2023/05/16(火) - 17:58
チェコ、ノヴェメストで開催された「UCI MTBワールドカップ」開幕戦。日本から若手選手5名が参戦し、この最高峰の舞台で現在の力や立ち位置の確認など、それぞれの目標に挑んだ。コメントを中心にレースを振り返る。
男子エリート:北林力(Athlete Farm Specialized、99位)
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難コンディションの男子エリートレースを戦う北林力(Athlete Farm Specialized) photo:TRKWorks
エリート男子カテゴリーに唯一挑んだのが北林力(Athlete Farm Specialized)だ。エリートカテゴリー1年目の昨年はアジア選手権で優勝し、タイ合宿での乗り込みを経て3年連続となるワールドカップ参戦。結果はラップアウトの99位と完走に手が届かなかった。
「少しでも欠けてる部分があると大きくリザルトに出るのがワールドカップ。この結果をしっかり受け止めて、このレースで感じた事、直せる事を次のレンツァーハイデのワールドカップまでこなし、走りのキャパシティを大きくしないといけない」と言う北林。この先も欧州遠征を継続するため、すでにポーランドに渡っているという。
女子U23:小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム、41位)
パリ2024オリンピック出場・入賞という目標を胸に、スイスでの前哨戦を経て出場したのが女子U23の小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)だ。U23カテゴリーで出場した昨年11月の全日本選手権では、同時出走のエリートカテゴリーも含めた総合トップでフィニッシュ。「やるべきことはやってきた」という自信と共にワールドカップの舞台に臨んだ。
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UCIの育成チーム時代にチームメイトだったエミリー・ジョンソンと photo:小林可奈子 
下りのロックセクションを試走する小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:小林可奈子
今年からU23カテゴリーで初開催されたXCC(ショートトラック/UCIランキング上位40名が出場可能)では「密でハイペースのレース展開に、どう対応していいか分からず、短いレースではそれを修正できないままゴール(チームレポートより)」し49秒遅れの34位。翌日のXCでは30番手のスタートをうまく決め、20番手でヒルクライムに入ったものの脱落。メインループ(コース)に入ってからペースアップし、順位を回復させて41位でフィニッシュした。
「目標としていたTOP 10には届きませんでした。それでも、ここで戦わなければ分からないことがたくさんあります。悔しいです。でも表彰台に上がりたい。必ず上がる。そう思わせてくれたレースになりました。簡単ではないけど、戦い続けます。応援ありがとうございました」とレースを振り返っている。
ジュニアシリーズに高橋翔、嶋崎亮我、古江昂太が参戦。島崎がフルラップ完走
ワールドカップはU23とエリートに限定されるが、一方でジュニア選手にとっての最高峰が「UCIジュニアシリーズ」。2023シーズン唯一、ワールドカップと併催されるノヴェメスト大会には欧州遠征の最終戦として現アジア王者の高橋翔(TeensMAP)とFUKAYA RACINGの嶋崎亮我と古江昂太が参戦した。
昨年に続く2年目のジュニアシリーズ参戦であり、これまで世界選手権以外で日本人のジュニアがプライベーターとしてUCIレースに参戦した歴史はない。TRKWorksの小林輝紀氏によるサポートのもと、海外UCIチーム並みの体制で最高峰の戦いに挑戦。結果は92位の島崎が最上位かつ、唯一のフルラップ完走という厳しい戦いとなった。
小林輝紀氏による各選手のレポートとコメントを紹介する。
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噛み合わず苦しいレースを強いられた高橋翔(TeensMAP) photo:TRKWorks 高橋翔(TeensMAP):134位
「この大会をシーズン序盤の大一番と定め、コーチから与えられたメニューをしっかりと熟し、食生活にも気を遣って万全の状態でレースに臨みました。」と高橋。スタートコールは11番。世界の強豪が犇めく中で2列目に並ぶ。日本ではマウンテンバイクとシクロクロスの2枚のナショナルチャンピンジャージをもち、2022年アジア・マウンテンバイク選手権ではブッチギリの独走で勝利した高橋だが、この大会では、異様な殺気立った空気に押されたのか、極度の緊張でいつもの高橋らしい笑顔が消えていった。
スタート3分前、サポートスタッフから「いつもの通り、今を大いに楽しもう」と声を掛けられてようやく彼の笑みが見られた。天気予報が外れ、昨晩の雨が止まず、小雨が続く寒い土曜日の朝。8:45定刻スタート。
高橋のスタートは上手く決まり、先頭パックで最初の上りへと向かう。しかし上りに入った途端に急失速。心拍が上がらずペースダウンを余儀なくされた。その後も身体の調子が上がらず順位を徐々に落としていく。スタートループ1周+フルコース5周回で争われたレースだが、高橋はスタートループの終了時点で最後尾近くまで順位を下げてしまった。それでも諦めずに何度も踏み直そうとするが、本来の彼らしいパワフルな走りが戻ることは叶わず、-2LAPで完走することはできなかった。
