真っ平らな個人TTで世界王者フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がトップタイム。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は2秒届かず連日の2位に終わったものの、総合リード拡大に成功している。



総合成績最下位のマシュー・ウォールズ(イギリス、ボーラ・ハンスグローエ)が1番手で出走総合成績最下位のマシュー・ウォールズ(イギリス、ボーラ・ハンスグローエ)が1番手で出走 photo:A.S.O.
今大会唯一のタイムトライアル・デー。第74回クリテリウム・デュ・ドーフィネの第4ステージは、モンブリゾンを出発し、ラ・バティ・ドゥルフェを目指す31.9kmの個人タイムトライアル。比較的距離の長い個人TTであるため、スペシャリストはもちろん、総合勢にとっても成績争いの上で重要なキーとなる。

現地時間13時6分、総合成績最下位のマシュー・ウォールズ(イギリス、ボーラ・ハンスグローエ)から1分おきに選手たちが出走台を駆け降りていく。20番手のルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)がキープしていた暫定首位を大きく塗り替えたのは、47番手出走の個人タイムトライアル世界チャンピオン、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)だった。

多くの随行車両を従えて走るフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)多くの随行車両を従えて走るフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
ステージ優勝:フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)	ステージ優勝:フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
アルカンシエルに身を包んで走ったガンナは、最終的に区間6位に入るダーブリッジのタイムを2つの中間計測ポイントで次々と更新。パワーがモノを言う平坦コースを35分32秒、平均スピードにして53.865km/hで走り切った。

「すごく僕向きのコースだった。朝に雨が降っているのを見て気が重たかったけれど、幸い晴れ間が出て全員が同じコンディションで走ることができた」と話すガンナは、長きに渡ってホットシートを守り続けることとなった。

ステージ3位に食い込んだイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)ステージ3位に食い込んだイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
ステージ7位に入ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)ステージ7位に入ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
トラックスペシャリストでもあるイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)はガンナから僅か17秒遅れ、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)も1分12秒遅れと好走する中、UAEチームエミレーツの総合エースを担うブランドン・マクナルティ(アメリカ)は、途中のメカトラブルも重なり2分21秒遅れと失速してしまった。

悲願のツール・ド・フランス総合優勝に向けて弾みをつけたいプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)は中間計測タイムでヘイターに次ぐペースで走り、最終的にガンナから39秒遅れとまとめきる。「もっと登りがあるコースの方が好きだけど、かなり上手く走ることができた。限界までプッシュできたしメンタル的にも良い状態。終盤に控える山岳が楽しみだ」と、総合成績を5位に上げたログリッチは話している。

前日勝者で、総合2位のダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)は決して得意と言えないTTで1分59秒遅れとタイムを落としてしまう。そして現地時間16時ちょうど、マイヨジョーヌを着る最終走者ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がスタートを切った。

第1中間計測でガンナを上回ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)第1中間計測でガンナを上回ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
ハンドルを投げ込んでフィニッシュするワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)ハンドルを投げ込んでフィニッシュするワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:A.S.O.
過去2度のベルギー個人TT王者であり、昨年のツール・ド・フランス第20ステージ(個人TT)でも勝利したファンアールトは、集中した表情で駆け抜けた第1中間計測でガンナを10秒以上上回る。しかしその後徐々にペースを落とし、第2中間計測ポイントでは逆に11秒遅れ。「遅れを取り戻そうと戦ったけれど僅かに足りなかった」と飛び込んだフィニッシュでは、わずか2.30秒ガンナに届かなかった。

こうしてガンナのステージ優勝と、ファンアールトのステージ2位&マイヨジョーヌ安泰キープが確定。今季5度目の個人TT優勝を射止めたガンナは「いつだって僕たちは僅差。ファンアールトは昨日の時点でステージ優勝まであと一歩だった。彼は素晴らしいアスリートで、彼には脱帽としか言えないよ」とライバルを称えている。

今季5回目の個人TT優勝を挙げたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)今季5回目の個人TT優勝を挙げたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
マイヨジョーヌのリードを上積みしたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)マイヨジョーヌのリードを上積みしたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:A.S.O.
ゴデュが大きく遅れたため、ファンアールトは総合2位に浮上したマティア・カッタネオ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル)に対して53秒差とさらにリードを広げる形に。「この結果に満足だ。世界チャンピオンに負けるのは恥ずかしいことではない。ここまで毎日ステージ優勝争いに加わることができ、この先もこの調子で進めたい。このマイヨジョーヌをもう暫くキープしたい」と話している。

ユンボ・ヴィスマは総合成績でも首位にファンアールトを、3位にログリッチを、4位にヴィンゲゴーを送り込み、頭ひとつ抜けたチーム戦力を今一度アピールする形となった。


クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第4ステージ結果
個人総合成績
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 13:26:06
2位 マティア・カッタネオ(イタリア、クイックステップ・アルファヴィニル) +0:53
3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +0:56
4位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) +1:26
5位 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
6位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +1:39
7位 タオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +1:45
8位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +1:48
9位 マッテオ・ヨルゲンセン(アメリカ、モビスター) +1:50
10位 ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) +2:00
その他の特別賞
ポイント賞 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ KTM)
ヤングライダー賞 イーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
チーム総合成績 ユンボ・ヴィズマ
text:So Isobe
photo:A.S.O.

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