2021/08/27(金) - 09:03
連続山岳で絞られた40名の精鋭集団によるスプリント勝負。灼熱のコルドバで締めくくられたブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージで、マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)が今大会2勝目をマークした。
8月26日(木)第12ステージ
ハエン〜コルドバ 175km
オリーブ畑の広がる大地を走る photo:Unipublic
ハエンから広大なオリーブオイル農園を横目にコルドバへ。その道中に大きな登りは設定されていないが、残り70km地点で一旦コルドバのフィニッシュラインを通過してから選手たちは2つの山岳に挑むことになる(獲得標高差は2,200m)。
まずは3級山岳アルト・デ・サンヘロニモ(全長13km・平均3.3%)を駆け上がってフィニッシュラインに戻り、続いて2級山岳アルト・デル・カトルセポルシエント(全長7.2km・平均5.6%)にアタックする。「カトルセ・ポルシエント=14%」という名前の通り、頂上手前1.5kmから延々と14%の勾配が続く激坂。ピュアスプリンターでは太刀打ちできない逃げ切り向きのレイアウトであるため、この日も序盤からレースは高速化した。
8月26日(木)第12ステージ ハエン〜コルドバ 175km image:Unipublic
8月26日(木)第12ステージ ハエン〜コルドバ 175km image:Unipublic
選手たちは最初の2時間を51km/hという猛烈なスピードで駆け抜けた。ステージのちょうど半分を消化した90km地点でようやく8名の逃げグループが形成されたが、すぐさまマッテオ・トレンティン(イタリア)のスプリント勝利を狙うUAEチームエミレーツがメイン集団の牽引を開始したためタイム差は広がらなかった。
逃げグループを形成した8名
セバスチャン・バーウィック(オーストラリア、イスラエル・スタートアップネイション)
マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・スーダル)
サンデル・アルメ(ベルギー、クベカ・ネクストハッシュ)
チャド・ヘイガ(アメリカ、チームDSM)
スタン・デウルフ(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)
イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)
フレン・アメスケタ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ミケル・イトゥリア(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
逃げグループは思うようにタイム差を広げることができないままコルドバの街に到着し、デウルフを先頭にスプリントポイント(フィニッシュライン)を通過して3級山岳アルト・デ・サンヘロニモに突入する。UAEチームエミレーツ率いるメイン集団内では、この3級山岳の平坦コーナーでプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)やアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が落車するハプニングも。これら総合優勝候補たちはすぐさま再スタートしてメイン集団に復帰している。
スタートから2時間弱にわたって続いたアタック合戦 photo:Unipublic
アンダルシア州をコルドバに向かって西進する第12ステージ photo:Unipublic
新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らを先頭に山岳に向かう photo:CorVos
3級山岳アルト・デ・サンヘロニモの登りと下りを終えて、再びフィニッシュラインに戻ってきた時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は30秒。いよいよ2級山岳アルト・デル・カトルセポルシエントの登りが始まると先頭ではファンヒルスの独走が始まる。しかし、メイン集団からカウンターアタックを仕掛けたヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)とともに逃げは全て捕らえられた。
「14%」という名前の通り勾配が増したところで、今度はジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とジャイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス)が動く。総合12位チッコーネとグランツール初出場ヴァインには、ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)とセルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・ネクストハッシュ)が追いついた。
こうして形成された強力な4名の先頭グループ(チッコーネ、ヴァイン、バルデ、エナオ)は、メイン集団に25秒差をつけて2級山岳アルト・デル・カトルセポルシエントをクリアしていく。頂上を先頭通過したバルデは5ポイントを獲得して山岳賞1位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)との差を4ポイントに詰めている。参考までにバルデは全長7.2km・平均5.6%の登りを平均スピード26.9km/hで走破。後半1kmにわたる「14%」区間の平均スピードは18km/hだった。
急勾配の登りで40名ほどに人数を減らしたメイン集団からは、下り区間でヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)とマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)が抜け出すシーンも見られたが、メンバー7名を揃えて全開牽引するバイクエクスチェンジによって吸収。下り区間を終えた時点で先頭4名と集団40名のタイム差は30秒。思惑が一致した先頭4名は協調したが、バイクエクスチェンジの猛追によってタイム差は縮小を続けた。
残り1kmアーチを前に、そして逃げ吸収を目前にして先頭からアタックしたヴァインも残り700mで吸収される。そこまで完璧なトレインを組んでいたバイクエクスチェンジに対抗して、ヴァイン吸収と同時に先頭に立ったのはイェンス・クークレール(ベルギー、EFエデュケーション・NIPPO)だった。前日のバルデペーニャス・デ・ハエン激坂フィニッシュで最後まで逃げていたマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)とアンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がクークレールのトレインに乗っかり、出遅れたマシューズは自力で追撃を強いられる展開。
クークレールにタイミングよく解き放たれたコルトが伸びた。バジオーリが横に並んだものの、先頭を守り抜いたコルトが片手を突き上げてフィニッシュ。マシューズとトレンティンの前で、コルトが精鋭集団によるスプリントを制した。
マイヨロホを着て高温ステージを走るオドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
ハンドルを投げ込むマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)とアンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Unipublic
ステージ2勝目を飾ったマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) photo:Unipublic
「大集団のスプリントは最初から狙わず、人数が絞られた展開になれば自分で勝利を狙う作戦だった。おかげで逃げ形成のために激しくアタックがかかる時も、集団後方で楽に走ることができていた。昨日の疲労を感じていたものの、なんとか2つの山岳を集団内で越えて、最後はイェンス・クークレールが完璧なリードアウトをしてくれたんだ」と、ポイント賞2位に浮上したコルトは語る。
コルトは第6ステージに続く2勝目。なお、コルトだけでなくジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)とファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)、マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM)、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がそれぞれステージ2勝を飾っているため、ここまで12ステージまでを終えた時点でステージ優勝者は7名しか生まれていない。
ステージ後半にかけて落車したログリッチやイェーツを含めて総合上位陣は40名の精鋭集団内でフィニッシュ。オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)はマイヨロホを守っている。
小集団スプリントを制したマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) photo:CorVos
8月26日(木)第12ステージ
ハエン〜コルドバ 175km
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ハエンから広大なオリーブオイル農園を横目にコルドバへ。その道中に大きな登りは設定されていないが、残り70km地点で一旦コルドバのフィニッシュラインを通過してから選手たちは2つの山岳に挑むことになる(獲得標高差は2,200m)。
まずは3級山岳アルト・デ・サンヘロニモ(全長13km・平均3.3%)を駆け上がってフィニッシュラインに戻り、続いて2級山岳アルト・デル・カトルセポルシエント(全長7.2km・平均5.6%)にアタックする。「カトルセ・ポルシエント=14%」という名前の通り、頂上手前1.5kmから延々と14%の勾配が続く激坂。ピュアスプリンターでは太刀打ちできない逃げ切り向きのレイアウトであるため、この日も序盤からレースは高速化した。
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選手たちは最初の2時間を51km/hという猛烈なスピードで駆け抜けた。ステージのちょうど半分を消化した90km地点でようやく8名の逃げグループが形成されたが、すぐさまマッテオ・トレンティン(イタリア)のスプリント勝利を狙うUAEチームエミレーツがメイン集団の牽引を開始したためタイム差は広がらなかった。
逃げグループを形成した8名
セバスチャン・バーウィック(オーストラリア、イスラエル・スタートアップネイション)
マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・スーダル)
サンデル・アルメ(ベルギー、クベカ・ネクストハッシュ)
チャド・ヘイガ(アメリカ、チームDSM)
スタン・デウルフ(ベルギー、アージェードゥーゼール・シトロエン)
イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)
フレン・アメスケタ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ミケル・イトゥリア(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
逃げグループは思うようにタイム差を広げることができないままコルドバの街に到着し、デウルフを先頭にスプリントポイント(フィニッシュライン)を通過して3級山岳アルト・デ・サンヘロニモに突入する。UAEチームエミレーツ率いるメイン集団内では、この3級山岳の平坦コーナーでプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)やアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が落車するハプニングも。これら総合優勝候補たちはすぐさま再スタートしてメイン集団に復帰している。
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3級山岳アルト・デ・サンヘロニモの登りと下りを終えて、再びフィニッシュラインに戻ってきた時点で逃げグループとメイン集団のタイム差は30秒。いよいよ2級山岳アルト・デル・カトルセポルシエントの登りが始まると先頭ではファンヒルスの独走が始まる。しかし、メイン集団からカウンターアタックを仕掛けたヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)とともに逃げは全て捕らえられた。
「14%」という名前の通り勾配が増したところで、今度はジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とジャイ・ヴァイン(オーストラリア、アルペシン・フェニックス)が動く。総合12位チッコーネとグランツール初出場ヴァインには、ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)とセルヒオルイス・エナオ(コロンビア、クベカ・ネクストハッシュ)が追いついた。
