2021/10/25(月) - 18:50
全日本選手権ロード最終日に開催されたマスターズレース。三浦恭資(Tri-X JAPAN)や唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)など5人のマスターズ全日本チャンピオンが誕生した。レジェンドが出場し、それぞれの世代の日本チャンピオンジャージを賭けて争った熱い戦いをレポートする。
「キング」こと三浦恭資(Tri-X JAPAN)がマスターズ60代のスタートラインに並ぶ photo:Makoto AYANO
現役ブルベライダーの三船雅彦はマスターズ50代。「いつもより距離が300kmほど短いね」 photo:Makoto AYANO
今年新たに設けられた全日本選手権ロードのマスターズ部門。男子の参加カテゴリーは年代別に30代、40代、50代、60代に区分された。レースは3分の時間差で大きく2ウェーブ出走。男子の30代と40代が混走でスタートし、その3分後に男子50代と60代、そして女子が混走でスタートして争われた。
男子マスターズ 30代、40代がスタートしていく photo:Makoto AYANO
それぞれのウェーブのなかに年代別のチャンピオンが2人もしくは3人が生まれるため、選手はお互いのゼッケン番号でライバルたちのカテゴリーをチェックしながらの走りとなる。
男子マスターズ50-59 山本敦(SBC Vertex Racing Team)が優勝
スタートを待つ男子マスターズ50、60、女子 photo:Makoto AYANO
女子マスターズの選手は10人。男子と混走になる photo:Makoto AYANO
スタートを待つ西谷雅史(弱虫ペダル サイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
30&40代の3分後のスタートながら周回数が2周少ないために先にフィニッシュすることになる50代+60代。50代は「ボス」の愛称で敬われる西谷雅史(弱虫ペダル サイクリングチーム)がいつもどおりの積極的な走りで集団を牽引する。
男子マスターズ50-59の逃げグループ4人。西谷雅史(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
西谷のスピードアップに耐えた4人が2周めには抜け出す形となり、先頭グループを形成。メンバーは西谷と山本敦(SBC Vertex Racing Team)、木村博志(イナーメ信濃山形)、酒井浩一(IMEレーシング)。その後も90%以上を西谷ひとりが牽引する形で差を開き続けた。現在もブルベを中心に走り続けるレジェンド三船雅彦もそのスピードには着いて行けず、独走状態となる。
4人の逃げグループの先頭を引く山本敦(SBC Vertex Racing Team) photo:Makoto AYANO
男子マスターズ50-59 レジェンド三船雅彦も走る photo:Makoto AYANO
最終周には4人から2人が脱落し、西谷と山本のランデブーに。終始後ろに着く選手を気にすることなく先頭を引き続けた西谷。ゴールスプリントは2人の勝負になるが、先行した西谷を交わした山本が先着。2019年にはニセコラシックは40代の部で優勝、ツール・ド・おきなわ140kmマスターズで2位になっている山本がマスターズ50代日本チャンピオンに。
男子マスターズ50〜59歳 優勝 山本敦(SBC Vertex Racing Team) photo:Yuichiro Hosoda
山本は言う。「毎回三段坂からの登りで西谷さんがアタックをかけて、本当に強かった。でもそこで喰らいついていけば最後になんとかチャンスが見いだせると思っていて、西谷さんだけをマークして走っていました。最終周まで2人で行ければ最後にワンチャンあるのかな?と思って。西谷さんの引きが強くて、でもうまくローテーションもして脚を貯めて、最後の最後のチャンスをもらっちゃおうかな、と。なんとか最後に差し切れました。全日本のタイトルを取れたのは本当に嬉しいですね」。
積極的に逃げて足を使った西谷雅史(弱虫ペダル サイクリングチーム)は2位に photo:Makoto AYANO
山本敦(SBC Vertex Racing Team)の優勝を知った練習仲間の女性が泣いて喜ぶ photo:Makoto AYANO
日頃の練習が効いたと言う山本。「練習はこのコースの坂を想定した1分インターバルを中心にしてきました。1時間の短時間・高強度の朝練を続けてきて、土・日は150〜200kmのロングライド。今回は距離は短いけど、強度的には高くなることも考えて乗り込みました」。
男子マスターズ60-69 「キング」こと三浦恭資(Tri-X JAPAN)が優勝
男子マスターズ60代を走る三浦恭資(Tri-X JAPAN) photo:Makoto AYANO
