2021/08/19(木) - 08:36
横風区間で発生した大落車によりマイヨロホのレイン・タラマエ(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が脱落する波乱。ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージを締めくくるスプリントでジャスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス)が2勝目を飾った。
8月18日(水)第5ステージ
タランコン〜アルバセテ 184.4km
好天のスペイン中部を南下する photo:Unipublic
ブエルタ第5ステージはタランコンからアルバセテまでの184.4km。2日連続でカテゴリー山岳は設定されず、獲得標高差も600mしかない。この日最も注意しなければならないのはカスティーリャ・ラ・マンチャ州らしい強風だ。前回アルバセテにフィニッシュした2014年大会第8ステージでは横風分断作戦が実行され、集団が1/3の大きさまで縮小している。今年は残り52km地点と残り30km地点で進行方向を90度変えるレイアウト。平野部には南東からの風(概ね向かい風〜横風)が吹き付けた。
8月18日(水)第5ステージ タランコン〜アルバセテ 184.4km image:Unipublic
8月18日(水)第5ステージ タランコン〜アルバセテ 184.4km image:Unipublic
逃げても山岳ポイントを獲得できない「旨味」の少ない平坦ステージで、スペインのUCIプロチームに所属するスペイン人3名が逃げた。カウンターアタックで追走する選手も現れず、すんなりと先頭3名は7分のリードを稼ぎだす。アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオが総合リーダーチームとして集団牽引を担い、やがてアルペシン・フェニックスやドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJというスプリンターチーム御三家が集団先頭に立つ平坦ステージらしい展開に。
逃げグループを形成した3名
シャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
オイエル・ラスカノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)
ラスカノを先頭にスプリントポイント(残り52.9km地点)を通過すると、やがて横風を警戒するユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズ、モビスターが人数を集めて集団先頭で警戒にあたった。集団を粉砕するような風は吹かなかったが、ナーバスなメイン集団はペースを上げてサンチェス、アスパレン、ラスカノを順番に吸収。残り16km地点で全ての逃げを捕えたメイン集団が、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らを先頭に、アルバセテに向かって猛進した。
アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオが牽引するメイン集団 photo:Unipublic
前日のステージ優勝者ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨプントスを着て走る photo:Unipublic
マイヨロホのレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:Unipublic
スプリンターチーム率いるメイン集団にトラブルが発生したのは残り11km地点。集団前方で落車が発生し、幹線道路の道幅いっぱいに選手が倒れ込んだ。この大落車にマイヨロホのレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が巻き込まれた。
マイヨロホの落車によってメイン集団は一旦ペースダウン。多くの選手が集団復帰を果たしたものの、タラマエはチームメイトにサポートされながらも最後まで集団に戻れなかった。他にも再スタートに時間を要したロマン・バルデ(フランス、チームDSM)やミケル・ニエベ(スペイン、バイクエクスチェンジ)がこの日の敗者に。実に12分以上遅れたバルデは総合争いから脱落した。
再びペースアップしたメイン集団はスプリンターチームの支配下に。最も統率のとれたトレインを組んだのはUCIプロチームのアルペシン・フェニックス。ドゥクーニンク・クイックステップやグルパマFDJを押しのけて、アルペシントレインを先頭にアルバセテの街中に突入。残り900mの最終コーナーを曲がってキューバ通りに入ると、サーシャ・モードロ(イタリア、アルペシン・フェニックス)の最終リードアウトが始まった。
モードロに解き放たれたフィリプセンが、向かい風基調の最終ストレートを70km/h前後で突き進む。番手につけていたアルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM)やレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、クベカ・ネクストハッシュ)は並ぶことができず、約6番手からのスプリントを強いられたマイヨプントスのファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が自らラインを見つけて追い上げる。その姿を振り返って確認したフィリプセンが、先に勝利を確信して手を上げるモードロに見守られながら、先頭でフィニッシュラインを切った。
オイエル・ラスカノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)ら3名が平野を逃げる photo:Unipublic
残り16km地点まで逃げ続けたオイエル・ラスカノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) photo:Unipublic
ヤコブセンらを振り切ったジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:Unipublic
「残り5kmからずっとチームは一つの塊となって突き進んだ。チームとして掴んだ美しい勝利だ」。今大会ステージ2勝目を飾り、ヤコブセンに1ポイント差をつけてポイント賞トップに立ったフィリプセンは喜んだ。