こうして形成された強力な4名の先頭グループ(チッコーネ、ヴァイン、バルデ、エナオ)は、メイン集団に25秒差をつけて2級山岳アルト・デル・カトルセポルシエントをクリアしていく。頂上を先頭通過したバルデは5ポイントを獲得して山岳賞1位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)との差を4ポイントに詰めている。参考までにバルデは全長7.2km・平均5.6%の登りを平均スピード26.9km/hで走破。後半1kmにわたる「14%」区間の平均スピードは18km/hだった。
急勾配の登りで40名ほどに人数を減らしたメイン集団からは、下り区間でヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ・プレミアテック)とマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)が抜け出すシーンも見られたが、メンバー7名を揃えて全開牽引するバイクエクスチェンジによって吸収。下り区間を終えた時点で先頭4名と集団40名のタイム差は30秒。思惑が一致した先頭4名は協調したが、バイクエクスチェンジの猛追によってタイム差は縮小を続けた。
残り1kmアーチを前に、そして逃げ吸収を目前にして先頭からアタックしたヴァインも残り700mで吸収される。そこまで完璧なトレインを組んでいたバイクエクスチェンジに対抗して、ヴァイン吸収と同時に先頭に立ったのはイェンス・クークレール(ベルギー、EFエデュケーション・NIPPO)だった。前日のバルデペーニャス・デ・ハエン激坂フィニッシュで最後まで逃げていたマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO)とアンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がクークレールのトレインに乗っかり、出遅れたマシューズは自力で追撃を強いられる展開。
クークレールにタイミングよく解き放たれたコルトが伸びた。バジオーリが横に並んだものの、先頭を守り抜いたコルトが片手を突き上げてフィニッシュ。マシューズとトレンティンの前で、コルトが精鋭集団によるスプリントを制した。
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「大集団のスプリントは最初から狙わず、人数が絞られた展開になれば自分で勝利を狙う作戦だった。おかげで逃げ形成のために激しくアタックがかかる時も、集団後方で楽に走ることができていた。昨日の疲労を感じていたものの、なんとか2つの山岳を集団内で越えて、最後はイェンス・クークレールが完璧なリードアウトをしてくれたんだ」と、ポイント賞2位に浮上したコルトは語る。
コルトは第6ステージに続く2勝目。なお、コルトだけでなくジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)とファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)、マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM)、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)がそれぞれステージ2勝を飾っているため、ここまで12ステージまでを終えた時点でステージ優勝者は7名しか生まれていない。
ステージ後半にかけて落車したログリッチやイェーツを含めて総合上位陣は40名の精鋭集団内でフィニッシュ。オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)はマイヨロホを守っている。
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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第12ステージ結果
1位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) | 3:44:21 |
2位 | アンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ) | |
4位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・スーダル) | |
6位 | フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | アントニオ・ソト(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) | |
8位 | アントニー・ルー(フランス、グルパマFDJ) | |
9位 | ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
10位 | マーティン・トゥスフェルト(オランダ、チームDSM) | |
78位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:09:12 |
DNF | トビアス・バイヤー(オーストリア、アルペシン・フェニックス) |
マイヨロホ 個人総合成績
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 180pts |
2位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO) | 114pts |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 106pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 31pts |
2位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | 27pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チームDSM) | 17pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 45:38:04 |
2位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) | 0:01:22 |
3位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:02:08 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 136:47:27 |
2位 | UAEチームエミレーツ | 0:03:15 |
3位 | モビスター | 0:05:19 |
text:Kei Tsuji
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