還暦記念の赤いちゃんちゃんこジャージを着る増田謙一(パインヒルズ90) photo:Makoto AYANO男子マスターズ60代は、なんと言っても過去3度の全日本ロードチャンピオンであり、マウンテンバイクを含めると8度か9度の全日本タイトルを獲得した経験を持つ三浦恭資の参戦が話題だ。80年代には欧州でプロロードレーサーとして活躍した三浦が初めてエリートの全日本ロードレースを制したのは1983年。じつに今から38年前のこと。
「キング」の愛称で敬われる三浦と同世代で、今も市民レースやシクロクロスなどでレースを楽しむ増田謙一(パインヒルズ’90)の姿も。増田の着るジャージは還暦記念に仲間が作成してくれた「赤いちゃんちゃんこ」スペシャルジャージだ。増田は今年、MTBとシクロクロスでも全日本マスターズ選手権に出場する。
男子の50代先頭グループに混じって走る唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)と三浦恭資(Tri-X JAPAN) photo:Makoto AYANO
三浦は絞られた6人ほどのグループで先行する。今年から女子マスターズに参加カテゴリーを切り替えた唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)もそのなかに混じる。三浦と唐見の関係といえば、昔を知っている人ならピンとくるであろう師弟関係がある。唐見が長いブランクの前のトップレーサーだった時代、アテネ五輪の代表選手になったときに所属していたCCDキナンチームの監督&キャプテンであったのが三浦だった。もちろんコーチと選手という関係はそれ以前から続くもの。それが20年近いブランクをもって再び同じレースを走り、同じ先頭グループに居るのだ。
男子マスターズの先頭グループに混じって走る唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
日本のレースを長く知っている人たちが回顧に耽るなか、MCをつとめたDJがらぱさんが「きっと最後は2人のゴールスプリントになるはず。見守りましょう」とアナウンス。
男子マスターズ60〜69歳 優勝 三浦恭資(Tri-X JAPAN) photo:Yuichiro Hosoda
三浦は坂で一度遅れてしまうも、諦めずに追走して再び唐見グループに合流。勝負はスプリントに。先行してガッツポーズも無くフィニッシュした三浦がマスターズ60代の日本チャンピオンに。少し遅れてフィニッシュした唐見も女子マスターズの日本チャンピオンになったが、唐見は三浦師匠に負けた悔しさを顔に浮かべてのフィニッシュ。
優勝したものの三浦師匠にスプリントで負けた悔しさが浮かぶ唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
フィニッシュ後、2人揃ってマスターズチャンピオンとなった三浦と唐見は歓談。ふたりの関係を知る人達の熱い祝福を受けた。
唐見実世子と三浦恭資 かつて時代を作った師弟関係の2人が同じレースを走った photo:Makoto AYANO
「今日はカラミっちの姿が見えてホッとしたわ! 最後は脚が攣りかけていてやばかった。昔ヨーロッパのプロだったときに初めてこの広島で走ったけど、そのときは平坦なコースだと思ったけど、今日走ったら坂がキツイのなんの、スゴイ登りばっかり(笑)。今まで何回全日本チャンピオンになったか覚えてないけど、たぶん8回ぐらい? 最初に全日本選手権で優勝したのが38年前。だいぶ時が経ったなぁ、と思うわ」と三浦。
唐見も楽しかったという表情で笑って話す。「これはぜったい三浦さんとの勝負になると思ってました。一度、三浦さんが登りで遅れたけど、皆が待ちました。三浦さんは置いていけないです」「昔からずっと憧れていた三浦さんと同じパックで走る事ができました。細かいアップダウンや平坦区間の高いスピード域や一気にスピードに乗せる体の使い方を久しぶりに間近で見る事ができ、胸が躍る瞬間でした」。
男子マスターズ60-69 1位三浦恭資(Tri-X JAPAN)、2位増田謙一(パインヒルズ90)、3位小久保正彦(大正池クラブ) photo:Makoto AYANO
三浦は言う。「普段ひとりでボチボチ走っていてもアカンね。スピードに対応できない。練習相手が要るわ! ニセコクラシックに出ようと思っていて8月ぐらいにちょっと練習したんよ。そしたら中止になって、9月からロードレーサーに乗ってなくて、MTBとピストには乗ってた。そしたらレースがあると知って申し込んだらコレだったんよ(全日本とは分ってなかった)。で、先週はMTBレースに出たら転んであばらを打って練習ができなくなってしまった。練習してないとキツイね」。
ロードレース参加は2009年のツール・ド・おきなわ市民130km(三浦の優勝レポート)以来だろうか。
「また海外のレースを走りたいな。刺激が欲しいんよ。走るなら海外のレースを走りたい。もうチャンピオンはたくさんやけど、日本はマスターズ連中が頑張ってジュニアたちを引っ張らんといかんね!」。
