2023/05/08(月) - 09:32
女子ブエルタ最終日に超級山岳コバドンガが登場。総合2位デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が攻め抜きステージ優勝を飾ったものの、首位アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)逆転には一歩届かず。40歳の世界女王が再びグランツールを制した。
9月から5月の日程変更によって、今年最初の女子グランツールとなった「ラ・ブエルタ・フェメニーナ」もいよいよフィナーレ。主催者A.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)は最後の試練として超級山岳「ラゴス・デ・コバドンガ(登坂距離12.5km/平均勾配6.9%)」フィニッシュという過酷なレイアウトを用意した。
当初の予想通り、ここまで激しい総合争いを繰り広げてきた総合首位アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)と同2番手デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)のタイム差はたっぷり1分11秒もある。一般的にはファンフルーテン安泰といえるが、前日にマイヨロホを奪ったダメージからどこまで回復しているかが焦点。ごまかしの効かない激坂コバドンガは、まさにそんな二人の戦いを演出する場となった。
この日は序盤、逃げらしい逃げは決まらなかった。五輪覇者アンナ・キーセンホーファー(オーストリア、イスラエル・プレミアテック・ローランド)のアタックも成功せず、コース中盤の2級山岳(登坂距離12.3km/平均4.7%)ではSDワークス勢のペースアップで分断が発生。これによってファンフルーテンは一時的にチームメイト無しと孤立した状態となってしまう。
このグループからは総合5位マーレン・ローセル(スイス、SDワークス)と総合7位カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)とが飛び出してファンフルーテンにプレッシャーを与えたものの、後方からモビスターのアシスト陣が追いついて牽引を開始。ユンボ・ヴィスマ勢も牽引に加わったため先頭2人のリードは減少していった。
こうしてコバドンガを前に2人は引き戻され、ここまでのステージで大車輪の活躍を見せてきたエマセシル・ノルスゴー(ノルウェー)を先頭にモビスターがペースメイク。人数を絞り込んだ状態でSDワークスがペースメイク役を取って代わり、ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)の牽引で中盤に控える激坂区間へ。すると残り10kmというまだ距離を残したタイミングでフォレリングが仕掛けた。
「昨日の負け試合をひっくり返さなければいけなかった」と言うフォレリングのパワフルなアタック、そして高速登坂に対して集団は木っ端微塵に。総合3位リーアンヌ・マルクス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)や同4位ジュリエット・ラブー(フランス、チームDSM)も遅れ、ついていけたのはファンフルーテンと、前日ステージ勝者ガイア・レアリーニ(イタリア、トレック・セガフレード)、そしてエヴィータ・ムジック(フランス、FDJ・スエズ・フチュロスコープ)だけ。フィニッシュまで7km地点でムジックも力尽き、前日のダメージが残るファンフルーテンも苦しいペダリングが続いた。
ステージ優勝、そして総合ジャンプアップを目指すレアリーニが攻撃を開始すると、フィニッシュまで5km以上を残してファンフルーテンが千切れてしまう。最終盤に控える平坦区間を前に総合逆転したいレアリーニとフォレリングが逃げ、ファンフルーテンがタイムを失いながら追いかける展開。霧むせぶ超級コバドンガで静かな、そして激しい追走劇が続いた。
フィニッシュ前のアップダウン区間でレアリーニを千切り、フォレリングが脇目も振らずフィニッシュへとまっしぐら。今大会2度目のステージ優勝と共にボーナスタイム10秒を稼いだフォレリングは、ガッツポーズをした後に地面に突っ伏してファンフルーテンの到着を待つ。死にものぐるいのダンシングで頂上に現れたファンフルーテンは、大きく遅れながらも残り9秒(ステージ3位のボーナスタイムを加算して)という際どいタイム差でなんとかフィニッシュラインを切った。
フォレリングの逆転ならず、ファンフルーテンが持ちタイムをほぼ失い尽くすギリギリの僅差で総合首位を守り切った。最後まで白熱した新旧オランダ勢のマイヨロホバトルはベテランに軍配。ファンフルーテンが2021年のブエルタから続く女子グランツール5連勝を達成した。
