2021/09/04(土) - 07:23
ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージで序盤から逃げ、メイン集団を18秒差で振り切った7名が逃げ切り。すでに山頂フィニッシュと集団スプリントで優勝しているマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)が今大会3勝目を飾った。
9月3日(金)第19ステージ
タピア〜モンフォルテ・デ・レモス 191.2km
スタート直後から多くの選手が先行する photo:Unipublic
アストゥリアス山脈を舞台にした2連続超級山岳決戦を終えた選手たちは終着地ガリシア州に向かう。ブエルタ第19ステージはずばり逃げ向き。ステージ前半から連続するカテゴリー山岳で形成された先頭グループがモンフォルテ・デ・レモスまで逃げ切るのが最も可能性の高いシナリオだが、同時にスプリンターにとってもこの日が正真正銘のラストチャンス。「登れるスプリンター」たちを擁するチームがメイン集団を積極的に牽引したため、逃げ切りと集団スプリントのせめぎ合いがフィニッシュまで続く展開になった。
9月3日(金)第19ステージ タピア〜モンフォルテ・デ・レモス 191.2km image:Unipublic
9月3日(金)第19ステージ タピア〜モンフォルテ・デ・レモス 191.2km image:Unipublic
もちろん、スタート直後から逃げ切り狙いの選手がアタックを連発した。最初の3級山岳アルト・ダ・セラデントルシサで24名の逃げグループが形成され、そこからセレクションがかかって2つ目の2級山岳アルト・デ・ガルガンタで18名の逃げグループが完成する。総合に関係せず、山岳賞争いにも関係せず、トップスプリンターチームであるドゥクーニンク・クイックステップもアンドレア・バジオーリ(イタリア)を送り込んだ逃げ。緑色のマイヨプントスを着用するファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が脱落したことでさらに逃げ切りの公算が高まったが、バイクエクスチェンジがこの「逃げの展開」に待ったをかけた。
逃げグループを形成した18名
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)
ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーション・NIPPO)
アンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ヤン・ポランツ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
ルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
ダミアン・トゥゼ(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ミカエル・シェレル(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ロバート・スタナード(オーストラリア、バイクエスチェンジ)
ニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)
マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)
クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
アントニー・ルー(フランス、グルパマFDJ)
アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル)
ファビオ・アル(イタリア、クベカ・ネクストハッシュ)
フレン・アメスケタ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)
アントニオ・ソト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ジャイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス)
チームDSMも加わったメイン集団の牽引によって逃げグループのリード拡大は2分で止まった。そこから逃げグループはずっと1分台という心細いタイム差での先行を続ける。苦しい展開が続く逃げグループでは、残り50km地点からのシモンズらのアタックによって、現役最終レースを走るアルらが脱落している。
ペットボトルはリサイクルへ photo:Unipublic
大きな逃げグループがステージ序盤から先行 photo:Unipublic
序盤の連続山岳で脱落したファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Unipublic
継続的にアタックするシモンズがオリヴェイラとともに飛び出し、ここにコルト、クラドック、バジオーリ、ルー、クロンが合流。新たに形成された先頭7名を追いかけるメイン集団では、前日の超級山岳で総合12位からジャンプアップして総合トップ10入りを果たしていたルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が無念の落車リタイアを喫している。
残り40km地点で1分あったタイム差は、何としてもマイケル・マシューズ(オーストラリア)の集団スプリントに持ち込みたいバイクエクスチェンジと、同じくアルベルト・ダイネーゼ(イタリア)のスプリント狙いのチームDSMによるアクセル全開の牽引によって縮小傾向に。残り10kmアーチ通過時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は25秒。いよいよスプリンターチームによる逃げ吸収が目前と見られたが、先頭7名が驚異的な粘りを見せた。
協調体制を崩すことなくローテーションを回した先頭7名がリードをキープしたまま残り1kmアーチを通過し、そこからクラドックが身を粉にするリードアウト。逃げ切りを確定させた7名によるステージ優勝争いが始まり、残り200mでシモンズがまずはスプリントを開始する。しかし、チームメイトのアシストを受け、タイミングとポジション良く勝負に持ち込んだコルトがシモンズを追い抜いた。
すでに第6ステージの山頂フィニッシュで勝利し、第12ステージの集団スプリントで優勝していたコルトが今度は逃げ切りでステージ優勝。ヤコブセンとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とともにコルトが「ステージ3勝組」に仲間入りした。オリヴェイラがステージ2位、シモンズがステージ3位。メイン集団は18秒遅れでダイネーゼとマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)を先頭にフィニッシュしている。
