2022/06/25(土) - 18:21
「周りよりも脚があると感じていたし、独走に持ち込む自信はあった」と、新U23全日本チャンピオンに輝いた仮屋和駿(キナンレーシングチーム)は言う。怪我や故障から立ち直り、表彰台に乗った弱虫ペダルの香山飛龍と岩田聖矢らのコメントも含め、レースを振り返ります。
弱虫ペダル勢2人を向こうに回してもなお、「自分は一人なのでうまく走らないといけない」と、仮屋和駿(キナンレーシングチーム)はあくまで冷静さを貫いていた。
U23カテゴリー3年目で、日本大学4年生。普段は大学メンバーとトレーニングを重ね、今年から加入したキナンレーシングの合宿にも参加し、ツアー・オブ・ジャパンといったビッグレースを経験することで力を伸ばしてきた。「(大学)1年生の時に武山(晃輔)先輩が勝ったのを見て、絶対勝ちたいと思っていた」という全日本選手権U23を、そこから3年後、逃げグループから最終周回にアタックして独走という「自分が勝てる最良のプラン」で勝ち取った。
「逃げグループにはナショナルチームのメンバーもいたり、全員脚がある。このまま4周逃げ切れると声をかけました。(逃げ切れた理由には)自分の力だけではなく、周りとの意思疎通もあって牽制することなくずっと走れた。ただ、このコースでリードは1分弱。捕まっても対応できるように脚を残しつつ。でも、周回を重ねるごとに"これはいける"と逃げ切りの可能性を感じていました」と振り返る。
「弱虫ペダルの二人がチーム戦で仕掛けてくるのは分かっていました。スプリント勝負の自信はなかったけれど、周りよりも脚があると感じていたし、独走に持ち込む自信はあった。(独走に持ち込んでから)自分の脚もいっぱいいっぱいでしたし、最後の最後まで逃げ切れる確証はありませんでした。勝ちを確信したのは残り100mくらいでしたね」と加えた。
「2019年は武山先輩が、去年は同級生の兒島(直樹)。日大所属選手が2年連続で勝っていたので"これは勝つしかない"と最後は頭に浮かべながら走っていました」と仮屋は表彰式後に顔を赤らめながらインタビューに答えた。自身の目標は、この全日本選手権と、インカレの2つ。「この勝利に満足せず、貪欲にインカレでの勝ちを狙っていきたい」と話した。
「単騎だし、強い選手がたくさんいるからリラックスしていけと伝えたんです。勝てとも言ってないし、それがむしろ良かったのかもしれない」キナンの石田哲也監督はレース後に振り返った。「個人TTで7位だったしマークもキツくなかったはず。彼はプロになることも躊躇していたんですが、チームの選手からいろいろなことを吸収して、ぐっと力を伸ばしている。これからに期待したいですね」。
7名の逃げグループ内に唯一2人、香山飛龍と岩田聖矢を置いた弱虫ペダルサイクリングチームは、数的優位を勝ちに繋げることができなかった。
「最終周回は集団からアタックがかかっていると聞き、追いつかれてはまずいと思ってアタック。香山さんが三段坂の最後のところでカウンターで仕掛けてくれたけれど、それが吸収。続いて自分がアタックできれば良かったところで仮屋さんに決められてしまった。反応することができず、その後の下りで自分たち2人、そして平井(杏周)さんで追ったけれど届きませんでした」11秒差の2位に甘んじた岩田は、勝負が決まった瞬間をそう振り返る。香山も「互いに潰し合いにならないよう連携をとっていましたが、なかなか決定打に繋がらなかった」と加える。
優勝こそ逃したものの、香山はフランス活動中の2020年6月に右脇腹部に原因不明の故障を負い、岩田はシーズン序盤や、3週間前のツール・ド・熊野でも落車。2人は怪我や故障から復調したという共通点がある。
「U23に上がってから難しい時期が続いていました。高強度が続くと右の脇腹が痛んでしまう故障にすごく悩まされたし、今年もコロナに罹ってしまったり。でも気持ちを切り替えて練習し、個人TTもロードも表彰台に登るという最低限の目標はクリアできました。次に繋がる走りだったと思います」と香山。岩田も「コロナ禍でモチベーションが保てない中で弱ペダに入らせてもらい、イチからやり直すことができました。そこから復活できたので良かったと思います」と、悔しさを織り交ぜつつも笑顔を見せている。
一方、前日の個人タイムトライアルで圧勝した留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)は、ライバル勢からの集中マークによって厳しい戦いを強いられた。
「びっくりするくらいマークがキツかったですね。結構動いたのですが、その度に後ろから「行ったぞー!」と声が掛かったり。先頭メンバーは強かったし、ずっと追いかける展開になってしまった。自分でレースを作るのはかなり無理があったように思います」と、思うようにいかなかった胸の内を話した。
text:So Isobe
弱虫ペダル勢2人を向こうに回してもなお、「自分は一人なのでうまく走らないといけない」と、仮屋和駿(キナンレーシングチーム)はあくまで冷静さを貫いていた。
U23カテゴリー3年目で、日本大学4年生。普段は大学メンバーとトレーニングを重ね、今年から加入したキナンレーシングの合宿にも参加し、ツアー・オブ・ジャパンといったビッグレースを経験することで力を伸ばしてきた。「(大学)1年生の時に武山(晃輔)先輩が勝ったのを見て、絶対勝ちたいと思っていた」という全日本選手権U23を、そこから3年後、逃げグループから最終周回にアタックして独走という「自分が勝てる最良のプラン」で勝ち取った。
「逃げグループにはナショナルチームのメンバーもいたり、全員脚がある。このまま4周逃げ切れると声をかけました。(逃げ切れた理由には)自分の力だけではなく、周りとの意思疎通もあって牽制することなくずっと走れた。ただ、このコースでリードは1分弱。捕まっても対応できるように脚を残しつつ。でも、周回を重ねるごとに"これはいける"と逃げ切りの可能性を感じていました」と振り返る。
「弱虫ペダルの二人がチーム戦で仕掛けてくるのは分かっていました。スプリント勝負の自信はなかったけれど、周りよりも脚があると感じていたし、独走に持ち込む自信はあった。(独走に持ち込んでから)自分の脚もいっぱいいっぱいでしたし、最後の最後まで逃げ切れる確証はありませんでした。勝ちを確信したのは残り100mくらいでしたね」と加えた。
「2019年は武山先輩が、去年は同級生の兒島(直樹)。日大所属選手が2年連続で勝っていたので"これは勝つしかない"と最後は頭に浮かべながら走っていました」と仮屋は表彰式後に顔を赤らめながらインタビューに答えた。自身の目標は、この全日本選手権と、インカレの2つ。「この勝利に満足せず、貪欲にインカレでの勝ちを狙っていきたい」と話した。
「単騎だし、強い選手がたくさんいるからリラックスしていけと伝えたんです。勝てとも言ってないし、それがむしろ良かったのかもしれない」キナンの石田哲也監督はレース後に振り返った。「個人TTで7位だったしマークもキツくなかったはず。彼はプロになることも躊躇していたんですが、チームの選手からいろいろなことを吸収して、ぐっと力を伸ばしている。これからに期待したいですね」。
7名の逃げグループ内に唯一2人、香山飛龍と岩田聖矢を置いた弱虫ペダルサイクリングチームは、数的優位を勝ちに繋げることができなかった。
「最終周回は集団からアタックがかかっていると聞き、追いつかれてはまずいと思ってアタック。香山さんが三段坂の最後のところでカウンターで仕掛けてくれたけれど、それが吸収。続いて自分がアタックできれば良かったところで仮屋さんに決められてしまった。反応することができず、その後の下りで自分たち2人、そして平井(杏周)さんで追ったけれど届きませんでした」11秒差の2位に甘んじた岩田は、勝負が決まった瞬間をそう振り返る。香山も「互いに潰し合いにならないよう連携をとっていましたが、なかなか決定打に繋がらなかった」と加える。
優勝こそ逃したものの、香山はフランス活動中の2020年6月に右脇腹部に原因不明の故障を負い、岩田はシーズン序盤や、3週間前のツール・ド・熊野でも落車。2人は怪我や故障から復調したという共通点がある。
「U23に上がってから難しい時期が続いていました。高強度が続くと右の脇腹が痛んでしまう故障にすごく悩まされたし、今年もコロナに罹ってしまったり。でも気持ちを切り替えて練習し、個人TTもロードも表彰台に登るという最低限の目標はクリアできました。次に繋がる走りだったと思います」と香山。岩田も「コロナ禍でモチベーションが保てない中で弱ペダに入らせてもらい、イチからやり直すことができました。そこから復活できたので良かったと思います」と、悔しさを織り交ぜつつも笑顔を見せている。
一方、前日の個人タイムトライアルで圧勝した留目夕陽(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)は、ライバル勢からの集中マークによって厳しい戦いを強いられた。
「びっくりするくらいマークがキツかったですね。結構動いたのですが、その度に後ろから「行ったぞー!」と声が掛かったり。先頭メンバーは強かったし、ずっと追いかける展開になってしまった。自分でレースを作るのはかなり無理があったように思います」と、思うようにいかなかった胸の内を話した。
text:So Isobe
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