2021/07/28(水) - 10:51
「国を背負い走る五輪は特別だった」とは、男子MTBレースを制したトーマス・ピドコック(イギリス)。そしてヨランダ・ネフ(スイス)は「楽しもうと心がけ掴んだ金メダル」とコメント。男女のMTBクロスカントリーレースでメダリストとなった選手たちのコメントを紹介します。
男子MTBクロスカントリー
第1位 トーマス・ピドコック(イギリス)
チームスタッフの出迎えを受けるトーマス・ピドコック(イギリス) photo:Nobuhiko Tanabe
これが現実だといまだ信じられない。自分が五輪に出場できるだけで相当な達成だと思っていた。もちろん優勝を狙っていたが、それ以上に浮足立たないよう心がけていた。五輪はマウンテンバイクやあらゆるスポーツの価値を高めてくれ、イギリスのサポートとともに、国の誇りを背負って走るのは特別な体験だった。
コーチであるカート・ボガーツ(イネオス・グレナディアーズ)とは落車後から多くの時間を一緒に過ごした。限られた時間をいかに有効に使うか、毎日のように話し合っていた。いまはこんなにも幸せかつ笑顔の僕だが、ここまで費やしてきた苦しく厳しいトレーニングができたのは彼のおかげだ。彼が僕のために尽くしてくれた働きは、素晴らしいとしか表現できない。これは僕よりも彼の力があったからこそ得られた勝利だ。
銀メダルのマティアス・フルッキガー(スイス)、金メダルのトーマス・ピドコック(イギリス)、銅メダルのダヴィド・ヴァレロ(スペイン) photo:CorVos
彼(マチュー・ファンデルプール)の後ろを走っていて、ドロップオフにゆっくり入っていったので、悪い予感がしたから咄嗟に少し距離を取ったんだ。そして僕がドロップオフを越えた瞬間、地面に転がる彼の姿が見えた。目を背けたくなるような光景だった。何よりも彼の無事を祈っている。試走で設置されていたスロープが、レースでは撤去されずそのままあるものだと勘違いしたのだろう。ちなみに僕はスロープがないことは把握していた。
今後の予定はブエルタ・ア・エスパーニャを走り、今年アメリカで開催されるワールドカップに出場する。その後は休みを取り、クリスマスから始まるシーズン後半に出場するつもりだ。来年はマウンテンバイクの世界選手権を狙い、その間にロードレースにも出たい。つまり、来年もすべて(マウンテンバイク、シクロクロス、ロードレース)のレースを走ることになるだろう。
第2位 マティアス・フルッキガー(スイス)
ピドコックを追走するマティアス・フルッキガー(スイス) photo:So Isobe
もちろん勝ちたかったが、誇りに思える結果だ。正直、ピドコックを掴まえるため走っていたので、フィニッシュした瞬間に喜びはなかった。実は最終ラップで2回ミスをしてしまい、差が広がってしまったんだ。それが結果的に五輪タイトルを逃す要因となってしまった。
2度もペダルから足が外れ、1度目は登りの途中だったのでトラクションを失ってしまった。バイクを降りて登らなければならず、そこで6、7秒とリズムを失ってしまった。このコースの登りはトラクションがなければ越えられないからね。
レース会場の雰囲気は良く、観客もいたことから表彰式では感情が高まったよ。やはり観客の存在は、レースとポディウムからの景色を更に美しいものにしてくれるね。次の目標はワールドカップでの総合優勝。その後には2022年の世界選手権があり、2024年のパリ五輪もそれほど遠くない。
第3位 ダヴィド・ヴァレロ(スペイン)
3位グループに追いついたダヴィド・ヴァレロ(スペイン) photo:Nobuhiko Tanabe
このメダルをスペインの人々に捧げ、応援してくれた全ての人に感謝したい。この長い選手生活で僕の力になってくれたすべての人たちのことを僕は覚えている。この銅メダルを母国スペインに持ち帰ることができ、それ以上の幸せはない。
女子MTBクロスカントリー
第1位 ヨランダ・ネフ(スイス)
国旗とともにフィニッシュするヨランダ・ネフ(スイス) photo:CorVos
金メダル獲得なんてクレイジーな結果で、信じるのにしばらくかかるだろう。私が最後に大きな国際大会で優勝したのは2018年にラ・ブレスで開催された世界大会だった。その後は様々なアクシデント(2019年12月の練習中に負った大怪我)や新型コロナウイルス、そして6週間前の怪我(手の骨折)があった。この勝利はそれらを乗り越えて得た結果だ。
