與那嶺恵理も出場した今年初開催のイツリア・ウィメン。自転車熱溢れるスペイン・バスク地方を舞台とした3日間の戦いで、デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が3ステージ全勝という圧巻の強さで初代王者に輝いた。



スペイン北部のバスク地方で開催されたイツリア・ウィメンスペイン北部のバスク地方で開催されたイツリア・ウィメン photo:CorVos
男子と同様、女子も春のクラシックからステージレースに移行する。毎年その開幕戦という位置づけであるブエルタ・ア・ブルゴス フェミナス(5月19〜22日)の前に、今年はイツリア・ウィメン(2.WWT)という3日間のステージレースが初開催された。1924年に始まった歴史ある男子はステージレースの女子版で、バスクらしい短くの急勾配な登り坂が現れる丘陵ステージが3日間のレースだ。

第1ステージ:ビトリア=ガステイス〜バスティーダ

大会初日はビトリア=ガステイスからバスティーダまでの105.9kmに獲得標高差2,000mのアップダウンが詰め込まれた丘陵ステージ。逃げを吸収したメイン集団から、残り12kmでパウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム)とクリステン・フォークナー(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)、デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)の3名が飛び出した。

瞬く間に30秒差までタイム差を拡げた3人に対し、集団スプリントに持ち込みたいチームDSMやヴァルカー・トラベル&サービスが追走した。だが向かい風が追走ではなく逃げにを味方したことで逃げ切りが確定。3名による傾斜面スプリントの結果、昨年リエージュ~バストーニュ~リエージュ・ファムを制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が勝利した。

平坦区間で先行集団を形成したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)ら3名平坦区間で先行集団を形成したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)ら3名 photo:CorVos
パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム)とのスプリント勝負を制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム)とのスプリント勝負を制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos
第2ステージ:マリャビア〜マリャビア

マリャビアを発着点とする第2ステージは、117.9kmコースに4つの3級山岳と1級山岳カラビエタ(距離7.3km/平均5.7%)が詰め込まれた山岳ステージ。残り14km地点から始まる1級山岳で前日勝者のフォレリングや今年躍進を見せるマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)がメイン集団を選別し、5名の先頭集団を形成した。

そのまま最終山岳を越えた5名による争いに持ち込まれると、残り150mで傾斜面のコーナーでフォレリングが抜け出す。追走するオリヴィア・バリル(カナダ、ヴァルカー・トラベル&サービス)やカヴァッリを引き離したフォレリングが、2日連続の勝利を掴み取った。

残り150mから飛び出したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)残り150mから飛び出したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos
2日連続勝利を挙げたデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)2日連続勝利を挙げたデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos
第3ステージ:サンセバスティアン〜サンセバスティアン

毎年8月に開催される男子ワンデーレース「クラシカ・サンセバスティアン(UCI.WT)」の舞台であるサンセバスティアンの街を巡る大会最終日。バスクらしい急勾配のカテゴリー山岳が4つ(3級×2、2級×2)登場したこの日、前日同様に最終山岳で小集団に絞り込まれる。しかしこの日はリーダージャージを着るフォレリングがここから1人飛び出しを図った。

残り9km地点に頂上を迎える2級山岳をトップで通過したフォレリングは、下りを猛スピードで下っていく。一方の追走は足並みが揃わず、むしろ繰り返される散発的なアタックによってフォレリングとのタイム差は拡大。結果的に15秒差をつけたフォレリングが、3戦3勝と共に総合優勝に輝いた。

第3ステージは独走で勝利したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)第3ステージは独走で勝利したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos
表彰台:3位クリステン・フォークナー(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイ、1位デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)、2位パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム)表彰台:3位クリステン・フォークナー(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイ、1位デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)、2位パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム) photo:CorVos
「いまだ3連続勝利が信じられない。人生でも忘れられない経験になった。この大会には勝利と言うよりむしろ戦略的な走り方を学ぶ目的だった。チームに4人しかいないなか(最大6名)、ステージ優勝を狙っていたが総合優勝は考えていなかった。第1ステージで逃げに乗ったのは、プロトンよりも学びが多いと思ったからなんだ」と、25歳のフォレリングは語る。

「とても良い学びになり、ツール・ド・フランスに向けて自信がついた。最終ステージの向こう見ずな下りなど改善点も多く、疲れている時の見落としなど、まだまだ学ぶことは多い」とも。また與那嶺は初日を91位、2日目を84位でフィニッシュし、最終日は棄権している。
5月13日(金)第1ステージ
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) 2:55:17
2位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム)
3位 クリステン・フォークナー(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) 0:02
4位 リアヌ・リッパート(ドイツ、チームDSM) 0:41
5位 アネ・サンテステバン(スペイン、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
5月14日(土)第2ステージ
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) 3:16:08
2位 オリヴィア・バリル(カナダ、ヴァルカー・トラベル&サービス) 0:02
3位 マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)
4位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム) 0:04
5位 ジュリエット・ラブー(フランス、チームDSM)
5月15日(日)第3ステージ
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) 4:01:03
2位 リアヌ・リッパート(ドイツ、チームDSM) 0:15
3位 マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)
4位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)
5位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、トレック・セガフレード)
個人総合成績
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) 10:11:54
2位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム) 0:47
3位 クリステン・フォークナー(アメリカ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) 1:07
4位 マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) 1:21
5位 ジュリエット・ラブー(フランス、チームDSM) 1:33
その他の特別賞
ポイント賞 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)
山岳賞 エリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム)
ヤングライダー賞 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)
チーム総合成績 SDワークス
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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