フィリプセンは第2ステージ1位、第4ステージ9位、そして第5ステージ1位。「昨日は自分のスプリントができなかったけど、今日こうして心機一転勝てて良かったよ。ブエルタの閉幕まで走るかどうかなんて考えてないけど、マイヨプントスを着るのは悪くない。どこまでこのジャージを着続けることができるかわからないけど、毎日様子を見ながら楽しみたい」。フィリプセンはUAEチームエミレーツ時代の2020年にもステージ1勝を飾っており、これが自身ブエルタ通算ステージ3勝目となる。
落車による脱落から集団復帰を果たせなかったタラマエは2分21秒遅れ。タラマエと一緒に第3ステージで逃げ切りを果たし、総合2位につけていたケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)にマイヨロホは移った。総合首位に立ったエリッソンドは「こうしてマイヨロホを手にするのは望んだ展開ではない。嬉しさもないけど、こればかりはどうすることもできない。誰かの不運ではなく、自分の力でジャージを奪いたかった。タラマエに申し訳なく思う」とコメントする。
エリッソンドはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)からわずか5秒のリードで第6ステージ3級山岳アルト・デ・ラ・モンターニャ・デ・クリェラの山頂フィニッシュに挑むことになる。
モードロと喜ぶジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:Unipublic
ポイント賞トップに返り咲いたジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:Unipublic
不本意な形でマイヨロホを手にしたケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード) photo:Unipublic
8月18日(水)第5ステージ
タランコン〜アルバセテ 184.4km
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ブエルタ第5ステージはタランコンからアルバセテまでの184.4km。2日連続でカテゴリー山岳は設定されず、獲得標高差も600mしかない。この日最も注意しなければならないのはカスティーリャ・ラ・マンチャ州らしい強風だ。前回アルバセテにフィニッシュした2014年大会第8ステージでは横風分断作戦が実行され、集団が1/3の大きさまで縮小している。今年は残り52km地点と残り30km地点で進行方向を90度変えるレイアウト。平野部には南東からの風(概ね向かい風〜横風)が吹き付けた。
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逃げても山岳ポイントを獲得できない「旨味」の少ない平坦ステージで、スペインのUCIプロチームに所属するスペイン人3名が逃げた。カウンターアタックで追走する選手も現れず、すんなりと先頭3名は7分のリードを稼ぎだす。アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオが総合リーダーチームとして集団牽引を担い、やがてアルペシン・フェニックスやドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJというスプリンターチーム御三家が集団先頭に立つ平坦ステージらしい展開に。
逃げグループを形成した3名
シャビエル・アスパレン(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
オイエル・ラスカノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
ペラヨ・サンチェス(スペイン、ブルゴスBH)
ラスカノを先頭にスプリントポイント(残り52.9km地点)を通過すると、やがて横風を警戒するユンボ・ヴィスマやイネオス・グレナディアーズ、モビスターが人数を集めて集団先頭で警戒にあたった。集団を粉砕するような風は吹かなかったが、ナーバスなメイン集団はペースを上げてサンチェス、アスパレン、ラスカノを順番に吸収。残り16km地点で全ての逃げを捕えたメイン集団が、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)らを先頭に、アルバセテに向かって猛進した。
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スプリンターチーム率いるメイン集団にトラブルが発生したのは残り11km地点。集団前方で落車が発生し、幹線道路の道幅いっぱいに選手が倒れ込んだ。この大落車にマイヨロホのレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)が巻き込まれた。
マイヨロホの落車によってメイン集団は一旦ペースダウン。多くの選手が集団復帰を果たしたものの、タラマエはチームメイトにサポートされながらも最後まで集団に戻れなかった。他にも再スタートに時間を要したロマン・バルデ(フランス、チームDSM)やミケル・ニエベ(スペイン、バイクエクスチェンジ)がこの日の敗者に。実に12分以上遅れたバルデは総合争いから脱落した。
再びペースアップしたメイン集団はスプリンターチームの支配下に。最も統率のとれたトレインを組んだのはUCIプロチームのアルペシン・フェニックス。ドゥクーニンク・クイックステップやグルパマFDJを押しのけて、アルペシントレインを先頭にアルバセテの街中に突入。残り900mの最終コーナーを曲がってキューバ通りに入ると、サーシャ・モードロ(イタリア、アルペシン・フェニックス)の最終リードアウトが始まった。
モードロに解き放たれたフィリプセンが、向かい風基調の最終ストレートを70km/h前後で突き進む。番手につけていたアルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM)やレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、クベカ・ネクストハッシュ)は並ぶことができず、約6番手からのスプリントを強いられたマイヨプントスのファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が自らラインを見つけて追い上げる。その姿を振り返って確認したフィリプセンが、先に勝利を確信して手を上げるモードロに見守られながら、先頭でフィニッシュラインを切った。
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「残り5kmからずっとチームは一つの塊となって突き進んだ。チームとして掴んだ美しい勝利だ」。今大会ステージ2勝目を飾り、ヤコブセンに1ポイント差をつけてポイント賞トップに立ったフィリプセンは喜んだ。