2018年まで世界選手権で12回の勝利を挙げ、世界大会で3度の総合優勝を果たしてきた。だがその後は難しい時期を過ごした。多くの勝利を掴んだ後に勝利から遠ざかるのは辛く、自分の力を疑っていた。しかし、家族やボーイフレンド、チームをはじめたくさんの素晴らしいサポートのおかげで戦い続けることができた。
金メダルを手に勝利を喜ぶヨランダ・ネフ(スイス) photo:CorVos
再び自転車に乗ることができたのはレース直前の6月だった。私が世界で一番好きなマウンテンバイクに乗れるだけ嬉しかった。レースでは楽しむことだけに集中していた。走り出してから感覚は良く、雨が降り出してからその感覚は研ぎ澄まされていった。何とも言えない素晴らし感覚だった。
(プレ大会があった)昨年からコースに変更があり、今朝激しい雨も降った。私たちはたった1時間でそれに対応し、新しいラインを覚えなくてはいけなかった。しかしスイスチームは昨年から特別なコーチの元、技術練習に多くの時間を費やしてきた。それがこの様変わりしたコースにも即座に対応できた理由だろう。
第2位 シーナ・フライ(スイス)
銀メダルを獲得したシーナ・フライ(スイス) photo:CorVos
信じられないし、この感情を上手く表現することができない。初めての五輪で銀メダルを獲得することができた。2人のスイス人とともに表彰台に上がり、3つのメダルを独占できたなんてクレイジーかつ、これ以上嬉しいことはない。
この結果をスタートの時から信じていた。なぜならこの数年間、スイスチームとして素晴らしい準備ができていたからね。それが今日全て報われた。雨によりコースに変更があったため、いつもより試走に時間をかけた。多くの国がしなかったその細かい取り組みが、この大きな結果に繋がったのだと思う。
第3位 リンダ・インダーガンド(スイス)
トップ3を独占した2人とともに喜ぶリンダ・インダーガンド(スイス) photo:CorVos
子どもの頃からの夢が叶った。また、ヨランダとシーナとともに表彰台に立てるなんて、さらに素晴らしい瞬間となった。銅メダルを確信したのはフィニッシュラインを越えてから。なぜならこの競技ではいつ何が起きてもおかしくないからね。シーナと先頭を交代しながら力を蓄えることができ、彼女の存在が私に精神的な力を与えてくれた。
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
男子MTBクロスカントリー
第1位 トーマス・ピドコック(イギリス)
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これが現実だといまだ信じられない。自分が五輪に出場できるだけで相当な達成だと思っていた。もちろん優勝を狙っていたが、それ以上に浮足立たないよう心がけていた。五輪はマウンテンバイクやあらゆるスポーツの価値を高めてくれ、イギリスのサポートとともに、国の誇りを背負って走るのは特別な体験だった。
コーチであるカート・ボガーツ(イネオス・グレナディアーズ)とは落車後から多くの時間を一緒に過ごした。限られた時間をいかに有効に使うか、毎日のように話し合っていた。いまはこんなにも幸せかつ笑顔の僕だが、ここまで費やしてきた苦しく厳しいトレーニングができたのは彼のおかげだ。彼が僕のために尽くしてくれた働きは、素晴らしいとしか表現できない。これは僕よりも彼の力があったからこそ得られた勝利だ。
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彼(マチュー・ファンデルプール)の後ろを走っていて、ドロップオフにゆっくり入っていったので、悪い予感がしたから咄嗟に少し距離を取ったんだ。そして僕がドロップオフを越えた瞬間、地面に転がる彼の姿が見えた。目を背けたくなるような光景だった。何よりも彼の無事を祈っている。試走で設置されていたスロープが、レースでは撤去されずそのままあるものだと勘違いしたのだろう。ちなみに僕はスロープがないことは把握していた。
今後の予定はブエルタ・ア・エスパーニャを走り、今年アメリカで開催されるワールドカップに出場する。その後は休みを取り、クリスマスから始まるシーズン後半に出場するつもりだ。来年はマウンテンバイクの世界選手権を狙い、その間にロードレースにも出たい。つまり、来年もすべて(マウンテンバイク、シクロクロス、ロードレース)のレースを走ることになるだろう。