「万全の体制で挑んだ大会だけにとても悔しかったです。しかしこの経験は自分の中でとても大きなものになりました。これを糧に次の八幡浜国際レースでは自分らしい走りで納得のいくレースを展開したいと思います。」と語っている。
嶋崎亮我(FUKAYA RACING):92位
「今大会の目標は30番以内に入り、世界選手権への弾みを付けることです。」と語っていた嶋崎。ジュニアでも屈指のテクニシャンである彼は、初めて挑戦するこのコースとの相性にポジティブだった。ゼッケンは81番。11列目の後方スタートとなった。
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嶋崎亮我(FUKAYA RACING)は92位で完走 photo:TRKWorks
「スタートループは後方スタートの為、混雑や接触トラブルがある中でもポジションを上げる事が出来ました。しかし本コースの林間セクションに入った途端、徐々にポジションを落とす形になりました。レース前日の雨、当日の朝露によって変化した路面にバイクセッティングを上手く合わせられませんでした。」
濡れた木の根など、繊細なトラクションコントロールに苦労しながらも最後まで諦めずにファイナルラップへ。最終的にトップから9分差の92位となり、今大会の日本人ジュニアで唯一のフルラップ完走となった。
「自分の幻想が打ち壊され、何とも言えない感情が込み上げて来ます。ですが、今回の反省をこれからの糧にして、更に強くなります。まずは再来週の八幡浜国際レースにて、世界を見据えた走りをしたいと思います。」と語っている。
古江昂太(FUKAYA RACING):131位
古江は昨年に続き2回目となるこの大会への挑戦となった。「CJ菖蒲谷が終わってから、この大会に向けてとにかく追い込み練習をしてきました。シーズン初めとは言え、自信をもって完走できる練習をしてきました。」
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古江昂太(FUKAYA RACING)は131位 photo:TRKWorks
昨年の最後方とは異なり、スタートグリッドは初めての5列目。強豪の中に位置する空気で次第に緊張感が増していったという。「30秒前でいつも通り胸を叩き、声を上げ気合を入れスタートを切りました。スタートラップはいい感じの位置取りでしたが、スタートラップ後半の登りで後ろの選手の前タイヤが自分のディレーラーにヒットし、シフトが不調になってしまいました。」と古江。そこからマイペースを作れずラップが落ち、どんどん後ろの選手にパスされ、-2Lapで目標の完走を果たすことができなかった。
「レースを終わり、とにかく自分が情けなく、自分の弱さに打ち勝つことができず、焦るばかりで、全く自分の走りができませんでした。日本に帰ってから、八幡浜に向けて、絶好調のコンディションに持っていけるように練習し、挑みたいです。」と語っている。
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北林力のサポートに当たった小林輝紀さん(TRKWorks)と山本幸平さん(Athlete Farm Specialized) photo:TRKWorks
ジュニア選手のコメント、レポートは小林輝紀氏(TRKWorks)より
男子エリート:北林力(Athlete Farm Specialized、99位)
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エリート男子カテゴリーに唯一挑んだのが北林力(Athlete Farm Specialized)だ。エリートカテゴリー1年目の昨年はアジア選手権で優勝し、タイ合宿での乗り込みを経て3年連続となるワールドカップ参戦。結果はラップアウトの99位と完走に手が届かなかった。
「少しでも欠けてる部分があると大きくリザルトに出るのがワールドカップ。この結果をしっかり受け止めて、このレースで感じた事、直せる事を次のレンツァーハイデのワールドカップまでこなし、走りのキャパシティを大きくしないといけない」と言う北林。この先も欧州遠征を継続するため、すでにポーランドに渡っているという。
女子U23:小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム、41位)
パリ2024オリンピック出場・入賞という目標を胸に、スイスでの前哨戦を経て出場したのが女子U23の小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)だ。U23カテゴリーで出場した昨年11月の全日本選手権では、同時出走のエリートカテゴリーも含めた総合トップでフィニッシュ。「やるべきことはやってきた」という自信と共にワールドカップの舞台に臨んだ。
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今年からU23カテゴリーで初開催されたXCC(ショートトラック/UCIランキング上位40名が出場可能)では「密でハイペースのレース展開に、どう対応していいか分からず、短いレースではそれを修正できないままゴール(チームレポートより)」し49秒遅れの34位。翌日のXCでは30番手のスタートをうまく決め、20番手でヒルクライムに入ったものの脱落。メインループ(コース)に入ってからペースアップし、順位を回復させて41位でフィニッシュした。
