2023/05/14(日) - 07:50
今年のアルデンヌクラシックでブレイクした22歳ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)が、ジロ8日目で50kmの独走勝利。最終山岳でアタックしたログリッチはイネオスの2人と共に、エヴェネプールから総合タイムを奪った。
総合陣に大きな動きがなかった前日の山岳ステージと、翌日の個人タイムトライアルに挟まれたジロ・デ・イタリア8日目は丘陵ステージ。登場するカテゴリー山岳は3つ(4級、2級、4級)で、いずれもラスト50kmに詰め込まれている。残り38.8km地点に設定された2級山岳モンテ・デッレ・チェセナは距離7.8km/平均6.5%/最高勾配18%と難易度は高く、計2度登坂する4級山岳カプチーニも最高19%と強烈。ずばり逃げ切り向きのステージであり、また総合上位勢が動いても不思議ではないレイアウトだ。
この日はフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)の新型コロナウイルス感染のニュースがチームより発表された。総合上位につけるテイオ・ゲイガンハートとゲラント・トーマス(共にイギリス)の重要なアシストかつ、翌日の優勝候補だったガンナがレースを去る一方で、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)のコロナ陽性の噂は即座にチームが否定している。
連日安定しない天気が続くジロの第8ステージは、気温16度の曇り空のなか164名がスタート。直後から激しいアタック合戦が繰り広げられ、最初のカテゴリーのつかない山岳でカルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)やベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)ら4名が先頭集団を形成する。
そこにトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)が合流して5名に。そこにワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)や前日勝者ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)の兄マッティアら追走集団が先頭に追いつき、スタート後80kmにしてようやく12名の逃げグループが成立。更にプロトンから単独で飛び出したオスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がその人数を13にした。
逃げを目指した選手たちによる慌ただしい展開が落ち着いたメイン集団はチームDSMがコントロール。逃げの中で最も総合タイムの良い(6分39秒遅れ)ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)にマリアローザを渡さないようフィニッシュすべく、タイム差を調整しながら終着地点のフォッソンブローネを目指し、アペニン山脈を北上した。
3つのカテゴリー山岳が始まる残り50km地点で、逃げとプロトンの差は4分35秒。先頭集団が合計2度登坂する4級山岳カプチーニ(距離2.8km/平均7.9%/最高勾配19%)に入り、今年のアルデンヌクラシックでブレイクしたヒーリーが頂上手前の急勾配区間でアタックした。
この22歳新鋭クライマーの加速にバルギルやイタリア王者フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルウラー)らが遅れ、直後のダウンヒルでハイスピードを披露したヒーリーは後続にすぐさま1分のタイム差を稼ぎ出す。スクインシュがメカトラで遅れるなか、ザナがローテーションを促す追走集団の協調体制は整わず、ヒーリーは2級山岳モンテ・デッレ・チェセナの登坂で更にその差を拡大した。
ヒーリーに5分差を許し、逃げ切り容認ムードが漂うプロトンではガンナを失ったイネオス・グレナディアーズが先頭へ。ここまでのステージで顕となったスーダル・クイックステップの弱点である山岳アシスト陣に対し、ユンボ・ヴィスマも集団牽引にミヒェル・ヘスマン(ドイツ)を送りレムコ・エヴェネプール(ベルギー)に対し攻勢に出る。
そしてザナやバルギル、デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)による追走に対し、ヒーリーは2分前後のリードを保ったまま2級山岳モンテ・デッレ・チェセナをクリア。そして最終山岳カプチーニも危なげなく越えていったヒーリーが、グランツール初出場のジロで大金星を掴み取った。
「残り50km地点でアタックしたのは、他の選手と協力するよりも単独走の方が良いと考えたから。最初の山岳で脚の状態の良さを感じ、誰もついてこなかったので”良い日になる”と思った。これが現実だとは信じられないよ」と、淡々とした口調でヒーリーは喜ぶ。
アイルランド人として6人目のジロ区間優勝者、かつショーン・ケリーに次ぐ2番目の若さでの勝利を挙げたヒーリーは、チームウィギンスやトリニティーレーシングを経て2022年にEFでプロデビュー。同年にアイルランドTT王者に輝き、今年の春のクラシック、特にアルデンヌクラシックのブラバンツ・ペイルとアムステルゴールドレースで共に2位に入り、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも4位とブレイクを果たした、注目の若きクライマーだ。
一方のプロトンではカプチーニの登坂(残り4km地点)でログリッチがアタックする。それにレックネスンが食らいつくなか、「自分のペースを乱し、思わず反応してしまった」とレース後に語ったエヴェネプールが遅れを喫する。そしてレックネスンが早々と離され、マイペース走法で淡々と踏み続けたゲイガンハートとトーマスの2人が頂上手前でログリッチに追いついた。
ログリッチとイネオスのイギリス人コンビはローテーションを回しながらエヴェネプールを引き離す。そしてヒーリーから4分34秒遅れでゲイガンハートを先頭に3名がフィニッシュし、14秒遅れでエヴェネプールはジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)ら総合上位陣と共にレースを終えた。
ログリッチグループから34秒遅れでフィニッシュしたレックネスンは辛くもマリアローザ保持に成功。ログリッチは翌日の個人TTを前に、エヴェネプールとのタイム差を44秒から30秒まで縮めることに成功した。
総合陣に大きな動きがなかった前日の山岳ステージと、翌日の個人タイムトライアルに挟まれたジロ・デ・イタリア8日目は丘陵ステージ。登場するカテゴリー山岳は3つ(4級、2級、4級)で、いずれもラスト50kmに詰め込まれている。残り38.8km地点に設定された2級山岳モンテ・デッレ・チェセナは距離7.8km/平均6.5%/最高勾配18%と難易度は高く、計2度登坂する4級山岳カプチーニも最高19%と強烈。ずばり逃げ切り向きのステージであり、また総合上位勢が動いても不思議ではないレイアウトだ。
この日はフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)の新型コロナウイルス感染のニュースがチームより発表された。総合上位につけるテイオ・ゲイガンハートとゲラント・トーマス(共にイギリス)の重要なアシストかつ、翌日の優勝候補だったガンナがレースを去る一方で、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)のコロナ陽性の噂は即座にチームが否定している。
連日安定しない天気が続くジロの第8ステージは、気温16度の曇り空のなか164名がスタート。直後から激しいアタック合戦が繰り広げられ、最初のカテゴリーのつかない山岳でカルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)やベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)ら4名が先頭集団を形成する。
そこにトムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)が合流して5名に。そこにワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)や前日勝者ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)の兄マッティアら追走集団が先頭に追いつき、スタート後80kmにしてようやく12名の逃げグループが成立。更にプロトンから単独で飛び出したオスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がその人数を13にした。
逃げを目指した選手たちによる慌ただしい展開が落ち着いたメイン集団はチームDSMがコントロール。逃げの中で最も総合タイムの良い(6分39秒遅れ)ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)にマリアローザを渡さないようフィニッシュすべく、タイム差を調整しながら終着地点のフォッソンブローネを目指し、アペニン山脈を北上した。