第2位 マティアス・フルッキガー(スイス)
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もちろん勝ちたかったが、誇りに思える結果だ。正直、ピドコックを掴まえるため走っていたので、フィニッシュした瞬間に喜びはなかった。実は最終ラップで2回ミスをしてしまい、差が広がってしまったんだ。それが結果的に五輪タイトルを逃す要因となってしまった。
2度もペダルから足が外れ、1度目は登りの途中だったのでトラクションを失ってしまった。バイクを降りて登らなければならず、そこで6、7秒とリズムを失ってしまった。このコースの登りはトラクションがなければ越えられないからね。
レース会場の雰囲気は良く、観客もいたことから表彰式では感情が高まったよ。やはり観客の存在は、レースとポディウムからの景色を更に美しいものにしてくれるね。次の目標はワールドカップでの総合優勝。その後には2022年の世界選手権があり、2024年のパリ五輪もそれほど遠くない。
第3位 ダヴィド・ヴァレロ(スペイン)
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女子MTBクロスカントリー
第1位 ヨランダ・ネフ(スイス)
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金メダル獲得なんてクレイジーな結果で、信じるのにしばらくかかるだろう。私が最後に大きな国際大会で優勝したのは2018年にラ・ブレスで開催された世界大会だった。その後は様々なアクシデント(2019年12月の練習中に負った大怪我)や新型コロナウイルス、そして6週間前の怪我(手の骨折)があった。この勝利はそれらを乗り越えて得た結果だ。
2018年まで世界選手権で12回の勝利を挙げ、世界大会で3度の総合優勝を果たしてきた。だがその後は難しい時期を過ごした。多くの勝利を掴んだ後に勝利から遠ざかるのは辛く、自分の力を疑っていた。しかし、家族やボーイフレンド、チームをはじめたくさんの素晴らしいサポートのおかげで戦い続けることができた。
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再び自転車に乗ることができたのはレース直前の6月だった。私が世界で一番好きなマウンテンバイクに乗れるだけ嬉しかった。レースでは楽しむことだけに集中していた。走り出してから感覚は良く、雨が降り出してからその感覚は研ぎ澄まされていった。何とも言えない素晴らし感覚だった。
(プレ大会があった)昨年からコースに変更があり、今朝激しい雨も降った。私たちはたった1時間でそれに対応し、新しいラインを覚えなくてはいけなかった。しかしスイスチームは昨年から特別なコーチの元、技術練習に多くの時間を費やしてきた。それがこの様変わりしたコースにも即座に対応できた理由だろう。
第2位 シーナ・フライ(スイス)
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信じられないし、この感情を上手く表現することができない。初めての五輪で銀メダルを獲得することができた。2人のスイス人とともに表彰台に上がり、3つのメダルを独占できたなんてクレイジーかつ、これ以上嬉しいことはない。
この結果をスタートの時から信じていた。なぜならこの数年間、スイスチームとして素晴らしい準備ができていたからね。それが今日全て報われた。雨によりコースに変更があったため、いつもより試走に時間をかけた。多くの国がしなかったその細かい取り組みが、この大きな結果に繋がったのだと思う。
第3位 リンダ・インダーガンド(スイス)
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子どもの頃からの夢が叶った。また、ヨランダとシーナとともに表彰台に立てるなんて、さらに素晴らしい瞬間となった。銅メダルを確信したのはフィニッシュラインを越えてから。なぜならこの競技ではいつ何が起きてもおかしくないからね。シーナと先頭を交代しながら力を蓄えることができ、彼女の存在が私に精神的な力を与えてくれた。
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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