女子マスターズ優勝 唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)のコメント
全日本ロード2021女子マスターズを勝利した唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Yuichiro Hosoda「私は自分自身の体やメンタルと相談して、納得して、今年はマスターズへのエントリーとなりました。しかしながらたくさんの協力の元、今できるだけの準備は行って当日を迎えました。マスターズへのエントリーの副産物としては、私の憧れのスターのみなさんとレースができるという事がありました。私は今年47歳になりますが、50代以上の男子選手と同じスタートラインに立てるので、まさに、私の大先輩の方々の年代でした。
三浦さんとの勝負は、最後はゴールスプリントになりましたが、ホームに戻る前の曲がりくねった上りで負けを確信してしまいました。踏み込む際の力が全く違っていました。でもそれらの瞬間を目に焼き付けてゴールしました。ここが私の全日本への挑戦のスタートラインで11月、12月はずっと全日本と向き合う日々が続きます。この充実した時間を楽しみたいと思います」。
女子マスターズ 優勝唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)、2位安藤沙弥(TeamSHIDO)、3位手塚悦子(IMEレーシング) photo:Makoto AYANO
男子マスターズ30-39
男子マスターズ30&40代の集団 photo:Makoto AYANO
マスターズ30代と40代は他のJBCFレースやツール・ド・おきなわなどハイレベルな市民レースのコア層とも重なっており、おのずとレースもレベルの高い闘いとなる。集団はまとまりを見せながらも随所でアタックがかかり、逃げ吸収を繰り返しながら進んだ。
アタックする水野恭兵(Avenir Yamanashi Yamanakako) photo:Makoto AYANO
最終周にアタックした雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド) photo:Makoto AYANO
緩慢のあるエリート男子並みに速い17分台のラップも記録したレベルの高い30代レースを制したのは原田将人(Infinity Style)。ラスト2周のアップダウン区間でアタックして独走、そのまま差を保ってフィニッシュまで逃げ切った。昨年のJBCF西日本ロードE-1で、ここ広島で優勝している原田は兼松大和が率いるチーム「Infinity Style」に所属する、登りが得意なヒルクライマーだ。
男子マスターズ30代のチャンピオンになった原田将人(Infinity Style) photo:Makoto AYANO
男子マスターズ30〜39歳 優勝 原田将人(Infinity Style)のコメント
「最後まで集団が大きくて、これはスプリントになると思って、それでは勝てないのでラスト2周の三段坂でアタックしたら誰も着いてこなかった。最後の最後まで踏み切って1周+を逃げ切ることができました。ずっと集団が後ろに見えていて離れなかったのでキツかったですが、登りでは僕のほうが速いと言い聞かせて耐えました。最後の登りでも踏み切ることができた。今年はまったく勝てていなくて、家族にも迷惑をかけていたのでなんとかタイトルを取りたかった。ずっと家族には無理を言って練習してきたので、報われました」。
男子マスターズ30-39 優勝 原田将人(Infinity Style)、2位糸井正樹(VC VELOCE)、3位小林亮(soleil de l'est) photo:Makoto AYANO
男子マスターズ40-49
男子マスターズ30&40代の集団 photo:Makoto AYANO
男子マスターズ40代は30代と混走のため、30代の優勝者が独走フィニッシュした直後での2人のスプリント争いになった。ラスト周回の展望所で逃げを打った雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド)がフィニッシュまで逃げ切ったかに思えたが、ガッツポーズをしようと脚を緩めた瞬間、後ろから迫っていた川崎嘉久(Team Zenko)に気づいて踏み直したが間に合わず、川崎が寸差でフィニッシュラインに先着、勝負が決まった。
男子マスターズ40〜49歳 優勝 川崎嘉久(写真右、Team Zenko) photo:Yuichiro Hosoda
男子マスターズ40-49 優勝 川崎嘉久(Team Zenko)のコメント
積極的に動いてレースの展開も作って攻めながら勝ちを狙った走りができました。雑賀さんが最終周回の展望所から逃げて、集団は誰も追わずに牽制に入ってしまったので残り2kmから追って、射程圏内に捉えてはいました。集団も後方から迫ってきていましたが、最後に勢いをつければ雑賀さんに届くチャンスは有ると思って諦めなかったのが良かったです。雑賀さんが最後に気を緩めたのは自分にとってラッキーでした。
うっかりゴール前で刺された「うっかりフィニッシュ」を決めた雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド)を優勝者の川崎が慰める photo:Makoto AYANO
マスターズレースの40代を設定してもらって感謝しています。30代も40代もJBCFレースなどでいつも一緒に走る仲間たちで顔見知り。そのなかで皆で全日本チャンピオンを目指して戦えるというのは違った良さがあります。全日本のタイトルは格が違いますから何よりモチベーションになりますし、初代チャンピオンになれたのは本当に嬉しいです」。
男子マスターズ40-49 優勝川崎嘉久(Team Zenko)、2位 雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド)、3位 山本裕昭(BONDS静岡サイクルRT) photo:Makoto AYANO
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今年新たに設けられた全日本選手権ロードのマスターズ部門。男子の参加カテゴリーは年代別に30代、40代、50代、60代に区分された。レースは3分の時間差で大きく2ウェーブ出走。男子の30代と40代が混走でスタートし、その3分後に男子50代と60代、そして女子が混走でスタートして争われた。
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男子マスターズ50-59 山本敦(SBC Vertex Racing Team)が優勝
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30&40代の3分後のスタートながら周回数が2周少ないために先にフィニッシュすることになる50代+60代。50代は「ボス」の愛称で敬われる西谷雅史(弱虫ペダル サイクリングチーム)がいつもどおりの積極的な走りで集団を牽引する。
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男子マスターズ60-69 「キング」こと三浦恭資(Tri-X JAPAN)が優勝
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唐見も楽しかったという表情で笑って話す。「これはぜったい三浦さんとの勝負になると思ってました。一度、三浦さんが登りで遅れたけど、皆が待ちました。三浦さんは置いていけないです」「昔からずっと憧れていた三浦さんと同じパックで走る事ができました。細かいアップダウンや平坦区間の高いスピード域や一気にスピードに乗せる体の使い方を久しぶりに間近で見る事ができ、胸が躍る瞬間でした」。
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三浦は言う。「普段ひとりでボチボチ走っていてもアカンね。スピードに対応できない。練習相手が要るわ! ニセコクラシックに出ようと思っていて8月ぐらいにちょっと練習したんよ。そしたら中止になって、9月からロードレーサーに乗ってなくて、MTBとピストには乗ってた。そしたらレースがあると知って申し込んだらコレだったんよ(全日本とは分ってなかった)。で、先週はMTBレースに出たら転んであばらを打って練習ができなくなってしまった。練習してないとキツイね」。
ロードレース参加は2009年のツール・ド・おきなわ市民130km(三浦の優勝レポート)以来だろうか。
「また海外のレースを走りたいな。刺激が欲しいんよ。走るなら海外のレースを走りたい。もうチャンピオンはたくさんやけど、日本はマスターズ連中が頑張ってジュニアたちを引っ張らんといかんね!」。
女子マスターズ優勝 唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム)のコメント
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三浦さんとの勝負は、最後はゴールスプリントになりましたが、ホームに戻る前の曲がりくねった上りで負けを確信してしまいました。踏み込む際の力が全く違っていました。でもそれらの瞬間を目に焼き付けてゴールしました。ここが私の全日本への挑戦のスタートラインで11月、12月はずっと全日本と向き合う日々が続きます。この充実した時間を楽しみたいと思います」。
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マスターズ30代と40代は他のJBCFレースやツール・ド・おきなわなどハイレベルな市民レースのコア層とも重なっており、おのずとレースもレベルの高い闘いとなる。集団はまとまりを見せながらも随所でアタックがかかり、逃げ吸収を繰り返しながら進んだ。
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緩慢のあるエリート男子並みに速い17分台のラップも記録したレベルの高い30代レースを制したのは原田将人(Infinity Style)。ラスト2周のアップダウン区間でアタックして独走、そのまま差を保ってフィニッシュまで逃げ切った。昨年のJBCF西日本ロードE-1で、ここ広島で優勝している原田は兼松大和が率いるチーム「Infinity Style」に所属する、登りが得意なヒルクライマーだ。
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男子マスターズ30〜39歳 優勝 原田将人(Infinity Style)のコメント
「最後まで集団が大きくて、これはスプリントになると思って、それでは勝てないのでラスト2周の三段坂でアタックしたら誰も着いてこなかった。最後の最後まで踏み切って1周+を逃げ切ることができました。ずっと集団が後ろに見えていて離れなかったのでキツかったですが、登りでは僕のほうが速いと言い聞かせて耐えました。最後の登りでも踏み切ることができた。今年はまったく勝てていなくて、家族にも迷惑をかけていたのでなんとかタイトルを取りたかった。ずっと家族には無理を言って練習してきたので、報われました」。
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男子マスターズ40-49
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男子マスターズ40代は30代と混走のため、30代の優勝者が独走フィニッシュした直後での2人のスプリント争いになった。ラスト周回の展望所で逃げを打った雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド)がフィニッシュまで逃げ切ったかに思えたが、ガッツポーズをしようと脚を緩めた瞬間、後ろから迫っていた川崎嘉久(Team Zenko)に気づいて踏み直したが間に合わず、川崎が寸差でフィニッシュラインに先着、勝負が決まった。

男子マスターズ40-49 優勝 川崎嘉久(Team Zenko)のコメント
積極的に動いてレースの展開も作って攻めながら勝ちを狙った走りができました。雑賀さんが最終周回の展望所から逃げて、集団は誰も追わずに牽制に入ってしまったので残り2kmから追って、射程圏内に捉えてはいました。集団も後方から迫ってきていましたが、最後に勢いをつければ雑賀さんに届くチャンスは有ると思って諦めなかったのが良かったです。雑賀さんが最後に気を緩めたのは自分にとってラッキーでした。

マスターズレースの40代を設定してもらって感謝しています。30代も40代もJBCFレースなどでいつも一緒に走る仲間たちで顔見知り。そのなかで皆で全日本チャンピオンを目指して戦えるというのは違った良さがあります。全日本のタイトルは格が違いますから何よりモチベーションになりますし、初代チャンピオンになれたのは本当に嬉しいです」。

全日本選手権ロードレース2021 マスターズ
男子マスターズ30-39 | ||
1位 | 原田将人(Infinity Style) | 2:13:22 |
2位 | 糸井正樹(VC VELOCE) | +0:11 |
3位 | 小林亮(soleil de l'est) | |
男子マスターズ40-49 | ||
1位 | 川崎嘉久(Team Zenko) | 2:13:24 |
2位 | 雑賀大輔(湾岸サイクリング・ユナイテッド) | |
3位 | 山本裕昭(BONDS静岡サイクルRT) | +0:06 |
男子マスターズ50-59 | ||
1位 | 山本敦(SBC Vertex Racing Team) | 1:38:40 |
2位 | 西谷雅史(弱虫ペダル サイクリングチーム) | |
3位 | 木村博志(イナーメ信濃山形) | +0:28 |
男子マスターズ60-69 | ||
1位 | 三浦恭資(Tri-X JAPAN) | 1:46:28 |
2位 | 増田謙一(パインヒルズ90) | +2:35 |
3位 | 小久保正彦(大正池クラブ) | |
女子マスターズ | ||
1位 | 唐見実世子(弱虫ペダル サイクリングチーム) | 1:46:32 |
2位 | 安藤沙弥(TeamSHIDO) | +2:41 |
3位 | 手塚悦子(IMEレーシング) | +2:59 |
text&photo:Makoto AYANO
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