午前11時 男子エリートのレースがスタート photo:Satoru Kato 複数の強力な選手を送り込んだキナンレーシングチーム、愛三工業レーシングチーム、JCL TEAM UKYO等が協調して逃げを牽引した photo: Yuichiro Hosoda パレード走行かのような落ち着いたペースで1周目を終えた直後、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)によるアタックからレースが本格的に動き出す。これに岡篤志(JCL TEAM UKYO)や橋川丈(EFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチーム)などが反応し、山本元喜(キナンレーシングチーム)と「兄が行ったから僕も行った」と振り返る弟の山本大喜(JCL TEAM UKYO)が遅れて先頭集団に合流。8名がレース先頭に立った。
逃げグループを形成した8名 石上優大(愛三工業レーシングチーム) 渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム) 橋川丈(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) 岡篤志(JCL TEAM UKYO) 山本大喜(JCL TEAM UKYO) 山本元喜(キナンレーシングチーム) 井上文成(シマノレーシング) 石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)
JCL TEAM UKYOと愛三工業レーシングチームがそれぞれ2人を乗せ、ベルギー育ちの橋川丈も入った強力な逃げグループが誕生。しかしこれを容認したメイン集団では積極的に牽引するチームが現れず、周回を重ねるごとにその差は拡大していく。そして逃げグループのリードが5分に届いた6周目で「(集団に追走の)火をつけたかった」と語る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が飛び出し、これに宇都宮ブリッツェンが呼応。集団先頭に選手を送りタイムを縮めにかかった。
2号橋からの上りを進むメイン集団 photo: Yuichiro Hosoda 集団内で走る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Gakuto Fujiwara 一時、留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)と當原隼人(愛三工業レーシングチーム)がプロトンから飛び出し、合流を目指したものの不発に終わる。一方で同じ集団の後方では2日前の個人タイムトライアルを制した小石祐馬が2度のパンクに見舞われ、レースを棄権。JCL TEAM UKYOはレース前半でエースの1人を失うこととなった。
残り2周、コース最頂点への登りで山本大喜(JCL TEAM UKYO)がアタック photo:Satoru Kato 逃げる大喜を追う山本元喜(キナンレーシング) photo:Gakuto Fujiwara ラスト2周目に入り、スタート/フィニッシュラインから1.5km地点にある1kmの登りで石上がアタック。しかしこの動きが岡に封じられると、「脚にまだまだ余裕があった」と語った大喜がカウンターで仕掛ける。すかさず兄の元喜が追いかけ、一度捉えたものの登り返しで大喜が再加速。元喜を引き離した。
この周回を13分18秒で駆け抜けた大喜は、後続と30秒差で最終ラップの鐘を聴く。一方で石上を置き去りにした岡は元喜に追いつき、JCL TEAM UKYOが必勝態勢を整える。そして最終周回でも13分28秒のハイペースを刻んだ大喜が、2日前の個人タイムトライアルに続き、チームに男子エリート2冠をもたらした。
残り2周、アタックを決めた山本大喜(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato ガッツポーズと共にフィニッシュする山本大喜(JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato 「全日本チャンピオンに相応しいレースをして勝ちたいと思っていました。一歩間違えれば勝ちを逃してしまう状況の中、(飛び出す)ベストなタイミングを窺っていました。その後は兄に負けても仕方がないという思いで全力で踏み込みました」と喜ぶ山本大喜が、悲願となる日本王者ジャージに袖を通した。
元喜のアタックに耐え、最後に抜き返した岡が2位に入ったためJCL TEAM UKYOはワンツーフィニッシュを達成。そして元喜が3位に入り、全日本選手権で初めて山本兄弟が揃って表彰台に上がった。
チームメイトの勝利に拍手を贈りながらゴールする岡篤志(JCL TEAM UKYO) photo: Yuichiro Hosoda 愛娘を抱いて表彰式 photo:Satoru Kato 「3、4年前までは”山本元喜の弟”と呼ばれていました。負けず嫌いな自分にとってそれが嫌で悔しかった。だからこれからは兄が”山本大喜の兄”と呼ばれるかも(笑)。とにかく兄に勝つことができて本当に嬉しかったです」と、優勝インタビューで笑いを誘った。