「最終盤はライバルが私よりも力があることが明らかだったし、昨日の走りでかなり自分自身疲れていたので、何度も"レースを落とすかもしれない"と思った」とファンフルーテンは言う。「今日みたいな急勾配に対応できる脚ではなかったけれど、絶対諦めずに最後まで戦い抜いた。フィニッシュラインでチームスタッフが喜ぶ顔がたくさん見えて、ようやく勝ったと認識できた」と加えている。なおモビスターにとっては男女合わせて18回目のグランツール制覇であり、ファンフルーテンにとっては99回目のUCIレース優勝。大きな記録樹立まであと一歩にまで迫っている。
総合1位と2位の差はたったの9秒。難関ステージレースとして確立して以降、女子ブエルタ史上最も僅差となった2023年大会。「昨日ベストな状態で戦えなかったのが残念だけど、ステージ2勝と総合2位は満足できる結果。あらゆる場面に対応できるチームだということを証明できた」と振り返るフォレリングが2位に入り、大会最終盤できらめいたレアリーニは総合12位から大逆転の3位表彰台獲得。大ベテランのファンフルーテンと、今をときめく絶頂期のフォレリング、そして新星レアリーニが表彰台を分け合った。
9月から5月の日程変更によって、今年最初の女子グランツールとなった「ラ・ブエルタ・フェメニーナ」もいよいよフィナーレ。主催者A.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)は最後の試練として超級山岳「ラゴス・デ・コバドンガ(登坂距離12.5km/平均勾配6.9%)」フィニッシュという過酷なレイアウトを用意した。
当初の予想通り、ここまで激しい総合争いを繰り広げてきた総合首位アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)と同2番手デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)のタイム差はたっぷり1分11秒もある。一般的にはファンフルーテン安泰といえるが、前日にマイヨロホを奪ったダメージからどこまで回復しているかが焦点。ごまかしの効かない激坂コバドンガは、まさにそんな二人の戦いを演出する場となった。
この日は序盤、逃げらしい逃げは決まらなかった。五輪覇者アンナ・キーセンホーファー(オーストリア、イスラエル・プレミアテック・ローランド)のアタックも成功せず、コース中盤の2級山岳(登坂距離12.3km/平均4.7%)ではSDワークス勢のペースアップで分断が発生。これによってファンフルーテンは一時的にチームメイト無しと孤立した状態となってしまう。
このグループからは総合5位マーレン・ローセル(スイス、SDワークス)と総合7位カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)とが飛び出してファンフルーテンにプレッシャーを与えたものの、後方からモビスターのアシスト陣が追いついて牽引を開始。ユンボ・ヴィスマ勢も牽引に加わったため先頭2人のリードは減少していった。
こうしてコバドンガを前に2人は引き戻され、ここまでのステージで大車輪の活躍を見せてきたエマセシル・ノルスゴー(ノルウェー)を先頭にモビスターがペースメイク。人数を絞り込んだ状態でSDワークスがペースメイク役を取って代わり、ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)の牽引で中盤に控える激坂区間へ。すると残り10kmというまだ距離を残したタイミングでフォレリングが仕掛けた。
「昨日の負け試合をひっくり返さなければいけなかった」と言うフォレリングのパワフルなアタック、そして高速登坂に対して集団は木っ端微塵に。総合3位リーアンヌ・マルクス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)や同4位ジュリエット・ラブー(フランス、チームDSM)も遅れ、ついていけたのはファンフルーテンと、前日ステージ勝者ガイア・レアリーニ(イタリア、トレック・セガフレード)、そしてエヴィータ・ムジック(フランス、FDJ・スエズ・フチュロスコープ)だけ。フィニッシュまで7km地点でムジックも力尽き、前日のダメージが残るファンフルーテンも苦しいペダリングが続いた。
ステージ優勝、そして総合ジャンプアップを目指すレアリーニが攻撃を開始すると、フィニッシュまで5km以上を残してファンフルーテンが千切れてしまう。最終盤に控える平坦区間を前に総合逆転したいレアリーニとフォレリングが逃げ、ファンフルーテンがタイムを失いながら追いかける展開。霧むせぶ超級コバドンガで静かな、そして激しい追走劇が続いた。
フィニッシュ前のアップダウン区間でレアリーニを千切り、フォレリングが脇目も振らずフィニッシュへとまっしぐら。今大会2度目のステージ優勝と共にボーナスタイム10秒を稼いだフォレリングは、ガッツポーズをした後に地面に突っ伏してファンフルーテンの到着を待つ。死にものぐるいのダンシングで頂上に現れたファンフルーテンは、大きく遅れながらも残り9秒(ステージ3位のボーナスタイムを加算して)という際どいタイム差でなんとかフィニッシュラインを切った。
