2022/06/08(水) - 09:15
ドーフィネ3日目の登坂スプリントは劇的な幕切れで決着。勝利を確信したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)を追い抜き、ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が母国ワールドツアーレースで初勝利を収めた。
2022年のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)で初めて登りフィニッシュが登場した。フランス南東部の街サン・ペレをスタートする169kmコースの最後に控えるのは全長6.2km/平均勾配5.6%という2級山岳シャストレ・サンシー。ラスト1.2kmがほぼ平坦、フィニッシュ直前で再び8%登り勾配という「登れるパンチャー」向けコースで、ユンボ・ヴィスマ勢がレースを組み立てた。
この日はヨナス・グレゴー(デンマーク、ウノエックス・プロサイクリング チーム)とトマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)、そしてセバスティアン・シェーンベルガー(オーストリア、B&Bホテルズ KTM)が逃げを決めたものの、山岳ランキングで首位につけるピエール・ロラン(フランス)にポイントを確保させたいB&Bホテルズ KTMは、ロランとアレクシー・グジャール(フランス)、ミゲル・ハイデマン(ドイツ)をメイン集団からアタックさせ、長い追走劇の末に合流させる。こうして逃げ6名のうち4名がB&B勢というエスケープグループが生まれた。
前日劇的な逃げ切り勝利を挙げ、人生初のマイヨジョーヌに袖を通したアレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー)の総合リードは、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)に対して僅か5秒。それもあってチームは逃げグループに与えるリードを2分台に留め緊張感を持ってレースを進めていく。徐々に標高を上げる4級山岳に向け、牽引役にクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)も加わり、じわじわとペースを上げていった。
先頭グループでは平坦区間を引っ張ったB&Bのハイデマンとグジャールが遅れ、続いてシャンピオンも脱落。それでもなおロランはシェーンベルガーを味方につけて4級山岳を登り、狙い通りKOMポイントの先頭通過を果たして1ポイントを加算した。「今日は長い一日になると思ったけれど、仲間の素晴らしい働きで狙い通りポイントを獲れた。みんなとても良いコンディションなのでTT明けのステージが楽しみだ」とロランは話している。
メイン集団ではトタルに加え、ファンアールトで登りスプリントを狙うユンボ・ヴィスマが牽引役を増やしてペースを上げ、アタックを許さない状況を作り出す。ラポルト、クリス・ハーパー(オーストラリア)、そしてティシュ・べノート(ベルギー)。最後の2級山岳シャストレ・サンシーの登りに突入し、残り4km地点で全ての逃げメンバーをキャッチ。スガブ・グルマイ(エチオピア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)のアタックをきっかけにレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)などスプリントに持ち込みたくない選手たちが動いたものの、ユンボのコントロールを打ち破るには至らなかった。
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)が作るハイペースによってマイヨジョーヌのヴィエルモは脱落を喫した。最終盤に入るとベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)のアタックによって総合勢の緊張感が高まったものの、フィニッシュ直前の平坦区間に入ったため撃ちやめに。一瞬遅れたファンアールトもヴィンゲゴーの献身的なアシストによって先頭復帰し、30名に絞られた状態でラスト8%勾配の登りスプリントになだれ込んだ。
ヴィンゲゴーの合図を皮切りに、マイヨヴェールを着るファンアールトがスプリントを開始する。先行したヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)を追い抜き、フィニッシュラインに突き進んだファンアールトがステージ2勝目を確信。フィニッシュ前で踏みやめて両手を広げたものの、後方から猛然と追い上げていたダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)がファンアールトを追い抜き、ハンドルを投げ込んでフィニッシュラインを駆け抜けた。
「すぐにミスしてしまったことに気づいた」と言うファンアールトの横で、ゴデュが勝利の喜びを爆発させる。抜群の伸びを披露した25歳が、世界屈指のスプリント力を誇るファンアールトを打ち破った。
「スプリント勝負が始まった時、僕は少し囲まれてポジションも後ろだった。"終わった"と思ったけれど、脚がまだ残っていたので全力でもがいたんだ。ワウトはまだそこにいたけれど、登りで一瞬遅れていたのを見ていたのできっと彼は疲れているはず。だから捕まえられると思っていたんだ。順位を戻し、彼の後ろに付いた時は"彼を撃ち落としてやる!"と自分に言い聞かせたよ。それが現実になったんだ」と、ゴデュは最後のスプリント勝負を回想する。
