2022/12/30(金) - 13:49
2022年の海外ロードレースを振り返るシリーズ後編。ヴィンゲゴーとポガチャルが近年稀にみる熱戦を繰り広げたツール・ド・フランスや、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)が初制覇したブエルタ・ア・エスパーニャ&ロード世界選手権などを振り返ります。
1〜5月をまとめた前編はこちらから。
5月のジロ・デ・イタリアが終わり自転車界はレースカレンダー最大のツール・ド・フランスに向けて動き出す。その前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネはユンボ・ヴィスマ独壇場となった。初日を制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は第6ステージまでリーダージャージを保持し、最終ステージはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)がワンツーフィニッシュ。最終的にログリッチが総合優勝を決めた。
もう一つのツール前哨戦ツール・ド・スイスで総合優勝を挙げたのは36歳のゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)。途中プロトン内に新型コロナウイルス感染症が広まり、新城幸也らバーレーン・ヴィクトリアスを含む3チームが撤退する事態になったものの、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が今季2勝目を挙げるなどハイライトの多い大会となった。
開幕地デンマークから熱戦続いたツール・ド・フランス
そして7月1日にデンマーク・コペンハーゲンにて第109回ツール・ド・フランスが開幕した。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)やファンアールトらを抑え、初日勝者に輝いたのは意外にもイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)で、クイックステップは2日目もファビオ・ヤコブセン(オランダ)により勝利。2年前の落車による大怪我からの完全復活を、初出場&区間優勝でアピールした。
そして翌第3ステージはその落車の原因となったディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が勝利。9月のレースでは同じ表彰台に立ち、ヤコブセンがフルーネウェーヘンの息子とグータッチしたことからひとまずの和解が報じられている。
熱狂のデンマーク開幕を終えた一行は、フランス本土最北端ダンケルクからレースを再開。第4ステージはマイヨジョーヌを纏ったファンアールトが勝利を収め、初日から3連続2位という不名誉な記録を払拭する約10kmの独走を決めてみせた。そして第6ステージではタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が登坂スプリントでライバル勢を一蹴し、ツール3連覇を狙う23歳が第1週目で早くも総合首位に立った。
しかしマイヨジョーヌの行方はポガチャルではなく、またログリッチでもなくヴィンゲゴーの元へ。超級山岳ガリビエ峠を越えグラノン峠にフィニッシュする第11ステージでユンボ・ヴィスマによる猛攻にポガチャルが屈し、ヴィンゲゴーが自身初のステージ優勝とリーダージャージを獲得。その後ポガチャルは何度も攻撃を仕掛けたものの、マイヨヴェールを獲得したファンアールトのアシストや、チームメイトのコロナ感染や怪我による離脱も影響して首位浮上は叶わず。ヴィンゲゴーがツール第109代総合優勝者に輝いた。
大怪我から復活、そして進化を見せたエヴェネプール
グランツール最終戦ブエルタ・ア・エスパーニャはユンボ・ヴィスマによるチームタイムトライアル勝利でスタート。ツールを途中棄権したログリッチが第4ステージを制してマイヨロホに袖を通したものの、第16ステージの最終盤に落車し負傷リタイア。達成すれば史上初となった総合優勝4連覇を逃した。
そして第6ステージで獲得したマイヨロホを最後まで守り、総合優勝したのはレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)だった。ワンデーレースやTTを得意とするエヴェネプールだが、急勾配の登坂でも淡々と踏み続けるスタイルで強豪クライマーたちを撃破。ブエルタ初出場かつグランツール自体も2度目という22歳がスペインにその名を刻んだ。
また総合2位はエンリク・マス(スペイン、モビスター)、3位は20歳のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が入り、若手とスペイン勢が活躍した大会となった。
TTを伏兵フォスが、ロードはエヴェネプールが独走勝利
3大グランツールが終わり世界一の証であるアルカンシエルを争うロード世界選手権が今年はオーストラリア・ウロンゴンで開催された。大会初日の男子エリート個人タイムトライアルを制したのは、殆どが優勝候補にその名を挙げていなかったトビアス・フォス(ノルウェー)。34.2kmのテクニカルなコースでシュテファン・キュング(スイス)やエヴェネプールを抑え、2019年のツール・ド・ラヴニール覇者がアルカンシエルを掴んだ。
そして続くロードレースの世界一もTTスペシャリストが輝くことに。個人TTでは銅メダルだったエヴェネプールは獲得標高差が4,000kmを超えるタフなレースで飛び出し、ラスト25kmの独走を成功させて世界王者の称号を獲得。ブエルタ制覇から僅か2週間後の出来事にエヴェネプールは「こんな素晴らしいシーズンは2度とないだろう」と涙を流した。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)の引退レースとなったイル・ロンバルディアはポガチャルが初出場&初優勝した昨年に続き、2連覇を達成。ツール3連覇こそヴィンゲゴーに阻まれたものの、ポガチャルはストラーデビアンケとイル・ロンバルディアなどシーズン13勝(総合優勝3回)と昨年に引けを取らない成功の1年となった。
1〜5月をまとめた前編はこちらから。
5月のジロ・デ・イタリアが終わり自転車界はレースカレンダー最大のツール・ド・フランスに向けて動き出す。その前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネはユンボ・ヴィスマ独壇場となった。初日を制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は第6ステージまでリーダージャージを保持し、最終ステージはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)とプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)がワンツーフィニッシュ。最終的にログリッチが総合優勝を決めた。
