2022/08/27(土) - 08:34
大多数の予想を覆し、序盤から飛び出した5名がブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージで逃げ切り達成。僅差のマッチスプリントでヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)が自身2度目のブエルタ区間優勝を手にした。
8月26日(金)第7ステージ
カマルゴ〜システィエルナ 190.1km(丘陵)
マイヨロホ姿で登場したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
8月26日(金)第7ステージ カマルゴ〜システィエルナ 190.1km image:Unipublic
8月26日(金)第7ステージ カマルゴ〜システィエルナ 190.1km photo:Unipublic
第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージは、バスクと飛び出してカンタブリア州からカスティーリャレオン州へ。カマルゴとシスティエルナを結ぶ190mkmコースは中盤に1級山岳プエルト・デ・サン・グロリオ(距離22.4km/平均勾配5.5%)を登って以降は短いダウンヒルを経て、標高1,000mほどの高地をフィニッシュまで進む。
前日にマイヨロホ(キャリア初のグランツールリーダージャージ)を獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)ら、特別ジャージ着用者を先頭に晴れ渡るカマルゴをスタート。登坂を乗り切ったスプリンター向けレイアウトのこの日、序盤の平坦区間で6名が逃げを決めた。
晴れ渡るカマルゴの町を出発する photo:CorVos
逃げグループを形成したサムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)たち photo:Unipublic
逃げグループを形成した6名
サムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
オメル・ゴールドスタイン(イスラエル、イスラエル・プレミアテック)
ハリー・スウェニー(オーストラリア、ロット・スーダル)
ジミー・ヤンセンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
元U23世界王者のバッティステッラや、第5ステージで逃げ切ったものの3位に終わったライトを含む6名は、まず一気にリードを3分強まで広げ、1級山岳サングロリオまでにもう1分半を上乗せする。メイン集団ではクイックステップ・アルファヴィニルに代わり、マッズ・ピーダスン(デンマーク)のスプリントライバルを登坂で振り落とす意志を持ったトレック・セガフレードがハイペースを刻むこととなる。
逃げグループ内では「実はあまり調子が良くなかったので峠を耐えられるか分からなかった。だから人に任せるよりもマイペースでコントロールしようとした」と振り返るスウェニーを中心に、一定ペースで1級山岳サングロリオを登坂。唯一ゴールドスタインが脱落し、5人となった逃げグループでは登坂力に長けるエラダが先頭山頂通過し10ポイントを稼いでいる(山岳賞ランキング5位浮上)。
マッズ・ピーダスン(デンマーク)のためにトレック・セガフレードが高速牽引 photo:Unipublic
トレック・セガフレードのペースメイクで遅れたティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos
トレック・セガフレードが、ピーダスンが耐えられるギリギリのハイペースを貫くメイン集団からは目論み通り重量級スプリンターが脱落した。まずはティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が、パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)が、更にマイヨプントス(ポイント賞)を着るサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が、そしてマイヨモンターニャ(山岳賞)のヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH)もが遅れをとった。
頂上通過後のハイペースダウンヒルでベネットは辛くも集団復帰したものの、それ以外のスプリンターは完全に脱落。残り50km地点で逃げグループとメイン集団の差は2分半程度だったものの、逃げグループがまとまってローテーションを回したこと、そしてトレック・セガフレードが牽引をストップし、アルケア・サムシックとバイクエクスチェンジ・ジェイコが集団先頭に立ち牽引したものの、山岳でアシスト要員が消耗していたこともあって思うようにタイム差は縮まらない。いわゆる「10km(で)1分(を縮める)ペース」を下回りながらフィニッシュまでの距離を減らしていく。
全速力でフィニッシュを目指すフレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Unipublic
アルケア・サムシックなどが逃げグループを引き戻すべく牽引 photo:Unipublic
残り20kmでタイム差は1分40秒、残り15kmでは1分20秒。慌てたメイン集団ではボーラ・ハンスグローエとトレック・セガフレードがアシスト選手を出したものの、ずっと牽き続けていたアルケアがメンバーを使い切ったことも加わり5名を捉えるには至らない。残り5kmでタイム差は50秒。ごく僅かな逃げ切りの可能性に賭けてローテーションを回し続けた先頭5名が青信号を灯らせた。
向かい風のゴール勝負。残り500mから先導役に立たされ、残り300mから真っ先に加速したのは「勝ちたいという気持ちが先行しすぎてしまったかもしれない」と振り返るライトだった。ライトを絶好の発射台に見立て、その番手に付いてタイミングを待ったエラダと急加速で追い込むバッティステッラが左右からライトをパス。ハンドルを投げ込む僅差の勝負の末、右手を振り上げたのは元スペイン王者エラダだった。
僅差のスプリント勝負を制したヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) photo:CorVos
メイン集団を振り切り、手に汗握る接近戦でキャリア12年目のエラダが2度目のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝。座り込み咽び泣いたエラダは「クレイジーだよ!グループ内でスプリントに強い選手がいるのは分かっていたけれど、自分のスプリント力を信じていたよ。最後まで全力で戦い、勝ち抜くことができた。スペインにとってはマルク(ソレル)に続く2回目のステージ優勝だ。とても嬉しいよ」と振り返る。ワールドツアーランキング16位のコフィディスにとっても貴重なポイント大量確保となった。
笑顔でシャンパンファイトを楽しむヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) photo:Unipublic
マイヨロホをキープしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
惜しくも29秒届かなかったメイン集団はベネットを先頭にフィニッシュ。総合勢は軒並みメイン集団内でフィニッシュしたため総合上位勢の順位変動はなかった。
選手コメントは別記事で紹介します。
8月26日(金)第7ステージ
カマルゴ〜システィエルナ 190.1km(丘陵)
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第77回ブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージは、バスクと飛び出してカンタブリア州からカスティーリャレオン州へ。カマルゴとシスティエルナを結ぶ190mkmコースは中盤に1級山岳プエルト・デ・サン・グロリオ(距離22.4km/平均勾配5.5%)を登って以降は短いダウンヒルを経て、標高1,000mほどの高地をフィニッシュまで進む。
前日にマイヨロホ(キャリア初のグランツールリーダージャージ)を獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)ら、特別ジャージ着用者を先頭に晴れ渡るカマルゴをスタート。登坂を乗り切ったスプリンター向けレイアウトのこの日、序盤の平坦区間で6名が逃げを決めた。
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逃げグループを形成した6名
サムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
オメル・ゴールドスタイン(イスラエル、イスラエル・プレミアテック)
ハリー・スウェニー(オーストラリア、ロット・スーダル)
ジミー・ヤンセンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
