数多くのプロチームをサポートするイタリアンサドルブランドのプロロゴが、2021年の全日本チャンピオンである植竹海貴のために特別デザインのDIMENSION NACK(ディメンション・ナック)を用意した。スペシャルサドルが形になるまでのインサイドストーリーと合わせて紹介しよう。



プロロゴ Dimension NACK 植竹海貴モデル (c)服部産業

タデイ・ポガチャルを擁するUAEチームエミレーツをはじめ、バーレーン・ヴィクトリアスらUCIワールドチームをサポートするプロロゴ。非常に多くのトップ選手たちがプロロゴのサドルに腰を据え、世界最高峰のレースを戦い、数々の勝利を挙げてきた。そんなプロ選手の中から特別デザインのサドルが用意されるのは一握り。

直近ではポガチャルやロンド・ファン・フラーンデレンで優勝したアルベルト・ベッティオール、過去にはアルベルト・コンタドールら名だたるチャンピオンたちがプロロゴの特別仕様を使ってきた。その中の一人に、2021年に全日本チャンピオンに輝いた女性レーサー植竹海貴が加わる。

まず植竹モデルが用意されたのはプロロゴが用意する定番レーシングサドルの一つ、Dimensionだ。ラインアップの中で最も短い全長245mmに設計されており、いわゆる前乗りポジションのためにサドルを前進させて固定してもUCIルールにフィットしやすいモデルだ。

日本初のプロロゴ特別デザインとなった植竹海貴モデル (c)服部産業

幅が143mmと広く、腰を据えたペダリングが行いやすいことも魅力。特にサドル前方に座ってハイパワーを出すシチュエーションでもライダーをサポートしてくれるモデルに仕上がっている。さらにサドル中央のPASテクノロジーによってデリケートゾーンへの圧迫を軽減しており、長距離サイクリングでも体への負担が小さい。

今回特別モデルが用意されたのはNACK(カーボンレール)仕様。座面はイタリアントリコロールが差し色に入ったスペシャルなデザイン。さらにプロ選手供給用サインであるBig-O(ビッグオー)がサドルの左座面にプリントされており、サドル中央部に特別なグラフィックが描かれる。

ファンはもちろんの事、イタリアンバイクをお持ちの方にも最適なデザインだろう。一般販売用は今秋入荷予定。非常に数が限られているため販売はワイズロードオンラインもしくはワイズロード新宿本館のみだ。

以下はプロロゴ代理店である服部産業のキット北村氏によるインサイドストーリーをお届けしよう。特別モデルが出来上がるまでの秘話は必見だ。

Dimension NACK植竹海貴モデル誕生ストーリー

1月にこの話はスタートした… (c)服部産業

2023年3月下旬のプロロゴ製品のインプレ記事内の『プロロゴ本社訪問記』で少し情報を伝えてきていましたが、遂に日本チャンピオンのUさんとは2021年全日本チャンピオンの植竹選手であることを皆さんにご報告できます。アジア人初のシグネチャーモデルが完成した経緯を時系列で辿って行きましょう。

2023年1月に味の素スタジアムで行われたワイズロードスポーツバイクデモ2023でプロロゴのDimension NACKを使っている植竹海貴選手に出会いました。『頑張っている彼女のために何か出来ないか?』と漠然と考えておりました。

2023年2月にプロロゴ担当の北村がイタリアに出張訪問した時に、サルバトーレ・トゥルーリオGMの姪っ子ヴァレリアさんと3年ぶりの再会。世間話に花を咲かせていると、机の上にあるサドルが目に入りました。ヴァレリアさんの机の上には、何と昨年不整脈が原因で引退した2021年パリ~ルーベの覇者ソンニ・コルブレッリ選手のサンプルサドルでした。