フォレリングの逆転ならず、ファンフルーテンが持ちタイムをほぼ失い尽くすギリギリの僅差で総合首位を守り切った。最後まで白熱した新旧オランダ勢のマイヨロホバトルはベテランに軍配。ファンフルーテンが2021年のブエルタから続く女子グランツール5連勝を達成した。
「最終盤はライバルが私よりも力があることが明らかだったし、昨日の走りでかなり自分自身疲れていたので、何度も"レースを落とすかもしれない"と思った」とファンフルーテンは言う。「今日みたいな急勾配に対応できる脚ではなかったけれど、絶対諦めずに最後まで戦い抜いた。フィニッシュラインでチームスタッフが喜ぶ顔がたくさん見えて、ようやく勝ったと認識できた」と加えている。なおモビスターにとっては男女合わせて18回目のグランツール制覇であり、ファンフルーテンにとっては99回目のUCIレース優勝。大きな記録樹立まであと一歩にまで迫っている。
総合1位と2位の差はたったの9秒。難関ステージレースとして確立して以降、女子ブエルタ史上最も僅差となった2023年大会。「昨日ベストな状態で戦えなかったのが残念だけど、ステージ2勝と総合2位は満足できる結果。あらゆる場面に対応できるチームだということを証明できた」と振り返るフォレリングが2位に入り、大会最終盤できらめいたレアリーニは総合12位から大逆転の3位表彰台獲得。大ベテランのファンフルーテンと、今をときめく絶頂期のフォレリング、そして新星レアリーニが表彰台を分け合った。
ラ・ブエルタ・フェメニーナ2023第7ステージ
1位 | デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) | 2:43:02 |
2位 | ガイア・レアリーニ(イタリア、トレック・セガフレード) | +0:11 |
3位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター) | +0:56 |
4位 | エヴィータ・ムジック(フランス、FDJ・スエズ) | +1:59 |
5位 | リカルダ・バウエルンファイント(ドイツ、キャニオン・スラム) | +2:00 |
6位 | エリカ・マニャルディ(イタリア、UAEチームADQ) | +2:59 |
7位 | リーアンヌ・マルクス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | +3:05 |
8位 | アレナ・イヴァンチェンコ(ロシア、UAEチームADQ) | +3:12 |
9位 | ジュリエット・ラブー(フランス、チームDSM) | +3:21 |
10位 | マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJ・スエズ) | +3:40 |
個人総合成績
1位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター) | 19:00:11 |
2位 | デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) | +0:09 |
3位 | ガイア・レアリーニ(イタリア、トレック・セガフレード) | +2:41 |
4位 | リーアンヌ・マルクス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | +3:36 |
5位 | リカルダ・バウエルンファイント(ドイツ、キャニオン・スラム) | +3:53 |
6位 | エヴィータ・ムジック(フランス、FDJ・スエズ) | +4:24 |
7位 | ジュリエット・ラブー(フランス、チームDSM) | +4:27 |
8位 | エリカ・マニャルディ(イタリア、UAEチームADQ) | +4:46 |
9位 | マビ・ガルシア(スペイン、リブレーシング・テックファインド) | +6:31 |
10位 | カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) | +7:22 |
その他の特別賞
ポイント賞 | マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) |
山岳賞 | ガイア・レアリーニ(イタリア、トレック・セガフレード) |
チーム総合成績 | UAEチームADQ |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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