳1級コトレ・カンバスク(距離16km/平均5.4%)の登りを開始した。
この時点で先頭集団は、ヒンドレーやサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)らマイヨジョーヌ・グループと2分40秒のリードを築く。そしてこの日0kmから飛び出し、長い間逃げグループを先導したファンアールトが異次元のスタミナで牽引を続行。そのペースにはクライマーのゲレイロやショーすら遅れていき、勾配が一気に10%を超える残り4.5kmでようやくファンアールトが仕事を終える。そしてレースの先頭はヴィンゲゴーとポガチャル、そして逃げから唯一食らいついたミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)の3名となった。
しかし暫くの後にクフィアトコフスキが遅れ、ステージ優勝とマイヨジョーヌの行方は2人に絞られる。そして残り2.7km地点で、ここまでずっとヴィンゲゴーの背後についていたポガチャルが飛び出した。
4月に骨折した左手首に黒いテーピングをしたポガチャルは、ヴィンゲゴーとの差を一気に10秒稼ぎ出し、シッティングのままフラムルージュ(残り1km地点)を通過。必死に踏み続けるヴィンゲゴーの追走も届かず、更にヴィンゲゴーとの差を24秒まで拡げたポガチャルが今大会最初の山岳フィニッシュを制覇した。
ヴィンゲゴーから1分4秒遅れでフィニッシュした前日ステージから一転、ステージ優勝と共に総合タイム(ボーナスタイム-10秒)を奪い返したポガチャル。「僕自身、これを昨日の”リベンジ”だとは思っていない。しかし今日の勝利、また総合タイムを取り戻すことができ、甘美に感じている。それに少し安心したというのが本音だ」とポガチャルは笑顔を作った。
「ユンボ・ヴィスマがトゥールマレーで牽引を始めた瞬間、”昨日と同じく悲惨なことが起きてしまう。今日もダメだったら荷物をまとめて帰らねば”と不安に駆られた。だが幸運にも彼らについていく脚があり、最後はタイミングを見計らってアタックした。いまは大きな安堵に満ちあふれていると」とコメント。また「これがツールで10度目のステージ優勝だ。君の記録に挑戦するぞマーク(カヴェンディッシュ)!」と、ポガチャルらしい軽快なジョークも飛び出した。
この結果ステージ2位のヴィンゲゴーが総合首位に浮上し、ポガチャルは25秒差で総合2位。1日にしてマイヨジョーヌを手放したヒンドレーはトップから2分39秒遅れでフィニッシュし、総合3位(1分34秒遅れ)まで順位を落とした。
ピレネー2日目にして今大会最初の山頂フィニッシュがやってきた。第110回ツール・ド・フランスの6日目は、144.9kmという比較的短い距離に獲得標高差3,800mオーバーの山岳が詰め込まれた山岳ステージ。序盤のほぼ平坦な55kmで身体を温めた選手たちはまず1級アスパン(距離12km/平均6.5%)を登り、ダウンヒルを挟んでトップ通過者に「ジャック・ゴデ記念賞」が与えられる超級山岳トゥールマレー(距離17.1km/平均7.3%)を駆け上がる。
そして31kmに及ぶ下りを経て、最終山岳である1級コトレ・カンバスクに臨む。16kmの登坂距離に平均勾配5.4%と控えめな数字だが、勝負所となる残り5km地点から勾配は4%から9%にまで跳ね上がる。更にその1km先からは10%以上の勾配が続くため、ステージ優勝を狙う選手たちのアタックを誘発する。
この日は前日勝者でツール史上8人目となるオーストラリア人マイヨジョーヌ着用者、ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)が集団先頭に並んだ。そしてパレード走行から0km地点を過ぎてアクチュアルスタートが切られると、直後にワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が飛び出す。そこにジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)が反応し、ライバルチームのUAEチームエミレーツはマッテオ・トレンティン(イタリア)を送った。
最終的に先頭で20名の大きな逃げグループが出来上がり、この日最初の3級山岳はマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)の奪還を目指すニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がトップで通過する。続く中間スプリントではブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が最大20ポイントを加算し、それ以降ほとんどの集団牽引をファンアールトが担当。そして1級山岳アスパンの麓(残り88.8km地点)に達する頃に、メイン集団との差は3分26秒まで拡がっていた。
強力なエスケープを容認したメイン集団はリーダーチームであるボーラ・ハンスグローエがコントロールする。しかしアスパンの頂上が近づくにつれユンボ・ヴィスマがプロトン先頭に人数を集め、UAEのアシスト陣を苦しめるべく早くもハイスピードな牽引を開始。それにマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)らスプリンターたちが脱落していった。
1級山岳アスパンを先頭通過したパウレスは一日にしてマイヨアポワ奪還に成功する。そして12kmの下りを経ていよいよ超級山岳トゥールマレー(距離17.1km/平均7.3%)に入ると、アラフィリップとジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック。しかし登坂でも継続してハイペースで先導するファンアールトが引き戻し、逃げグループは7名まで絞られた。
一方のプロトンでは、トゥールマレーでもユンボ・ヴィスマが集団のペースを上げていく。その牽引はオランダ王者ディラン・ファンバーレからウィルコ・ケルデルマン(オランダ)に引き継がれ、セップ・クス(アメリカ)がペースを作り始めた頃に、その背後につけたのはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)とタデイ・ポガチャル(スロベニア)の2人だけ。頂上まで残り4km、フィニッシュまで51kmもの距離を残した地点で、総合上位陣はもちろんマイヨジョーヌのヒンドレーも遅れを喫した。
クスが頂上手前2.5kmで牽引を終えると同時にヴィンゲゴーがアタックするも、前日は早々と遅れていったポガチャルは表情を変えずに追従する。その頃には先頭との差は50秒を切っており、ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、モビスター)の幅寄せを避けたトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)が先頭でトゥールマレーを通過。下りの途中で待ち受けていたファンアールトにヴィンゲゴーが合流すると、再び先頭に立ったファンアールトは最終山岳1級コトレ・カンバスク(距離16km/平均5.4%)の登りを開始した。