「もっとも、ワウトが腕を上げる前に彼を追い抜いていたんだ。フィニッシュラインを駆け抜けた時は世界で一番幸せな男だったかもしれない。フランス人にとって母国のワールドツアーレースで勝つのは特別なことなんだ。子供の頃から見ていたレースの一つだし、ここで勝てたことは重要。特にこんな勝ち方ができたんだから、なおさら嬉しい」と、フランス開催のトップレースで初めて勝利を掴んだゴデュは話している。
ヴィエルモが最終山岳で遅れたため、マイヨジョーヌは再びファンアールトの手に。マイヨヴェールにマイヨジョーヌを重ね着することになったファンアールトだが、「ルーキーミスだ。それ以外に説明のしようがない」とインタビューで顔を曇らせた。「チームは素晴らしい働きでステージ優勝を目指していた。あんな形で取りこぼすのは恥でしかない。あんなことは初めてだったと思う。登りスプリントでは(踏み止めれば)一気にスピードを失ってしまう。ダヴィが勢いよく僕を抜いた瞬間、ミスしたことにすぐ気づいた」と加える。
「急勾配区間で限界に達していたけれど、ヨナスのおかげで戦列に復帰できた。明日は楽しみにしている個人TTなので、ハードだった今日のステージから早くリカバリーしたい。明日はマイヨジョーヌを守るために全力を尽くすし、その上で再びステージ優勝争いにも加わりたい」と、早速リベンジを狙う構えを見せている。
2022年のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)で初めて登りフィニッシュが登場した。フランス南東部の街サン・ペレをスタートする169kmコースの最後に控えるのは全長6.2km/平均勾配5.6%という2級山岳シャストレ・サンシー。ラスト1.2kmがほぼ平坦、フィニッシュ直前で再び8%登り勾配という「登れるパンチャー」向けコースで、ユンボ・ヴィスマ勢がレースを組み立てた。
この日はヨナス・グレゴー(デンマーク、ウノエックス・プロサイクリング チーム)とトマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)、そしてセバスティアン・シェーンベルガー(オーストリア、B&Bホテルズ KTM)が逃げを決めたものの、山岳ランキングで首位につけるピエール・ロラン(フランス)にポイントを確保させたいB&Bホテルズ KTMは、ロランとアレクシー・グジャール(フランス)、ミゲル・ハイデマン(ドイツ)をメイン集団からアタックさせ、長い追走劇の末に合流させる。こうして逃げ6名のうち4名がB&B勢というエスケープグループが生まれた。
前日劇的な逃げ切り勝利を挙げ、人生初のマイヨジョーヌに袖を通したアレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー)の総合リードは、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)に対して僅か5秒。それもあってチームは逃げグループに与えるリードを2分台に留め緊張感を持ってレースを進めていく。徐々に標高を上げる4級山岳に向け、牽引役にクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)も加わり、じわじわとペースを上げていった。
先頭グループでは平坦区間を引っ張ったB&Bのハイデマンとグジャールが遅れ、続いてシャンピオンも脱落。それでもなおロランはシェーンベルガーを味方につけて4級山岳を登り、狙い通りKOMポイントの先頭通過を果たして1ポイントを加算した。「今日は長い一日になると思ったけれど、仲間の素晴らしい働きで狙い通りポイントを獲れた。みんなとても良いコンディションなのでTT明けのステージが楽しみだ」とロランは話している。
メイン集団ではトタルに加え、ファンアールトで登りスプリントを狙うユンボ・ヴィスマが牽引役を増やしてペースを上げ、アタックを許さない状況を作り出す。ラポルト、クリス・ハーパー(オーストラリア)、そしてティシュ・べノート(ベルギー)。最後の2級山岳シャストレ・サンシーの登りに突入し、残り4km地点で全ての逃げメンバーをキャッチ。スガブ・グルマイ(エチオピア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)のアタックをきっかけにレミ・カヴァニャ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)などスプリントに持ち込みたくない選手たちが動いたものの、ユンボのコントロールを打ち破るには至らなかった。
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)が作るハイペースによってマイヨジョーヌのヴィエルモは脱落を喫した。最終盤に入るとベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)のアタックによって総合勢の緊張感が高まったものの、フィニッシュ直前の平坦区間に入ったため撃ちやめに。一瞬遅れたファンアールトもヴィンゲゴーの献身的なアシストによって先頭復帰し、30名に絞られた状態でラスト8%勾配の登りスプリントになだれ込んだ。
ヴィンゲゴーの合図を皮切りに、マイヨヴェールを着るファンアールトがスプリントを開始する。先行したヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス)を追い抜き、フィニッシュラインに突き進んだファンアールトがステージ2勝目を確信。フィニッシュ前で踏みやめて両手を広げたものの、後方から猛然と追い上げていたダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)がファンアールトを追い抜き、ハンドルを投げ込んでフィニッシュラインを駆け抜けた。