もう一つのツール前哨戦ツール・ド・スイスで総合優勝を挙げたのは36歳のゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)。途中プロトン内に新型コロナウイルス感染症が広まり、新城幸也らバーレーン・ヴィクトリアスを含む3チームが撤退する事態になったものの、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が今季2勝目を挙げるなどハイライトの多い大会となった。
開幕地デンマークから熱戦続いたツール・ド・フランス
そして7月1日にデンマーク・コペンハーゲンにて第109回ツール・ド・フランスが開幕した。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)やファンアールトらを抑え、初日勝者に輝いたのは意外にもイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)で、クイックステップは2日目もファビオ・ヤコブセン(オランダ)により勝利。2年前の落車による大怪我からの完全復活を、初出場&区間優勝でアピールした。
そして翌第3ステージはその落車の原因となったディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が勝利。9月のレースでは同じ表彰台に立ち、ヤコブセンがフルーネウェーヘンの息子とグータッチしたことからひとまずの和解が報じられている。
熱狂のデンマーク開幕を終えた一行は、フランス本土最北端ダンケルクからレースを再開。第4ステージはマイヨジョーヌを纏ったファンアールトが勝利を収め、初日から3連続2位という不名誉な記録を払拭する約10kmの独走を決めてみせた。そして第6ステージではタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が登坂スプリントでライバル勢を一蹴し、ツール3連覇を狙う23歳が第1週目で早くも総合首位に立った。
しかしマイヨジョーヌの行方はポガチャルではなく、またログリッチでもなくヴィンゲゴーの元へ。超級山岳ガリビエ峠を越えグラノン峠にフィニッシュする第11ステージでユンボ・ヴィスマによる猛攻にポガチャルが屈し、ヴィンゲゴーが自身初のステージ優勝とリーダージャージを獲得。その後ポガチャルは何度も攻撃を仕掛けたものの、マイヨヴェールを獲得したファンアールトのアシストや、チームメイトのコロナ感染や怪我による離脱も影響して首位浮上は叶わず。ヴィンゲゴーがツール第109代総合優勝者に輝いた。
大怪我から復活、そして進化を見せたエヴェネプール
グランツール最終戦ブエルタ・ア・エスパーニャはユンボ・ヴィスマによるチームタイムトライアル勝利でスタート。ツールを途中棄権したログリッチが第4ステージを制してマイヨロホに袖を通したものの、第16ステージの最終盤に落車し負傷リタイア。達成すれば史上初となった総合優勝4連覇を逃した。
そして第6ステージで獲得したマイヨロホを最後まで守り、総合優勝したのはレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)だった。ワンデーレースやTTを得意とするエヴェネプールだが、急勾配の登坂でも淡々と踏み続けるスタイルで強豪クライマーたちを撃破。ブエルタ初出場かつグランツール自体も2度目という22歳がスペインにその名を刻んだ。
また総合2位はエンリク・マス(スペイン、モビスター)、3位は20歳のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が入り、若手とスペイン勢が活躍した大会となった。
TTを伏兵フォスが、ロードはエヴェネプールが独走勝利
3大グランツールが終わり世界一の証であるアルカンシエルを争うロード世界選手権が今年はオーストラリア・ウロンゴンで開催された。大会初日の男子エリート個人タイムトライアルを制したのは、殆どが優勝候補にその名を挙げていなかったトビアス・フォス(ノルウェー)。34.2kmのテクニカルなコースでシュテファン・キュング(スイス)やエヴェネプールを抑え、2019年のツール・ド・ラヴニール覇者がアルカンシエルを掴んだ。
そして続くロードレースの世界一もTTスペシャリストが輝くことに。個人TTでは銅メダルだったエヴェネプールは獲得標高差が4,000kmを超えるタフなレースで飛び出し、ラスト25kmの独走を成功させて世界王者の称号を獲得。ブエルタ制覇から僅か2週間後の出来事にエヴェネプールは「こんな素晴らしいシーズンは2度とないだろう」と涙を流した。
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)の引退レースとなったイル・ロンバルディアはポガチャルが初出場&初優勝した昨年に続き、2連覇を達成。ツール3連覇こそヴィンゲゴーに阻まれたものの、ポガチャルはストラーデビアンケとイル・ロンバルディアなどシーズン13勝(総合優勝3回)と昨年に引けを取らない成功の1年となった。
2022年シーズン男子主要レース結果一覧【6月〜10月】
6月5〜12日 | クリテリウム・デュ・ドーフィネ | 総合優勝:プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) |
6月12〜19日 | ツール・ド・スイス | 総合優勝:ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) |
7月1〜24日 | ツール・ド・フランス | 総合優勝:ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) |
7月30日 | ドノスティア・サンセバスチャン・クラシコア | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) |
8月19日〜9月11日〜 | ブエルタ・ア・エスパーニャ | 総合優勝:レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) |
9月18日 | ロード世界選手権個人タイムトライアル | トビアス・フォス(ノルウェー) |
9月25日 | ロード世界選手権ロードレース | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) |
10月8日 | イル・ロンバルディア | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) |
text:Sotaro.Arakawa
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