2022/09/02(金) - 09:26
1級山岳ペニャス・ブランカスを登るブエルタ12日目に、逃げに入ったリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がキャリア初のブエルタ区間優勝。落車を感じさせない強い走りでレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)がリードを守っている。
9月1日(木)第12ステージ
サロブレーニャ〜ペニャス・ブランカス 192.7km(平坦/頂上フィニッシュ)
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージの舞台に、第2週目のラストに用意されたシエラネバダ登坂バトルの小手調べとなる1級山岳ペニャス・ブランカスの山頂フィニッシュが登場。2013年大会以来となるブランカスは距離19km/平均勾配6.7%というスペックを持ち、15%前後の急勾配区間が登り口とラスト3kmに登場するブエルタらしい難関登坂だ。
前日10位に食い込んだスプリンターのボーイ・ファンポッぺル(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)を含む3名がスタートせず、147名がサロブレーニャの街を出発。セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)たちが積極的に抜け出しを試みた末、この日は32名という巨大な逃げが決まった。
既に総合で大きく遅れているリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)や、第5ステージ勝者マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)、サムエーレ・バッティステッラ(イタリア)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)のアスタナ・カザフスタンコンビ、マイヨモンターニャ(山岳賞)のジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)といった、グランツールらしいメンバーが揃った強力な逃げ。
逃げグループ内の総合成績最上位は14分04秒遅れのウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)で、1級山岳バトルを見据えるユンボ・ヴィスマやクイックステップ・アルファヴィニルといった総合チームも「前待ち」作戦でメンバーを送り込む。当初タイム差は4,5分程度で推移していたものの、100km地点を超えたあたりで再び拡大。最大タイム差は、バーチャルマイヨロホをケルデルマンにギリギリ与えない12分まで到達することとなる。
今大会5度目の逃げ切りに向けてローテーションを組む32名の中から、真っ先に仕掛けたのは今大会3度目の逃げとなったバッティステッラだった。後半に入ったタイミングに用意されたノンカテゴリーの登坂で飛び出した元U23世界王者はすぐさま45秒リードを稼ぎ、一方後方ではヴァインのステージ優勝ためにアシスト2名を逃げに入れたアルペシン・ドゥクーニンクが追走を続けていく。
一方、平穏に距離を消化していたメイン集団では、総合首位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が下りの右コーナーでタイヤを滑らせて単独落車してしまう。「すごく滑りやすいコーナーだった。先行するモトが少しスリップしている様子を見て(直線的なラインで)インカットしようと思ったけれど、ちょっとやり過ぎてしまった」と振り返るマイヨロホには幸い右太腿に擦過傷を作っただけで無事レース復帰している。
バッティステッラは引き戻され、メイン集団との合流が無いと判断して逃げグループ内のルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)はアシスト任務のために離脱。こうして31名となった逃げグループが11分リードで1級山岳ペニャス・ブランカスの登りに取り掛かる。
15%勾配が始まるとボーラ・ハンスグローエのマッテオ・ファッブロ(イタリア)が、「今回みたいな長い登りはとても自分向き」と言うケルデルマンのステージ優勝のために牽引を開始する。脚が売り切れた選手たちが次々とちぎれていく中、残り5kmを切ると、エリー・ジェベール(フランス、アルケア・サムシック)がステージ優勝に向けた本格的なアタック合戦の口火を切った。
茶色い岩肌が露出したペニャス・ブランカスの登坂。ジェベールが何度もアタックを繰り返す背後ではステージ3勝目を目指すヴァインが遅れ、ケルデルマンとカラパス、そしてヤン・ポランツ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が追走。いよいよ強者だけに絞り込まれると、残り2kmアーチをきっかけにカラパスが渾身のアタックを繰り出した。
「残り1.8kmからは厳しく、かつ一定勾配の登りになる。あと一度アタックする脚がまだあると分かっていた」と振り返る五輪覇者の切れ味鋭いアタックにライバル勢は遅れを喫する。10秒差でケルデルマンが単独追走したものの、勝ちパターンに持ち込んだカラパスのペースは最後まで落ちなかった。
今年のジロ・デ・イタリアでマリアローザを着用しつつ、ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)に逆転負けを喫したカラパスが、総合成績で遅れた鬱憤を晴らすキャリア初のブエルタステージ優勝を達成。
「とても嬉しいよ。なぜなら開幕時に望んでいたコンディションをようやく取り戻したからだ。自宅で練習中に落車してからトップレベルからほど遠く、このブエルタでも山岳に入ってから本調子を発揮できていなかった。ステージ優勝に目標を切り替えてからは、いつか達成できると自分を信じていたよ。ここまで2位や3位が続いていたので感動的だ」と、今年3月のヴォルタ・カタルーニャ以来となるステージ優勝を挙げたカラパスは喜んでいる。
10分遅れでペニャス・ブランカスに突入したメイン集団ではユンボ・ヴィスマが序盤区間をコントロールし、中腹を過ぎてから総合3位に落ちたエンリク・マス(スペイン、モビスター)が攻撃に転じる。しかし落車の影響を感じさせないエヴェネプールが僅かなリードも与えず追走。弱みを一切見せず、むしろ自らペーシングするマイヨロホに対し、マスやプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 、フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン)といったライバル勢は動くことができなかった。
最後はエヴェネプール自らスプリントを掛け、マスとログリッチ、そしてアユソだけが連なってフィニッシュ。総合成績上位陣の順位変動は起こらず、逃げたケルデルマンが総合21位から6位まで、ポランツが総合23位から9位までの大幅ジャンプに成功することとなった。
9月1日(木)第12ステージ
サロブレーニャ〜ペニャス・ブランカス 192.7km(平坦/頂上フィニッシュ)
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージの舞台に、第2週目のラストに用意されたシエラネバダ登坂バトルの小手調べとなる1級山岳ペニャス・ブランカスの山頂フィニッシュが登場。2013年大会以来となるブランカスは距離19km/平均勾配6.7%というスペックを持ち、15%前後の急勾配区間が登り口とラスト3kmに登場するブエルタらしい難関登坂だ。
前日10位に食い込んだスプリンターのボーイ・ファンポッぺル(オランダ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)を含む3名がスタートせず、147名がサロブレーニャの街を出発。セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)たちが積極的に抜け出しを試みた末、この日は32名という巨大な逃げが決まった。
既に総合で大きく遅れているリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)や、第5ステージ勝者マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)、サムエーレ・バッティステッラ(イタリア)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)のアスタナ・カザフスタンコンビ、マイヨモンターニャ(山岳賞)のジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)といった、グランツールらしいメンバーが揃った強力な逃げ。
逃げグループ内の総合成績最上位は14分04秒遅れのウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)で、1級山岳バトルを見据えるユンボ・ヴィスマやクイックステップ・アルファヴィニルといった総合チームも「前待ち」作戦でメンバーを送り込む。当初タイム差は4,5分程度で推移していたものの、100km地点を超えたあたりで再び拡大。最大タイム差は、バーチャルマイヨロホをケルデルマンにギリギリ与えない12分まで到達することとなる。
今大会5度目の逃げ切りに向けてローテーションを組む32名の中から、真っ先に仕掛けたのは今大会3度目の逃げとなったバッティステッラだった。後半に入ったタイミングに用意されたノンカテゴリーの登坂で飛び出した元U23世界王者はすぐさま45秒リードを稼ぎ、一方後方ではヴァインのステージ優勝ためにアシスト2名を逃げに入れたアルペシン・ドゥクーニンクが追走を続けていく。
一方、平穏に距離を消化していたメイン集団では、総合首位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が下りの右コーナーでタイヤを滑らせて単独落車してしまう。「すごく滑りやすいコーナーだった。先行するモトが少しスリップしている様子を見て(直線的なラインで)インカットしようと思ったけれど、ちょっとやり過ぎてしまった」と振り返るマイヨロホには幸い右太腿に擦過傷を作っただけで無事レース復帰している。
バッティステッラは引き戻され、メイン集団との合流が無いと判断して逃げグループ内のルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)はアシスト任務のために離脱。こうして31名となった逃げグループが11分リードで1級山岳ペニャス・ブランカスの登りに取り掛かる。
15%勾配が始まるとボーラ・ハンスグローエのマッテオ・ファッブロ(イタリア)が、「今回みたいな長い登りはとても自分向き」と言うケルデルマンのステージ優勝のために牽引を開始する。脚が売り切れた選手たちが次々とちぎれていく中、残り5kmを切ると、エリー・ジェベール(フランス、アルケア・サムシック)がステージ優勝に向けた本格的なアタック合戦の口火を切った。
茶色い岩肌が露出したペニャス・ブランカスの登坂。ジェベールが何度もアタックを繰り返す背後ではステージ3勝目を目指すヴァインが遅れ、ケルデルマンとカラパス、そしてヤン・ポランツ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が追走。いよいよ強者だけに絞り込まれると、残り2kmアーチをきっかけにカラパスが渾身のアタックを繰り出した。
「残り1.8kmからは厳しく、かつ一定勾配の登りになる。あと一度アタックする脚がまだあると分かっていた」と振り返る五輪覇者の切れ味鋭いアタックにライバル勢は遅れを喫する。10秒差でケルデルマンが単独追走したものの、勝ちパターンに持ち込んだカラパスのペースは最後まで落ちなかった。
今年のジロ・デ・イタリアでマリアローザを着用しつつ、ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)に逆転負けを喫したカラパスが、総合成績で遅れた鬱憤を晴らすキャリア初のブエルタステージ優勝を達成。
「とても嬉しいよ。なぜなら開幕時に望んでいたコンディションをようやく取り戻したからだ。自宅で練習中に落車してからトップレベルからほど遠く、このブエルタでも山岳に入ってから本調子を発揮できていなかった。ステージ優勝に目標を切り替えてからは、いつか達成できると自分を信じていたよ。ここまで2位や3位が続いていたので感動的だ」と、今年3月のヴォルタ・カタルーニャ以来となるステージ優勝を挙げたカラパスは喜んでいる。
10分遅れでペニャス・ブランカスに突入したメイン集団ではユンボ・ヴィスマが序盤区間をコントロールし、中腹を過ぎてから総合3位に落ちたエンリク・マス(スペイン、モビスター)が攻撃に転じる。しかし落車の影響を感じさせないエヴェネプールが僅かなリードも与えず追走。弱みを一切見せず、むしろ自らペーシングするマイヨロホに対し、マスやプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 、フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン)といったライバル勢は動くことができなかった。