「すぐにミスしてしまったことに気づいた」と言うファンアールトの横で、ゴデュが勝利の喜びを爆発させる。抜群の伸びを披露した25歳が、世界屈指のスプリント力を誇るファンアールトを打ち破った。
「スプリント勝負が始まった時、僕は少し囲まれてポジションも後ろだった。"終わった"と思ったけれど、脚がまだ残っていたので全力でもがいたんだ。ワウトはまだそこにいたけれど、登りで一瞬遅れていたのを見ていたのできっと彼は疲れているはず。だから捕まえられると思っていたんだ。順位を戻し、彼の後ろに付いた時は"彼を撃ち落としてやる!"と自分に言い聞かせたよ。それが現実になったんだ」と、ゴデュは最後のスプリント勝負を回想する。
「もっとも、ワウトが腕を上げる前に彼を追い抜いていたんだ。フィニッシュラインを駆け抜けた時は世界で一番幸せな男だったかもしれない。フランス人にとって母国のワールドツアーレースで勝つのは特別なことなんだ。子供の頃から見ていたレースの一つだし、ここで勝てたことは重要。特にこんな勝ち方ができたんだから、なおさら嬉しい」と、フランス開催のトップレースで初めて勝利を掴んだゴデュは話している。
ヴィエルモが最終山岳で遅れたため、マイヨジョーヌは再びファンアールトの手に。マイヨヴェールにマイヨジョーヌを重ね着することになったファンアールトだが、「ルーキーミスだ。それ以外に説明のしようがない」とインタビューで顔を曇らせた。「チームは素晴らしい働きでステージ優勝を目指していた。あんな形で取りこぼすのは恥でしかない。あんなことは初めてだったと思う。登りスプリントでは(踏み止めれば)一気にスピードを失ってしまう。ダヴィが勢いよく僕を抜いた瞬間、ミスしたことにすぐ気づいた」と加える。
「急勾配区間で限界に達していたけれど、ヨナスのおかげで戦列に復帰できた。明日は楽しみにしている個人TTなので、ハードだった今日のステージから早くリカバリーしたい。明日はマイヨジョーヌを守るために全力を尽くすし、その上で再びステージ優勝争いにも加わりたい」と、早速リベンジを狙う構えを見せている。
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第3ステージ結果
1位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 4:09:38 |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | ヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス) | |
4位 | ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
5位 | ケヴィン・ゲニエッツ(ルクセンブルク、グルパマFDJ) | |
6位 | ニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) | |
7位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | マッテオ・ヨルゲンセン(アメリカ、モビスター) | |
10位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) |
個人総合成績
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | 12:50:32 |
2位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +0:06 |
3位 | ヴィクトル・ラフェ(フランス、コフィディス) | +0:12 |
4位 | パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:16 |
5位 | マッテオ・ヨルゲンセン(アメリカ、モビスター) | |
6位 | ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
7位 | エステバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
8位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
9位 | ステフ・クラス(ベルギー、ロット・スーダル) | |
10位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン) |
その他の特別賞
ポイント賞 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) |
山岳賞 | ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ KTM) |
ヤングライダー賞 | マッテオ・ヨルゲンセン(アメリカ、モビスター) |
チーム総合成績 | バーレーン・ヴィクトリアス |
text:So Isobe
photo:A.S.O.
photo:A.S.O.
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