2023/06/19(月) - 01:01
UCIグランフォンドワールドシリーズの「ニセコクラシック」が、6月17日から18日の2日間に渡り開催された。注目の150kmロードレースは、佐藤后嶺(石狩南高等学校)がトップでフィニッシュ。2位には牧野郁斗(YURIFitCycling Team)が入り、北海道勢が上位を占めた。
2014年に初開催された「ニセコクラシック」は、今年10年目を迎えた。コロナ禍の影響を受けて2020年と2021年大会は中止されたが、2022年は参加者を国内在住者に限定して3年ぶりに再開。そして今年は、海外からの参加者受入れや併催イベントも再開してのフルスペック開催が実現した。
17日は個人タイムトライアル、18日は150kmと85kmのロードレースが行われ、各クラスの上位者には8月にスコットランドで開催されるグランフォンド世界選手権への出場権が与えられる。ちなみに、ロードレース、MTB、トラック、パラサイクリングなどの世界選手権は8月3日から13日にイギリス北部のスコットランドとグラスゴーでまとめて開催されるが、グランフォンドの世界選手権もそのうちの一つとして開催される。
個人タイムトライアルは、倶知安町北部の農村地帯に設定された13.8kmのコースで行われた。スタート直後およそ4kmに及ぶ直線道路は丘陵地帯のアップダウンが続き、後半は直角コーナーの連続で減速と加速を繰り返す。
全体のトップタイムは、35歳から39歳クラスで優勝した黒澤明(東京都)の18分7秒。昨年のトップタイムより約13秒速い結果となった。
翌18日はロードレース。150kmと85kmのふたつの距離カテゴリーに分かれて行われた。ここでは150kmについてレポートする。
ロードレース150kmのコースは昨年までと同様、倶知安町のニセコひらふをスタートし、ニセコパノラマラインを登って下り、日本海側に出て折り返し、終盤の細かいアップダウンを経て再びニセコひらふにフィニッシュ。獲得標高は2609mに及ぶ。今回はスタート・フィニッシュ地点が変更され、従来の「ひらふ坂」の1本となりの「ゴンドラ坂」となった。
朝から抜けるような青空が広がってハッキリと姿を見せた羊蹄山の下、4つのグループに分けてパレードスタート。全てのグループが一つになったのを確認してリアルスタートが切られると、早速アタック合戦が始まる。30km過ぎのホットポイント(スプリント賞)を過ぎたあと、昨年150km全体トップとなった石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)らの飛び出しをきっかけに5名が先行する。メンバーは、石井、原田将人(TTG・ミトロングV)、幕田亮(BIORACER DREAM TEAM)、佐久間毅(湾岸サイクリングユナイテッド)、加藤辰之介(Nerebani)。
5名はメイン集団に1分差をつけてニセコパノラマラインの上りへ。山岳ポイントは石井と加藤辰之介(Nerebani)がハンドルを投げ合う競り合いを見せ、加藤が先頭通過する。その後下りきったところでメイン集団が5名を吸収し、コース後半を前にレースはふり出しに戻る。
スタートから80kmを過ぎ、日本海側からの折り返しに入ると、新たに5名の先頭集団が形成される。メンバーは、内間康平(沖縄県)、川勝敦嗣(MiNERVA-asahi)、小出樹(ロードレース男子部)、佐藤駿(TRYCLE.ing)、原田将人(TTG・ミトロングV)。ほどなくして内間と川勝はメイン集団に戻り、小出、佐藤、原田の3名が先行を続ける。
メイン集団からは散発的に追走の動きが発生するものの、全体的にまとまった動きにはならない。「コース終盤の登りまでに2分差まで広げようと小出(樹)君と話した。原田(将人)君はキツそうだったので、ほぼ僕と小出君で回していたが、考えていた通り差が開いた」と佐藤が振り返ったように、メイン集団との差は最大で3分まで開いた。
残り40kmを過ぎ、上り区間で原田が遅れて小出と佐藤の2名が先行。メイン集団との差は徐々に縮まり始め、残り30kmを切る頃には1分台まで詰まる。さらにメイン集団から佐藤后嶺(石狩南高等学校)、牧野郁斗(YURIFitCycling Team)らを含む5名の追走集団が小出と佐藤を猛追し、残り10kmを切ったところで追いつく。メイン集団は40秒ほど後方に迫っていたが捕まえることは出来ず、勝負は先行する7名に絞られた。
最終コーナーをクリアして残り300mのゴンドラ坂を先頭で登ってきたのは佐藤。後続を引き離し、フィニッシュライン数m手前で勝利を確信してガッツポーズを繰り出した。2位には牧野が入り、地元北海道勢が1位と2位を占める結果となった。
高校生の佐藤は今シーズンJBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)主催のJエリートツアーに参戦。E2とE3の混走となった2月の鹿屋・肝付ロードレースと4月の西日本ロードクラシックで優勝してE1に昇格している。今回のニセコクラシックでは、16歳から18歳のクラスでエントリー。UCIグランフォンドシリーズの規定外のクラスのため、グランフォンド世界選手権には出場出来ないが、市民レーサーのトップが集まったレースで力を見せた。
「実はインターハイ予選の直後で、その疲労が残っている感じだったので集団について行くのは厳しいと思っていた。でも走っているうちに疲労が抜けて、思ったより走ることが出来た。追走集団はみんな登りが強い人ばかりで、登りも下りも踏んでかなり速いペースだった。登りが得意ではない僕はついて行くのに精一杯だったけれど、逃げていた2人も脚がある人達だったから、これで7人になれば逃げ切れるんじゃないかなと思った。
前日の試走で残り150mあたりからスプリントしないとタレると確認していたので、残り500mから(小出)樹さんが仕掛けていったのを見て、それに反応した人に続き、自分で確認した距離からスプリントした。残り3kmあたりからスプリントに備えて脚を溜めるようにしていたので、後ろを引き離すことが出来た。
次の目標は来週のジュニアの全日本で優勝し、チャンピオンジャージを着ること。地元開催の函館インターハイはスクラッチとロードに出るので頑張りたい」
一方、コース中盤から逃げ続けた佐藤は、19歳から34歳クラスの4位。「ゴールして初めて悔し泣きした」と話す。
「3分差まで開いて、小出君とこのまま行けると思っていたが、追走が登りに強い人が揃っていて2人では差を維持しきれなかった。まさに勝利が手からこぼれ落ちた感じ。悔しくて涙があふれて止まらないってこういうことなんだなと思った。優勝した佐藤君はスプリントに自信があって、追走の動きを利用してきたのはさすがだと思う。
昨年もニセコクラシックに出たけれど、先頭集団からちぎれてしまったので、今年は最後まで残れれば良いかなと思っていたが予想以上に走れた。自分はやれるだけの事をやったけれど、周りがもっと上だったと思って納得した。来週は全日本マスターズに出場するので、30代の王者になりたい」
(注)ニセコクラシックでは年齢別クラスの順位を発表・表彰のみ行い、150km、85km、タイムトライアル全体での順位は発表せず、表彰も行っていない。そのため本記事では、「総合首位」、又は「総合優勝」という表記は使用していない。
text&photo:Satoru Kato
2014年に初開催された「ニセコクラシック」は、今年10年目を迎えた。コロナ禍の影響を受けて2020年と2021年大会は中止されたが、2022年は参加者を国内在住者に限定して3年ぶりに再開。そして今年は、海外からの参加者受入れや併催イベントも再開してのフルスペック開催が実現した。
17日は個人タイムトライアル、18日は150kmと85kmのロードレースが行われ、各クラスの上位者には8月にスコットランドで開催されるグランフォンド世界選手権への出場権が与えられる。ちなみに、ロードレース、MTB、トラック、パラサイクリングなどの世界選手権は8月3日から13日にイギリス北部のスコットランドとグラスゴーでまとめて開催されるが、グランフォンドの世界選手権もそのうちの一つとして開催される。
個人タイムトライアルは、倶知安町北部の農村地帯に設定された13.8kmのコースで行われた。スタート直後およそ4kmに及ぶ直線道路は丘陵地帯のアップダウンが続き、後半は直角コーナーの連続で減速と加速を繰り返す。
全体のトップタイムは、35歳から39歳クラスで優勝した黒澤明(東京都)の18分7秒。昨年のトップタイムより約13秒速い結果となった。
翌18日はロードレース。150kmと85kmのふたつの距離カテゴリーに分かれて行われた。ここでは150kmについてレポートする。
ロードレース150kmのコースは昨年までと同様、倶知安町のニセコひらふをスタートし、ニセコパノラマラインを登って下り、日本海側に出て折り返し、終盤の細かいアップダウンを経て再びニセコひらふにフィニッシュ。獲得標高は2609mに及ぶ。今回はスタート・フィニッシュ地点が変更され、従来の「ひらふ坂」の1本となりの「ゴンドラ坂」となった。
朝から抜けるような青空が広がってハッキリと姿を見せた羊蹄山の下、4つのグループに分けてパレードスタート。全てのグループが一つになったのを確認してリアルスタートが切られると、早速アタック合戦が始まる。30km過ぎのホットポイント(スプリント賞)を過ぎたあと、昨年150km全体トップとなった石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)らの飛び出しをきっかけに5名が先行する。メンバーは、石井、原田将人(TTG・ミトロングV)、幕田亮(BIORACER DREAM TEAM)、佐久間毅(湾岸サイクリングユナイテッド)、加藤辰之介(Nerebani)。