フィリプセンは第2ステージ1位、第4ステージ9位、そして第5ステージ1位。「昨日は自分のスプリントができなかったけど、今日こうして心機一転勝てて良かったよ。ブエルタの閉幕まで走るかどうかなんて考えてないけど、マイヨプントスを着るのは悪くない。どこまでこのジャージを着続けることができるかわからないけど、毎日様子を見ながら楽しみたい」。フィリプセンはUAEチームエミレーツ時代の2020年にもステージ1勝を飾っており、これが自身ブエルタ通算ステージ3勝目となる。
落車による脱落から集団復帰を果たせなかったタラマエは2分21秒遅れ。タラマエと一緒に第3ステージで逃げ切りを果たし、総合2位につけていたケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)にマイヨロホは移った。総合首位に立ったエリッソンドは「こうしてマイヨロホを手にするのは望んだ展開ではない。嬉しさもないけど、こればかりはどうすることもできない。誰かの不運ではなく、自分の力でジャージを奪いたかった。タラマエに申し訳なく思う」とコメントする。
エリッソンドはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)からわずか5秒のリードで第6ステージ3級山岳アルト・デ・ラ・モンターニャ・デ・クリェラの山頂フィニッシュに挑むことになる。
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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021第5ステージ結果
1位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 4:24:41 |
2位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チームDSM) | |
4位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | ピート・アレハールト(ベルギー、コフィディス) | |
6位 | ジョン・アベラストゥリ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) | |
7位 | ジョルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | |
8位 | リカルド・ミナーリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
9位 | レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、クベカ・ネクストハッシュ) | |
10位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | |
124位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:02:08 |
125位 | レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 0:02:21 |
180位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | 0:12:32 |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード) | 17:33:57 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:00:05 |
3位 | リリアン・カルメジャーヌ(フランス、AG2Rシトロン) | 0:00:10 |
4位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 0:00:20 |
5位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、モビスター) | 0:00:26 |
6位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:32 |
7位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
8位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:00:44 |
10位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:00:45 |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 131pts |
2位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 130pts |
3位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 50pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | レイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | 10pts |
2位 | ケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード) | 7pts |
3位 | ジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、UAEチームエミレーツ) | 6pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 17:34:29 |
2位 | ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 0:00:13 |
3位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) | 0:00:16 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 52:42:44 |
2位 | モビスター | 0:00:22 |
3位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 0:00:50 |
text:Kei Tsuji
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