最後はエヴェネプール自らスプリントを掛け、マスとログリッチ、そしてアユソだけが連なってフィニッシュ。総合成績上位陣の順位変動は起こらず、逃げたケルデルマンが総合21位から6位まで、ポランツが総合23位から9位までの大幅ジャンプに成功することとなった。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第12ステージ結果
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 4:38:26 |
2位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:09 |
3位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +0:24 |
4位 | ヤン・ポランツ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +0:26 |
5位 | マルコ・ブレナー(ドイツ、チームDSM) | +0:34 |
6位 | エリー・ジェベール(フランス、アルケア・サムシック) | +0:56 |
7位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | +1:12 |
8位 | カールフレデリック・ハーゲン(ノルウェー、イスラエル・プレミアテック) | +1:23 |
9位 | ジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) | +3:04 |
10位 | マッテオ・ファッブロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:17 |
15位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | +7:39 |
16位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
17位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
18位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | |
19位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン) | +7:45 |
21位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +7:50 |
22位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +8:07 |
23位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +8:12 |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 44:25:09 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +2:41 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +3:03 |
4位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +4:06 |
5位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +4:53 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | +6:28 |
7位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン) | +6:56 |
8位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +7:18 |
9位 | ヤン・ポランツ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | +8:00 |
10位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +8:05 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 184pts |
2位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 96pts |
3位 | サムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) | 87pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 40pts |
2位 | ロバート・スタナード(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 21pts |
3位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 20pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 44:25:09 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +4:06 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +4:53 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 132:27:59 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | 6:59 |
3位 | EFエデュケーション・イージーポスト | 22:33 |
text:So Isobe
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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