5名はメイン集団に1分差をつけてニセコパノラマラインの上りへ。山岳ポイントは石井と加藤辰之介(Nerebani)がハンドルを投げ合う競り合いを見せ、加藤が先頭通過する。その後下りきったところでメイン集団が5名を吸収し、コース後半を前にレースはふり出しに戻る。
スタートから80kmを過ぎ、日本海側からの折り返しに入ると、新たに5名の先頭集団が形成される。メンバーは、内間康平(沖縄県)、川勝敦嗣(MiNERVA-asahi)、小出樹(ロードレース男子部)、佐藤駿(TRYCLE.ing)、原田将人(TTG・ミトロングV)。ほどなくして内間と川勝はメイン集団に戻り、小出、佐藤、原田の3名が先行を続ける。
メイン集団からは散発的に追走の動きが発生するものの、全体的にまとまった動きにはならない。「コース終盤の登りまでに2分差まで広げようと小出(樹)君と話した。原田(将人)君はキツそうだったので、ほぼ僕と小出君で回していたが、考えていた通り差が開いた」と佐藤が振り返ったように、メイン集団との差は最大で3分まで開いた。
残り40kmを過ぎ、上り区間で原田が遅れて小出と佐藤の2名が先行。メイン集団との差は徐々に縮まり始め、残り30kmを切る頃には1分台まで詰まる。さらにメイン集団から佐藤后嶺(石狩南高等学校)、牧野郁斗(YURIFitCycling Team)らを含む5名の追走集団が小出と佐藤を猛追し、残り10kmを切ったところで追いつく。メイン集団は40秒ほど後方に迫っていたが捕まえることは出来ず、勝負は先行する7名に絞られた。
最終コーナーをクリアして残り300mのゴンドラ坂を先頭で登ってきたのは佐藤。後続を引き離し、フィニッシュライン数m手前で勝利を確信してガッツポーズを繰り出した。2位には牧野が入り、地元北海道勢が1位と2位を占める結果となった。
高校生の佐藤は今シーズンJBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)主催のJエリートツアーに参戦。E2とE3の混走となった2月の鹿屋・肝付ロードレースと4月の西日本ロードクラシックで優勝してE1に昇格している。今回のニセコクラシックでは、16歳から18歳のクラスでエントリー。UCIグランフォンドシリーズの規定外のクラスのため、グランフォンド世界選手権には出場出来ないが、市民レーサーのトップが集まったレースで力を見せた。
「実はインターハイ予選の直後で、その疲労が残っている感じだったので集団について行くのは厳しいと思っていた。でも走っているうちに疲労が抜けて、思ったより走ることが出来た。追走集団はみんな登りが強い人ばかりで、登りも下りも踏んでかなり速いペースだった。登りが得意ではない僕はついて行くのに精一杯だったけれど、逃げていた2人も脚がある人達だったから、これで7人になれば逃げ切れるんじゃないかなと思った。
前日の試走で残り150mあたりからスプリントしないとタレると確認していたので、残り500mから(小出)樹さんが仕掛けていったのを見て、それに反応した人に続き、自分で確認した距離からスプリントした。残り3kmあたりからスプリントに備えて脚を溜めるようにしていたので、後ろを引き離すことが出来た。
次の目標は来週のジュニアの全日本で優勝し、チャンピオンジャージを着ること。地元開催の函館インターハイはスクラッチとロードに出るので頑張りたい」
一方、コース中盤から逃げ続けた佐藤は、19歳から34歳クラスの4位。「ゴールして初めて悔し泣きした」と話す。
「3分差まで開いて、小出君とこのまま行けると思っていたが、追走が登りに強い人が揃っていて2人では差を維持しきれなかった。まさに勝利が手からこぼれ落ちた感じ。悔しくて涙があふれて止まらないってこういうことなんだなと思った。優勝した佐藤君はスプリントに自信があって、追走の動きを利用してきたのはさすがだと思う。
昨年もニセコクラシックに出たけれど、先頭集団からちぎれてしまったので、今年は最後まで残れれば良いかなと思っていたが予想以上に走れた。自分はやれるだけの事をやったけれど、周りがもっと上だったと思って納得した。来週は全日本マスターズに出場するので、30代の王者になりたい」
(注)ニセコクラシックでは年齢別クラスの順位を発表・表彰のみ行い、150km、85km、タイムトライアル全体での順位は発表せず、表彰も行っていない。そのため本記事では、「総合首位」、又は「総合優勝」という表記は使用していない。
text&photo:Satoru Kato
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