サルバトーレ・トゥルーリオGMの姪っ子ヴァレリアさんと再会。彼女のデスクに置いてあったサドルから今回の話がスタートした (c)服部産業

陽の目を見ることはなかったソンニ・コルブレッリの特別モデル (c)服部産業

ロンド・ファン・フラーンデレンを制したアルベルト・ベッティオール選手のシグネチャーサドルのようなものを、これから生み出していく予定でしたが、突然の引退で計画は頓挫していました。コルブレッリ選手のロゴはコブラを模っており、イタリアのスポーツ自転車業界で大活躍のジョニー・モール氏がコブラロゴをデザインしていました。

そこで植竹選手とのコラボは特別デザインを作るアイデアが生まれました。プロロゴ工場側の責任者にも相談しましたが、ポガチャル選手やベッティオール選手のようにサドルの座面全体にスペシャルデザインを大きく入れると、金型の制作期間、金型の費用も、発注数量もかなりのものになり、出来上がるまでに1年ほどかかる事が分かりました。

日の丸とシャチが融合したデザインのアイデアもあった (c)服部産業

今年のレースシーズン中にスペシャルサドルを植竹選手に渡すためにこれらの問題を解決する糸口が全く見つからず頓挫しかけましたが、サドル座面のスペシャルデザインは最小限にした上で、コルブレッリ選手のサンプルサドルのようにサドルのベース部分に耐水ロゴステッカーを入れるアイディアが閃きました。

植竹選手がイタリアンブランドのバイクに乗っている事、プロロゴもイタリアンブランドなので、イタリアントリコロールを差し色にしたスペシャルなディメンションサドルを元に、サドルベースに彼女の名前が海貴と”海”が入っていることから、海の王者と呼ばれる”シャチ”を採用し、日本チャンピオンのイメージのロゴステッカーをデザインすることにしました。

一番最初のデザインは漢字をどうしても入れたいイタリア人デザイナーが、植竹選手の名前を“ドーン!”と入ったデザインを送ってきたので、植竹選手に見せる前の段階で即却下しました!

プロ仕様のBig-Oロゴと植竹デザインがあしらわれる (c)服部産業

次にシャチをデザインしてもらうようにお願いしましたが、シャチと日の丸を両方イメージさせるグラフィックデザインを採用したために、色が真っ赤なシャチが出来上がり、決してシャチには見えませんでした。また、丸みを帯びたシャチはヴィンチェンツォ・ニーバリ選手の鮫のロゴのような雰囲気になってしまったので、シャチらしいデザインに修正するように何度か手直しのやりとりをイタリアのデザイナーとしながら植竹選手も納得のデザインに仕上がったと思います。

シンプルな単色のホワイトベースで赤いラインが入っているだけで良かったと思ったのですが、イタリア人デザイナーが『着物や手拭いに入れる海の和柄をどうしても白い部分に入れたい!』と強い希望があり、よく見ると海をイメージした和柄が白い部分に入っています。この部分は、デカールのデザインとはいえデザイナーのこだわりと植竹海貴だけのデザインというスペシャルを感じさせるものとなっています。

特別モデルがデビューウィンを果たした (c)服部産業

4月下旬のレースに間に合うように大至急イタリアから送ってもらったサドル。とりあえず彼女が使用する分だけ用意できたので送ってもらいました。一般販売用は今秋の入荷予定で、販売はワイズロードオンラインと植竹選手が勤務しているワイズロード新宿本館のみになります。

2023年4月30日に開催された第57回東日本ロードクラシック。サドルが日本に届いてから僅か数日後、天候が崩れたレースでしたが、Dimension NACK植竹モデルを装着。2位に4分以上差をつけてみごとデビューウィンを果たしました!そして5月上旬には植竹選手に会いに、プロロゴのファビオ・レオネシオ氏が上海ショー帰りにわざわざ来日しました!

Dimension NACK植竹モデルのお問い合わせはこちらまで

プロロゴのファビオ・レオネシオ氏が上海ショー帰りに来日した (c)服部産業



プロロゴ Dimension NACK 植竹海貴モデル
サイズ:245mm x 143mm
レール:NACK
価格:38,500円(税込)
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