2022/06/20(月) - 08:58
8日間にわたって開催されたツール・ド・スイスを締めくくる個人TTでレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が優勝。僅か3秒遅れの区間2位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が狙い通り逆転総合優勝を掴み取った。
ステージ優勝:レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
ツール・ド・フランス前の重要な前哨戦、ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)の最終日はスイスに近いリヒテンシュタインの首都ファドゥーツを舞台にした25.6km個人タイムトライアル。ライン川沿いを走る前半区間は平坦、山沿いを折り返す後半区間は緩やかなアップダウンを含むコースだ。
前日の超級山岳フィニッシュを経て、総合首位セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)と2位ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)のタイム差は僅かに2秒。TTスペシャリストであるトーマスの総合逆転が濃厚と見られる中、総合成績下位選手から次々とコースへと駆け出していった。
シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)は区間3位に甘んじるも、総合成績を5位に上げた photo:CorVos
前半こそディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)がホットシートに座っていたものの、圧倒的な走りで上回ったのがレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)だった。
「序盤は調子を崩したけれどここ2日間は調子が良くなっていた。チャンスがあると分かっていたのでこの個人TTにフォーカスしていた」と言うエヴェネプールは、第1中間計測を13分55秒(平均55.617km/h)という圧倒的タイムで駆け抜ける。しかし母国レースでのチャンスに懸けるシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)もエヴェネプールと拮抗した走りを披露した。
キュングはエヴェネプールを第1中間計測で僅か2秒上回った(平均55.750km/h)ものの、アップダウンを含む後半区間では僅かに遅れをとってしまう。「暑さで後半区間にペースを上げることができなかった」と悔やむキュングは、最終的に28分26秒でフィニッシュしたエヴェネプールに10秒96届かなかった(タイムは28分36秒)。
区間2位に食い込んだゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)の総合3位は動かなかった photo:CorVos
区間11位に甘んじたセルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
僅差の最終総合争いで優位に立ったのはやはりトーマスだった。ピナレロのプロトTTバイクを駆るトーマスは第1中間計測で14分ジャストとエヴェネプールから僅か5秒遅れで通過し、総合争いはもちろんステージ優勝も狙える好ペースを刻んでいく。イギータも好走したものの、中間計測は14分44秒とトーマスから44秒遅れてしまう。バーチャルリーダーとなったトーマスは、その後の後半区間でもハイペースを維持し続けた。
19秒遅れの総合3位につけるヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)はエヴェネプールから1分2秒遅れの29分27秒でフィニッシュ。後半区間でキュングを上回ったトーマスはエヴェネプールに僅か3秒ジャスト届かなかったものの、ステージ2位と周囲の予想を上回る走りでフィニッシュ。後半で巻き返したイギータはエヴェネプールから1分17秒、トーマスから1分14秒遅れの区間11位で終え、こうしてエヴェネプールのステージ優勝とトーマスの総合優勝が決まった。
「このようにレースを終えることができて美しい一日になった。最後は際どい勝負だったけれど、僕には最速のバイクがあった。強いライバルたちに打ち勝つことができて良かったよ。僕自身この1週間はアップダウンの連続で、特にフレッシュさを欠いてタイムを失った日は学びになった」と、意外にもワールドツアーレースの個人TTで初優勝を挙げたエヴェネプールは言う。「この結果は僕のキャリアにとって大きなステップになる。来週に控えるナショナル選手権に向けたモチベーションに繋がるよ」と締めくくっている。
ワールドツアーレースの個人TTで自身初優勝を遂げたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
総合表彰台:ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がマイヨジョーヌを獲得 photo:CorVos
記者会見に臨んだゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
アダム・イェーツ(イギリス)がリタイアして以降、山岳ステージで徐々に総合成績を上げ、最後は得意の個人TTで逆転総合優勝。完璧なシナリオでリーダージャージを持ち帰ることになったトーマスは「とても素晴らしい勝利だ。2015年はやはり総合2位で最終ステージを迎えたけれど、(シモン)スピラックに逆転されてしまった。その分今年勝つことができて良かった」と言う。
「こんなにも大きなレース、そしてこんなにも厳しいレースで勝利できた意味は大きい。僕が走ってきた中で最も暑いレースだった。こんな気象条件ではアグレッシブになりすぎないことが肝心。ウラソフが制したメンドリシオステージは特に大変で常に状況判断が必要だった。僕たちがリーダーのイェーツを失ったことは残念だった。ただしそこからの持ち直しと、レースの進め方はとても満足いくものだった」と、ツール前哨戦で成功を収めたトーマスは加えている。
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ツール・ド・フランス前の重要な前哨戦、ツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)の最終日はスイスに近いリヒテンシュタインの首都ファドゥーツを舞台にした25.6km個人タイムトライアル。ライン川沿いを走る前半区間は平坦、山沿いを折り返す後半区間は緩やかなアップダウンを含むコースだ。
前日の超級山岳フィニッシュを経て、総合首位セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)と2位ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)のタイム差は僅かに2秒。TTスペシャリストであるトーマスの総合逆転が濃厚と見られる中、総合成績下位選手から次々とコースへと駆け出していった。
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前半こそディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)がホットシートに座っていたものの、圧倒的な走りで上回ったのがレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)だった。
「序盤は調子を崩したけれどここ2日間は調子が良くなっていた。チャンスがあると分かっていたのでこの個人TTにフォーカスしていた」と言うエヴェネプールは、第1中間計測を13分55秒(平均55.617km/h)という圧倒的タイムで駆け抜ける。しかし母国レースでのチャンスに懸けるシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)もエヴェネプールと拮抗した走りを披露した。
キュングはエヴェネプールを第1中間計測で僅か2秒上回った(平均55.750km/h)ものの、アップダウンを含む後半区間では僅かに遅れをとってしまう。「暑さで後半区間にペースを上げることができなかった」と悔やむキュングは、最終的に28分26秒でフィニッシュしたエヴェネプールに10秒96届かなかった(タイムは28分36秒)。
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僅差の最終総合争いで優位に立ったのはやはりトーマスだった。ピナレロのプロトTTバイクを駆るトーマスは第1中間計測で14分ジャストとエヴェネプールから僅か5秒遅れで通過し、総合争いはもちろんステージ優勝も狙える好ペースを刻んでいく。イギータも好走したものの、中間計測は14分44秒とトーマスから44秒遅れてしまう。バーチャルリーダーとなったトーマスは、その後の後半区間でもハイペースを維持し続けた。
19秒遅れの総合3位につけるヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)はエヴェネプールから1分2秒遅れの29分27秒でフィニッシュ。後半区間でキュングを上回ったトーマスはエヴェネプールに僅か3秒ジャスト届かなかったものの、ステージ2位と周囲の予想を上回る走りでフィニッシュ。後半で巻き返したイギータはエヴェネプールから1分17秒、トーマスから1分14秒遅れの区間11位で終え、こうしてエヴェネプールのステージ優勝とトーマスの総合優勝が決まった。
「このようにレースを終えることができて美しい一日になった。最後は際どい勝負だったけれど、僕には最速のバイクがあった。強いライバルたちに打ち勝つことができて良かったよ。僕自身この1週間はアップダウンの連続で、特にフレッシュさを欠いてタイムを失った日は学びになった」と、意外にもワールドツアーレースの個人TTで初優勝を挙げたエヴェネプールは言う。「この結果は僕のキャリアにとって大きなステップになる。来週に控えるナショナル選手権に向けたモチベーションに繋がるよ」と締めくくっている。
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アダム・イェーツ(イギリス)がリタイアして以降、山岳ステージで徐々に総合成績を上げ、最後は得意の個人TTで逆転総合優勝。完璧なシナリオでリーダージャージを持ち帰ることになったトーマスは「とても素晴らしい勝利だ。2015年はやはり総合2位で最終ステージを迎えたけれど、(シモン)スピラックに逆転されてしまった。その分今年勝つことができて良かった」と言う。
「こんなにも大きなレース、そしてこんなにも厳しいレースで勝利できた意味は大きい。僕が走ってきた中で最も暑いレースだった。こんな気象条件ではアグレッシブになりすぎないことが肝心。ウラソフが制したメンドリシオステージは特に大変で常に状況判断が必要だった。僕たちがリーダーのイェーツを失ったことは残念だった。ただしそこからの持ち直しと、レースの進め方はとても満足いくものだった」と、ツール前哨戦で成功を収めたトーマスは加えている。
ツール・ド・スイス2022第8ステージ結果
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) | 28:26 |
2位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:03 |
3位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | +0:11 |
4位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +0:28 |
5位 | ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、AG2Rシトロエン) | +0:33 |
6位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:39 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:55 |
8位 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | +0:59 |
9位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック) | +1:02 |
10位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +1:05 |
個人総合成績
1位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 33:07:09 |
2位 | セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:12 |
3位 | ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック) | +1:16 |
4位 | ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | +2:10 |
5位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | +2:25 |
6位 | ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、AG2Rシトロエン) | +2:59 |
7位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:37 |
8位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +3:39 |
9位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | +3:42 |
10位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:45 |
その他の特別賞
ポイント賞 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) |
山岳賞 | クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) |
ヤングライダー賞 | セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) |
チーム総合成績 | ボーラ・ハンスグローエ |
text:So Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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