ステージ前半はアップダウンが続く photo:Unipublic
20名近い逃げグループを先頭にガリシア州に向かう photo:Unipublic
第19ステージを走るマイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Unipublic
「この夢が覚めて欲しくない。今日は残り5〜6km地点まで逃げきれるとは思っていなかった。メイン集団がずっと近くて、本当にハードな1日だった。チームメイトのローソン・クラドックに感謝したい。今日は彼の存在がなければ勝てていなかったと思う」。オールラウンドな走りでステージ3勝目を飾ったコルトはポイント賞3位に浮上している。ブエルタはステージ通算6勝目。
マイヨロホのログリッチはメイン集団内で平穏にフィニッシュしている。落車リタイアしたメインチェスに代わってダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)が総合10位に浮上。大会3連覇がかかったログリッチはエンリク・マス(スペイン、モビスター)に対して2分30秒のリードで残る2ステージに挑む。
スプリントでシモンズらを下したマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) photo:Unipublic
ステージ3勝目を飾ったマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) photo:Unipublic
9月3日(金)第19ステージ
タピア〜モンフォルテ・デ・レモス 191.2km
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アストゥリアス山脈を舞台にした2連続超級山岳決戦を終えた選手たちは終着地ガリシア州に向かう。ブエルタ第19ステージはずばり逃げ向き。ステージ前半から連続するカテゴリー山岳で形成された先頭グループがモンフォルテ・デ・レモスまで逃げ切るのが最も可能性の高いシナリオだが、同時にスプリンターにとってもこの日が正真正銘のラストチャンス。「登れるスプリンター」たちを擁するチームがメイン集団を積極的に牽引したため、逃げ切りと集団スプリントのせめぎ合いがフィニッシュまで続く展開になった。
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もちろん、スタート直後から逃げ切り狙いの選手がアタックを連発した。最初の3級山岳アルト・ダ・セラデントルシサで24名の逃げグループが形成され、そこからセレクションがかかって2つ目の2級山岳アルト・デ・ガルガンタで18名の逃げグループが完成する。総合に関係せず、山岳賞争いにも関係せず、トップスプリンターチームであるドゥクーニンク・クイックステップもアンドレア・バジオーリ(イタリア)を送り込んだ逃げ。緑色のマイヨプントスを着用するファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が脱落したことでさらに逃げ切りの公算が高まったが、バイクエクスチェンジがこの「逃げの展開」に待ったをかけた。
逃げグループを形成した18名
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)
ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーション・NIPPO)
アンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ヤン・ポランツ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
ルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
ダミアン・トゥゼ(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ミカエル・シェレル(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン)
ロバート・スタナード(オーストラリア、バイクエスチェンジ)
ニコ・デンツ(ドイツ、チームDSM)
マーク・パデュン(ウクライナ、バーレーン・ヴィクトリアス)
クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)
アントニー・ルー(フランス、グルパマFDJ)
アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル)
ファビオ・アル(イタリア、クベカ・ネクストハッシュ)
フレン・アメスケタ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)
アントニオ・ソト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
ジャイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス)
チームDSMも加わったメイン集団の牽引によって逃げグループのリード拡大は2分で止まった。そこから逃げグループはずっと1分台という心細いタイム差での先行を続ける。苦しい展開が続く逃げグループでは、残り50km地点からのシモンズらのアタックによって、現役最終レースを走るアルらが脱落している。
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継続的にアタックするシモンズがオリヴェイラとともに飛び出し、ここにコルト、クラドック、バジオーリ、ルー、クロンが合流。新たに形成された先頭7名を追いかけるメイン集団では、前日の超級山岳で総合12位からジャンプアップして総合トップ10入りを果たしていたルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が無念の落車リタイアを喫している。
残り40km地点で1分あったタイム差は、何としてもマイケル・マシューズ(オーストラリア)の集団スプリントに持ち込みたいバイクエクスチェンジと、同じくアルベルト・ダイネーゼ(イタリア)のスプリント狙いのチームDSMによるアクセル全開の牽引によって縮小傾向に。残り10kmアーチ通過時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は25秒。いよいよスプリンターチームによる逃げ吸収が目前と見られたが、先頭7名が驚異的な粘りを見せた。
協調体制を崩すことなくローテーションを回した先頭7名がリードをキープしたまま残り1kmアーチを通過し、そこからクラドックが身を粉にするリードアウト。逃げ切りを確定させた7名によるステージ優勝争いが始まり、残り200mでシモンズがまずはスプリントを開始する。しかし、チームメイトのアシストを受け、タイミングとポジション良く勝負に持ち込んだコルトがシモンズを追い抜いた。
すでに第6ステージの山頂フィニッシュで勝利し、第12ステージの集団スプリントで優勝していたコルトが今度は逃げ切りでステージ優勝。ヤコブセンとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とともにコルトが「ステージ3勝組」に仲間入りした。オリヴェイラがステージ2位、シモンズがステージ3位。メイン集団は18秒遅れでダイネーゼとマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)を先頭にフィニッシュしている。
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「この夢が覚めて欲しくない。今日は残り5〜6km地点まで逃げきれるとは思っていなかった。メイン集団がずっと近くて、本当にハードな1日だった。チームメイトのローソン・クラドックに感謝したい。今日は彼の存在がなければ勝てていなかったと思う」。オールラウンドな走りでステージ3勝目を飾ったコルトはポイント賞3位に浮上している。ブエルタはステージ通算6勝目。
マイヨロホのログリッチはメイン集団内で平穏にフィニッシュしている。落車リタイアしたメインチェスに代わってダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)が総合10位に浮上。大会3連覇がかかったログリッチはエンリク・マス(スペイン、モビスター)に対して2分30秒のリードで残る2ステージに挑む。
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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第19ステージ結果
1位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) | 4:24:54 |
2位 | ルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
3位 | クイン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード) | |
4位 | アンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
5位 | アントニー・ルー(フランス、グルパマFDJ) | |
6位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル) | |
7位 | ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーション・NIPPO) | 0:00:05 |
8位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM) | 0:00:18 |
9位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | アレクサンダー・クリーガー(ドイツ、アルペシン・フェニックス) | |
DNF | サーシャ・モードロ(イタリア、アルペシン・フェニックス) | |
DNF | セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・ネクストハッシュ) | |
DNF | ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 77:49:37 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:02:30 |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) | 0:02:53 |
4位 | ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:04:36 |
5位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 0:04:43 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 0:05:44 |
7位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:06:02 |
8位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:07:48 |
9位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 0:08:31 |
10位 | ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 0:09:24 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 250pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 162pts |
3位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) | 144pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM) | 59pts |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | 54pts |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 48pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 77:54:20 |
2位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:03:05 |
3位 | フアン・ロペス(スペイン 、トレック・セガフレード) | 0:13:20 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 233:45:04 |
2位 | ユンボ・ヴィスマ | 0:04:01 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | 0:15:22 |
text:Kei Tsuji
photo:Unipublic
photo:Unipublic
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