この時点で先頭集団は、ヒンドレーやサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)らマイヨジョーヌ・グループと2分40秒のリードを築く。そしてこの日0kmから飛び出し、長い間逃げグループを先導したファンアールトが異次元のスタミナで牽引を続行。そのペースにはクライマーのゲレイロやショーすら遅れていき、勾配が一気に10%を超える残り4.5kmでようやくファンアールトが仕事を終える。そしてレースの先頭はヴィンゲゴーとポガチャル、そして逃げから唯一食らいついたミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)の3名となった。
しかし暫くの後にクフィアトコフスキが遅れ、ステージ優勝とマイヨジョーヌの行方は2人に絞られる。そして残り2.7km地点で、ここまでずっとヴィンゲゴーの背後についていたポガチャルが飛び出した。
4月に骨折した左手首に黒いテーピングをしたポガチャルは、ヴィンゲゴーとの差を一気に10秒稼ぎ出し、シッティングのままフラムルージュ(残り1km地点)を通過。必死に踏み続けるヴィンゲゴーの追走も届かず、更にヴィンゲゴーとの差を24秒まで拡げたポガチャルが今大会最初の山岳フィニッシュを制覇した。
ヴィンゲゴーから1分4秒遅れでフィニッシュした前日ステージから一転、ステージ優勝と共に総合タイム(ボーナスタイム-10秒)を奪い返したポガチャル。「僕自身、これを昨日の”リベンジ”だとは思っていない。しかし今日の勝利、また総合タイムを取り戻すことができ、甘美に感じている。それに少し安心したというのが本音だ」とポガチャルは笑顔を作った。
「ユンボ・ヴィスマがトゥールマレーで牽引を始めた瞬間、”昨日と同じく悲惨なことが起きてしまう。今日もダメだったら荷物をまとめて帰らねば”と不安に駆られた。だが幸運にも彼らについていく脚があり、最後はタイミングを見計らってアタックした。いまは大きな安堵に満ちあふれていると」とコメント。また「これがツールで10度目のステージ優勝だ。君の記録に挑戦するぞマーク(カヴェンディッシュ)!」と、ポガチャルらしい軽快なジョークも飛び出した。
この結果ステージ2位のヴィンゲゴーが総合首位に浮上し、ポガチャルは25秒差で総合2位。1日にしてマイヨジョーヌを手放したヒンドレーはトップから2分39秒遅れでフィニッシュし、総合3位(1分34秒遅れ)まで順位を落とした。
ツール・ド・フランス2023第6ステージ結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 3:54:27 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:24 |
3位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) | + 1:22 |
4位 | ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、モビスター) | + 2:06 |
5位 | ジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) | + 2:15 |
6位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | + 2:39 |
7位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
8位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | |
9位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | + 3:11 |
10位 | ロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ) | + 3:12 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 26:10:44 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +0:25 |
3位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:34 |
4位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) | +3:14 |
5位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +3:30 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +3:40 |
7位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +4:03 |
8位 | ロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ) | +4:43 |
9位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
10位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | +5:28 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 150pts |
2位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 104pts |
3位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 92pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | 36pts |
2位 | フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) | 28pts |
3位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム) | 26pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 26:11:09 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +3:05 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +4:18 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 78:43:21 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +1:50 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +10:09 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:So Isobe, CorVos
photo:So Isobe, CorVos
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