元U23世界王者のバッティステッラや、第5ステージで逃げ切ったものの3位に終わったライトを含む6名は、まず一気にリードを3分強まで広げ、1級山岳サングロリオまでにもう1分半を上乗せする。メイン集団ではクイックステップ・アルファヴィニルに代わり、マッズ・ピーダスン(デンマーク)のスプリントライバルを登坂で振り落とす意志を持ったトレック・セガフレードがハイペースを刻むこととなる。
逃げグループ内では「実はあまり調子が良くなかったので峠を耐えられるか分からなかった。だから人に任せるよりもマイペースでコントロールしようとした」と振り返るスウェニーを中心に、一定ペースで1級山岳サングロリオを登坂。唯一ゴールドスタインが脱落し、5人となった逃げグループでは登坂力に長けるエラダが先頭山頂通過し10ポイントを稼いでいる(山岳賞ランキング5位浮上)。
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トレック・セガフレードが、ピーダスンが耐えられるギリギリのハイペースを貫くメイン集団からは目論み通り重量級スプリンターが脱落した。まずはティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が、パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)が、更にマイヨプントス(ポイント賞)を着るサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が、そしてマイヨモンターニャ(山岳賞)のヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH)もが遅れをとった。
頂上通過後のハイペースダウンヒルでベネットは辛くも集団復帰したものの、それ以外のスプリンターは完全に脱落。残り50km地点で逃げグループとメイン集団の差は2分半程度だったものの、逃げグループがまとまってローテーションを回したこと、そしてトレック・セガフレードが牽引をストップし、アルケア・サムシックとバイクエクスチェンジ・ジェイコが集団先頭に立ち牽引したものの、山岳でアシスト要員が消耗していたこともあって思うようにタイム差は縮まらない。いわゆる「10km(で)1分(を縮める)ペース」を下回りながらフィニッシュまでの距離を減らしていく。
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残り20kmでタイム差は1分40秒、残り15kmでは1分20秒。慌てたメイン集団ではボーラ・ハンスグローエとトレック・セガフレードがアシスト選手を出したものの、ずっと牽き続けていたアルケアがメンバーを使い切ったことも加わり5名を捉えるには至らない。残り5kmでタイム差は50秒。ごく僅かな逃げ切りの可能性に賭けてローテーションを回し続けた先頭5名が青信号を灯らせた。
向かい風のゴール勝負。残り500mから先導役に立たされ、残り300mから真っ先に加速したのは「勝ちたいという気持ちが先行しすぎてしまったかもしれない」と振り返るライトだった。ライトを絶好の発射台に見立て、その番手に付いてタイミングを待ったエラダと急加速で追い込むバッティステッラが左右からライトをパス。ハンドルを投げ込む僅差の勝負の末、右手を振り上げたのは元スペイン王者エラダだった。
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メイン集団を振り切り、手に汗握る接近戦でキャリア12年目のエラダが2度目のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝。座り込み咽び泣いたエラダは「クレイジーだよ!グループ内でスプリントに強い選手がいるのは分かっていたけれど、自分のスプリント力を信じていたよ。最後まで全力で戦い、勝ち抜くことができた。スペインにとってはマルク(ソレル)に続く2回目のステージ優勝だ。とても嬉しいよ」と振り返る。ワールドツアーランキング16位のコフィディスにとっても貴重なポイント大量確保となった。
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惜しくも29秒届かなかったメイン集団はベネットを先頭にフィニッシュ。総合勢は軒並みメイン集団内でフィニッシュしたため総合上位勢の順位変動はなかった。
選手コメントは別記事で紹介します。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第7ステージ結果
1位 | ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) | 4:30:58 |
2位 | サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナカザフスタン) | |
3位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
4位 | ジミー・ヤンセンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
5位 | ハリー・スウェニー(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
6位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:29 |
7位 | ジェイク・スチュワート(イギリス、グルパマ・エフデジ) | |
8位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | |
9位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | |
10位 | ダニエル・マクレー(イギリス、アルケア・サムシック) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 25:21:34 |
2位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマ・エフデジ) | +0:21 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +0:28 |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:01 |
5位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:12 |
6位 | パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:27 |
7位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | |
8位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +1:34 |
9位 | サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | +1:52 |
10位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:54 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 142pts |
2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 127pts |
3位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 64pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ヴィクトル・ランゲロッティ(モナコ、ブルゴスBH) | 13pts |
2位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 11pts |
3位 | ルーベン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス) | 11pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 25:21:34 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:12 |
3位 | パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:27 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 75:18:43 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +1:27 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | +1:29 |
text:So Isobe
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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