「目標としていたTOP 10には届きませんでした。それでも、ここで戦わなければ分からないことがたくさんあります。悔しいです。でも表彰台に上がりたい。必ず上がる。そう思わせてくれたレースになりました。簡単ではないけど、戦い続けます。応援ありがとうございました」とレースを振り返っている。
ジュニアシリーズに高橋翔、嶋崎亮我、古江昂太が参戦。島崎がフルラップ完走
ワールドカップはU23とエリートに限定されるが、一方でジュニア選手にとっての最高峰が「UCIジュニアシリーズ」。2023シーズン唯一、ワールドカップと併催されるノヴェメスト大会には欧州遠征の最終戦として現アジア王者の高橋翔(TeensMAP)とFUKAYA RACINGの嶋崎亮我と古江昂太が参戦した。
昨年に続く2年目のジュニアシリーズ参戦であり、これまで世界選手権以外で日本人のジュニアがプライベーターとしてUCIレースに参戦した歴史はない。TRKWorksの小林輝紀氏によるサポートのもと、海外UCIチーム並みの体制で最高峰の戦いに挑戦。結果は92位の島崎が最上位かつ、唯一のフルラップ完走という厳しい戦いとなった。
小林輝紀氏による各選手のレポートとコメントを紹介する。
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「この大会をシーズン序盤の大一番と定め、コーチから与えられたメニューをしっかりと熟し、食生活にも気を遣って万全の状態でレースに臨みました。」と高橋。スタートコールは11番。世界の強豪が犇めく中で2列目に並ぶ。日本ではマウンテンバイクとシクロクロスの2枚のナショナルチャンピンジャージをもち、2022年アジア・マウンテンバイク選手権ではブッチギリの独走で勝利した高橋だが、この大会では、異様な殺気立った空気に押されたのか、極度の緊張でいつもの高橋らしい笑顔が消えていった。
スタート3分前、サポートスタッフから「いつもの通り、今を大いに楽しもう」と声を掛けられてようやく彼の笑みが見られた。天気予報が外れ、昨晩の雨が止まず、小雨が続く寒い土曜日の朝。8:45定刻スタート。
高橋のスタートは上手く決まり、先頭パックで最初の上りへと向かう。しかし上りに入った途端に急失速。心拍が上がらずペースダウンを余儀なくされた。その後も身体の調子が上がらず順位を徐々に落としていく。スタートループ1周+フルコース5周回で争われたレースだが、高橋はスタートループの終了時点で最後尾近くまで順位を下げてしまった。それでも諦めずに何度も踏み直そうとするが、本来の彼らしいパワフルな走りが戻ることは叶わず、-2LAPで完走することはできなかった。
「万全の体制で挑んだ大会だけにとても悔しかったです。しかしこの経験は自分の中でとても大きなものになりました。これを糧に次の八幡浜国際レースでは自分らしい走りで納得のいくレースを展開したいと思います。」と語っている。
嶋崎亮我(FUKAYA RACING):92位
「今大会の目標は30番以内に入り、世界選手権への弾みを付けることです。」と語っていた嶋崎。ジュニアでも屈指のテクニシャンである彼は、初めて挑戦するこのコースとの相性にポジティブだった。ゼッケンは81番。11列目の後方スタートとなった。
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「スタートループは後方スタートの為、混雑や接触トラブルがある中でもポジションを上げる事が出来ました。しかし本コースの林間セクションに入った途端、徐々にポジションを落とす形になりました。レース前日の雨、当日の朝露によって変化した路面にバイクセッティングを上手く合わせられませんでした。」
濡れた木の根など、繊細なトラクションコントロールに苦労しながらも最後まで諦めずにファイナルラップへ。最終的にトップから9分差の92位となり、今大会の日本人ジュニアで唯一のフルラップ完走となった。
「自分の幻想が打ち壊され、何とも言えない感情が込み上げて来ます。ですが、今回の反省をこれからの糧にして、更に強くなります。まずは再来週の八幡浜国際レースにて、世界を見据えた走りをしたいと思います。」と語っている。
古江昂太(FUKAYA RACING):131位
古江は昨年に続き2回目となるこの大会への挑戦となった。「CJ菖蒲谷が終わってから、この大会に向けてとにかく追い込み練習をしてきました。シーズン初めとは言え、自信をもって完走できる練習をしてきました。」
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昨年の最後方とは異なり、スタートグリッドは初めての5列目。強豪の中に位置する空気で次第に緊張感が増していったという。「30秒前でいつも通り胸を叩き、声を上げ気合を入れスタートを切りました。スタートラップはいい感じの位置取りでしたが、スタートラップ後半の登りで後ろの選手の前タイヤが自分のディレーラーにヒットし、シフトが不調になってしまいました。」と古江。そこからマイペースを作れずラップが落ち、どんどん後ろの選手にパスされ、-2Lapで目標の完走を果たすことができなかった。
「レースを終わり、とにかく自分が情けなく、自分の弱さに打ち勝つことができず、焦るばかりで、全く自分の走りができませんでした。日本に帰ってから、八幡浜に向けて、絶好調のコンディションに持っていけるように練習し、挑みたいです。」と語っている。
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ジュニア選手のコメント、レポートは小林輝紀氏(TRKWorks)より
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