3つのカテゴリー山岳が始まる残り50km地点で、逃げとプロトンの差は4分35秒。先頭集団が合計2度登坂する4級山岳カプチーニ(距離2.8km/平均7.9%/最高勾配19%)に入り、今年のアルデンヌクラシックでブレイクしたヒーリーが頂上手前の急勾配区間でアタックした。
この22歳新鋭クライマーの加速にバルギルやイタリア王者フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルウラー)らが遅れ、直後のダウンヒルでハイスピードを披露したヒーリーは後続にすぐさま1分のタイム差を稼ぎ出す。スクインシュがメカトラで遅れるなか、ザナがローテーションを促す追走集団の協調体制は整わず、ヒーリーは2級山岳モンテ・デッレ・チェセナの登坂で更にその差を拡大した。
ヒーリーに5分差を許し、逃げ切り容認ムードが漂うプロトンではガンナを失ったイネオス・グレナディアーズが先頭へ。ここまでのステージで顕となったスーダル・クイックステップの弱点である山岳アシスト陣に対し、ユンボ・ヴィスマも集団牽引にミヒェル・ヘスマン(ドイツ)を送りレムコ・エヴェネプール(ベルギー)に対し攻勢に出る。
そしてザナやバルギル、デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)による追走に対し、ヒーリーは2分前後のリードを保ったまま2級山岳モンテ・デッレ・チェセナをクリア。そして最終山岳カプチーニも危なげなく越えていったヒーリーが、グランツール初出場のジロで大金星を掴み取った。
「残り50km地点でアタックしたのは、他の選手と協力するよりも単独走の方が良いと考えたから。最初の山岳で脚の状態の良さを感じ、誰もついてこなかったので”良い日になる”と思った。これが現実だとは信じられないよ」と、淡々とした口調でヒーリーは喜ぶ。
アイルランド人として6人目のジロ区間優勝者、かつショーン・ケリーに次ぐ2番目の若さでの勝利を挙げたヒーリーは、チームウィギンスやトリニティーレーシングを経て2022年にEFでプロデビュー。同年にアイルランドTT王者に輝き、今年の春のクラシック、特にアルデンヌクラシックのブラバンツ・ペイルとアムステルゴールドレースで共に2位に入り、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも4位とブレイクを果たした、注目の若きクライマーだ。
一方のプロトンではカプチーニの登坂(残り4km地点)でログリッチがアタックする。それにレックネスンが食らいつくなか、「自分のペースを乱し、思わず反応してしまった」とレース後に語ったエヴェネプールが遅れを喫する。そしてレックネスンが早々と離され、マイペース走法で淡々と踏み続けたゲイガンハートとトーマスの2人が頂上手前でログリッチに追いついた。
ログリッチとイネオスのイギリス人コンビはローテーションを回しながらエヴェネプールを引き離す。そしてヒーリーから4分34秒遅れでゲイガンハートを先頭に3名がフィニッシュし、14秒遅れでエヴェネプールはジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)ら総合上位陣と共にレースを終えた。
ログリッチグループから34秒遅れでフィニッシュしたレックネスンは辛くもマリアローザ保持に成功。ログリッチは翌日の個人TTを前に、エヴェネプールとのタイム差を44秒から30秒まで縮めることに成功した。
ジロ・デ・イタリア2023第8ステージ結果
1位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4:44:24 |
2位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +1:49 |
3位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | |
4位 | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) | |
5位 | カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター) | +2:12 |
6位 | マッティア・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ) | +2:37 |
7位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) | +3:51 |
8位 | アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ) | +3:56 |
9位 | オスカル・リースビーク(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +4:00 |
10位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +4:34 |
11位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
12位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
14位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | +4:48 |
15位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
16位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
17位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
19位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
25位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | +5:08 |
123位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | +24:53 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | 33:52:10 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:08 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +0:38 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:40 |
5位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:52 |
6位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:56 |
7位 | オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) | +0:58 |
8位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:26 |
9位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:39 |
10位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:54 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 113pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 100pts |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 89pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ) | 86pts |
2位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 50pts |
3位 | カレル・ヴァチェク(チェコ、チーム・コラテック) | 36pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM), | 33:52:10 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ), | +0:08 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:40 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 101:38:51 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +1:57 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | +3:03 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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