2010/07/10(土) - 19:31
序盤は雨。そして中盤以降は晴れて蒸し暑さが戻った。もっとも長いステージは、見た目の退屈な展開以上にハードなステージだったようだ。
熱さを冷ます雨。連日の暑さが身体にこたえる。
昨日のゴール、そして今日のスタートの街モンタルジは、「ガディネのヴェネツィア」と呼ばれる水の都。街の中に運河が通り、随所に花飾りをした橋がかかる美しい街。
花咲くモンタルジをスタートする選手たち photo:Makoto Ayano
早朝に激しい雨が降ったがスタート時には小降りになっていた。寒さは感じず、逆に蒸し暑い。昨夜は熱帯夜といっていい夜を過ごした選手たち。Twitterコメントをみると、エアコンが無いホテルで寝苦しいなどと数々の文句がポストされている。
縦に長く伸びた集団が街の中を駆け抜ける photo:Makoto Ayanoそれなりに高級なホテルでも、フランスのこの一帯では新しい建物でないとエアコンがないことが普通。夜になっても気温は高いままで、暑苦しかった。
227.5kmと最長のステージは、天気がすぐれないことがせめてもの救いだろう。
長いステージには4つの4級峠が分散して存在し、コースは絶えず小さなアップダウンが連続する。補給地点を過ぎると後半はモルヴァン山脈に近づき、緩やかな丘陵地帯と森を通過する。ブルゴーニュの誇る高級ワインの産地として知られる一帯を抜け、小さな町グーニョンへとゴールする。
ユキヤはこの日、逃げは得策でないと考えたようだ。
「雨は嫌だなぁ。距離が長いステージだから逃げても消耗するし、スプリントに持ち込みたいチームに加えてサクソバンクがカンチェラーラのマイヨジョーヌを山岳までは守ることを公言しているから、必ず追撃があるはずで、逃げ切ることは難しいでしょう」。
再び引き続けたチームHTC・コロンビア
今日も3人の逃げが決まり、集団はそれを黙認。逃げるセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)、マチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ)ら3人と集団のタイム差が開いて展開が落ち着く。今日も集団の前をチームHTC・コロンビアのジャージが陣取り、集団のペースをつくって淡々と追いかける。
ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームHTC・コロンビア)とスチュアート・オグレディ(オーストラリア、サクソバンク)がコントロールするメイン集団 photo:Makoto Ayano
違うのは、その仕事を請け負う選手。昨日までで通算300km以上をひとりで引き続けてきたカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)は集団内で休み、代わってベアト・グラブシュ(ドイツ)とマキシム・モンフォール(ベルギー)のふたりがかわるがわる前を引く。TTの得意な二人は後方にサクソバンクを従えて黙々とペダルを踏む。
カヴェンディッシュの重要な発射台を務めるマーク・レンショー(オーストラリア、チームHTC・コロンビア) photo:Makoto Ayanoオールラウンダーのシウトソウは明日からの山岳ステージでマイケル・ロジャース(オーストラリア)のアシストに回る必要があるため、無駄なエネルギーを使わず、フレッシュな状態で臨めるようにという配慮だ。
この日を逃すと次のスプリントのチャンスがあるステージまでは4ステージ先まで待たなくてはいけない。今日はチームHTC・コロンビアだけでなく、ガーミン・トランジションズやサーヴェロ・テストチーム、ランプレなど、スプリントに持ち込みたいチームが逃げを潰す動きに出ることは確実だ。マイヨヴェール争いはまだ始まったばかり。
談笑しながら走るオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)とトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム) photo:Makoto Ayanoフランス中央部へ向けて、街や村をつなぐように走っていく集団。退屈な展開に追いかけるこちらも睡魔に襲われながらの随行だ。コースをショートカットして前に出れる脇道をみつけては、集団をスキップして前へ出る。
雨があがり、後半は元通りの暑さが戻ってきた。スタート時に雨の装備をした選手たちもウェアを脱いで盛んにチームカーへと戻る。
ユキヤもレインギアやシューズカバー、ヘルメットの下にキャップを被るなど、いろいろ着込んで走っていたようだが、チームカーに預けに戻った。この日ラジオが「アラシロ」の名を呼んだのは2回。一回目がウェア預け。2回目はレース後半に備えてチームメイトのためのボトル運びのため。今日のユキヤは2日連続でスプリントで6位に食い込んでいるセバスティアン・テュルゴー(フランス)のリードアウトも仕事になる。
自身を取り戻したカヴ ファラーの2位は復調のサイン
昨ステージの再現のようにステージを制したカヴェンディッシュ。しかしまったくの余裕の勝利で、喜びのポーズ自体も余裕たっぷり。敵わなかったファラーがゴールラインを駆け抜けざまに握手のために手を差し出す。勝利を欲しいままにする、いつものカヴの自信たっぷりの表情が戻ってきた。
ガッツポーズでゴールするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Makoto Ayano
カヴは言う。「消して平坦なんかじゃなかった。アップダウンが連続して、皆苦しい表情をしていた。終日上り下りの繰り返しで(累積標高で)2000フィートは登った。
ゴール後に握手するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)とタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) photo:Makoto Ayano他のチームも利用しての完璧なリードアウトだった。レンショーはランプレとガーミンの後ろから僕を引き上げ、解き放ってくれた。
チームはすごいよ。完璧だ。カンスタンティン(シウトソウ)は連日のハードワークから休ませなきゃならなかった。ベアト・グラブシュが引き、マキシム・モンフォールが続いた。
モンフォールに感謝するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos先頭をハードに引き続けたのは後半にカウンターアタックがかかることを知っていたから。あまり多くアタックがかからなければいいな、と思っていたけど、アタックはそれほど多くなかった。
向かい風になることも知っていた。そのために総合争いのチームも前に出てきて、逃げグループを捕まえることができた。
エリック・ツァベルと喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos僕らにはリードアウトできる4人の選手がいた。すでにリードアウトを始めた他のチームの後ろから上がらなければならなかったけど、レンショーは冷静にランプレを追い抜き、ゴール前150mで僕を発射してくれた。
僕は今や勝つことに集中するだけだ。石畳の(第2)ステージは前をいくグループがもっと大人数だろうと思って攻めなかった。ポイントを沢山失ったし、その次の日もポイントをたくさんとれなかった。だからポイント争いからは大きく遠ざかってしまった。でもこつこつやるよ」。
涙に暮れた昨ステージの勝利から明けての再びの勝利。記者会見は堂々と、徐々にビッグマウスも戻りつつある気配。もう1勝重ねたらカヴ節が聞けそうだ。
タイラー・ファラー(ガーミン・トランジションズ)の2位も復調のサインだ。手首付近の骨にヒビが入った状態で力が入らなかったが、ようやくスプリントできるようになった。
スプリント争いが一旦お休みとなる山岳ステージの4日間で、さらに回復が見込めるだろう。
アスタナの選手はわざと遅れる
集団内でゴールするアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Makoto Ayano2日連続で、アスタナの選手たちがゴールスプリントへ向けてスピードが上がるプロトンから離脱して、遅れてゴールに帰ってきている(ダビ・デラフエンテは残り25km地点で落車している)。
それはこれから控える山岳ステージにおいて、少しでも脚に疲労のない状態で臨むため、そしてゴール前の集団落車を防ぐ戦略による意図的な走りのようだ。もちろん狙いはコンタドールをアシストするため。
集団内で大人しく走るアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vosアルプスやピレネーの1級や超級山岳でコンタドールはマイヨジョーヌ獲得へ向けて闘うことになるが、アスタナのチーム力には疑問が残る。そこで選手たちには落車や体力消耗のリスクを最小限にするよう指示されているという。
無駄な争いは避け、ゴールへ向けてスピードが上がると集団から離れるという、極端な作戦にシフトしたアスタナ。かつてジルベルト・シモーニ擁するサエコ(あるいはランプレ)や、マルコ・パンターニ擁するメルカトーネ・ウノなど山岳スペシャリストをエースとした小ぶりなチームを指揮してきたジュゼッペ・マルチネッリ監督の手腕の見せどころだ。
コンタドールによれば、マイヨジョーヌを守る仕事による疲弊を避けるため、勝負はアルプスでなくピレネーまで待ちたいという。
マイヨヴェール&アポア・ルージュ争い
敢闘賞に輝いたマチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ) photo:Makoto Ayano逃げる3人の中で4つの山岳ポイント全てをトップ通過したマチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ)。ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)とのポイント差はわずか1ポイントとなり、山岳賞ジャージ争いが面白くなった。
明日から始まる中級山岳ステージで、ジャージ獲得(あるいは防衛)を狙って早くから逃げてポイントを稼ぐ戦法に出るのか。2人のフランス人の闘いに注目だ。
マイヨヴェールを着るフースホフトはステージ10位と着順は振るわないながらもポイント獲得に関しては堅実な位置につける。フースホフトの合計118点に対し、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)は4ポイント差の114点。マキュアンは105点。ペタッキが山岳の厳しいツールで最後まで残りシャンゼリゼに残ることができるかは微妙なこところだが、マイヨヴェール争いに貪欲かどうかは明日からの序盤のスプリントポイントを狙ってくるかどうかで判断できるだろう。
暑さにやられ苛立ちのトラブル続出
ゴール後に乱闘を繰り広げるルイ・コスタ(ポルトガル、ケースデパーニュ)とカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ) photo:Cor Vos暑さと長い時間のレースに苛立ちが高まったせいか、カルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)とルイ・コスタ(スペイン、ケースデパーニュ)がゴール直後に殴り合いの喧嘩を始めた。
どこにあったものかホイールを振りかざし、つかみ合いの喧嘩で二人のパンチが空を切りあう。オールガナイザーに引き離され、2人とも「あるまじき行動をとった」との理由で400スイスフランの罰金処分。バレードのTwitterによれば反省だけはしている模様。
怒りを隠せないロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ) photo:Makoto Ayanoまた、ステージ優勝したカヴェンディッシュを撮ろうと飛び出したテレビカメラマンに、マキュアンが絡んで落車してしまったようだ。
マキュアンは自身のTwitterで「誰が犯人か突き止めてやる。許さない」とちょっと激昂した発言も。
textphoto:Makoto Ayano
熱さを冷ます雨。連日の暑さが身体にこたえる。
昨日のゴール、そして今日のスタートの街モンタルジは、「ガディネのヴェネツィア」と呼ばれる水の都。街の中に運河が通り、随所に花飾りをした橋がかかる美しい街。
早朝に激しい雨が降ったがスタート時には小降りになっていた。寒さは感じず、逆に蒸し暑い。昨夜は熱帯夜といっていい夜を過ごした選手たち。Twitterコメントをみると、エアコンが無いホテルで寝苦しいなどと数々の文句がポストされている。
227.5kmと最長のステージは、天気がすぐれないことがせめてもの救いだろう。
長いステージには4つの4級峠が分散して存在し、コースは絶えず小さなアップダウンが連続する。補給地点を過ぎると後半はモルヴァン山脈に近づき、緩やかな丘陵地帯と森を通過する。ブルゴーニュの誇る高級ワインの産地として知られる一帯を抜け、小さな町グーニョンへとゴールする。
ユキヤはこの日、逃げは得策でないと考えたようだ。
「雨は嫌だなぁ。距離が長いステージだから逃げても消耗するし、スプリントに持ち込みたいチームに加えてサクソバンクがカンチェラーラのマイヨジョーヌを山岳までは守ることを公言しているから、必ず追撃があるはずで、逃げ切ることは難しいでしょう」。
再び引き続けたチームHTC・コロンビア
今日も3人の逃げが決まり、集団はそれを黙認。逃げるセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、ルーベン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)、マチュー・ペルジェ(フランス、ケースデパーニュ)ら3人と集団のタイム差が開いて展開が落ち着く。今日も集団の前をチームHTC・コロンビアのジャージが陣取り、集団のペースをつくって淡々と追いかける。
違うのは、その仕事を請け負う選手。昨日までで通算300km以上をひとりで引き続けてきたカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)は集団内で休み、代わってベアト・グラブシュ(ドイツ)とマキシム・モンフォール(ベルギー)のふたりがかわるがわる前を引く。TTの得意な二人は後方にサクソバンクを従えて黙々とペダルを踏む。
この日を逃すと次のスプリントのチャンスがあるステージまでは4ステージ先まで待たなくてはいけない。今日はチームHTC・コロンビアだけでなく、ガーミン・トランジションズやサーヴェロ・テストチーム、ランプレなど、スプリントに持ち込みたいチームが逃げを潰す動きに出ることは確実だ。マイヨヴェール争いはまだ始まったばかり。
雨があがり、後半は元通りの暑さが戻ってきた。スタート時に雨の装備をした選手たちもウェアを脱いで盛んにチームカーへと戻る。
ユキヤもレインギアやシューズカバー、ヘルメットの下にキャップを被るなど、いろいろ着込んで走っていたようだが、チームカーに預けに戻った。この日ラジオが「アラシロ」の名を呼んだのは2回。一回目がウェア預け。2回目はレース後半に備えてチームメイトのためのボトル運びのため。今日のユキヤは2日連続でスプリントで6位に食い込んでいるセバスティアン・テュルゴー(フランス)のリードアウトも仕事になる。
自身を取り戻したカヴ ファラーの2位は復調のサイン
昨ステージの再現のようにステージを制したカヴェンディッシュ。しかしまったくの余裕の勝利で、喜びのポーズ自体も余裕たっぷり。敵わなかったファラーがゴールラインを駆け抜けざまに握手のために手を差し出す。勝利を欲しいままにする、いつものカヴの自信たっぷりの表情が戻ってきた。
カヴは言う。「消して平坦なんかじゃなかった。アップダウンが連続して、皆苦しい表情をしていた。終日上り下りの繰り返しで(累積標高で)2000フィートは登った。
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向かい風になることも知っていた。そのために総合争いのチームも前に出てきて、逃げグループを捕まえることができた。
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僕は今や勝つことに集中するだけだ。石畳の(第2)ステージは前をいくグループがもっと大人数だろうと思って攻めなかった。ポイントを沢山失ったし、その次の日もポイントをたくさんとれなかった。だからポイント争いからは大きく遠ざかってしまった。でもこつこつやるよ」。
涙に暮れた昨ステージの勝利から明けての再びの勝利。記者会見は堂々と、徐々にビッグマウスも戻りつつある気配。もう1勝重ねたらカヴ節が聞けそうだ。
タイラー・ファラー(ガーミン・トランジションズ)の2位も復調のサインだ。手首付近の骨にヒビが入った状態で力が入らなかったが、ようやくスプリントできるようになった。
スプリント争いが一旦お休みとなる山岳ステージの4日間で、さらに回復が見込めるだろう。
アスタナの選手はわざと遅れる
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無駄な争いは避け、ゴールへ向けてスピードが上がると集団から離れるという、極端な作戦にシフトしたアスタナ。かつてジルベルト・シモーニ擁するサエコ(あるいはランプレ)や、マルコ・パンターニ擁するメルカトーネ・ウノなど山岳スペシャリストをエースとした小ぶりなチームを指揮してきたジュゼッペ・マルチネッリ監督の手腕の見せどころだ。
コンタドールによれば、マイヨジョーヌを守る仕事による疲弊を避けるため、勝負はアルプスでなくピレネーまで待ちたいという。
マイヨヴェール&アポア・ルージュ争い
明日から始まる中級山岳ステージで、ジャージ獲得(あるいは防衛)を狙って早くから逃げてポイントを稼ぐ戦法に出るのか。2人のフランス人の闘いに注目だ。
マイヨヴェールを着るフースホフトはステージ10位と着順は振るわないながらもポイント獲得に関しては堅実な位置につける。フースホフトの合計118点に対し、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)は4ポイント差の114点。マキュアンは105点。ペタッキが山岳の厳しいツールで最後まで残りシャンゼリゼに残ることができるかは微妙なこところだが、マイヨヴェール争いに貪欲かどうかは明日からの序盤のスプリントポイントを狙ってくるかどうかで判断できるだろう。
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マキュアンは自身のTwitterで「誰が犯人か突き止めてやる。許さない」とちょっと激昂した発言も。
textphoto:Makoto Ayano
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