集団スプリントの予想から一転、混沌としたアタック合戦が繰り広げられたアンダルシア3日目。残り2kmでアタックを成功させた弱冠19歳のマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)がプロ初勝利を手に入れた。



アンダルシア地方の山岳地帯を走るブエルタ・ア・アンダルシア第3ステージアンダルシア地方の山岳地帯を走るブエルタ・ア・アンダルシア第3ステージ photo:CorVos
獲得標高差が3,000m前後のステージが連日登場するルタデルソル。3日目はレース序盤から緩勾配の3級山岳が連続する丘陵コースで、終盤は下り基調の平坦路が続くため、登れるスプリンターによる集団フィニッシュが予想された。

リーダージャージのアレッサンドロ・コーヴィ(イタリア)を擁するUAEチームエミレーツが、マッテオ・トレンティン(イタリア)のためにどう集団をコントロールしてスプリントに持ち込めるか。それが当初の展開予想だったものの、残り35kmに現れたカテゴリーのつかない登り(距離3.4km/平均6.2%)が集団の秩序を大きく乱した。

チームからコロナ陽性者が出たためヒューマンパワードヘルスとガスプロム・ルスヴェロが撤退したこの日、山岳賞ジャージを着るヨン・バレネチェア(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)らスペイン勢4人が逃げ集団を形成。一方のメイン集団は、コロナ禍で5名しかメンバーのいないUAEチームエミレーツがハイペースで牽引した。

スペイン人4名による逃げ集団スペイン人4名による逃げ集団 (c)www.vueltaandalucia.es
序盤から4人のアシストによってプロトンを牽引するUAEチームエミレーツ序盤から4人のアシストによってプロトンを牽引するUAEチームエミレーツ photo:CorVos
このステージ最後の3級山岳を越え、懸念の平均勾配6.2%の登坂に入ると「レース展開を厳しくしたかった」というレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。それにサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)やエディ・ダンバー(アイルランド、イネオス・グレナディアーズ)、ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)などが協調し、強力な7名が逃げ集団を捉えてレースの先頭に立った。

一時は20秒近くのリードを稼ぎながら平坦路に入った先頭グループだったが、ここに選手を送り込めなかったロット・スーダルやモビスターの牽引によって引き戻される。ここからバーレーン・ヴィクトリアスが事態を沈静化させるまで、約10kmに渡りイネオス・グレナディアーズを中心としたアタック合戦が繰り広げられた。

ランダを先頭にオトゥラの街に突入していくと、残り2.7km地点の右コーナーでイネオス・グレナディアーズのジョナタン・ナルバエス(エクアドル)と総合エースのカルロス・ロドリゲス(スペイン)タイヤを滑らせ落車(残り3km以内の落車だったため、救済措置でトップと同タイムフィニッシュ)。

その直後に緩勾配の登りでケムナが飛び出すと、ブリッジをかけたマグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)がそのまま飛び出した。各チームのアシストが遅れ、単独となった総合エースたち牽制する追走集団を尻目に、19歳のシェフィールドが独走のままフィニッシュで両手を振り上げた。

ラスト2kmから独走で勝利した,マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)ラスト2kmから独走で勝利した,マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
キャリア初勝利を喜ぶ,マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ)キャリア初勝利を喜ぶ,マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) (c)www.vueltaandalucia.es
「シーズン序盤にプロ初勝利を挙げられるなんて信じられない。今日はラスト1kmから僕で勝負する作戦だったんだ。ジュニア1年目以来勝利がなく、ここまでこの2年間の成長を見せる機会に恵まれなかった。これから始まるクラシックシーズンへの自信に繋がる勝利だよ」。ヒューマンパワードヘルスから今年イネオスに加入した19歳のシェフィールドはそう喜んだ。

ステージ2位を争うスプリント勝負は、サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)がスタン・デウルフ(ベルギー、AG2Rシトロエン)を抑え先着。リーダージャージは7位でフィニッシュしたコーヴィが守っている。
ブエルタ・ア・アンダルシア2022第3ステージ結果
1位 マグナス・シェフィールド(アメリカ、イネオス・グレナディアーズ) 3:54:37
2位 サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック) 0:03
3位 スタン・デウルフ(ベルギー、AG2Rシトロエン)
4位 ベン・ターナー(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
5位 マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)
6位 ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
9位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン)
10位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)
個人総合成績
1位 アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 13:09:41
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン) 0:08
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック) 0:10
4位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)
5位 ステフ・クラス(ベルギー、ロット・スーダル)
6位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 クリスティアン・ロドリゲス(スペイン、トタルエネルジー)
8位 イバン・ソーサ(コロンビア、モビスター)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
10位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
その他特別賞
山岳賞 ヨン・バレネチェア(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ポイント賞 アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
チーム総合成績 アスタナカザフスタン
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos