2021/09/05(日) - 09:24
ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージで序盤から逃げ、終盤に総合勢に追いつかれながらも再度仕掛けたクレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン)が劇的勝利。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター)がレースを降り、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)はリードを伸ばして最終個人TTへと駒を進めた。
9月4日(土)第20ステージ
サンシェンショ〜カストロ・デ・エルビリェ 202.2km
2021年グランツールも残すことろ2日間。最終日に個人タイムトライアルを残すため、最後のロードステージとなった第20ステージはサンシェンショからカストロ・デ・エルビリェまで、リアス式海岸によって形成されたアップダウンルートを延々と走り続ける202.2km。
常にアップダウンを繰り返し、後半にはカテゴリー3級、2級、1級、2級、2級と登坂距離5〜10km程度の山岳が連続し、ステージ全体の獲得標高差は3,450m。主催者の「ミニ=リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」という表現がぴったりのタフなステージレイアウトは逃げ切り有利と思われていたものの、総合成績逆転を狙う選手による熾烈なアタック合戦が逃げグループの希望を吹き飛ばすこととなる。
この日は序盤から最後のチャンスに賭ける選手たちが次々と飛び出し、最終的に16名の逃げグループが形成された。2日連続の金星を目指したメンバー内に総合成績を脅かす選手はおらず、ユンボ・ヴィズマは約12分ものリードを与えてレースを進める。典型的な「逃げステージ」らしいシナリオで距離を消化していった。
逃げグループを形成した16名
リリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロエン)
クレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン)
スタン・デウルフ(ベルギー、AG2Rシトロエン)
フロリス・デティエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)
ダニエル・ナバロ(スペイン、ブルゴスBH)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
ミケル・ビスカラ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
シルヴァン・モニケ(ベルギー、ロット・スーダル)
ニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)
クリス・ハミルトン(オーストラリア、チームDSM)
マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)
マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)
チームDSMが山岳賞ランキング首位のマイケル・ストーラー(オーストラリア)と同2位ロマン・バルデ(フランス)を含む3名、AG2Rシトロエンも同じく3名、そしてUAEチームエミレーツが2名を加えた、各チームの思惑が明確に顕れた逃げグループ。この日ストーラーはバルデに守られながら連続するカテゴリー山岳を連続1位通過し、最終的なマイヨモンターニャ獲得を決めている。
最高標高地点が650mほどであるにも関わらず、ステージの総獲得標高が4,000m近くにまで達する「隠れ難関ステージ」であるこの日、残り56km地点の1級山岳アルト・デ・モウガス(全長9.9km・平均6.3%)で逃げグループ、そして後続のメイン集団ともに大きく戦局が動いた。
逃げグループではロマン・バルデ(フランス、チームDSM)を含む4名が先行し、メイン集団ではイネオス・グレナディアーズがエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)のためにペースアップを断行したことでタイム差は一気に5分台まで縮まった。東京五輪MTB金メダリストのトーマス・ピドコック(イギリス)とパヴェル・シヴァコフ(ロシア)の牽引によって次々と選手たちが千切れ、そこから引き継いだアダム・イェーツ(イギリス)のペースアップは総合上位勢だけが生き残る展開を生み出した。
ベルナルのアタックは不発に終わり、カウンターで飛び出したイェーツには総合首位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)と2位エンリク・マス(スペイン、モビスター)、4位ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)8位ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス)が先行。ぐいぐい前を目指すログリッチたちに対し、ベルナルや総合3位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター)が含まれた後続グループは思うように追走のリズムを刻めない。次第に失速し、追いかける意思を完全に失ったことでロペスは総合表彰台圏内から転落。チームの指示を受けた結果遅れたロペスはレースを続ける意思を失い、やがてバイクを降りてしまった。
1級山岳のダウンヒルで先頭グループからライアン・ギボンズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)が抜け出して単独先行。2分弱のリードで最後の2級山岳アルト・カストロ・デ・エルビリェ(全長9.7km・平均4.8%)に入ったものの、勢いづくメイン集団を抑え込むにはタイム差が足りなかった。
残り6km付近の平均勾配11%・最大勾配16%の激坂区間では、ギボンズから遅れた当初の逃げメンバーを飲み込んだログリッチグループから再びイェーツが加速した。ログリッチとヘイグ、マスが追従し、残り3.5kmでついにギボンズを飲み込む。ややスピードを落として進む中、マイペース走法を貫いていたクレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン)が追いつくと同時にカウンターアタックを仕掛けた。
逃げグループに入り、ログリッチたちに飲み込まれながらもに脚を温存していたシャンプッサンのアタック。「追いつかれてからは彼らに付いて行かず、急勾配区間でマイペースを保ったんだ。1kmぐらい走っていたら彼らがお見合い状態に陥っているのが見えた。スピードをつけて彼らを追い抜き、差を得ることができたんだ。ラッキーだった」と振り返る、果敢なアタックは十分なリードを得ることに繋がった。
総合成績争いに目を向けるログリッチたちを置き去りにし、残り1.7km区間を誰よりも速く駆け抜けたシャンプッサンがガッツポーズする余裕もないほど出し尽くしてフィニッシュ。逃げに乗り、総合グループに摑まりながらも再びアタックを成功させるという劇的な逃げ切り勝利を最後のロードステージであげてみせた。
総合グループ内ではログリッチがマスやイェーツからリードを奪い、ボーナスタイムを得る2位でフィニッシュ。ロペスがリタイア、ベルナルも遅れたことでヘイグが総合3位、イェーツが総合4位、そしてマーダーが総合5位へのジャンプアップに成功している。
激しい展開となった最後のロードステージを終え、首位ログリッチのリードは2分30秒から2分38秒に拡大。個人TT五輪金メダリストが、巡礼の終着地サンティアゴ・デ・コンポステーラで2年連続マイヨロホ獲得の総仕上げに挑む。
9月4日(土)第20ステージ
サンシェンショ〜カストロ・デ・エルビリェ 202.2km
2021年グランツールも残すことろ2日間。最終日に個人タイムトライアルを残すため、最後のロードステージとなった第20ステージはサンシェンショからカストロ・デ・エルビリェまで、リアス式海岸によって形成されたアップダウンルートを延々と走り続ける202.2km。
常にアップダウンを繰り返し、後半にはカテゴリー3級、2級、1級、2級、2級と登坂距離5〜10km程度の山岳が連続し、ステージ全体の獲得標高差は3,450m。主催者の「ミニ=リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」という表現がぴったりのタフなステージレイアウトは逃げ切り有利と思われていたものの、総合成績逆転を狙う選手による熾烈なアタック合戦が逃げグループの希望を吹き飛ばすこととなる。
この日は序盤から最後のチャンスに賭ける選手たちが次々と飛び出し、最終的に16名の逃げグループが形成された。2日連続の金星を目指したメンバー内に総合成績を脅かす選手はおらず、ユンボ・ヴィズマは約12分ものリードを与えてレースを進める。典型的な「逃げステージ」らしいシナリオで距離を消化していった。
逃げグループを形成した16名
リリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロエン)
クレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン)
スタン・デウルフ(ベルギー、AG2Rシトロエン)
フロリス・デティエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)
ダニエル・ナバロ(スペイン、ブルゴスBH)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
ミケル・ビスカラ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ヤン・ヒルト(チェコ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
シルヴァン・モニケ(ベルギー、ロット・スーダル)
ニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)
クリス・ハミルトン(オーストラリア、チームDSM)
マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)
マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)
チームDSMが山岳賞ランキング首位のマイケル・ストーラー(オーストラリア)と同2位ロマン・バルデ(フランス)を含む3名、AG2Rシトロエンも同じく3名、そしてUAEチームエミレーツが2名を加えた、各チームの思惑が明確に顕れた逃げグループ。この日ストーラーはバルデに守られながら連続するカテゴリー山岳を連続1位通過し、最終的なマイヨモンターニャ獲得を決めている。
最高標高地点が650mほどであるにも関わらず、ステージの総獲得標高が4,000m近くにまで達する「隠れ難関ステージ」であるこの日、残り56km地点の1級山岳アルト・デ・モウガス(全長9.9km・平均6.3%)で逃げグループ、そして後続のメイン集団ともに大きく戦局が動いた。
逃げグループではロマン・バルデ(フランス、チームDSM)を含む4名が先行し、メイン集団ではイネオス・グレナディアーズがエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)のためにペースアップを断行したことでタイム差は一気に5分台まで縮まった。東京五輪MTB金メダリストのトーマス・ピドコック(イギリス)とパヴェル・シヴァコフ(ロシア)の牽引によって次々と選手たちが千切れ、そこから引き継いだアダム・イェーツ(イギリス)のペースアップは総合上位勢だけが生き残る展開を生み出した。
ベルナルのアタックは不発に終わり、カウンターで飛び出したイェーツには総合首位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)と2位エンリク・マス(スペイン、モビスター)、4位ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)8位ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス)が先行。ぐいぐい前を目指すログリッチたちに対し、ベルナルや総合3位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター)が含まれた後続グループは思うように追走のリズムを刻めない。次第に失速し、追いかける意思を完全に失ったことでロペスは総合表彰台圏内から転落。チームの指示を受けた結果遅れたロペスはレースを続ける意思を失い、やがてバイクを降りてしまった。
1級山岳のダウンヒルで先頭グループからライアン・ギボンズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)が抜け出して単独先行。2分弱のリードで最後の2級山岳アルト・カストロ・デ・エルビリェ(全長9.7km・平均4.8%)に入ったものの、勢いづくメイン集団を抑え込むにはタイム差が足りなかった。
残り6km付近の平均勾配11%・最大勾配16%の激坂区間では、ギボンズから遅れた当初の逃げメンバーを飲み込んだログリッチグループから再びイェーツが加速した。ログリッチとヘイグ、マスが追従し、残り3.5kmでついにギボンズを飲み込む。ややスピードを落として進む中、マイペース走法を貫いていたクレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン)が追いつくと同時にカウンターアタックを仕掛けた。
逃げグループに入り、ログリッチたちに飲み込まれながらもに脚を温存していたシャンプッサンのアタック。「追いつかれてからは彼らに付いて行かず、急勾配区間でマイペースを保ったんだ。1kmぐらい走っていたら彼らがお見合い状態に陥っているのが見えた。スピードをつけて彼らを追い抜き、差を得ることができたんだ。ラッキーだった」と振り返る、果敢なアタックは十分なリードを得ることに繋がった。
総合成績争いに目を向けるログリッチたちを置き去りにし、残り1.7km区間を誰よりも速く駆け抜けたシャンプッサンがガッツポーズする余裕もないほど出し尽くしてフィニッシュ。逃げに乗り、総合グループに摑まりながらも再びアタックを成功させるという劇的な逃げ切り勝利を最後のロードステージであげてみせた。
総合グループ内ではログリッチがマスやイェーツからリードを奪い、ボーナスタイムを得る2位でフィニッシュ。ロペスがリタイア、ベルナルも遅れたことでヘイグが総合3位、イェーツが総合4位、そしてマーダーが総合5位へのジャンプアップに成功している。
激しい展開となった最後のロードステージを終え、首位ログリッチのリードは2分30秒から2分38秒に拡大。個人TT五輪金メダリストが、巡礼の終着地サンティアゴ・デ・コンポステーラで2年連続マイヨロホ獲得の総仕上げに挑む。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第20ステージ結果
1位 | クレモン・シャンプッサン(フランス、AG2Rシトロエン) | 5:21:50 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:06 |
3位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 0:08 |
4位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:08 |
5位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:12 |
6位 | クリス・ハミルトン(オーストラリア、チームDSM) | 0:16 |
7位 | ミケル・ビスカラ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) | 0:23 |
8位 | ライアン・ギボンズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ) | 0:26 |
9位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:26 |
10位 | フロリス・デティエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 0:50 |
18位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 6:55 |
19位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 6:55 |
27位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 7:40 |
28位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 7:40 |
112位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | 34:17 |
DNF | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) | |
DNS | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) | |
DNS | オイエル・ラスカノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) |
マイヨロホ 個人総合成績
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 250pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 179pts |
3位 | マッテーオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 145pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM) | 80pts |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | 61pts |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 51pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 83:19:41 |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:03:24 |
3位 | フアン・ロペス(スペイン 、トレック・セガフレード) | 0:18:04 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 249:58:43 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:10:33 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:32:37 |
text:Kei Tsuji
photo:Unipublic
photo:Unipublic
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