2021/10/03(日) - 08:29
あまりにも過酷で、そして美しい勝利。史上初開催されたパリ〜ルーベ女子レースで、エリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)が82kmに及ぶ単独アタックの末に勝利をもぎ取った。
いよいよ2日間に渡るパリ〜ルーベウィークがやってきた。2019年4月14日以来となる「北の地獄」は、しかもヨハン・ムセーウが優勝した2002年以来約20年ぶりの雨模様。曇り空の下ドライコンディションを保った石畳でさえ、選手通過前の大会車両によって路肩の泥水がはね上げられた。
ドゥナンからルーベまでの総距離115.6kmのうち、合計17セクターに及ぶパヴェ区間の総延長は約4分の1に該当する29.2km。「アランベールの森」を抜けるトルエー=ド=アランベールこそ取り払われたものの、それでも泥によって難易度を増した石畳は次々と選手たちの足をすくい続けた。
残り78km地点に登場するこの日最初のパヴェ「オルネン〜ヴァンディニー(3,700m/☆☆☆☆)」手前で、一人飛び出したのはエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)だった。「このレースではどんな事も起こり得る。ただ少なくともそこにいれば何かできると思っていた。背後を振り返ると誰もおらず、”(このまま行けば)少なくとも誰かの脚を消耗させることはできる”と思った」と言うダイグナンが先行。フィニッシュまで82kmを残したアタックは誰の目にも時期尚早なものに映った。
一気に2分40秒ものリードを稼ぎ出したダイグナンの後方ではいよいよペースアップが図られたものの、石畳でペースを上げるたびに落車が起こるという混沌極まる展開に。シクロクロス選手としても活躍するクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク、SDワークス)率いるその背後ではエマセシル・ノースガード(デンマーク、モビスター)やアルカンシエル初披露のエリーザ・バルサモ(イタリア、ヴァルカー・トラベル&サービス)たちが次々と路面に投げ出され、脱落。分裂と合流を繰り返しながら追走を試みたものの、淡々とリズムを刻むダイグナンとの差は思うように縮まらなかった。
スリッピーな泥にグリップを失いながらも、落車もパンクも無く逃げ続けたダイグナンは、「正直言って何も聞こえなかった。脚は攣っていたし、例え最後のパヴェで2分リードがあったとしても脚が止まったらひっくり返されてしまう。ただただイーブンペースを保つことだけに集中していた」と振り返る。後続グループでエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)とエレン・ファイダイク(オランダ)、そしてオードリー・コードンラゴ(フランス)がライバルチームの追走を阻んだ事も大きな味方となった。
残り17.5km地点のカンファナン=ぺヴェル(1,800m/☆☆☆☆)の時点でタイム差は2分15秒。「彼女とのタイム差が2分になったタイミングで”今行かないといけない”と感じた」と言うマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がアタックすると、後続のファンダイクをきっかけにマジュラスやサラ・ロイ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)たちが次々と落車してしまう。ブレーキを掛けた瞬間即落車という恐ろしい状況下で元シクロクロス世界王者のフォスが抜け出し、ロンゴボルギーニが単独3番手に。
一人ペースを上げるフォスはタイム差を1分15秒まで縮めたものの、残り10kmを切って二人のペースは拮抗。強風吹き付ける嵐のようなコンディション下で先頭ダイグナンが驚異的な粘り強さを披露した。
難易度一つ星の最終セクター「ルーベ」を走り抜け、ダイグナンがルーベの屋外ベロドロームに到達した。笑顔を見せながら、手を振りながら1.5周を走り抜け、数々のドラマを生み出したフィニッシュラインへ。ジャージのチーム名をアピールしながら、史上初のパリ〜ルーベ女子チャンピオンに輝いた。
「感情が湧き上がってる。うまく言葉にできないけれど、とても誇りに思う。ごめんなさい、まとめられないけれど、ただ、とても幸せ。今起こったことが信じられない」と、フィニッシュ直後のインタビューで涙を流したダイグナン。2015年の世界王者であり、ストラーデ・ビアンケやロンド・ファン・フラーンデレン勝者であり、産休を挟んでもなお世界屈指の選手として活躍を続ける32歳が、その肩書きにもう一つ輝かしい歴史を刻み込むことに。
「パリ〜ルーベはずっと男子のレースだったけれど、今は女性のものともなり、そのことを誇りに思う。私の娘がパヴェのトロフィーを見ることが嬉しい。彼女がただ男子レースをテレビ観戦する必要はもうなくて、今や私たちがその代表を務めている」とダイグナンは加えている。
追走届かなかったフォスが2位に入り、ロンゴボルギーニはリサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNTプロサイクリング)の猛追を振り切り3位。129名中足切り内でベロドロームたどり着いたのは僅か61名だった。
いよいよ2日間に渡るパリ〜ルーベウィークがやってきた。2019年4月14日以来となる「北の地獄」は、しかもヨハン・ムセーウが優勝した2002年以来約20年ぶりの雨模様。曇り空の下ドライコンディションを保った石畳でさえ、選手通過前の大会車両によって路肩の泥水がはね上げられた。
ドゥナンからルーベまでの総距離115.6kmのうち、合計17セクターに及ぶパヴェ区間の総延長は約4分の1に該当する29.2km。「アランベールの森」を抜けるトルエー=ド=アランベールこそ取り払われたものの、それでも泥によって難易度を増した石畳は次々と選手たちの足をすくい続けた。
残り78km地点に登場するこの日最初のパヴェ「オルネン〜ヴァンディニー(3,700m/☆☆☆☆)」手前で、一人飛び出したのはエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)だった。「このレースではどんな事も起こり得る。ただ少なくともそこにいれば何かできると思っていた。背後を振り返ると誰もおらず、”(このまま行けば)少なくとも誰かの脚を消耗させることはできる”と思った」と言うダイグナンが先行。フィニッシュまで82kmを残したアタックは誰の目にも時期尚早なものに映った。
一気に2分40秒ものリードを稼ぎ出したダイグナンの後方ではいよいよペースアップが図られたものの、石畳でペースを上げるたびに落車が起こるという混沌極まる展開に。シクロクロス選手としても活躍するクリスティーヌ・マジュラス(ルクセンブルク、SDワークス)率いるその背後ではエマセシル・ノースガード(デンマーク、モビスター)やアルカンシエル初披露のエリーザ・バルサモ(イタリア、ヴァルカー・トラベル&サービス)たちが次々と路面に投げ出され、脱落。分裂と合流を繰り返しながら追走を試みたものの、淡々とリズムを刻むダイグナンとの差は思うように縮まらなかった。
スリッピーな泥にグリップを失いながらも、落車もパンクも無く逃げ続けたダイグナンは、「正直言って何も聞こえなかった。脚は攣っていたし、例え最後のパヴェで2分リードがあったとしても脚が止まったらひっくり返されてしまう。ただただイーブンペースを保つことだけに集中していた」と振り返る。後続グループでエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)とエレン・ファイダイク(オランダ)、そしてオードリー・コードンラゴ(フランス)がライバルチームの追走を阻んだ事も大きな味方となった。
残り17.5km地点のカンファナン=ぺヴェル(1,800m/☆☆☆☆)の時点でタイム差は2分15秒。「彼女とのタイム差が2分になったタイミングで”今行かないといけない”と感じた」と言うマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がアタックすると、後続のファンダイクをきっかけにマジュラスやサラ・ロイ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)たちが次々と落車してしまう。ブレーキを掛けた瞬間即落車という恐ろしい状況下で元シクロクロス世界王者のフォスが抜け出し、ロンゴボルギーニが単独3番手に。
一人ペースを上げるフォスはタイム差を1分15秒まで縮めたものの、残り10kmを切って二人のペースは拮抗。強風吹き付ける嵐のようなコンディション下で先頭ダイグナンが驚異的な粘り強さを披露した。
難易度一つ星の最終セクター「ルーベ」を走り抜け、ダイグナンがルーベの屋外ベロドロームに到達した。笑顔を見せながら、手を振りながら1.5周を走り抜け、数々のドラマを生み出したフィニッシュラインへ。ジャージのチーム名をアピールしながら、史上初のパリ〜ルーベ女子チャンピオンに輝いた。
「感情が湧き上がってる。うまく言葉にできないけれど、とても誇りに思う。ごめんなさい、まとめられないけれど、ただ、とても幸せ。今起こったことが信じられない」と、フィニッシュ直後のインタビューで涙を流したダイグナン。2015年の世界王者であり、ストラーデ・ビアンケやロンド・ファン・フラーンデレン勝者であり、産休を挟んでもなお世界屈指の選手として活躍を続ける32歳が、その肩書きにもう一つ輝かしい歴史を刻み込むことに。
「パリ〜ルーベはずっと男子のレースだったけれど、今は女性のものともなり、そのことを誇りに思う。私の娘がパヴェのトロフィーを見ることが嬉しい。彼女がただ男子レースをテレビ観戦する必要はもうなくて、今や私たちがその代表を務めている」とダイグナンは加えている。
追走届かなかったフォスが2位に入り、ロンゴボルギーニはリサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNTプロサイクリング)の猛追を振り切り3位。129名中足切り内でベロドロームたどり着いたのは僅か61名だった。
パリ〜ルーベ・フェム2021結果
1位 | エリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) | 2:56:07 |
2位 | マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 1:17 |
3位 | エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) | 1:47 |
4位 | リサ・ブレナウアー(ドイツ、セラティツィット・WNTプロサイクリング) | 1:15 |
5位 | マルタ・バスティアネッリ(イタリア、アレBTCリュブリャナ) | 2:10 |
6位 | エマセシル・ノースガード(デンマーク、モビスター) | |
7位 | フランシスカ・コッホ(ドイツ、チームDSM) | |
8位 | オードリー・コードンラゴ(フランス、トレック・セガフレード) | |
9位 | マルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) | |
10位 | シャンタル・ブラーク(オランダ、SDワークス) |
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