2010/07/18(日) - 08:38
2010年7月17日、ツール・ド・フランス第13ステージがロデーズからルヴェルまでの196kmで行なわれ、ゴール7km手前の3級山岳サン・フェレオルで飛び出したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が、前日の雪辱を果たす独走勝利を飾った。
スプリンターに残されたステージはこの日を含めて3つ。ピレネー山岳ステージを目前に控えた第13ステージはスプリンターたちにとって絶好のチャンスだ。
196kmのコースには難易度の低いカテゴリー山岳が5つ設定されており、スプリンターにも問題ないレベル。ゴール7.5km手前の3級山岳サン・フェレオルが勝負の鍵を握った。
4.5km地点でメイン集団から飛び出したのはシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)の3名。
3名の中で総合成績が最もいいのはシャヴァネルで、総合38位・26分03秒遅れ。つまり逃げを試みたのは総合で危険度の低い3名。しかし全員ステージ優勝経験者だ。
先頭3名のリードは最大5分まで広がったが、集団スプリントを目論むチームHTC・コロンビアとランプレの集団コントロールによってタイム差は縮小。ゴールまで100kmを残して4分30秒あったタイム差は、ゴール70km手前で3分30秒、ゴール50km手前で1分45秒に。ゴールまで30kmを残して早くも1分を切った。
懸命に逃げ続けた3名だったが、スプリンターチームには太刀打ち出来ず。結局3級山岳サン・フェレオル(登坂距離1.9km・平均勾配6%)突入前に3名はメイン集団に引き戻された。
集団前方に陣取るスプリンターチームの隙を突いて飛び出したのは、袖口に元世界チャンピオンの証アルカンシェルを配したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)。この強烈なアタックにカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)が反応したが、グイグイ上りを進むバッランには追いつけず。
スプリンターたちがポジションを下げる中、単独で飛び出したのはヴィノクロフ。頂上通過後にバッランに合流。ヴィノクロフは下り区間でバッランを置き去りにし、そのまま独走体制に持ち込んだ。
ペースの上がらないメイン集団からはトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)がカウンターアタックで飛び出したが、ヴィノクロフには届かない。スプリンターチームが集団牽引を開始するまでの間にヴィノクロフは15秒のリードを広げ、独走のままラスト1kmのアーチを通過した。
何度も何度も後方を確認するヴィノクロフ。しかしその視線の先にあるメイン集団は遥か後方。メイン集団を最終的に13秒振り切ったヴィノクロフが、歓喜のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。
前日のステージで逃げを試み、最後の2級山岳クロワ・ヌーヴで独走に持ち込みながらも、後方から追い上げたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に追い抜かれ、ステージ3位に終わったヴィノクロフ。チームメイトのコンタドールが優勝のチャンスを奪う結果となり、後味の悪さを残した。
ヴィノクロフはその翌日に見事な独走勝利を飾ってみせた。ヴィノクロフのステージ優勝は2007年以来3年ぶり。ドーピング違反によって2007年大会の記録が抹消されているため、公式記録としては2005年以来5年ぶりのステージ優勝だ。
「またツール・ド・フランスで勝てて嬉しい。昨日はステージ優勝を飾れなくて落胆したが、それがモチヴェーションに繋がった。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでの勝利以降、“新しいヴィノ”が帰って来た。この勝利が名声の回復に繋がると信じている。もう2007年の出来事については話したくない(レース公式サイト)」
ピレネー山岳4連戦を前にアスタナの士気は高まっていることだろう。チームリーダーのコンタドールはゴール後すぐにヴィノクロフに駆け寄り、祝福の抱擁を交わした。
13秒遅れのメイン集団は、下りでポジションを上げたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)がスプリントを制して先頭ゴール。ステージ8位に沈んだトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)に代わって、ステージ3位のアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)が再びマイヨヴェールに袖を通した。
第13ステージを終えて、ペタッキ、フースホフト、カヴェンディッシュの3名が25ポイント差の間にひしめいている状態。1回のステージ優勝で逆転可能なポイント差であり、マイヨヴェール争いはパリの最終ステージまで決着がつかないような混戦に持ち込まれる可能性大だ。
終盤にかけてヴォクレールのポジションキープに力を尽くした新城幸也(Bboxブイグテレコム)は、メイン集団内のステージ19位でゴールした。これはチーム内トップの成績。安定した走りを見せているユキヤは、最終決戦地ピレネー山岳ステージに挑む。
ツール・ド・フランス2010第13ステージ結果
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)4h26'26"
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)+13"
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
4位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・トランジションズ)
7位 アントニー・ジェラン(フランス、フランセーズデジュー)
8位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
9位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)
10位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
19位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
第13ステージ敢闘賞
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)63h08'40"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+31"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+4'06"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+4'27"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+4'58"
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)+5'02"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+5'16"
11位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+5'30"
12位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+6'12"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)+7'34"
16位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)+7'39"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+8'08"
96位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h22'06"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)187pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)185pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)162pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)107pts
2位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)92pts
3位 マリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)65pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)63h08'40"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+4'27"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+5'16"
チーム総合成績
1位 レディオシャック 189h31'13"
2位 ケースデパーニュ +21"
3位 ラボバンク +16'13"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
スプリンターに残されたステージはこの日を含めて3つ。ピレネー山岳ステージを目前に控えた第13ステージはスプリンターたちにとって絶好のチャンスだ。
196kmのコースには難易度の低いカテゴリー山岳が5つ設定されており、スプリンターにも問題ないレベル。ゴール7.5km手前の3級山岳サン・フェレオルが勝負の鍵を握った。
4.5km地点でメイン集団から飛び出したのはシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)の3名。
3名の中で総合成績が最もいいのはシャヴァネルで、総合38位・26分03秒遅れ。つまり逃げを試みたのは総合で危険度の低い3名。しかし全員ステージ優勝経験者だ。
先頭3名のリードは最大5分まで広がったが、集団スプリントを目論むチームHTC・コロンビアとランプレの集団コントロールによってタイム差は縮小。ゴールまで100kmを残して4分30秒あったタイム差は、ゴール70km手前で3分30秒、ゴール50km手前で1分45秒に。ゴールまで30kmを残して早くも1分を切った。
懸命に逃げ続けた3名だったが、スプリンターチームには太刀打ち出来ず。結局3級山岳サン・フェレオル(登坂距離1.9km・平均勾配6%)突入前に3名はメイン集団に引き戻された。
集団前方に陣取るスプリンターチームの隙を突いて飛び出したのは、袖口に元世界チャンピオンの証アルカンシェルを配したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)。この強烈なアタックにカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)が反応したが、グイグイ上りを進むバッランには追いつけず。
スプリンターたちがポジションを下げる中、単独で飛び出したのはヴィノクロフ。頂上通過後にバッランに合流。ヴィノクロフは下り区間でバッランを置き去りにし、そのまま独走体制に持ち込んだ。
ペースの上がらないメイン集団からはトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)がカウンターアタックで飛び出したが、ヴィノクロフには届かない。スプリンターチームが集団牽引を開始するまでの間にヴィノクロフは15秒のリードを広げ、独走のままラスト1kmのアーチを通過した。
何度も何度も後方を確認するヴィノクロフ。しかしその視線の先にあるメイン集団は遥か後方。メイン集団を最終的に13秒振り切ったヴィノクロフが、歓喜のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。
前日のステージで逃げを試み、最後の2級山岳クロワ・ヌーヴで独走に持ち込みながらも、後方から追い上げたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に追い抜かれ、ステージ3位に終わったヴィノクロフ。チームメイトのコンタドールが優勝のチャンスを奪う結果となり、後味の悪さを残した。
ヴィノクロフはその翌日に見事な独走勝利を飾ってみせた。ヴィノクロフのステージ優勝は2007年以来3年ぶり。ドーピング違反によって2007年大会の記録が抹消されているため、公式記録としては2005年以来5年ぶりのステージ優勝だ。
「またツール・ド・フランスで勝てて嬉しい。昨日はステージ優勝を飾れなくて落胆したが、それがモチヴェーションに繋がった。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでの勝利以降、“新しいヴィノ”が帰って来た。この勝利が名声の回復に繋がると信じている。もう2007年の出来事については話したくない(レース公式サイト)」
ピレネー山岳4連戦を前にアスタナの士気は高まっていることだろう。チームリーダーのコンタドールはゴール後すぐにヴィノクロフに駆け寄り、祝福の抱擁を交わした。
13秒遅れのメイン集団は、下りでポジションを上げたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)がスプリントを制して先頭ゴール。ステージ8位に沈んだトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)に代わって、ステージ3位のアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)が再びマイヨヴェールに袖を通した。
第13ステージを終えて、ペタッキ、フースホフト、カヴェンディッシュの3名が25ポイント差の間にひしめいている状態。1回のステージ優勝で逆転可能なポイント差であり、マイヨヴェール争いはパリの最終ステージまで決着がつかないような混戦に持ち込まれる可能性大だ。
終盤にかけてヴォクレールのポジションキープに力を尽くした新城幸也(Bboxブイグテレコム)は、メイン集団内のステージ19位でゴールした。これはチーム内トップの成績。安定した走りを見せているユキヤは、最終決戦地ピレネー山岳ステージに挑む。
ツール・ド・フランス2010第13ステージ結果
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)4h26'26"
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)+13"
3位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
4位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 ジュリアン・ディーン(ニュージーランド、ガーミン・トランジションズ)
7位 アントニー・ジェラン(フランス、フランセーズデジュー)
8位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)
9位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)
10位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
19位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
第13ステージ敢闘賞
フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)63h08'40"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+31"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+4'06"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+4'27"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+4'58"
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)+5'02"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+5'16"
11位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+5'30"
12位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+6'12"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)+7'34"
16位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)+7'39"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+8'08"
96位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h22'06"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)187pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)185pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)162pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)107pts
2位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)92pts
3位 マリオ・アールツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)65pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)63h08'40"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+4'27"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+5'16"
チーム総合成績
1位 レディオシャック 189h31'13"
2位 ケースデパーニュ +21"
3位 ラボバンク +16'13"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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