2023/04/20(木) - 08:30
最大勾配26%の「ユイの壁」でお馴染みのラ・フレーシュ・ワロンヌが、4月19日(水)に開催された。UAEチームエミレーツが終始コントロールしたレースはタデイ・ポガチャル(スロベニア)がフィニッシュ手前でライバルを蹴散らし、初優勝を飾った。
アムステルゴールドレースの3日後、リエージュ~バストーニュ~リエージュを4日後に控える水曜日に開催されたラ・フレーシュ・ワロンヌ(UCI.ワールドツアー)。アルデンヌクラシック3連戦の真ん中にあたる本大会は、フィニッシュ手前を含め、合計3度登坂する最大勾配26%の激坂ミュール・ド・ユイ(距離1.3km/平均9.6%)が見所のクラシックレースだ。
コースは2020年大会と同じエルヴをスタートし、レース後半にコート・デレッフ(距離2.1km/平均5%)とコート・ド・シュラーブ(距離1.3m/平均8.1%)、前述したミュール・ド・ユイという3つの上りを含む29kmコースを2周半する。全長194.3kmに対し獲得標高差3,100mと数字上は控えめだが、その過酷さはユイの壁を悶えながら登る選手たちを見れば明らかだ。
アムステルゴールドレースを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は、アルデンヌ完全制覇を成し遂げられるのか。その一点に注目が集まったレースはローレンス・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)や、昨年大会でも逃げに乗ったダリル・インピー(南アフリカ、イスラエル・プレミアテック)らがエスケープ。この先頭8名はUAEチームエミレーツやイネオス・グレナディアーズが交互に牽引するメイン集団に対し、最大4分弱のリードを得た。
設定された登坂距離が最長でも2.1kmと短いものの、平均勾配8%を超す急坂に逃げ集団の人数は減っていき、レース先頭はミラノ〜サンレモで5位のセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク)とゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)の2名に。そして最終周回に入り、変わらずUAEが先導するプロトンからサムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)とルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が飛び出し、先頭に合流を果たした。
アムステルで2位のベン・ヒーリー(アイルランド)やエステバン・チャベス(コロンビア)など強力な布陣を揃えるEFエデュケーション・イージーポストが先導したメイン集団では、残り20km地点で落車が発生。それに今季好調のニールソン・パウレス(アメリカ)が巻き込まれ、深刻な怪我はなかったものの、アムステルに続き不運な途中棄権となっている。
30秒のリードを保持する先頭グループではツィマーマンが最初に遅れ、バティステッラ、クラーウアナスンの脱落を見た地元ベルギー出身フェルヴァーケが単独でコート・ド・シュラーブ(距離1.3m/平均8.1%)をクリア。しかしUAEチームエミレーツのディエゴ・ウリッシ(イタリア)とマルク・ヒルシ(スイス)による牽引は強烈で、更に逃げから遅れたクラーウアナスンもペースアップに協力したため、プロトンは僅か8秒差でミュール・ド・ユイ(距離1.3km/平均9.6%)に突入した。
ベテランのサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)が激坂の得意なマイケル・ウッズ(カナダ)を率いてプロトン先頭に立ち、それにヒルシもポガチャルを背後につけて横並びに。集団は残り1kmバナーを通過直後にフェルヴァーケを捉え、各チームのアシストが仕事を終えて下がったため先頭は一度ペースが緩んだ。
その隙を突こうとロマン・バルデ(フランス、チームDSM)がコース右側から一気に加速したもののウッズとフェンスに阻まれ行き場をなくし、ウッズとポガチャルが先頭のまま残り300mを通過。そしてバルデがその2人の間に割って入る形で再びアタックした。
この動きにポガチャルは追従し、周りを確認する余裕を見せながら残り150mで加速する。ダンシングでペダルを踏み込むごとにバルデやウッズとの差は拡がり、同じく加速したマティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード)やミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)もポガチャルの登坂スピードには追いつかない。
そし合計3度後ろを確認し、フィニッシュ手前に脚を緩める余裕さえ見せたポガチャルが、自身初となるラ・フレーシュ・ワロンヌ制覇を達成した。
「力を出し尽くさねばならないほど厳しい坂だった。とてもスペクタクルなフィニッシュシーン。レース中に2度、”なんて良いチームなんだ”と感嘆したほどチームメイトは強さを見せてくれた。だからこそ彼らの走りに報いる勝利が欲しかった。ナーバスで落車しかけた瞬間もあったが、混沌としたレースで優勝を掴むことができて嬉しいよ」と、ポガチャルは喜びとチームへの感謝を語った。
2位にはトレックの22歳若手クライマーであるスケルモースが入り、フィニッシュ手前で一気に番手を上げたランダが3位。最終盤で展開を作ったウッズは4位で表彰台を逃し、果敢に攻めたバルデは9位に沈んだ。
そして来る4月23日(日)は、アルデンヌ3連戦のラストレースであり春のクラシックを締めくくるリエージュ~バストーニュ~リエージュが開催される。
ツール・ド・フランスを前にした大一番を迎えるポガチャルは「リエージュは長い坂が登場するため今日とは違ったレースになるだろう。高地トレーニング明けのレムコ(エヴェネプール)や、他にも脚がフレッシュな選手たちが揃う。しかし僕のコンディションもかなり良い状態なので、今シーズンで最も白熱した戦いとなるだろう」とその意気込みを語っている。
アムステルゴールドレースの3日後、リエージュ~バストーニュ~リエージュを4日後に控える水曜日に開催されたラ・フレーシュ・ワロンヌ(UCI.ワールドツアー)。アルデンヌクラシック3連戦の真ん中にあたる本大会は、フィニッシュ手前を含め、合計3度登坂する最大勾配26%の激坂ミュール・ド・ユイ(距離1.3km/平均9.6%)が見所のクラシックレースだ。
コースは2020年大会と同じエルヴをスタートし、レース後半にコート・デレッフ(距離2.1km/平均5%)とコート・ド・シュラーブ(距離1.3m/平均8.1%)、前述したミュール・ド・ユイという3つの上りを含む29kmコースを2周半する。全長194.3kmに対し獲得標高差3,100mと数字上は控えめだが、その過酷さはユイの壁を悶えながら登る選手たちを見れば明らかだ。
アムステルゴールドレースを制したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)は、アルデンヌ完全制覇を成し遂げられるのか。その一点に注目が集まったレースはローレンス・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)や、昨年大会でも逃げに乗ったダリル・インピー(南アフリカ、イスラエル・プレミアテック)らがエスケープ。この先頭8名はUAEチームエミレーツやイネオス・グレナディアーズが交互に牽引するメイン集団に対し、最大4分弱のリードを得た。
設定された登坂距離が最長でも2.1kmと短いものの、平均勾配8%を超す急坂に逃げ集団の人数は減っていき、レース先頭はミラノ〜サンレモで5位のセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、アルペシン・ドゥクーニンク)とゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)の2名に。そして最終周回に入り、変わらずUAEが先導するプロトンからサムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)とルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が飛び出し、先頭に合流を果たした。
アムステルで2位のベン・ヒーリー(アイルランド)やエステバン・チャベス(コロンビア)など強力な布陣を揃えるEFエデュケーション・イージーポストが先導したメイン集団では、残り20km地点で落車が発生。それに今季好調のニールソン・パウレス(アメリカ)が巻き込まれ、深刻な怪我はなかったものの、アムステルに続き不運な途中棄権となっている。
30秒のリードを保持する先頭グループではツィマーマンが最初に遅れ、バティステッラ、クラーウアナスンの脱落を見た地元ベルギー出身フェルヴァーケが単独でコート・ド・シュラーブ(距離1.3m/平均8.1%)をクリア。しかしUAEチームエミレーツのディエゴ・ウリッシ(イタリア)とマルク・ヒルシ(スイス)による牽引は強烈で、更に逃げから遅れたクラーウアナスンもペースアップに協力したため、プロトンは僅か8秒差でミュール・ド・ユイ(距離1.3km/平均9.6%)に突入した。
ベテランのサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)が激坂の得意なマイケル・ウッズ(カナダ)を率いてプロトン先頭に立ち、それにヒルシもポガチャルを背後につけて横並びに。集団は残り1kmバナーを通過直後にフェルヴァーケを捉え、各チームのアシストが仕事を終えて下がったため先頭は一度ペースが緩んだ。
その隙を突こうとロマン・バルデ(フランス、チームDSM)がコース右側から一気に加速したもののウッズとフェンスに阻まれ行き場をなくし、ウッズとポガチャルが先頭のまま残り300mを通過。そしてバルデがその2人の間に割って入る形で再びアタックした。
この動きにポガチャルは追従し、周りを確認する余裕を見せながら残り150mで加速する。ダンシングでペダルを踏み込むごとにバルデやウッズとの差は拡がり、同じく加速したマティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード)やミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)もポガチャルの登坂スピードには追いつかない。
そし合計3度後ろを確認し、フィニッシュ手前に脚を緩める余裕さえ見せたポガチャルが、自身初となるラ・フレーシュ・ワロンヌ制覇を達成した。
「力を出し尽くさねばならないほど厳しい坂だった。とてもスペクタクルなフィニッシュシーン。レース中に2度、”なんて良いチームなんだ”と感嘆したほどチームメイトは強さを見せてくれた。だからこそ彼らの走りに報いる勝利が欲しかった。ナーバスで落車しかけた瞬間もあったが、混沌としたレースで優勝を掴むことができて嬉しいよ」と、ポガチャルは喜びとチームへの感謝を語った。
2位にはトレックの22歳若手クライマーであるスケルモースが入り、フィニッシュ手前で一気に番手を上げたランダが3位。最終盤で展開を作ったウッズは4位で表彰台を逃し、果敢に攻めたバルデは9位に沈んだ。
そして来る4月23日(日)は、アルデンヌ3連戦のラストレースであり春のクラシックを締めくくるリエージュ~バストーニュ~リエージュが開催される。
ツール・ド・フランスを前にした大一番を迎えるポガチャルは「リエージュは長い坂が登場するため今日とは違ったレースになるだろう。高地トレーニング明けのレムコ(エヴェネプール)や、他にも脚がフレッシュな選手たちが揃う。しかし僕のコンディションもかなり良い状態なので、今シーズンで最も白熱した戦いとなるだろう」とその意気込みを語っている。
ラ・フレーシュ・ワロンヌ2023結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 4:27:53 |
2位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
3位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
4位 | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +0:03 |
5位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
6位 | ヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス) | |
7位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
8位 | マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) | |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | |
10位 | ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos