2022/06/27(月) - 18:05
ベルギーに拠点を構えるレイザーより、エアロヘルメットのVento KinetiCore AFをピックアップしよう。国内でも展開が始まったアジアンフィットモデルをCW編集部の高木がテスト。ユンボ・ヴィスマの選手が使用するフラッグシップの実力はいかに。
創業100年を超えるベルギーのヘルメットブランド、レイザー。同社はUCIワールドチームのユンボ・ヴィスマをサポートし、選手と共に製品を開発することで、過酷なレースシーンでも活躍する性能と安心して使えるプロテクション性を実現するブランドだ。
レイザーのブランドアイデンティティはイノベーションにあり、常に革新的な設計を追い求めており、安全性についても例外ではない。近年はMIPSに代表される安全技術が普及し、レイザーもMIPSを導入したモデルをラインアップしていたが、その間も安全性に関する独自技術の研究開発を進めてきた。
10年にも及ぶ研究期間を経てレイザーは、革新的な独自安全技術のKinetiCoreを2022年の春にローンチした。KinetiCoreとはEPSフォームのインナーシェルの一部をクランプルゾーンと呼ばれる凹凸ブロック形状とする技術であり、衝撃を受けた時にクランプルゾーンが潰れることで、サイクリストの脳に到達するはずのエネルギーを吸収してくれる衝撃吸収システムだ。
KinetiCoreの特徴は垂直方向と斜め方向どちらからの衝撃でもシェルが潰れるように設計されているため、一つの技術で全方位からの安全性を高めたこと。また、インナーシェルそのものが安全設計になっており、凹凸の配置によって通気性とフィット性を阻害しないことがポイントだ。
レイザーは、このKinetiCoreを採用した全く新しいロードヘルメットを開発。そのラインアップにVentoというプロ選手が着用するためのセミエアロのロードヘルメットが用意されており、今回はそのBullet 2.0の後継品にあたるVentoをピックアップする。
Ventoの特徴であるKinetiCoreの概要は先述したとおり。Bullet 2.0からのフルモデルチェンジとなったVentoは、MIPSを搭載したBullet 2.0と比較して90gも軽量なことが特徴だ。具体的な数値としては、MサイズのVentoが290gに対して、Bullet 2.0 MIPSが380g。軽量化の要因の一つは、使用するプラスチック量を削減していることだとレイザーは言う。
Bullet 2.0ではスライダー開閉式のベンチレーションホールが設けられていたが、Ventoでは廃止され、一般的なベンチレーションホールが採用された。ヘルメットに沿って流れる風が入り込むかのような側頭部のエアインテイクを含めた13個のホールによって高い通気性を実現。もちろんヘルメット内に風が流れるチャネルがあり、内部の熱を常に押し出してくれるような設計だ。
プロ選手が使用するモデルだけあり、エアロダイナミクス面でも妥協はない。レイザーはスプリントポジションのような前傾姿勢、ヘルメットが15度となるポジションで、空力性能を最大限発揮させるターゲットに設定。実際に使うシチュエーションを考慮して開発されているため、レースでアドバンテージとなってくれるだろう。
フィッティングシステムは新開発のScrollSys(スクロールシス)が搭載された。これまで円筒状型のダイヤルを回すロールシスだったが、今回はベルトのようなシステムに変更されており、操作性を高めている。ヘルメットの背面にユニバーサルレーザーLEDを取り付けられるのもレイザーらしい。カラーはマットブラック、ホワイト、レッドの3色展開で、価格は31,900円(税込)。
ー編集部インプレッション
春先のクラシックレースでデビューし、クリテリウム・デュ・ドーフィネではワウト・ファンアールトが着用していたことで知られているレイザーの新作ヘルメットVento KinetiCore。ワウトが着用するレッドブルカラーの特別モデルは目を惹く上に、既に勝利を挙げ性能が証明されているモデルということもあり、シクロワイアード編集部の私・高木はVentoが気になっていた。
日本で展開されるVento AF(アジアンフィット)が販売開始されるタイミングで、レイザーの新型エアロヘルメットをテストする機会を得た。私はGENESIS AFもテストを担当していたため、前回同様にMサイズを借り受けての試着となった。もちろんサイズはMでちょうど良く、アジアンフィットのシェル形状も丸型頭の私にはぴったり。
VentoはKinetiCoreという新しい安全技術を採用しているにも関わらず、これまでのレイザーのアジアンフィットと同じようなフィット感を得られたのは好印象。ヘルメットと頭の隙間には常に均等な空間があり、自分の頭の形にも合っていることがわかる。深く被ることができるため、頭を優しく包み込んでくれるような被り心地で、安心感もある。
着用感が優れていて、さらにKinetiCoreの安全性で頭を守れるというのは嬉しい。普段からロードレースやシクロクロスに参戦し、通勤などで、ほぼ毎日ライドしている筆者にとって安全性は軽視できないもの。自転車を長く楽しむためには、万が一の時の備えをしておきたいと思う。
走り出して感じるのは、エアインテイクが少なめのデザインながら涼しいこと。ヘルメット前面の通気口からだけではなく、額部分の空間から風が流れ込んでくるからだろう。さらに、Ventoに関してはKinetiCoreの凹凸配置が通気性に配慮した設計となっているようで、凹凸に風が遮られることはなく、後部へと流れていき、ヘルメット内に熱がこもりにくい印象を受けた。
さらにScrollSysのメリットは通気性にもありそうだ。一般的なアジャスターダイヤルは後頭部のサポーターに搭載されているが、Ventoではシェル自体に搭載されている。サポーターにダイヤルがないおかげか、後頭部付近の風抜けは他のヘルメットにはないものだった。
内部の通気性に加えて、ヘルメット外部のエアロダイナミクスも優れていそう。エアロ系のヘルメットの場合はモデルによっては、横風やヘルメットの角度によっては風に押し戻される感覚があるが、Ventoは横を向いた時のフィーリングがスムーズに感じる。空気がヘルメットを撫でるように流れてくれた。
さらに、目線を少し遠くに置くように正面を向いた時と少し俯いた時を比べると、後者の方がスムーズ。下向き15度の角度で優れた空力性能を発揮するように設計されているのも感じられた。また、Ventoは30~40km/h程の中高速域からそのエアロと通気性のどちらも魅力が発揮されるような印象だ。
Ventoは通気性やフィット性といった基本性能の他に、装備品などもユニークで使いやすい。特に新登場のScrollSysはもちろん初めて扱ったのだが、ベルトの幅が広く、表面が凹凸のディテールとなっているので、思っている以上に操作性が高い。締め付け具合は緩めだが、思っている以上にホールド力は高いと感じる。
側頭部のベンチレーションホールに備えられているディンプルの一部はグリッパーとされており、アイウェアのテンプルを差し込んだ時にずれにくくなっている。私は普段のライドでカフェやコンビニ、道の駅などに立ち寄る時にサングラスをヘルメットにかけることが多いため、個人的にお気に入りのポイントだ。
様々な魅力を実感できるVento KinetiCoreの安全性、エアロ性能、通気性はやはり魅力的。ホビーサイクリストも性能の良さを体感できるが、徹底的に性能を追求しているヘルメットのため、100分の1秒を競うようなレーサーにお薦めしたいモデルだった。
KinetiCoreのモデルはシマノの公式オンラインストアでも販売されるため、気になる方は一度チェックしてみても良いだろう。
レイザー Vento KinetiCore AF
カラー:マットブラック、ホワイト、レッド
サイズ(重量):S(280g)、M(300g)、L(330g)
価格:31,900円(税込)
創業100年を超えるベルギーのヘルメットブランド、レイザー。同社はUCIワールドチームのユンボ・ヴィスマをサポートし、選手と共に製品を開発することで、過酷なレースシーンでも活躍する性能と安心して使えるプロテクション性を実現するブランドだ。
レイザーのブランドアイデンティティはイノベーションにあり、常に革新的な設計を追い求めており、安全性についても例外ではない。近年はMIPSに代表される安全技術が普及し、レイザーもMIPSを導入したモデルをラインアップしていたが、その間も安全性に関する独自技術の研究開発を進めてきた。
10年にも及ぶ研究期間を経てレイザーは、革新的な独自安全技術のKinetiCoreを2022年の春にローンチした。KinetiCoreとはEPSフォームのインナーシェルの一部をクランプルゾーンと呼ばれる凹凸ブロック形状とする技術であり、衝撃を受けた時にクランプルゾーンが潰れることで、サイクリストの脳に到達するはずのエネルギーを吸収してくれる衝撃吸収システムだ。
KinetiCoreの特徴は垂直方向と斜め方向どちらからの衝撃でもシェルが潰れるように設計されているため、一つの技術で全方位からの安全性を高めたこと。また、インナーシェルそのものが安全設計になっており、凹凸の配置によって通気性とフィット性を阻害しないことがポイントだ。
レイザーは、このKinetiCoreを採用した全く新しいロードヘルメットを開発。そのラインアップにVentoというプロ選手が着用するためのセミエアロのロードヘルメットが用意されており、今回はそのBullet 2.0の後継品にあたるVentoをピックアップする。
Ventoの特徴であるKinetiCoreの概要は先述したとおり。Bullet 2.0からのフルモデルチェンジとなったVentoは、MIPSを搭載したBullet 2.0と比較して90gも軽量なことが特徴だ。具体的な数値としては、MサイズのVentoが290gに対して、Bullet 2.0 MIPSが380g。軽量化の要因の一つは、使用するプラスチック量を削減していることだとレイザーは言う。
Bullet 2.0ではスライダー開閉式のベンチレーションホールが設けられていたが、Ventoでは廃止され、一般的なベンチレーションホールが採用された。ヘルメットに沿って流れる風が入り込むかのような側頭部のエアインテイクを含めた13個のホールによって高い通気性を実現。もちろんヘルメット内に風が流れるチャネルがあり、内部の熱を常に押し出してくれるような設計だ。
プロ選手が使用するモデルだけあり、エアロダイナミクス面でも妥協はない。レイザーはスプリントポジションのような前傾姿勢、ヘルメットが15度となるポジションで、空力性能を最大限発揮させるターゲットに設定。実際に使うシチュエーションを考慮して開発されているため、レースでアドバンテージとなってくれるだろう。
フィッティングシステムは新開発のScrollSys(スクロールシス)が搭載された。これまで円筒状型のダイヤルを回すロールシスだったが、今回はベルトのようなシステムに変更されており、操作性を高めている。ヘルメットの背面にユニバーサルレーザーLEDを取り付けられるのもレイザーらしい。カラーはマットブラック、ホワイト、レッドの3色展開で、価格は31,900円(税込)。
ー編集部インプレッション
春先のクラシックレースでデビューし、クリテリウム・デュ・ドーフィネではワウト・ファンアールトが着用していたことで知られているレイザーの新作ヘルメットVento KinetiCore。ワウトが着用するレッドブルカラーの特別モデルは目を惹く上に、既に勝利を挙げ性能が証明されているモデルということもあり、シクロワイアード編集部の私・高木はVentoが気になっていた。
日本で展開されるVento AF(アジアンフィット)が販売開始されるタイミングで、レイザーの新型エアロヘルメットをテストする機会を得た。私はGENESIS AFもテストを担当していたため、前回同様にMサイズを借り受けての試着となった。もちろんサイズはMでちょうど良く、アジアンフィットのシェル形状も丸型頭の私にはぴったり。
VentoはKinetiCoreという新しい安全技術を採用しているにも関わらず、これまでのレイザーのアジアンフィットと同じようなフィット感を得られたのは好印象。ヘルメットと頭の隙間には常に均等な空間があり、自分の頭の形にも合っていることがわかる。深く被ることができるため、頭を優しく包み込んでくれるような被り心地で、安心感もある。
着用感が優れていて、さらにKinetiCoreの安全性で頭を守れるというのは嬉しい。普段からロードレースやシクロクロスに参戦し、通勤などで、ほぼ毎日ライドしている筆者にとって安全性は軽視できないもの。自転車を長く楽しむためには、万が一の時の備えをしておきたいと思う。
走り出して感じるのは、エアインテイクが少なめのデザインながら涼しいこと。ヘルメット前面の通気口からだけではなく、額部分の空間から風が流れ込んでくるからだろう。さらに、Ventoに関してはKinetiCoreの凹凸配置が通気性に配慮した設計となっているようで、凹凸に風が遮られることはなく、後部へと流れていき、ヘルメット内に熱がこもりにくい印象を受けた。
さらにScrollSysのメリットは通気性にもありそうだ。一般的なアジャスターダイヤルは後頭部のサポーターに搭載されているが、Ventoではシェル自体に搭載されている。サポーターにダイヤルがないおかげか、後頭部付近の風抜けは他のヘルメットにはないものだった。
内部の通気性に加えて、ヘルメット外部のエアロダイナミクスも優れていそう。エアロ系のヘルメットの場合はモデルによっては、横風やヘルメットの角度によっては風に押し戻される感覚があるが、Ventoは横を向いた時のフィーリングがスムーズに感じる。空気がヘルメットを撫でるように流れてくれた。
さらに、目線を少し遠くに置くように正面を向いた時と少し俯いた時を比べると、後者の方がスムーズ。下向き15度の角度で優れた空力性能を発揮するように設計されているのも感じられた。また、Ventoは30~40km/h程の中高速域からそのエアロと通気性のどちらも魅力が発揮されるような印象だ。
Ventoは通気性やフィット性といった基本性能の他に、装備品などもユニークで使いやすい。特に新登場のScrollSysはもちろん初めて扱ったのだが、ベルトの幅が広く、表面が凹凸のディテールとなっているので、思っている以上に操作性が高い。締め付け具合は緩めだが、思っている以上にホールド力は高いと感じる。
側頭部のベンチレーションホールに備えられているディンプルの一部はグリッパーとされており、アイウェアのテンプルを差し込んだ時にずれにくくなっている。私は普段のライドでカフェやコンビニ、道の駅などに立ち寄る時にサングラスをヘルメットにかけることが多いため、個人的にお気に入りのポイントだ。
様々な魅力を実感できるVento KinetiCoreの安全性、エアロ性能、通気性はやはり魅力的。ホビーサイクリストも性能の良さを体感できるが、徹底的に性能を追求しているヘルメットのため、100分の1秒を競うようなレーサーにお薦めしたいモデルだった。
KinetiCoreのモデルはシマノの公式オンラインストアでも販売されるため、気になる方は一度チェックしてみても良いだろう。
レイザー Vento KinetiCore AF
カラー:マットブラック、ホワイト、レッド
サイズ(重量):S(280g)、M(300g)、L(330g)
価格:31,900円(税込)
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