エズ峠序盤に仕掛けたナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)を捉え、スプリントで下したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が勝利。最終日を残し総合首位に浮上した。



3日間というミニステージレースながら、コートダジュールを囲む難関山岳が多数登場するツール・デ・ザルプ=マリティーム・エ・デュ・ヴァール(UCI2.1)は2日目。山間の小村ピュジェ=テニエから峠道を縫ってラ・テュルビーを目指す150kmコースは登りと下りしかなく、フィニッシュ直前にはエズ峠が控えている。

逃げグループを形成するヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・イージーポスト)逃げグループを形成するヨナス・ルッチ(ドイツ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
総合首位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)がアシストとしてメイン集団を牽引し続けた総合首位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)がアシストとしてメイン集団を牽引し続けた photo:CorVos
美しいコートダジュールの海岸を見下ろすエズ峠(コル・デズ)は2級山岳でありながら、平均6%近い勾配が7km以上に渡って続く。急勾配区間と緩斜面区間をどちらも持つこの有名峠で総合成績を狙うオールラウンダー勢が登坂勝負を繰り広げた。

リリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロエン)や、前日落車して最下位フィニッシュだった20歳のルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)が入った逃げが生まれたものの、この日メイン集団先頭ではティム・ウェレンス(ベルギー)の必勝体制を敷くロット・スーダルが徹底コントロールを図る。前日勝者であり総合首位のカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が山岳コースでメイン集団先頭に立ち続けるというレアな光景が続いた。

93km地点で頂上を迎えた3級山岳コート・ダスパルモン(登坂距離11.2km/平均勾配3.9%)のウェットダウンヒルではコフィディスのエースを担うギヨーム・マルタン(フランス)が落車したものの、大事には至らずすぐに復帰。ロットとコフィディスの牽引と、ユアンの牽引によるラスト2番目3級山岳コル・ド・シャトーヌフ(距離5.4km/平均4.6%)のテクニカルダウンヒルによって人数の減った集団が、残り14km地点から始まるエズ峠の登坂区間に入った。

登坂距離/平均勾配5.9%に及ぶエズ峠に入ると間髪入れずにナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が仕掛けた。6km以上を残して飛び出したキンタナは一時合流したマルタンを突き放して独走体制に持ち込む。バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)やヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)の追撃は届かず、唯一ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)だけが頂上付近の緩斜面区間でキンタナに追いつき、2人がフィニッシュを目指した。

追うモレマたちを振り切って、ステージ優勝と総合優勝を賭けた2人の一騎討ちがスタート。スピードが持ち味のウェレンスと、軽量クライマーのキンタナ。緩斜面の登りスプリントの末、キンタナを悠々と突き放したウェレンスがステージを制した。

スプリントでキンタナを下したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)スプリントでキンタナを下したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
最終日を前に総合首位に浮上したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)最終日を前に総合首位に浮上したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
「全くもって簡単なステージではなかったけれど、昨日と同じく体調もよく、チームの素晴らしい働きもあってレースを楽しむことができた。エズ峠まで完璧なリードをしてくれたんだ。キンタナのアタックはすぐ反応すべきか迷ったけれど、彼のペースは速ぎるて失速すると感じ、一定ペースで追走したんだ」と話すウェレンス。

「苦しみながらも彼を捕まえ、その時彼の心が折れたように思う。ここから数kmのところに住んでいるのでフィニッシュは完璧に理解していたよ。総合首位に立つことはできたけれど、明日は僕が得意としない長い登りがある。アルケアが全力で攻めてくるのは目に見えているので、キンタナを離さないようにしたい」と、リーダージャージを受け取ったウェレンスは語っている。
ツール・デ・ザルプ=マリティーム・エ・デュ・ヴァール2022第2ステージ結果
1位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 3:46:00
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)
3位 ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) +0:25
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +0:27
5位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)
6位 アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、トレック・セガフレード) +0:30
7位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル) +1:27
8位 アレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー)
9位 ジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:31
10位 マティアス・ブレグンホール(デンマーク、リワルサイクリング) +1:33
71位 中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト) +15:13
個人総合成績
1位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) 8:00:43
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)
3位 ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) +0:26
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +0:27
5位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)
6位 アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、トレック・セガフレード) +0:31
7位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル) +1:27
8位 アレクシー・ヴィエルモ(フランス、トタルエネルジー)
9位 ジェームズ・ショー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:32
10位 ケヴィン・ジェニエ(ルクセンブルク、グルパマFDJ) +1:33
その他の特別賞
山岳賞 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロエン)
ポイント賞 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ヤングライダー賞 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル)
チーム総合成績 AG2Rシトロエン
text:So Isobe